オータムさん。   作:秀吉組

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原作介入のお話の続きが中々行き詰ってきたのでちょっと気分を変えてまた原作キャラの一人が出てくる話を書いてみました


解体セールと金の瞳

某日。 それはとある会場にて行われようとしていた。 まだ開始時間が経っていないにも関わらずその場の空気が熱気というより狂喜に似たものになりつつあった

 

 

それを遠目で見ているのが二人。オータムとマドカ、二人は何故か亡国機業のロゴが入ったエプロンを着てレジの前に立っていた

 

 

「うわ~、今回もなんか凄そうだな」

 

 

「会場に入る前からもう皆の目が殺気だってるようなものになってますからね」

 

 

二人がいるこの場所が何かというと亡国機業主催のお歳暮解体セールの会場である。お歳暮解体セールとはお歳暮やお中元の売れ残った商品を解体してセール品で売り出すこと

 

 

世界各地に支部を持つ亡国機業が出すお歳暮やお中元はその他の他社を圧倒する数なので売れ残る商品もその分膨大な数になってしまう。それらを少しでも解消させるために行われるのが今回のような解体セールなのである

 

 

機業側は在庫を処分し赤字を少なくでき、買うほうも普段の値段よりも安く買えるのでどちらにメリットがある。そのため毎回来場者が偉い数になってしまっている

 

 

会場を警備するのにISを起動している班までいたりする程だ

 

 

「マドカちゃんは今回が初めてだっけ? 解体セールの売り子」

 

 

「はい。まさかここまで大きなものだとは思いませんでした。これは大変だなって。でも売り子になった特典のこと考えるとやって損はないかなって」

 

 

この解体セールの売り子になると相当な労働力と引き換えに解体前のギフトをセール前日に購入することができる。しかもセールの価格よりも安く。二人がロゴの入ったエプロンを着ているのもそのためだった

 

 

そして解体セール開始まで10秒を切った

 

 

10…9…8…7…6…5…4…3…2…1…0!!

 

 

セール開始と同時に客が大挙して押し寄せた

 

 

「き、きた~!?」

 

 

「くっ!? ……さあ地獄の始まりよ」

 

 

開始してわずか五分であちこちのコーナーで長い列が出来たり、酷いところでは客同士の揉め合いになって警備員が仲裁にきているところもあった

 

 

「お、押さないで下さ~い!! 数は十分にあるので一列になって並んで下さい!! あ、そこ!! IS使って商品取らないで下さい!!」

 

 

「会計はなるべくぴったりで出すようにお願いします!! 大きなお札で出されると小銭が不足してしまいますので!!」

 

 

「……なんだか似てるな」

 

 

目の前で行われている光景にマドカがぽつりと呟いた

 

 

「似てる? 何に?」

 

 

「いや、その夏と冬にあるとある祭りの光景によく似てると思いまして」

 

 

「ふーんそんなお祭りがあるんだ」

 

 

とそんなことを言っていると

 

 

ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!

 

 

商品を持った客たちが会計を済ませるためにレジに押し寄せてきた

 

 

「うわわわ!!」

 

 

「戦闘開始よ、マドカちゃん!!」

 

 

「は、はぃぃぃ!!」

 

 

会計が終わった瞬間に次の会計が休む間もなく次々と襲来する。それはまさに一つの戦場であった

 

 

………………………………

 

 

「あ、ありがとう、ご、ございました……」

 

 

「ま、ました……」

 

 

ボロボロになりながらもなんとか激戦に生き残った会計戦士たち。 疲れ切った戦士達にようやく待望の時が来た

 

 

「お疲れ様です、交代にきました」

 

 

レジ員第二陣の到着である。 二人はしばらく休憩を取ると各々興味のあるセール品を見に行った

 

 

マドカと別れたオータムが向かったのは洗剤などの日用品のギフトのコーナーだった。 旦那に日用品を安く纏め買いできると頼まれていたからだ

 

 

「頼まれたのはいいのだけれどどれ買ったらいいんだろう? うーんどれも同じに見えるんだけど?」

 

 

色々ある日用品ギフトを睨めっこしていると

 

 

「あの~、もしかしてオータムさん、でしょうか?」

 

 

後ろから声を掛けられ振り向くと銀色の髪に黒のリボンをした可愛らしい女の子だった

 

 

「は、はい。 そうですけど? え~と」

 

 

「あ、こちらの自己紹介がまだでしたね。 私はマスター、 篠ノ之束博士の助手をやらせて貰っているクロエ・クロニクルと申します。 いつもマスターがお世話になっております。それと今回はお招き頂いて有難うございます」 ペコリ

 

 

「いえいえ!? こちらこそ束さんにはお世話になってます!」 ペコリペコリ

 

 

一応協力者というわけで今回のセールに束さんを招待していた

 

 

「そういえばその束さんはどこに?」

 

 

「あ、あはは。 マスターはその、スタート同時にお酒の解体コーナーのほうに」

 

 

ああ、なるほど……。 しかしなんでこの子……

 

 

「? どうかなさいましたか?」

 

 

「え? あ、いや、え~と、なんでその目を閉じてるのかなと思って」

 

 

そうなのだ。目の前にいるこのクロエという女の子、常に目を閉じているのだ

 

 

「あ、いえ。……実はこれ細めで見てるんです」

 

 

「どうしてそんなことを?」

 

 

「私の瞳は普通の人のとは大分違うものでして。 ……周りの人達が怖がってしまうんじゃないかと思ってこうしてるんです」

 

 

「そうなの? ……ちなみにどんな瞳しているのか見せてもらってもいい?」

 

 

「え!? いや、本当に……」

 

 

瞳の事でコンプレックスを抱いているのだろう。躊躇する様子が見られた

 

 

「大丈夫。 この業界で怖いことなんて沢山経験してきたから瞳の色くらいどうってことないからさ」

 

 

私がそう言うと決心したのかゆっくりと瞼を開いた

 

 

現れたのは黒の眼球に金の瞳だった

 

 

「…………」

 

 

「やっぱりこの瞳はおかし」

 

 

「綺麗」

 

 

「……え?」

 

 

「綺麗って言ったの。 全然変じゃない。うん、いい目じゃない」

 

 

「………」

 

 

私が思ったことをそのまま伝えると黙ってしまった。 なんだろう? うそ臭く伝わってしまったのかなと思っていたが

 

 

「えええ!? 綺麗って!? そ、そんな!? あわわわ!!」

 

 

顔を真っ赤にさせてあわわしていた。 なんだこの可愛い生き物は。 抱きしめたくなるぞコンチクショー

 

 

「コラコラ、オーちゃん。 オーちゃんには旦那さんいるんだからウチの娘を口説いちゃだめだよ?」

 

 

「束さん?」

 

 

声がするほうに視線を向けると缶ビールのギフトを持った束さんがいた

 

 

「ええっ!? マスター、私口説かれてたんですか!?」

 

 

「口説いてない、口説いてない」 

 

 

「まあ冗談もさて置いて、オーちゃんみたいにこう言ってくれる人もいるんだからクーちゃんはもっと自信を持ったほうがいいよ? わかった?」

 

 

「…はい。いきなりはやはりまだ無理そうなので少しずつそうしてみますね」

 

 

ニコッと笑うクロエちゃん。 ああ、イイハナシダナー

 

 

「と、それはそれとして。 マスター? 私がお願いしていた「鍋島」はもちろん手に入れて下さったのですよね?」

 

 

「あ……」

 

 

「あ? どうしましたか? マスター?」ニコニコ

 

 

「それが、その。 ……あれ?この空気だといい事言って流れるお約束じゃあ」

 

 

さっきまでの雰囲気が一変したような……

 

 

「マ ス ター ?」

 

 

さっきまでの可愛らしい笑顔から絶対零度の笑顔に変わってらっしゃる……

 

 

「い、今すぐ買いに行ってきますぅぅぅう!!!!」

 

 

脱兎の如く駆け出していった。束さんだけに。 あ、上手い 

 

 

「すみません、オータムさん。 これからマスターの監視、じゃなかった付き添いに行かなければならなくなったので失礼します。 マスターの事、これからも宜しくお願いします」

 

 

「あ、はい。 こ、こちらこそよろしくお願いします」

 

 

こちらにぺこりとすると物凄い勢いで束さんの後を追うクロエちゃん。……束さんも苦労してるんだな

 

 

これが初めてクロエちゃんと会った出来事でした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後で「鍋島」というのが何か気になって調べてみたら九州の特別純米の日本酒だった。渋いなクロエちゃん




このオータムさんのクロエは日本酒大好きキャラに設定してしますw感想よろしくお願いします!! 感想書いて頂いてる方々には本当に感謝しております(泣)

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