記憶の片隅で   作:to110

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2000字オーバーを毎話やっていこうと思います。
客観視とは、分度器に例えると90度のところから物事を見るということです。八幡がよくやってるやつです。でも、それでは分度器の数値の書いてないところは見えない。今回はそんなお話。
長篇シリーズ第2話、では、どうぞ。


第2章 小さなずれでも未来では大きなずれとなる。

陽乃「やぁ比企谷君」

 

 

八幡「ども。ええと…その…」

 

 

陽乃「雪乃ちゃんは大丈夫なの?」

 

 

八幡「え、ええ。命に別状はないそうです」

 

 

陽乃「比企谷君」ギロッ

 

 

八幡「……………はい」

 

 

どうやって接するんだ。どうやって接すればいいんだよ。どうするんだ、話すか?一連の出来事を。いや、ダメだ。それは悪手だ。由比ヶ浜への被害がでかすぎる。そんなの雪ノ下が耐えられない。なら誤魔化すか?いやこの人相手には無理だ。くそ。どうすればいいんだよ………

 

 

陽乃「今は何があったか聞かないけど、落ち着いたら話してね」

 

 

比企谷「……………すみません」

 

 

陽乃「気にしな〜い気にしな〜い。あ、やっぱ責任とって雪乃ちゃんと結婚して」

 

 

比企谷「雪ノ下さんは相変わらずですね……………」

 

 

そんなことはない。大好きな妹が死にかけたのだ。正常な状態なわけがない。その証拠に、少し、ほんの少しだが、眼が赤い。俺のせいで……………

 

 

陽乃「お母さんたち、海外にいるんだけど、台風の影響とかでしばらく帰って来れないんだって」

 

 

八幡「そう……………ですか……………」

 

 

少しでも良く思った俺が情けない。だが、俺の今の状態で会ってもまともに話せるとは思えない。複雑だ。

 

 

陽乃「まぁでも、ほんとに責任を感じる必要はないよ。雪乃ちゃんが勝手にやったことなんでしょ?」

 

 

八幡「……………どこまで知ってるんですか?」

 

 

陽乃「どこまでだと思う?」ニコッ

 

 

八幡「さぁ……………」

 

 

なんでこの人はこんなに怖いんだよ。何を知ってて何を企んでんだ。と、普段なら思うはずだが俺も、そして雪ノ下さんも正常じゃない。そんなときの思考は無意味だろう。

 

 

陽乃「比企谷君はいつまでここにいるのかな?」

 

 

八幡「あ!すみません。今から帰ります」

 

 

やばい、本気で帰るという動作を忘れてた。

 

 

陽乃「いやいや〜、別にいつでもいいんだけどね。比企谷君も眠たいでしょ?」

 

 

八幡「いつでもいいんなら、ひとまず今日は帰りません」

 

 

陽乃「そう。雪乃ちゃんは愛されてるな〜」

 

 

八幡「そんなんじゃないですよ」

 

 

本当にそんなんじゃない。きっと罪悪感から逃げたいのだ。こうやって尽くして、許されようとしているのだ。……………はぁ、なんで頭では客観的に捉えてんだよ。

 

 

陽乃「それじゃ、私は少し外すから、襲いたいなら早く襲ってね」

 

 

八幡「仕事か何かですか?」

 

 

陽乃「ん、まぁ、そんなかんじかな。それじゃあね〜比企谷君。ちゃんと襲ってあげてね」

 

 

八幡「なんで自分の妹を危険な目に遭わせようとするんですか……………」ハァ

 

 

陽乃「まぁ、比企谷君はヘタレだからね。こんなこと言ったって襲わないよ。じゃあね〜」バイバイ

 

 

八幡「さようなら」

 

 

ガチャ

 

 

やはりあの人には勝てる気がしない。本当は俺の顔なんて見たくないのだろう。そして、雪ノ下と一緒にいたいだろう。それでも、俺にその役を渡した。……………相変わらずですね、雪ノ下さん。

 

 

「それにしても、まじまじと見たことなかったけど、本当に美少女なんだな」

 

 

えっ?だれ?

 

 

八幡「」キョロキョロ

 

 

当然周りにだれもいない。俺があんなこと言ったのか。我ながら恐ろしいな。

雪ノ下の顔にかかった髪を払う。なんとなくだ。ただ、なんとなく……………

 

 

八幡「」

 

 

そこには、おそらくは治らないであろう傷があった。顔の目立つところにあったわけではない。本当に隅、起きたら髪で見えないようなそんなところだが、今の俺にそれを受け止めるだけの精神はなかった……………

 

 

八幡「クッ」

 

 

髪は戻した。傷が隠れるように。俺も眠たくなってきた。あまりに不謹慎だ。怪我をさせて、その付き添いをして、そのまま寝る。なんて…

 

 

八幡「はっ!」

 

 

眩しい。明らかに朝だ。

 

 

八幡「寝た…のか…!

雪ノ下は!」

 

 

まだ寝てる。いい加減起きてもいいだろ。なぁ、雪ノ下。

 

 

すると、雪ノ下は身じろぐ。少なくとも、そう感じた。

 

 

雪乃「ん……ぅん………」

 

 

八幡「雪ノ下………

大丈夫か?」

 

 

だが、返事は俺の思いもつかない、そんな解答だった。

 

 

雪乃「あなたは…だれです…か…?」

 

 

八幡「……………え?」

 

 

その言葉を、俺は日本語として聞き取るのに、かなりの時間を有した。

 

 

八幡「なに…言ってんだ…」

 

 

雪乃「…あなたは…だれ…ですか…」

 

 

八幡「比企谷、比企谷八幡だろ!」

 

 

雪乃「人違い…では…ないで…しょうか…」

 

 

……………記憶に影響……………というわけか。じゃあ、こいつはどこまで記憶が残っているんだ……………

 

 

八幡「君の名前は……?」

 

 

雪乃「雪ノ下…雪乃…です…」

 

 

八幡「君の年齢は?」

 

 

雪乃「……17……です……」

 

 

つまり、俺に会うまでの約4ヶ月間のどこかまで、ということか。これからどうすればいいんだ……………

 

 

ガチャ

 

 

陽乃「比企谷君、雪乃ちゃんの様子は………!

雪乃ちゃん!大丈夫?」

 

 

雪乃「姉さん………」

 

 

陽乃「雪乃ちゃーん」ギュッ

 

 

雪乃「姉さん離れて。まず状況を教えて。なぜ私は病院にいるの?それから、そこの彼は姉さんの知り合い?」

 

 

陽乃「雪乃………ちゃん………?」ビクッ

 

 

八幡「雪ノ下さん……………ちょっといいですか?」

 

 

陽乃「……………わかったわ。

雪乃ちゃん、ちょっと外すね……………」プルプル

 

 

ガチャ

 

 

陽乃「それで比企谷君。雪乃はどうしたの?」

 

 

声が落ち着いている、落ち着き過ぎている。つまりは動揺しているというところだろう。

 

 

八幡「一部の記憶喪失です。1月から4月のどこかからか記憶がないようです。さっき雪ノ下に歳を聞いたら17って言ってましたし、俺の記憶がないようなので」

 

 

陽乃「ちょっと待って」

 

 

八幡「なんですか?」

 

 

陽乃「じゃあ、比企谷君は……………」

 

 

ためが長いだろ。何かおかしなことでもしでかしたか。まったく思い当たらない。

 

 

陽乃「……………………女性である雪乃ちゃんの年齢を聞いたの?」

 

 

八幡「……………どうでもいいでしょ?」

 

 

陽乃「わかってないな〜。女性に年齢を訪ねたらいけないんだよ」

 

 

八幡「……………んで、もうそろそろ由比ヶ浜も来る時間ですし、それでわかるでしょう」

 

 

陽乃「ま、そうだね。私は戻るけど比企谷君はどうする?」

 

 

八幡「俺は……………いいえ。戻りませんよ。あいつにとって俺は他人なわけですし。由比ヶ浜が来たら一緒に顔出すくらいにします」

 

 

陽乃「わかったよ」ポンッ

 

 

そう言って肩を少し叩いた。

 

 

陽乃「あまり気を張らない方がいいよ」

 

 

去り際に雪ノ下陽乃はそう言った。

 

 

それからしばらく経った後、由比ヶ浜は来た。

 

 

八幡「よう由比ヶ浜。お前はもう大丈夫か?」

 

 

結衣「大丈夫、って言ったら嘘だと思う。でも、ちゃんと会えるよ」ニコッ

 

 

八幡「そうか…」

 

 

結衣「お前は、って言ったけと、は、っていうことはゆきのんに何かあったの?」

 

 

八幡「ああ、ちょっとな。口で説明してもお前が理解できるとは思えんから実際に会ってみろ」

 

 

結衣「なんかバカにされた気がする……………」ムスッ

 

 

八幡「とりあえず会ってみろ」

 

 

結衣「わかったよ」

 

 

ガチャ

 

 

陽乃「やぁ、由比ヶ浜ちゃん」

 

 

結衣「陽乃さんおはようです。ゆきのん大丈夫?」

 

 

彼女には少し辛い思いをさせることになる。が、これが一番なのだ。……………すまん

 

 

雪乃「おはよう、由比ヶ浜さん。心配してくれてありがとう」ニコッ

 

 

八幡「えっ⁉︎」

陽乃「えっ⁉︎」

 

 

俺のことを覚えていない。それはつまり由比ヶ浜とも会う前だ。なぜ、由比ヶ浜のことは覚えているんだ……………




あと少しで3000字だったんですね。てか、結構疲れる。まぁ、テスト終わって時間空いてるわけだからいいし、そもそも好きで書いてるだけですしね。
今回のお話いかがだったでしょうか?興奮してくれてもいいんですよ?
次回もお楽しみに〜では〜

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