ハイスクールD×D ~絶対悪旗のラスト・エンブリオ~   作:白野威

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27日前後に投稿すると言ったな



あれは嘘だ


三頭龍がまともに戦うそうです・下

 アジ=ダカーハは憑依前or生前の頃、常に考えていたことがあった。

 

 何故、“アジ=ダカーハ”は魔術or魔法を使うことが無かったのか。

 

 知識こそあっても適性が無かったからなのか。単純に使う気が無かっただけなのか。それとも過去に受けた数々の封印によって使えなくなったのか。いずれにせよ、元となった作品の時系列で使っていないのは事実である。

 故にアジ=ダカーハは魔術or魔法を試してみたくなった。それは“彼”であった時からの憧れのような感情もあったが、なにより戦闘の際に引き出しは多い方が有利になるからだ。魔法以外にも、錬金術や武術などの“術”に関するすべては一通り習得した。

 

 しかし、そのどれもが暴発してばかりという結果。

 

 その原因は、アジ=ダカーハの魔力(あるいは魔法力とも言うべき力)がオーフィス程でないにしろ厖大なものであるが故であった。そもそも無限と比べること自体が間違っているのだが、その辺りは見なかった事にする。

 ともかく、通常の魔法を使おうとすれば対象の魔法が暴発してしまう。アジ=ダカーハの場合、体内魔力(オド)の量と対象魔法の許容量が割にあっていないのだ。

 それは例えるのなら、コップ一杯の水が対象魔法のキャパシティとし、アジ=ダカーハの厖大な魔法力をダムの水に置き換えてみれば分かりやすいだろう。たったコップ一つだけでダムの水がせき止められるか? つまりはそういうことである。

 普通の魔法などではアジ=ダカーハに宿る体内魔力(オド)には耐えられず、術者であるアジ=ダカーハ自身に害を与える結果となる。

 そこでアジ=ダカーハは考えた。

 

 

 自身の魔法力に通常の魔法が耐え切れないのなら、自身の力に耐えられる魔法を創りだせばいいのだ、と。

 

 

 

 

「……?」

 

 見たことのない術式。いや、正確に言うのなら“それ”に術式はない。

 ただ二言、元となる素材と固形名を言うだけの二工程(ダブル・アクション)。そんな魔法、オーフィスは知らない。

 なお激しく降り注ぐ漆黒の龍気弾を光の盾で完全に防ぎつつ、三頭龍は呟いた。

 

『“大気”よ、“害あるもの”を“地に堕とせ”』

 

 言いながら、腕を軽く、上から下に振り下ろされた。

 

 

 瞬間、オーフィスは文字通り地に堕ちた(・・・・・)

 

 

「――――――――」

 

 

 一瞬の間を置いて、オーフィスは自身が大地に堕ちたことを理解した。そしてこの未知の魔法に対して大きな興味を持った。

 オーフィスが地に堕ちるほんの一瞬だけ感じ取った、三頭龍の体内魔力(オド)外的魔力(マナ)の動きは、オーフィスでなくとも興味を持つことは必定であった。

 三頭龍の龍気(オーラ)こそオーフィスよりも下に位置するが、反面体内魔力(オド)はオーフィスやグレートレッドなど、特殊過ぎるドラゴンを除いた並のドラゴンよりも遥かに高いものを持っている。

 そも龍気(オーラ)とはドラゴンにとっての生命力みたいなものであり、質が高ければ高いほど威力は増すものの長期間戦えない欠点があり、それは最悪死に至る可能性を秘めているのだ。オーフィスが最凶と呼ばれる所以はそこから来ている。

 対して体内魔力(オド)外的魔力(マナ)は魔法、あるいは魔術などを発動するうえで欠かせない要素で、おおよそ専門用語となっている。

 体内魔力(オド)とは名の通り、術者本人の内に宿る魔法力or魔力のことを指す。大半の術者は体内魔力(オド)を使った魔術or魔法を得意とする。外的魔力(マナ)はその反面、術者の周囲、及び大気中に存在する魔力or魔法力を指す。こちらは扱える者こそ少ないが、代わりに半永久的に魔法を扱える事が可能だ。

 何方も一長一短だが、この二つの架空元素にはある規則性がある。

 

 体内魔力(オド)外的魔力(マナ)に、外的魔力(マナ)体内魔力(オド)に干渉することが出来ない、という規則だ。

 

 この法則は(オーフィスが記憶している限りで)絶対的なモノであり、迂闊に体内魔力(オド)を用いて外的魔力(マナ)に干渉しようとすれば身体の方が耐えきれず、死に至ることがままあった。あのアーサー王の傍らにいた強大な魔法使い・マーリンでさえ、この二つを干渉させて魔法を発動することは叶わなかったのだ。

 しかし、あの三頭龍はその法則を難なく乗り越え、体内魔力(オド)を用いて外的魔力(マナ)を操っているのだ。

 それもその媒体は言葉と単調な動きのみ。

 通常の魔法や魔術が魔法陣を媒体にしており、強力な術になれば枝などの媒体が必要になる。しかし、彼の三頭龍は“言葉”や“行動”といった、本能的な所で発するものを媒体としているのだ。

 

 あまりにも出鱈目(デタラメ)だ。いくら人間の伸びしろに限度があるとはいえ、悪魔と人間との間に生まれたマーリンですら成し得なかった干渉魔法を、この世に産声を発してからわずか十年(・・)のドラゴンが開発し、完璧に操っている。

 これを出鱈目と言わず、なんと言えばいいのだろうか。

 

「…………っ!」

 

 腕に力を入れ起き上がろうとするも、まるで星に押しつぶされているかのように動かない。いや、と思考を巡らせて真の答えを探り当てる。

 数瞬の思考の末、オーフィスは自身がもっとも納得できる答えを得た。

 

 その答えに辿りついたのと、遥か上空からオーフィスを見ていた三頭龍が急降下し始めたのはほぼ同時だった。

 

 

 

 

 地上に落下して行った少女を見つめながら、アジ=ダカーハは妙な違和感を覚えていた。

 

 実を言えば、アジ=ダカーハがまともに戦うのはこれが初めてである。近くの村落を燃やし村人を殺し、動物などを狩猟して戦闘の感覚を掴みつつあったが、それらは一方的な虐殺である。虐殺によって得られる経験値など程度が知れており、いずれは遠出してよりより大きな悪行を成す必要がある。そう多少の計画を練っていた際にこの戦闘である。丁度良いと言えば丁度良いが、些か相手が強すぎる気がしなくもない。そんな考えなど決して表に出すことはないが。

 少女を吹き飛ばした後のアヴェスター起動以前から分かっていたことだが、彼女が内包する力の質は体感で感じるものよりも遥かに高く、それこそ無限に思えるほどだ。更に不可思議な力を使った攻撃方法を用いり、そこから繰り出される破壊力は星を割る事を可能とするだろう。そうアジ=ダカーハに思わせるほど、彼女は実力が高い。

 そんな彼女と(こっちが一方的にキレてしまったとはいえ)一戦交える事は、今のアジ=ダカーハからすれば自殺行為にも等しかった。この状態を例えるなら、“最低難易度でレベル上げしてクリア後、最高難易度で2週目をしようと思ったらチート級中ボスに殺されそうになった”というべきか。

 

 しかし、現実は違った。

 

 身体(わたし)が動き、精神(おれ)が置いて行かれる。無意識的に動いている、とでも言うのか。

 奇妙な感覚だった。まるで身体が戦場を覚えているかのような、そんな感覚。

 

『……フン』

 

 この感覚については後で考えよう、そう考えてとりあえず疑問を振り払ったアジ=ダカーハは、地上に落ちて地べたを這う少女の姿を見ながら、そこへ突撃するために翼を羽搏かせる。

 少し上空へ飛んだあと、弾かれたように地上へ落下していく。右手を手刀にして魔力を込め、相手の心臓目掛けて疾走する。その速度は光速に並ぶか否かという速さ。

 

 僅か15分の間に起きた、短い戦いが幕を閉じようとしていた。

 

 

 

 

 急降下してきた三頭龍が何をしようとしているのか。それに気付いたオーフィスは、対抗策を数瞬の内に練る。

 そしてオーフィスが考え得た最善策は、相手とほぼ同じ質量(・・・・)を叩き込む事だった。

 

 この時、二人は気づけなかった。

 それは接近戦を全く繰り広げていなかった事もある。だがそれ以上に、アジ=ダカーハが勘違いしていた。

 アジ=ダカーハの質量は大陸並である(・・・)。そう思い込んでいたからこそ起きた勘違い。

 

 激突した。二人の衝突は瞬く間に周囲を崩壊させ、近辺にあった森や山々を砕き消滅させる。

 なおも勢いを増す衝撃に耐えきれず大陸に亀裂が入り、オーフィスを中心に巨大な一つの大陸が無数に分裂する。亀裂から、溶岩が火柱となって立ち昇る。見る者が見ればその光が生み出したのは地獄と呼ぶにふさわしい光景だった。

 

 

『――――なんだ、これは……!?』

「……これは、想定外」

 

 

 アジ=ダカーハは原作で大陸並の質量を持つドラゴンとして描かれている。そして主人公はそれを「大陸かそれ以上」としか言っていない。なるほど、これならば勘違いしてもおかしくはない。

 だが、“彼”は一つ、忘れてはならない事を忘れていた。

 

 三頭龍があるコミュニティから受けた封印を破って表に出てきた時、200年以上前の封印の影響が残っていた(・・・・・・・・・・・・・・・・・)ことを。

 

 この封印は帝釈天(インドラとも呼ばれる)から受けた物であり、身体能力などの全能力が著しく衰退させるものだった。その上でとあるコミュニティが与えた封印も身体能力を低下させるものだった。だからこそ原作の主人公たちが奮闘できたのだろう、と当時の“彼”は考えていた。

 さて。帝釈天が与えた封印は身体能力など(・・)を衰退させる代物だ。では、身体能力以外になにを下げたのだろう?

 あまりある術への知識? 否、原作において三つの難関なゲームを受けて平然とクリアしたその知識が衰えている事などあり得ない。

 “アヴェスター”や“覇者の光輪(タワルナフ)”の同時発動制限? これも否である。相手の能力を吸収するアヴェスターと全てに破滅をもたらすタワルナフは互いに相容れないだけであり、超高度なコントロール技術を身に付ければ同時発動は無理な事ではない。が、最悪どちらかの能力に支障をきたす可能性があるため、無理に使う必要性が無いだけなのだ。

 ではなにが衰えているのか? それは、その質量だ。原作において大陸に程近しい質量を持つといわれるアジ=ダカーハだが、それは帝釈天の封印とコミュニティの封印などの要因があったためにそう思われていた。

 

 では。帝釈天の封印が無いアジ=ダカーハ本来の質量(・・・・・・・・・・・・)とは、どれほどなのだろう?

 

 

『「――――まさか」』

 

 三頭龍の異様なまでの質量。二人は同じ疑問を持って、そして二人は同じ結論に至った。

 

 

 大陸の二つ分?

 

 

 地球の表面上の全てにある物質?

 

 

 岩盤を含めた物質量?

 

 

 否、そのどれもが、否。

 

 

 正解は――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地球、そのもの(・・ ・・・・)だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後に、大陸移動説と呼ばれる原因が起こった日である。




※これでも最初より規模が小さいです
 独自設定がちらほら見え始めたので、そろそろタグに「独自設定あり」と追加した方が良いのかな……(今更)

あと、最近になって艦これ始めました。
誰か私の鎮守府に響を下さいorz


・追記
なんで評価バーが赤いの……(震え声)

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