よくある転生の話~携帯獣の話~   作:イザナギ

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一話  ミシロにやってきた男の子

 

 

 ある晴れた昼下がり。

 気持ちの良い青空は、洗濯物や布団を干したり散歩したり、はたまた草原に寝転がって見上げるのに絶好の天気。

 元気に外を走り回る子供たちの姿は、眩しいくらいに輝いている。

 

 ――かくいう俺も、肉体労働で眩しく汗をかいてます。

 

 はじめまして。俺の名前は『オダマキ・カナタ』。

 なーんとなんと、『ポケモンの世界に転生させてくれ』と頼んだら、ホウエン地方でポケモンをくれるあのオダマキ博士の息子として、この世界に生を受けてしまいました。

 つまり、オダマキ博士には三人の子供がいることになるけど、俺はその中の一番上。十二歳になるお転婆(てんば)妹と九歳のやんちゃな弟の面倒を見てる。これでも前世は、一人だけど弟がいたから、兄妹というものの扱い方は慣れてるけど。

 

 そんな俺も今年で十四歳となって、今ではフィールドワークを主として活動しているオダマキ博士……いや、親父の手伝いとして、このホウエン地方を駆け巡ってる。一応バイト扱いだから給料出るし、結構いい額なんだなぁ、これが。

 

 さて、普段はフィールドワークで忙しい俺が、なぜミシロにいるのか、というと

 

「ごめんなさいねぇ、手伝ってもらっちゃって」

「いえいえ、今日からご近所さんですもの。助け合いは当然ですわ」

 

 お隣に引っ越してきた隣人の手伝いのためだ。

 しかも母さんと同年代くらいの美人さん。この地方独特のイントネーションがないことと、言葉に特有の癖がないことなどから、カントーかジョウトの人なんだろう。

 いわゆる『本州(ほんしゅう)』と呼ばれるカントーとジョウトの二地方は言わば『都会』で、それに比べればホウエンも開発が進んできたとはいえ、まだまだ『田舎』だ。

 交通や生活面での利便性を考えれば、本州の都会の方が色々いいはず。なのにわざわざホウエンに来た理由は

 

「夫がジムの準備もしないと、って行っちゃったんですもの。たまたまカナタ君が帰って来てて良かったわ」

「センリさん、よほどジムリーダーになれるのが嬉しかったんでしょうね」

「でも、一人じゃ放っておけないから、私たちがジョウトからついてきたのよ」

 

 そう、この人の旦那さんが、ジムリーダーとしてこのホウエンに赴任したから。ちなみにジョウト地方の人のようだ。

 といっても、このミシロタウンにはジムなんて大層な物はない。じゃあどこかというと

 

「でも、トウカシティって結構遠いでしょう?」

「歩いて一時間くらいらしいけれど……道中には野生ポケモンもいるし、鍛練にもなるからって」

 

 かなりストイックな旦那様のようで、家族をおいて二日ほど早く来たんだとか。いやそれなら単身赴任でもいいじゃんとか、なんでトウカに住まないんだとか心の中でツッコミをいれつつ、作業に戻る。

 話では荷物はトラック二台分だと聞いて楽な仕事だと思ったのに、そのうちの一台が大型トラックとか、ちょっとシャレにならんぜ。そんなに大きな家には見えないんだけどなぁ……まぁ、運送業者さんやその手持ちのヤルキモノやゴーリキー達が手伝ってくれるおかげで、何とか捌けてるんだけど。

 ……周りを見れば、ヤルキモノやゴーリキー達は疲れ果ててへたり込んでいる。それはそうだろう。なんたって、大型トラックに満載されてたからな。ほんとに、この家のどこに入っているんだろうか?

 次もそれくらいの量だったら勘弁してほしい、と思いながら、奥さんに尋ねる。

 

「次のトラックも、ですか?」

 

 半ば懇願するような目で見ると

 

「ふふ、あとは大型じゃなくて中型程度よ。それに、中身はあんまり入ってないから」

 

 手伝いに来たとき、『あまり量は無いから』と言っていた時と同じ綺麗な笑顔を浮かべる奥さん。どうも嫌な予感がしながらも、ため息をついて最後のトラックを待つ事にした。

 

 数十分後、最後のトラックがやってくる。

 どうやら渋滞につかまったらしい。運転手が必死になって謝っていたが、奥さんは特に気にしていないようだ。

 さすがジムリーダーの妻。この程度の肝っ玉がなくてはやっていけないのだろう、と妙な関心をした。

 と、ここで母さんが帰るとのこと。

 俺はせっかく受けた仕事だし、この後も手伝って、キリの良いところで切り上げる、と言って母さんを見送った。

 

「あら、帰ってもいいのよ? バイト代はちゃんと払うし」

「まぁ請け負った仕事ですし、せっかくですから最後までやろうかな、と」

 

 苦笑いを奥さんに返して、トラックの後ろのドアを開け放つ。

 

 と、そこに若白髪君がいた。

 

「これは白髪じゃない、銀髪ですっ!!」

 

 ツッコミご苦労。これで俺がボケに回れる。

 

「勝手に人のポジション決めないでください!!?」

 

 うるさいなぁ。そんなんじゃホントに若白髪ができちゃうよ? クールに行こうぜ、クールに。

 おそらく、話にあった息子さんだ。

 てかこれ地毛? 原作のセンリさんは黒髪だった記憶あるし、ママさんだって栗色系の髪色だ。

 腑に落ちないので、訪ねてみることにした。

 

「どうしたのさ、これ」

「……先祖がえりだそうです。数世代前に銀色の髪を持った外人さんが、一族の家系の中にいたらしいので」

 

 家系図あるんだ。思ったよりも良いとこの子なのかな? とは思ったが口には出さない。

 良いとこの子なら、わざわざこんなとこには来ないだろうしなー。

 あ、そだ。

 思い出して、右手を差し出す。

 いきなりのことに銀髪の少年は少々戸惑ったようだが、俺は気にせず言葉を続けた。

 

「えっ?」

「俺の名前はカナタだ。君は?」

「あ……え、えと、ユウキ、です」

 

 おずおず、といった感じで、自己紹介とともに俺の手を握り返すユウキ君。

 俺はその手をしっかり握り返して、力強くユウキ君に向けて言う。

 

「ミシロタウン、そしてホウエン地方へようこそ、ユウキ君」

 

 不安でもあったんだろうか、強張っていたユウキ君の顔が段々とほぐれ、ユウキ君は満面の笑みで答えてくれた。

 

「はい!ありがとうございます!!」

 

 

 

 

 




序章より短い本文です、本当にありがとうございました。

ユウキ君、初登場。ホントは帽子なのですが、脱いだら特徴が無くなりそうなので『銀髪』と言うことにしました。白髪って言わないであげてね?

それにしても、引っ越し用のトラックに息子詰め込んでるって、息子は荷物扱いかよ。いやまぁどこぞのデカい口のお化けがコマに乗って空飛ぶアニメでも、そんな事やってたけど。

次は……来週あたり?(遅
月末から来月初めは忙しいので二次にまで手を伸ばせませんすみません。

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