オータムさん。   作:秀吉組

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とある悪の組織の支部がある町にやってきました その2

「あ~、はいはい。 あ♪ いらっしゃ~い」

 

 

引き戸の玄関から迎え入れてくれたのは兜を被った紫の布服を着た人物だった

 

 

「あ♪ ヴァンプさん! 今回も宜しくお願いします。 これ良かったら支部の皆さんで食べてください」

 

 

「スコールさん、 別に気を使わなくても良かったのに。 ホント毎回すいません」

 

 

「いいんですよ♪ こっちだってそちらから美味しい梨頂いてますから」

 

 

「梨はウチの支部の特産品だから。 喜んで貰えて良かった♪」

 

 

引き戸の玄関から出てきた兜被った人がスコールさんと楽しげに会話をしていた

 

 

「……オータム先輩。 あの人は一体誰なんですか?」 ぼそぼそ

 

 

「ああ、 あの人は悪の組織、フロシャイム川崎支部のヴァンプ将軍だよ」

 

 

ヴァンプ……将軍……。 将軍!?!? いやいや!?!? どうみても将軍というより家の近所にいるおばちゃんみたいに感じるんだけどな

 

 

「あ、そうだった! ヴァンプさん、ヴァンプさん」

 

 

何か思い出したのか私のほうに目を向けるとこちらに駆け寄り

 

 

「この子がこの前言ってた新人のマドカちゃん。 どうです? 可愛いでしょ!」

 

 

「へっ!? え? えええ?? あ、あの、 お、織斑、マドカです。 よろしくお願いします」

 

 

「ああ、この子がマドカちゃんか。 うん、スコールさんの言ってた通りの子だね。 初めまして、私、フロシャイム川崎支部のヴァンプです。 よろしくお願いしますね」 ペコリ

 

 

将軍って呼ばれているのにこの腰の低さ。 やはり親しみやすい近所のおばちゃん感が拭えないのは何故だろう……

 

 

「立ち話もなんですから上がって上がって。 一号く~ん、亡国機業の皆さん来られたからお茶用意してくれる?」

 

 

「は~い」

 

 

そう言われて上がって居間に行ってみるとそこは畳みにちゃぶ台と昔の日本風の生活感が漂っていた

 

 

「あの粗茶ですがどうぞ。 あとりんご良かったら」

 

 

目が微妙な位置に二つ入った仮面みたいなのを被った人がお茶と食べやすいように切った林檎を持ってきてくれた

 

 

「はむ、うーん♪ このりんごとっても甘い!」

 

 

「このりんごは青森支部から送ってくれたトキりんごだからね」

 

 

「えーと、ヴァンプさんこの人は?」

 

 

「ああ、彼は一般戦闘員の一号君」

 

 

「あ、どーも一号です。 初めまして」

 

 

「は、初めまして。 織斑マドカです、宜しくお願いします」

 

 

「あれ? そういえば二号君は今日どうしたの?」

 

 

「ヴァンプ様、二号は今日バイトでいませんよ」

 

 

あ、悪の組織の戦闘員がバイトっていいんだろうか? 後またまた気になることが出てきてしまった……

 

 

「あの~、つかぬことをお聞きしますけど、普通戦闘員って『キー』とかしか喋らないんじゃないんですか?」

 

 

「あー、よく言われるんだけどあのしゃべり方続けてると喉の負担がキツイんですよ。 だからあの喋り方する時は戦いのとき位なんですよ」

 

 

戦闘員も大変なんだな……

 

 

「あ、 私も気になってた事あるんだけど」

 

 

「うん? なんですか? スコールさん」

 

 

「ほら、求人でよく戦闘員の募集よく見るんだけどあれってやっぱり人の出入り激しいの?」

 

 

うちの業界の求人によく戦闘員の募集がたくさん載っているのを見た覚えがある

 

 

「戦闘員って戦うだけかと思われてるみたいですけどそれだけじゃないんですよ。 うちはヴァンプ様やほかの皆が協力してくれるから一人で出来る仕事量だけど他の組織のは結構大変みたいなんですよ」

 

 

「大変というと?」

 

 

「ほら、よく悪の組織がヒーローと戦うときに使う何も無い山の奥地とか工場跡などの許可を役所から取ってきたり秘密基地建設の土地や貸し物件のリサーチなど色々大変らしいですよ」

 

 

あれってちゃんと役所から許可とって戦っていたのか……

 

 

「この間、飲みに行ってたら他の組織で戦闘員やってる知り合いにたまたま会って話し聞いてみたら戦っているヒーローが最近じゃあ宇宙行ったり鎧着たりドライブしたりと数が多いらしくて覚えるのが大変だって嘆いてましたね」

 

 

「ああ、あそこの組織と戦ってるヒーローすぐ新しいの出るから大変だよね」

 

 

本当に大変なんだな戦闘員って……。 全組織の戦闘員の皆さんほんとお疲れ様です

 

 

「ここではどうやって戦う場所確保してるんですか?」

 

 

「皆で見つけてきたりしますけどほとんどはヴァンプ様が見つけてくれてるんです」

 

 

「ご近所の方や町内会の人に教えてもらったり、使わせてもらったりしてるんだよ」

 

 

ご近所? 町内会?? 悪の組織の幹部が町内会に参加してるのかな

 

 

「だからね、 ご近所付き合いは大事なの。 隣に住んでる人がどういう人物なのか分かっていれば多少の事じゃあ怒られないし、困ったときには助けてくれたりもするんだから。 現代社会はこういったご近所付き合いを大事にしないといけないと思うの私」

 

 

何故だろう、ヴァンプさんに言われるとすごい説得力を感じるのは……。 うん、ご近所付き合いは大事にしなきゃダメだよね 

 

 




天体戦士サンレッドのサントラ聞きながら書いていると次々シーンが頭に浮かんできます。BGMって偉大ですよね

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