真剣で世界に恋しなさい!   作:teymy

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できるだけ一定間隔で投稿していくつもりですが、おそらく不定期更新になると思います。
ご了承ください。


第一話 Welcome to the 川神

川神院

武術の総本山と言われ、世界にその名を知らしめる寺院に、一人の少女が走りながら入ってくる。

 

川神一子は今日も鍛錬に励んでいた。

 

土曜日の朝から日課のメニューを消化する。

その後の予定は決まっていなかったが、やることがなければ今日は一日鍛錬を続ける予定だ。

もちろん体を休めながらの、無理のない範囲での自主トレーニング。

もはや鍛錬は一子にとって趣味、ライフワークの域に差し掛かっていた。

 

「うーん、今日はファミリーとの予定もないし、お姉さまもどっか出かけてるし…」

 

"風間ファミリー"

風間翔一、通称キャップをリーダーとした遊び友達。

幼いころからこのファミリーが主な遊び相手で、それは現在も変わらず続いている。

最近ではメンバーも2人増え、最初は意見がぶつかりもしたが、全員で旅行に行ったりと賑やかである。

 

その中でも一子が一番慕っているのが、『武神』と呼ばれる姉の川神百代である。

 

育ての親がが亡くなり、失意に飲まれていた一子を引き取るよう、川神院総代であり、祖父である川神鉄心に進言したのが百代であった。

一子はその前から百代の強さに憧れており、養子となった今は百代の妹として、"お姉さま"と呼び慕っている。

百代のほうも一子を溺愛しており、修行に勤しむ一子を優しく見守っている。

 

一子の夢は憧れのお姉さま・百代に並ぶ強さを手に入れ、川神院の師範代になることだ。

そのための鍛錬は一日として欠かすことはなく、むしろ師範代であるルー・イーにはオーバーワークに気を付けるよう言われてしまうほどであった。

 

「うー…でも、師範代になるためには鍛錬あるのみよ!勇往邁進!」

 

好きな言葉を口に出し、鍛錬場へと足を踏み出そうとしたが、その前に後ろから声を掛けられた。

 

「こんにちわ」

 

「うわ、っとと…」

 

逸る気持ちに逆らうようブレーキをかけ振り向くと、そこには見覚えのあるメイド服を着た女性が立っていた。

 

「あれ?九鬼のメイドさん?」

(気配がなかった…さすが九鬼の従者部隊だわ…)

 

短い黒髪に、見ようによっては冷たいと思えてしまう表情のメイドの女性は、軽く頭を下げながら挨拶と、要件を伝える。

 

「突然の訪問、申し訳ありません。九鬼家従者の李静初(リ ジンチュー)と申します。

 本日は川神鉄心様はご在宅でしょうか?」

 

丁寧な挨拶に、思わず緊張してしまいながらも一子は答える。

 

「あ、えーと、おじいちゃんは中にいると思います。ちょっと待っててくださいね。

 おじいちゃんに伝えてくるので」

 

そういうと一子は近くにいた修行僧に李の案内を頼み、自分は鉄心を呼びに行くことにした。

 

「有難うございます。ヒューム・ヘルシングの使いとして会わせたい人物がいる、とお伝え下さい。

 今車の中で待っているので、一緒に連れて行かせていただきます」

 

「え!?…あの噂のヒュームさんから?」

 

聞き覚えのある名前、しかも鉄心から聞かされていた人物の名を聞き驚く一子。

 

ヒューム・ヘルシング

吸血鬼を倒した一族の子孫で、川神鉄心とは実力を競い合った人物。

 

すごい名前が出てきたと、焦りながら鉄心の元へ向かう一子であった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「ホッホッホ…ヒュームの奴め、しばらくぶりの連絡かと思ったら、なんのつもりかのう」

 

面倒は勘弁じゃの、と言いつつも楽しそうに目を細める川神鉄心。

 

一子はそんな鉄心と共に客間へ向かっていた。

 

2人で歩く廊下の反対、対面から歩いて来るのは、修行僧に先導されながら歩いてくる先ほどのメイド、李ともう一人。

小柄な少女が李の後ろを歩いていることに気がついた。

 

肩まで伸びている髪の色は、輝くような、しかし派手さは感じず暖かい金色。

少し長めの前髪から覗くのは、雪のように白い肌に、大きな瞳。

少し緊張しているのだろうか。表情は若干強張っている。

 

(女の子…?可愛い…人形みたいだわ…)

 

思わずじっと見つめてしまうほどの愛らしさ。

 

そんな一子をよそに、李は正面に立った鉄心と挨拶を交わしていた。

 

「突然のご無礼、お許しください。九鬼家従者の李静初と申します。

 こちらはヒューム・ヘルシングからの紹介で、出雲連理(いずも れんり)といいます」

 

李に背中を軽く押され前に出てきた連理と紹介された少女は、緊張の面持ちで口を開く。

 

「こ、こんにちわっ。連理ですっ」

 

どもりながらも名乗る連理に、一子も鉄心も頬を緩めた。

 

「ほっほっ、こんにちわ。ワシは鉄心という。しっかりと挨拶が出来て良い子じゃの」

 

「こんにちわ!アタシは川神一子!」

 

鉄心が褒め、一子が元気よく挨拶すると、安心したのか連理は緊張が解けたようでほにゃっと笑みを浮かべた。

緩んだ口から小さな八重歯が少しだけ顔を出す。

 

(何この子!?可愛すぎるわ!?…名前は思い切り日本人ね、ハーフかしら?

 あああああ頭を撫でてあげたい!頭撫でられる気持ちよさを教えてあげたい!)

 

普段、ファミリーの面々からマスコットとして可愛がられる一子からしても、連理には保護欲を掻き立てられる。

脳内に普段は考えないような思考が溢れ出てきた。

 

内心で祭りを開いている一子を放置して、鉄心が李に話しかけた。

 

「ヒュームが紹介したいっちゅーからどんな猛者を連れてきたかと思ったんじゃが…

 まさかこんなに可愛い子じゃとは思わんかったの」

 

「本日はこの連理についてお話が…」

 

隣に立つ連理の肩に手を添えて、話を切り出す李。

 

「まぁ、立ち話もなんじゃ。長い話になりそうじゃし、どうぞ中へ入りなさい」

 

「はい。失礼します」

 

「しつれいします!」

 

鉄心に促され、客間へ入っていく李と連理。

一子は二人を見送るが、連理が客間へ入る前に一子に目を向けた。

 

何を思ってかわからなかった一子だが、とりあえず微笑んで手を振ってみる。

ぎこちなく手を振り返しながら中へ消えていった連理に、一子の脳内で祭りがクライマックスを迎えていた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

Side 一子

 

午前にやろうと決めた鍛錬も消化して、柔軟をしていたアタシの脳内ではまださっきの祭りの余韻が残っていた。

 

「あー…連理ちゃん、可愛かったわぁ…」

 

お姉さまがよく女の子に可愛い可愛いって言ってるけど、こーゆーことなのかしら?

だとしたら、アタシも気持ちがよくわかるわぁ…(※若干違います)

 

あの子、雰囲気とか顔とか、あの金髪もそうなんだけどすっごい女の子として可愛いのに、

服装はなんだか男の子みたいにボーイッシュなのよね。

下はハーフパンツで、上はシャツにパーカーだったし。

でも、そのミスマッチ…?っていうのかしら。それがまた愛らしさを際立たせているというか…。

 

なんだか段々と変な思考になっていくアタシは、そのまま柔軟を続けようとしたけど、途中で客間の襖が開くのが見えてその思考を中断した。

 

話が終わったのかしら?ってゆーか、そもそも何の話だったんだろう?

あれ、出てきたのルー師範代だわ。いつの間に客間にいたんだろう?

それと連理ちゃんもルー師範代の後に続いて出てきた。

やっぱり可愛…じゃなくて、あれ?そのまま襖がしまっちゃった。

あの李っていうメイドさんもおじいちゃんも出てこないし、まだ話は終わってないのかしら?

 

ルー師範代はこっちを見ると、手を振りながらアタシを呼ぶ。

 

「オー!丁度良かったネ!一子、ちょっとこっちに来てネ!」

 

「はーい!」

 

返事をして傍に行くと、ルー師範はニコニコしながら要件を伝えてくれる。

……ルー師範、いつも笑ってるみたいな顔してるけど。

連理ちゃんは寺院の雰囲気が珍しいのか、キョロキョロと周りを見回している。

 

「実はネ、連理はこれから川神に引っ越してくることになったんだヨ

 それと、ここ川神院でも一緒に修行することになるからネ」

 

「そうなんですか?」

 

ちょっと驚いた。だって、どう見ても武術をやるようには見えなかったもの。

 

「まぁ、修行と言っても軽く基礎の型を習ったり、精神修養のためだけどネ」

 

なるほど、それくらいなら納得だわ。

連理ちゃんは自分のことを話してるのが気になるのか、さっきからルー師範とアタシの顔をじっと見てる。

 

「へー。じゃあ、改めて、アタシは川神一子。一子って呼んで!

 これからよろしくね、連理ちゃん!」

 

「…かずこ…?……一子。うん。連理です。…連理って、呼んで」

 

さっきはあまり喋らなかったし緊張してたみたいだから、人見知りする子かなって思ったけど、そうでもないみたい。

それに、呼び捨てにされても生意気な感じがしないというか、すんなり認めちゃえるのが不思議。

アタシも連理って呼ぶことにしよう。

 

「それで、一子は連理に街の案内をしてほしいネ。夕方まで総代と李さんは話をしてるから、今日は一日相手をしてあげてネ」

 

案内、かぁ…。今日一日、よね?

うーん、一日遊ぶだけならアタシでもできるけど、案内もあるとなると、結構難しいわね…。

そうだ!こーゆー時のアタシたちの軍師じゃない!

 

「大和も呼んでいいですか、ルー師範代?」

 

「おぉ、そうだネ、直江もついてるなら安心して任せられるヨ!」

 

良かった。大和なら楽しく、時間も気にして案内してくれそう。

早速大和にメールを送る。

納得してくれたルー師範は、連理に向かって説明をする。

 

「今日は一日一子と一緒に街を見てきてネ。

 それと、さっき李さんにもらった財布はあるかイ?」

 

「うん。これ」

 

連理は手に持っていた財布をルー師範に差し出す。

ルー師範はそれを受け取って、アタシに渡してきた。どういうこと?

 

「今日のお昼代と、遊ぶお金だヨ。余裕があるから、他の友達も誘うといいネ」

 

「ホントですか?わーい!」

 

「お財布はできれば直江に渡してネ。使いすぎちゃダメだヨ」

 

そうね、お金についても大和に任せれば安心だわ。

 

その時、丁度大和から電話がかかってきた。

 

「もしもし、大和?」

 

『おいワン子…いきなり"川神を案内して"ってどういうことだ?

 ちょっと俺には解読不能だったんだが。

 記憶喪失にでもなったか?そこまでバカだったのか?』

 

「ちっがうわよ!今、新しく川神に来た子がいるから、その子の案内を頼まれたのよ。

 それで、大和に手伝ってもらえないかって思って…」

 

『あぁ、そういうことか。安心したわ。さすがに面倒見きれないと思い始めてた』

 

「ちょっと!見捨てないでよ!大和に見捨てられたら誰がアタシに勉強教えるのよ!この鬼畜軍師!」

 

『"おにちく"な、"おにちく"』

 

「え?あ、そうなの?このおにちく軍師!」

 

『鬼畜に決まってんだろバカが!』

 

「ニャー!!」

 

イジメられながらもなんとか街の案内については受けてくれた。

うぅ…ホントにおにち…じゃない、鬼畜だわ…。

 

「あ、そうだ。ルー師範、大和が来る前にアタシ汗流したいんですけど…」

 

「そうだネ、連理は見ておくから、シャワー浴びて着替えておいデ」

 

「はーい!じゃあ連理、ちょっと待っててね!」

 

「うん」

 

小さくうなづいたのを見てから、アタシは着替えを取りに部屋へ向かった。

 

Side out

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

Side 大和

 

「晴れてるなー。歩いてたらちょっと暑いくらいかもな」

 

川神院に向かいながら、隣を歩く京に話しかける。

 

「じゃあ、脱ごうよ。私も一緒に脱いであげるから」

 

「脱がん。なにが"あげるから"だ」

 

ついさっきワン子から連絡を受け、新しく引っ越して来たという女の子に街の案内をすることになった。

なんでも一日相手をするらしく、それなら人数もある程度いたほうがいいだろうと寮にいた面子に声を掛けた。

 

丁度俺の部屋にいた(本当にいつの間にか隣にいた)京は、知らない人間がいることに多少渋ったが無事パーティ加入。

居間でダラダラしていたクリスも、人の手助けになるならと即決。

まゆっちは友達を作るチャンスだと話を聞きつけて自分から加入した。

キャップは昨夜夜遅くに帰って来たらしく寝ていたが、メールは入れてあるので起きたら参加してくるだろう。

源さんはバイトで外出中。でも多分誘ったとしても来なかったと思う。

 

あとは寮生以外にも声を掛けたが、

姉さんは知り合った女の子とデート中。後で合流するらしい。

ガクトとモロも2人で出かけているらしい。場所は聞いているので近くまで行ったら連絡しよう。

 

とりあえずファミリーの皆に声を掛けたところで出発した。

 

「どんな方なんでしょう?…お友達になれるでしょうか…」

 

『臆するなまゆっちー!どんな奴にだって積極的にアピッちゃおうぜぇ!』

 

「引っ越してきてすぐに川神院に挨拶するということは…武道を嗜んでいるということか?」

 

俺と京の後ろを歩くクリスとまゆっち(と松風)が話している。

 

「ワン子の話しぶりからして年下っぽかった。まゆっちもある程度話しやすいんじゃないかな?

 あと、九鬼のメイドに連れられてきたって話だからどっかのお嬢様の可能性もあるな」

 

「お嬢様の案内って大変そうだね。相手するのは疲れそう。

 帰ったら私が癒してあげるよ、体を使って。だから付き合って」

 

「でもそういうところから人脈って広げられるから。お友達で」

 

他愛無い会話をしながら川神院の門前に到着。

そこにはルー先生ともう一人…

 

(え、なにあの子。すげぇ美少女じゃん)

 

まさにお人形のような、というんだろうか。

ちょっと吃驚するくらい綺麗な女の子が立っていた。

 

「オー直江、待ってたヨ」

 

「こんにちわ、ルー先生。その子が…?」

 

挨拶をしながら女の子に目を向ける。

 

すっげー美少女なのに、服装はボーイッシュで庶民的だな。

お嬢様ではなさそう。

 

「うん、そうだヨ。今日はこの子の案内をしてほしいネ」

 

ルー先生の話をもう少し詳しく聞こうとしたところで、ワン子の声が聞こえてきた。

 

「お待たせ―!あ、大和!皆もきたの?」

 

「あぁ、大和が人数多いほうが良いと言うのでな」

 

クリスがワン子に対応する。

 

「そっか、そだね。この子が川神に引っ越して来た、出雲連理ちゃんデース!」

 

ワン子が女の子、連理ちゃんの後ろに回って両手を肩にかけ、紹介を始める。

 

連理ちゃんは最初は後ろのワン子を見てから、俺たちの顔を一人一人確認するように口を開いた。

 

「えっと、連理です。連理って呼んでください…」

 

突然知らない人間に、しかも複数人に紹介されたからか、少し緊張しながら名前を言う。

少し顔が赤いが、その姿も大変愛らしい。

 

「これは井上準には会わせられないね…」

 

隣の京がボソッと呟くが、全くその通りだと思う。

もしも井上と遭遇してしまった場合、『女神がいる!』とか言ってそれこそ犯罪を犯しかねない。

万が一にもあのハゲ(ロリコン)にエンカウントしないことを祈ろう。

あ、でもこの子これから川神に住むんだよな…大丈夫かな…。

 

「こんにちわ、連理ちゃん。俺は直江大和、大和って呼んでくれ」

 

とりあえず少しかがんで挨拶をする。これ以上緊張しないように、近すぎず、遠すぎずの距離で笑いかける。

 

「やまと…。うん、大和。連理って、呼んで」

 

確認のためか小さく俺の名前を言う。

 

「えっと、連理"ちゃん"じゃなくて、連理って呼べばいいのかな?」

 

「ん」

 

こくっと小さく頷く連理。呼び捨てがいいのか。珍しい反応だな。

 

俺の挨拶が終わり、次はクリスが連理の前に出る。

 

「自分はクリスティアーネ・フリードリヒ。クリスと呼んでくれ。

 自分も連理と呼んだらいいのか?」

 

同じように名前を小さく言って頷く連理。

 

「んー!連理は可愛いな!」

 

クリスは連理のことを気に入ったらしい。ワン子と並んで二人で連理の肩を持つ。

 

「初めまして、連理さんとお呼びしますね。私は黛由紀江と言います」

 

年下相手だからだろう、まゆっちが大人な対応をしている。

 

「あれ、まゆっち、緊張してないね。いつもなら顔が怖くなるパターンなのに」

 

まゆっち=初対面で緊張、という方程式があるのだろう。ワン子は違和感を感じているようだ。

 

「あはは…妹の幼い頃を思い出したからでしょうか。連理さんくらいの方相手ならあまり緊張はしませんね」

 

へぇ、まゆっち妹いたのか。一人っ子だと思ってた。

 

「ゆきえ…」

 

そして癖なのだろう、またしても名前を確認している連理。

 

『HEY!連坊!そこはフレンドリーに"まゆっち"って呼んでくれなきゃダメなんだZE!』

 

松風が突然話しかける。

 

「こら、松風。連理さんを怖がらせてはダメですよ」

 

まゆっちが松風を連理に見せるようにして嗜める。

連理は驚いたのか目を少し見開いたが、すぐに松風が喋っている(設定だという)ことに気が付いたのだろう。

楽しそうに笑う。

 

「あはっ…まゆっち?」

 

笑うと可愛らしい八重歯が見えた。

なんだこの子。何しても可愛いとか反則じゃないか?

 

「はい、どうかまゆっちと呼んでください」

 

『オイラは松風ってんだい!よろしくなー連坊!』

 

「うん。松風」

 

連理は松風を見て楽しそうに笑っている。

人形劇みたいに思ってるのかな。すげー自然に松風を受け入れてる。

 

「じゃあ、最後は私だね」

 

京が前に出る。

 

「京、相手を考えてくれよ…」

 

小声で『下ネタはやめろよ』と忠告しておく。

京は対人関係引きこもりの排他的な性格だが、『一日相手をするだけ』という今回のような限定的な付き合いなら普通に接する。

しかし、そうゆう場合は大抵誤解を招くような自己紹介をしたり、隠語を駆使して下ネタを披露したりするので油断ならない。

 

「大丈夫だよ大和。安心して」

 

そういって京は親指をグッと……指の間に挟むな!安心できねぇ!

 

「ま、待て京!さすがにそれは不味い!」

 

「ジョーダンだよ。さすがに私もこの子相手だと考えるから」

 

お前の場合冗談じゃないことが多いから焦ってるんだけどな。

 

「まぁ、普通にね…私は椎名京。大和の奥さんです。よろしく」

 

「待てコラ」

 

ガっと京の肩を掴む。

 

「どうしたの大和?下ネタはしてないよ?事実しか言ってない」

 

「どこが事実か。下ネタじゃないのは感謝するが、いたいけな子供に嘘を刷り込むのはヤメロ」

 

俺たちがボソボソと会話していると、連理が不思議そうな顔で京を見ていた。

 

「…?…みゃーこ?」

 

どうやら混乱して聞き間違えたらしい。それにしても間違え方可愛いな。

なんか、連理が何か言ったりするたびに新たな可愛さを見つけるな…。

 

……ハッ!?一瞬ハゲが俺を呼ぶ声がした気がする。危ないな。

Notロリコン、Notロリコン……

 

「みゃーこ、よろしく」

 

「……なんか、嘘ついたことに罪悪感を感じる…

 ごめんね、改めて、椎名京。よろしく」

 

連理に嘘つくのは申し訳ないって思うよな。純粋な瞳が眩しいから。

京でさえもそう思うのか。連理すごいな。

 

「みゃー子?」

 

「みやこ」

 

「……」

 

「……」

 

「よろしく、みゃー子」

 

「うん。それでいいや、よろしく」

 

……マジですごいな連理。京が押し負けたぞ。

 

「ウンウン。皆仲良くね。直江、今日はよろしく頼むヨ。

 これ、九鬼から皆のお昼代とか、少しなら遊ぶお金も入ってるから、計画的に使ってネ」

 

「有難うございます」

 

ルー先生から財布を貰って、一応中身を確認。

うん、これなら皆合流してもお昼は食べられるかな。

 

「夕方にはここへ帰ってくるようにネ

 あと、今日は川神から出ないようしてネ」

 

「わかりました」

 

時間を確認する。もう少ししたらお昼かな。

その前にガクトたちと合流できたらいいけど。

一応連絡しておくか。飯は商店街でいいか。

 

「よし、じゃあ商店街へ向かいつつブラブラしようか」

 

こうして俺たちは、連理のための川神ツアーへ出かけることとなった

 




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