よくある転生の話~携帯獣の話~   作:イザナギ

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零話  ここ、どこ?

 ――なんだ、ここ……真っ白だ。

 ……何にも見えねーし。そういえば、体の感覚がない。

 周りを見回して目を凝らしても、白、白、白。なんか別の色が見たくなってきたなぁ……。

 

『―――――……が……たか……―――――――』

 

 ……誰だ? 真っ白だから何にも見えないけど。

 ――あれ、俺、声が……それに、相手の声も、よく聞こえない……。

 

『―――わ……こえ……こえるか?―――――……いしきは……よう…な』

 

 ……あぁ、はっきり聞こえてきた。白一面の景色だった目の前が、やっと色づき始める。

 ――にしても、誰だ、俺の目の前にいる(じぃ)ちゃんは。全身真っ白で、真っ白の長髪とこれまた真っ白い腰よりもある長~いひげを蓄えている。

 ……ひげが長すぎるせいか、体に(まと)ってる布をおさえるためのベルトに挟んでた。どこぞの魔法学校の校長かい。

 そのじいちゃんは今、険しい顔して(うな)っていた。

 

『――それにしても手違いとは……なんということだ……この者はまだ己の命を全うしとらんではないか』

 

 ――それにしてもでけぇな、じいさん。2メートルくらいあんじゃねーの? しかもありがたそうな後光まで背負ってるし。

 ……にしても、どっかで見たことあるような格好だな。

 

『――……ん? おお、ようやっと気づいたか』

 

 ……あぁ、思い出した。

 

「――神様だ」

『……なに?』

 

 ほんの1年もないくらい前に読んだ漫画に描かれてた、ギリシャ神話に出てくる最高神『ゼウス』。その姿にそっくりだった。

 そのことを目の前の、神様らしきじいさんに伝えると

 

『なんとっ……! あのようなスケベ野郎ではないわ、たわけっ!!!』

 

 なぜか俺が怒られた。

 いや、俺のイメージだし、どっちかと言えば、そんな姿をしているじいさんに原因があると思うんだが。

 そう返した。

 

『ぬぐぐぐぅっ!! ……あのド阿呆(あほう)、次に顔を合わせた時が、アヤツの最期じゃ……!!!』

 

 おおぅ。

 ――ゼウス様。俺、あなたの色気に従順なところが好きでしたよ。

 まぁ――仮に神様だとしても、ヘラっていう美人の、言葉通り女神様な奥様がいたってのに、ほかの女神様に手を出す、美人がいればまず襲う、男の娘もオッケー、だがガチ○モ、てめーはダメだ――という、ある意味色ボケした奴とそっくりなんて言われれば、誰だろうと良い気持ちはしないだろうな。

 

「で、さ」

『ぐぬぬぬぬ……ん、なんじゃ?』

「俺、なんでこんなとこにいんの?」

 

 なんかドタバタして流れかけてたし、グダグダしてきたし。

 ここらで戻した方がいいよなぁ、と、歯軋り(はぎしり)までしてるじいさんに、今まで感じてた疑問をぶつけてみる。

 

 と、いうことで

 

「ここドコ? 天国?」

『――う、うぅむ……多少、違うぞ』

 

 率直に聞いてみたら、歯切れの悪い言葉が返ってきたな。

 真っ白な空間だし、神様らしき人までいるし、これで天使でもいれば、俺の中での天国(欧米ver)のイメージにぴったしなんだけどなぁ。

 いや、そうしたら俺、死んじまってんじゃん。やだな~、まだ見終ってないアニメとかあんのに。

 

『お、落ちつけ、少年よ!』

 

 え~、でもさ、いきなり死んでるなんて言われたらさ、誰だってパニックになるでしょ。

 むしろ俺はまだ落ち着いてますよね?

 ……てか、俺もう『少年』なんて歳じゃなかったし。どっちかって言ったら青年だし。十九だぜ?

 

『……落ち着いているように見えて、混乱しておるな。無駄なことばかり気にかけ、自分の状態を直視しようとせん』

 

 ……む、なんかちょっと(しゃく)に触るな。

 

「じゃあ、俺はいったいどうなってんだ?」

『さっき、お主が自分で言っておったじゃろう。死んだのじゃ』

 

 なんだよ、やっぱ死んでんのか。

 やだな~、読んでないマンガとか小説とかあったのn『人の話は最後まで聞くのじゃ』

 話の骨を折るなよ……てか、あんた人間じゃねぇだろ、ってツッコんでいい?

 

『人の形はしておるわ。それよりも、今のお主の状況じゃ』

 

 ……うまく返されたようで。

 しかし、今の自分がどうなっているのか、気になりもする。

 ここは大人しく聞いておくか。

 

『まずここは、天国ではない。もちろん、地獄でもない』

「ここが地獄なら生まれ変わったら白が怖くなる」

『話の腰を折るな。

 ――どこか、というと、お主らの言うところの天国と地獄の間じゃ。死んだ人間はここで自らの犯した罪や、為(な)した善行などを総評され、天国へ行くか、地獄へ落ちるかを決められる。わしはその最終決定者で、この空間の最高責任者じゃ』

 

 まとめると、このじいさんは、日本でいえば閻魔(えんま)様みたいなものらしい。

 で、俺はそんなとこで何してんのさ。

 

『実は……話せば長くなるので割愛しよう。

 お主はあることがあって、死にかける重傷を負ったんじゃが、その傷自体は時間をおけば必ず回復するはずじゃった。

 しかしの、わしの配下に魂を回収する、お主たちの言うところの『天使』に新しく新人が入ったんじゃがの』

 

 天使って新入りとか人員の入れ替えとかあるんだ。

 そう言ってみると、

 

『わしら、お主たちの言うところの『神』に寿命はないが、お主らで言うところの『天使』には、お主らの何十倍とはいえ、寿命はあるのじゃ。ゆえに、まぁ非常に(まれ)ではあるが、高齢になり任務遂行が厳しくなった者と、まだ若い者とが交代することがある。

 お主の魂を持って帰ってきた『天使』は、お主らの時間に換算して、お主が死んだ日の前日に入ったばかりなのじゃ。

 じゃから別の人間の魂を回収しに行ったところ、間違えてお主の魂を回収してしまったのじゃ』

 

 わぉ、なんてこった。この人たちの感覚からすれば1時間も無いほど前のことだったりするのだろうか。

 

『まぁ、そのくらいかの。ちなみにその『天使』は、今、上司にお灸をすえられているぞ』

 

 ……思っていたより組織的だなぁ。

 で、現在の自分の体は、というと

 

『お主が死んだと確認されて何か月も経っておる。すでに火葬されてしまった』

 

 あらま、もう元には戻れねぇのな。あ~あ、まだみt『もう聞き飽きたぞ』

 遮るこたぁねーだろ……。

 

『お主は、実際は死ぬ予定ではなかった。しかし、もう元には戻せぬ。

 時間を巻き戻し、世界を――――たった一人の人間を元に戻すことさえかなわぬ。

 そこまでの権限は、お主らの言うところのわしら『神々』にもない』

 

 じゃあ、俺はどーなんのさ?

 

『天国や地獄で過ごしたことのない魂は元の世界へ帰すことはできぬ。

 今のままでは『そのままの姿で生き返る』ことは叶わぬのだ』

 

 で? 何か方法が?

 

『――うむ、『元の世界で今のままの姿で生き返る』ことはできぬが、『別の世界で生まれ変わる』ことはできる。

 つまり、お主が生きていた世界ではない別の世界で、赤ん坊の頃から始めることができるのじゃ』

 

 つまり?

 

『いわゆる『転生』、というやつじゃ』

 

 わ~ぉ……小説やらでよく目にしてきたけど、体験するとは思わなかったぜ。

 にしても、やけに丁寧に説明してくれるな。

 もしかして……?

 

『……入れ替えの時期になると多発するからの。数自体は多くないが、必ず起こるのが悩みの種じゃ』

 

 ……ご苦労様です。

 

『もっとも、お主のように比較的冷静にいられる者は少ないからの、お主のような人間は楽じゃ』

 

 お褒めいただき、ありがとう。しかし、俺はこれからどうなるの?

 

『行きたい世界に転生させてやろうかの。それがわしらの、今だ生きるべきであった命に対する唯一の贖罪じゃ』

 

 そっか~。どこ行こうかな。

 ちなみに、アニメとかゲームとかの世界って……

 

『お主らが作り出した『世界観』は、『その世界が存在する』からこそ存在できるのじゃ』

 

 ……???? すんません、哲学は頭が痛くなります。

 

『元ネタがあれば行ける』

 

 ありがたきお言葉、ありがとうございます。

 でも、ホントにどうしようかな。候補としてはいくつかあるけどなぁ……。

 

『ちなみに生まれたてでも昔の世界の記憶は残る。

 主人公のような存在にはなれんぞ。なんせ、その世界にはすでに『主人公』がおるのじゃから』

 

 じゃあ脇役とか、スーパーサブは?

 

『なれるぞ。お主にそれだけの力があるならば』

 

 脇役でも活躍できそうなもの、か。

 なら、これがいいのかな。

 

『決まったか?』

 

 ――――――おし、決めた。俺は、あの世界へ行く。

 

 

 

 

 




はい、第(ぜろ)話でした。
次は主人公の軽い自己紹介、かな?

皆様、これから、何卒(なにとぞ)よろしくお願いします。

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