朝焼けが、にじむように東の空にひろがりはじめるそんなさわやかな朝
そんな朝に川崎市民なら朝一度は聞いたことがあるだろう。そう、あの曲が流れ出す……
「好きです 川崎 愛の町」 朝のゴミ収集車が軽やかにBGMに乗って移動しているのを後ろから
「ま、待って~!! 待って下さ~い!!(汗」
必死に呼び止める怪しげな男が一人……。 彼の名はヴァンプ、アジト(借家築23年の木造)の主であり、世界征服を企む悪の組織フロシャイムの将軍である
「うん? あれ? ヴァンプさんじゃない。 珍しいね、今日はどうしたの?」
「す、すみません。 ぜはぁ~ぜはぁ~、 あ、朝セットしてた目覚まし時計が、ぜはぁ~ぜはぁ~、で、電池切れてたみたいで。そ、それで、い、はぁはぁ、急いで来たんですけどまだ大丈夫ですか?」
「ああ~、大丈夫だよ。 ほら、入れて入れて」
「あ、ありがとうございます~」
こうしてなんとか事なきを得たヴァンプ将軍
「そういえばアジトにもう電池の買い置きもう無かったよね。 近くにコンビニあるけどコンビニの乾電池って意外とするんだよね。 う~ん」
その時、ヴァンプ将軍の脳内の主夫のスーパーコンピューターが瞬時に動き出す!!
「よし♪ 早いけどマルSの月初めの安売りしてるし電池買うついでに買い物に行こう、うん」
この間決断するまで僅か一秒。悪の組織の将軍たるもの速い決断力が必要なのである
「葱が中国産だけど88円だったし鶏もも肉100g88円で今日来てよかった~♪ 他にもいろいろ買いすぎたかな~? 怖いね~タイムセール」
両手に買い物袋をもってホクホク顔で帰る悪の将軍
帰る途中にある通い慣れた公園の前を通り過ぎようといたときベンチに横たわる女性を見つけた
「あ、あの~、大丈夫ですか?ッ!? お、お酒臭!?」
心配して近づいた途端物凄くお酒の匂いが漂ってきた
「だれがウサ耳か~。 わたしはウサ耳なんか……じゃない……ないんだぞ……むにゃむにゃ」
相当酔っているのか寝言を言って暫く起きそうにもなかった
「ど、どうしようこの人。 ほっといて帰るのもなんだか気が引けるし……。連れて帰るにしても両手荷物でいっぱいだし」
どうすればいいか悩んでいると公園の前で見慣れた中古自動車が……
「いや~ありがとうカーメンマン君。 手荷物一杯でどうしようかと困ってた所に来てくれて助かったよ~」
彼の名はカーメンマン。 ミイラ型怪人で今回運悪く公園前を通り掛かりヴァンプ将軍に見つかった今回の事件の被害者(?)である
「い、いえ。 あ、あのヴァンプ様? そこで寝てる酒臭い女の人ヴァンプ様の知り合いなんですか?」
「ううん。 さっき公園のベンチで横になってたの。ほら女性一人でほっとく訳にもいかないでしょ? 幸いアジトから近かったしうちで保護したほうがいいと思ってね」
「そ、そうだったんですか。 (うわ~酒臭さと葱の匂いが車内に充満してるし……。匂い車に付きそう……)」
そう思い窓を開けようとしたのだが
「あ、寒いから窓閉めてくれる?」
「は、はい!?」
上司の命令は絶対。 社会の厳しい掟は悪の組織とて例外ではない
カーメンマンが運転する中古車(ヴィッツ)でアジトまで移動し中に運ぶことにした
「一号く~ん、二号く~ん、悪いけどちょっと手貸してくれる?」
「ドウカシマシタカ? ヴァンプ様?」
「は~い、ヴァンプ様どうしたんですか? あれ? その女の人どうした、ッ酒臭!?」
「二人とも悪いんだけどこの人家に入れるの手伝ってくれる? その間私お布団敷いてくるから」
こうしてなんとか女性を布団に寝かしつけるとヴァンプ将軍はこれまでの事の経緯を二人に話した
「へ~ソンナコトガアッタンデスカ。 大変デシタネヴァンプ様」
「しかしなんでこの人あんな服きてたんですかね? コスプレなのかな?」
一号の言うことにヴァンプ将軍も同感だった。 この女性が着ている服は外出用の服とは思えないのだ。 その服はなんというか童話の不思議の国のアリスの主人公アリスが着ていそうな、一般人からみたらコスプレイヤーに見られてもおかしくない格好だった
「どうなんだろうね? う~ん、でもこの人どこかで見たことあるんだよね私」
そう言ってテレビをつけるとたまたまニュース番組がやっておりとある特集がやっていた。 その特集の名は「今、世界を動かすIS。その生みの親」というものだった
ヴァンプの所で寝ている女性。 彼女は一体何者なのだろうか……(棒