「と、とりあえず! 飲みましょう! ねっ! 嫌なこと忘れましょう!!」
「うん、そうだね。 お酒は心の友だもんね……。 ううう」
とりあえずこの地雷に関しては先送りにしておいた。 ……面倒だし
なんか話題変えないと……えーと……
「篠ノ之博士は」
「束ちゃん」
「はあ?」
「束ちゃんでいいです。 というかそれ以外は受け付けません!! いい?」
「あ、はい……」
なんか面倒臭いなこの人……
「束ちゃんさんって居酒屋とか来るんですね。 なんというか意外でした」
「あ~、……やっぱりそういうイメージある?」
「はい。 なんか自分の興味のないこととかはまるで無視というか眼中にないというか」
そう、亡国機業の情報では篠ノ之束は身内以外の者や興味のないことには関心がないというか冷たい態度を取るということになっている
「ああ、それなんだけどね……」
あ、あれ!? またなんか遠い目しちゃったぞ!?
「事前に情報のない初対面の相手に何話していいか判らなくてパニくちゃって気が付いたらあんなことしちゃってるんだよね……。 そのことでどれだけちーちゃんに怒られたか。 ……今もたまに怒られてるけど」
うん、また地雷踏んだな私
人を見た目や周りの情報だけで判断しちゃだめなんだな
なんかまた変な空気になりつつあるとこに助け舟がやってきた
「あー、そういえば束ちゃんはどうして居酒屋に興味持ったの?」
スコール、ナイス!! (泣
「最初はそんなに興味なかったんだけどねくーちゃん、あ、くーちゃんってのは同居人の子なんだけどね。 その子がこれいいですよってこういうの持ってきてね」
そういうと持ってきていたうさぎの形をしているバッグからなにやらディスクのようなものを取り出し見せた。 そこの書かれていたのは
居酒屋旅気分
居酒屋旅気分とはメガネをかけたとあるイラストレーターが全国各地にある隠れ家的な居酒屋を紹介していく番組である
「これをみて居酒屋の美味しいお酒やメニュー興味持っちゃって。 今じゃすっかりハマッちゃって♪」
なるほど。同居人の影響か
しかしずいぶんおっさん臭い同居人だな
そんなことを思っている内に二人のジョッキはいつの間にか空になっていた
「店員さ~ん、生二つおかわり♪ あとメンチカツ一つお願いします」
「あ、私じゃこ天お願いしま~す♪」
「二人とも飲むの早いね」
「そんなことないわよ? ねえ?」
「そうだよ、こんなの普通普通」
ねえ~♪と盛り上がっていく二人。 類は友を呼ぶってやつなのかなとのんきにそんなことを考えていると
「束ちゃんと飲んでばっかりでここ最近聞いてなかったんだけどさ~」
「ん? 何?」
「旦那とはこのところどうなの? よろしくやってる~?」
別のほうから地雷来た!? というか投げ込まれた!?
「ほほう? 私、気になります!!」
しかもウサ耳の人まで興味持ってきたし! どこぞの女子高生のマネせんでも宜しい!!
その後、長い時間大変答え難い質問のオンパレードだった
…………
………………
「あ、そろそろいい時間ね」
スコールが店に置いてある時計を見てそう言った
や、やった……、ようやくこの地獄のような拷問から抜けられる
そう思いテーブルの上を見るとたくさんの空のジョッキ
これらほとんどがこの二人のものである
「そうだね。それじゃそろそろ……」
「そうですね。 お開きですよね」
ああ、はやく帰りたい……
これで帰れると思っていると
「何言ってるの? 次のお店に移動するに決まってるじゃない?」
「そうだよ。 私達まだ飲み足らないし」
あんだけ飲んだのにまだ飲むのかあんた等!?
「い、いや、明日仕事だし。 今日はこの辺で」
「何言ってるの、まだまだこれからじゃない! 行くわよ!」
「おー!!」
「いやぁぁぁぁぁぁ!!!!」
まるで売られていく子羊のように連れて行かれるオータムさんであった
次の日、オータムさんは仕事を休んだ。 ちなみにスコールさんは何食わぬ顔で普通に出てきたらしい