「あ、これお通しです」
そう言われて出されたのは大根の漬物と、筍の煮物が私の前にやってきた
「それじゃあ……、頂きます」
まずは大根の漬物を一口。 うん、美味しい。大根がしっかり発酵して味に深みが出ている。 筍の煮物のほうもこれまた美味しい!煮汁が仕込んで柔らか~♪ こんな美味しい二品をお通しで頂けるなんてこのお店アタリかも
これはますますアジフライ定食に期待が増すというもの。わくわくしながら待っていると
「あの~、お客さん。本当にうちで良かったんですか?」
お店の女の子が申し訳なさそうに声を掛けてきた
「ん? どうしてそう思うんです?」
「いや、その、うちみたいな店にお客さんみたいな、あ! いや!! 悪い意味で言ってるんじゃなくて!! …お客さんみたいな綺麗な人はその、もっと雰囲気のいいレストランとかのほうがよかったんじゃないかなっと思って」
「私は決めてませんよ?」
「えっ?」
「私の胃袋がここがいいって決めたんですよ」
「い、胃袋?」
「ハハハ!! 店の外見とかじゃなくてあくまで自分の腹の虫に従って決めたって訳かい。そいつは嬉しいね、待ってな。色々サービスしとくぞお客さん」
会話を聞いていたのか、奥から嬉しそうにさきほどのご老人(?)、もとい店長の声が聞こえてきたと同時にアジフライが揚がる音が聞こえてきた
ああ~、この音。空腹の胃袋にこの音は殺人的にまずい。 胃袋のエンジンに本格的に火が着いた
暴れ狂う胃袋を押さえながら暫く待っているとそれはついにやってきた
「はい、おまちどう。 アジフライ定食です」
デッカ!? やってきたのは今まで見たことない大きさのアジフライだった。しかも二枚も!!。驚きながらご老人のほうに視線を向くとニコッとグッジョブ、……サービスしすぎなのでは? でもありがとうございます。
さっそく定食についてあるキャベツの千切りに近くに置いてあったタルタルソースを付け、準備万端だ
「それでは。……いただきます」
一口、アジフライを頬張る。 え!? 何これ!? ふわふわで肉厚!! びっくりした、美味しいびっくり久しぶり。しかも後味軽い、食べやすい
揚げたてのアジフライで炊き立てのご飯を食べる、これに勝る幸せは今現在あるだろうか……
美味しいアジフライにご飯が進む。 静かな食堂で一人、アジフライを楽しむ……。いい時間だ……
一匹目を食べ終わり、二匹目に取り掛かろうとした時だった
「どうだい? うちのアジフライ定食は?」
奥からさきほどの店長がやってきた
「はい、とっても美味しいです。 いつも食べてるやつより大きくてびっくりしました」
「ははは、それはよかった。今朝、市場から仕入れたやつだったんだが食い応えがあるだろ?」
タバコを取り出し、一服するため隅にあったイスに店長さんが座ったときだった。 バキッと大きな音を立て、ドスンと店長が尻餅をついていた。よく見るとイスを支えていた脚部の一本が折れてしまっていた
「ちょッ!? だ、大丈夫!? おじいちゃん!?」
「あ、イタタ……。あ、ああ、なんとか大丈夫だ。しかしこりゃもうだめだな、新しいの買わないとな」
「あの~、もしよかったらなんですけど」
「ん? どうかしたかい? お客さん」
「これ使ってください」
そう言うと私は量子格納から日本風のイスを一つ取り出した
「!? あ、あんた、何も無いところから一体どうやって……」
「おじいちゃん!! これ量子格納だよ!! ISの技術だよ!!」
「ようわからんがすごいのか?」
「すごいってもんじゃないよ!! お客さん、何者なんですか?」
「ああ、申し遅れました。 私こういう者です」
そうして出された名刺にはこう書かれていた
亡国機業 COO (※日本語では最高執行責任者)スコール と書かれてあった
「COO!? めちゃくちゃ偉い人じゃないですか!?」
「まあタイトルみたいなものですから気にしないで下さい」
「い、いや~、そんなゲームの称号みたいに言われても……」
「しかし、いいのかい? こんな立派なモノ貰っちゃって……」
「じつはそれ、サンプルで取っておいたモノなんですがもう随分使うことも無くて。このままにしておくよりもここで使ってもらったほうがこのイスも喜ぶと思いまして」
この頃、亡国機業は店の内装、インテリア、小物業界にも進出していた
「おいしいアジフライに出会わせてくれたお礼と思って受け取って下さいな」
「…・・・わかった。そう言うことなら有り難く貰っておこう。 そのかわりまた食いに来てくれたらお客さんには毎回特別サービスさせてもらうよ」
「あはは♪ 楽しみにしてます。 ところでこちらのお孫さんなんですけどお名前は?」
「え? 私ですか? あ、まだ自己紹介してなかったですね。 私、五反田 蘭って言います」
「えーと、蘭さんはISの事詳しいの?さっき量子格納について知ってたみたいだったし」
「は、はい。どうしても、その、IS学園に入学したくて勉強してまして。 じつはISの簡易適正試験でA出てるんです、あはは……」
もじもじしながら恥ずかしそうするこの反応。 あ! はいはい~、そういうことね~
「な、なんですか? そんなにニヤニヤして……」
「蘭さん、……ずばり男でしょ!?」ぼそぼそ
「ええっ!? ……やっぱりわかっちゃうものなんですか?」ぼそぼそ
「ええ、そりゃもう♪ 頑張ってね♪」
「あ、あはは……、え、えーと、ごゆっくり~」
ちょっとからかい過ぎたのか、頬を赤く染めて蘭さんは店の奥にいってしまった。しかし可愛かったな~、わたしにもあんな頃があったのかな?と思いながら再び箸を握る
二匹目に取り掛かった。一口目は醤油で、二口目はタルタルソース、三口目はマヨネーズ、途中でキャベツといった感じで食べていった。一口一口が美味しく、全く飽きがこない。幸せの循環だった
しかし、その幸せの循環も終わりを迎える。最後の一口はなにも付けずに頂くことにした。こんな美味しいアジフライに出会わせてくれて、五反田食堂の店長さんありがとうございました
心の中でそう店長に感謝を言い、コップに注がれていた水を一気に飲み干すと手を合わせてこう言った
「ご馳走様でした」
・・・・・・・・・・・・
「「ありがとうございました~」」
勘定を済ませ、店の2人に見送られて外にでて改めて店を見渡した。本当にいいお店だった、私のお気に入りがまたひとつ増えたな。今度は家族で一緒にきてまたあのアジフライを食べに来よう
「さて、お腹いっぱいになったし。もう一仕事頑張りますか!!」
そう気合をいれるとスコールさんは街の中に消えていくのであった
おまけ
仕事の締め切りが迫り、疲れが溜まってきたときに乗り切る方法 オータムさん編
「……ふう」
「だ、大丈夫?」
「うん、大丈夫。ちょっと仕事忙しいだけだから」
せっかくの朝食なのに食欲が出ない。やっぱり疲れが溜まってきたのかな? 締め切りせまってるもんな……
「ご馳走様……」
そう言って仕事に向かおうとした時
「オータム、ちょっと」
「うん? どうかし・・・」
旦那に呼ばれて振り返った瞬間、手を握られたと思ったら気づいた時には旦那に抱きしめられていた。 や、やばい。いきなりの事だから凄くどきどきしちゃってる……
「え、えーと? ど、どうしたの?」
「テレビで見たんだけど、人ってハグを30秒しただけでも元気出るっていうんだけど。どう? 元気でた?」
そう聞かれてオータムさんはぷるぷると顔を真っ赤にさせて、こう言った
「わ、わんもあ……」
ぎゅっと抱きしめ返す……。こうやってピンチを乗り切ったオータムさんでした
最近オータムさん夫婦出してなかったので、出してみたんですがどうだったでしょうか? 次回は禁断のネタに取り掛かります。ヒントは女性に聞いてはならないこと。
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