ハイスクールD×D ~絶対悪旗のラスト・エンブリオ~ 作:白野威
水辺に三つの顔を映し出したまま硬直すること一時間。
ようやく現実を受け入れることが出来た“彼”は、少量の水を飲んだ後、水辺から少し離れたところで状況を整理するために座り込んでいた。
――“
“
その爪による一撃は地盤を容易く引き裂き大地を溶岩で紅く染め上げ、己の影を操って数多の敵を刺し貫き、
ざらっとアジ=ダカーハの特徴を挙げて行き、
『なぁにこれぇ』
某相棒のセリフを言いながら、悪夢か何かか。と“彼”は頭を抱えた。
いくら“彼”が三頭龍に憧れを懐いていたとは言えど、三頭龍本人になりたいなど思ったことは一度も無い。そもそも憧れを懐いていた要因は、あの三頭龍のカリスマとも言うべき雰囲気によるものだ。例えるなら某奇妙な世界のWRYYYY!!な吸血鬼や、戦争大好きな狂気の少佐だとか、ようはそこら辺の人物なのだ。後者の二人にも憧れてはいるが石仮面をかぶるつもりは無ければ、残機∞チートな吸血鬼との闘争を楽しみたくもない。というか遠慮願いたい。特に後者。
あくまで“彼”は争いとは無関係な場に居た、探さなくても何処にでもいるような一般人なのだ。争い事は嫌うし、ちょっとした小競り合いさえも嫌うような平和主義なのだ。
だがしかし、現実とは非常なモノであり、今この身体は“絶対悪”――魔王アジ=ダカーハ。この世の悉くを打ち砕き、世の全てに牙をむき、ただ己の生を持って悪を示し、己の死をもって善を築く。それが魔王アジ=ダカーハの生きざま。三頭龍の不退転の覚悟。
とてもではないが一般人であった“彼”には出来ないことだった。
と、そこまで考えた時に、“彼”の脳内に僅かな電流が奔った。
『……“俺”がアジ=ダカーハになる必要はないじゃないか。“私”そのものがアジ=ダカーハなのだから』
その考えはこうだ。
その思考はおかしい、と“彼”の周りに誰かが居ればそういったかも知れない。しかしここに居るのは“彼”と自然のみ。彼の考えを止められる者は居なかった。
『……そうだ、“私”こそがアジ=ダカーハなのだ。それ以上でも以下でもない』
立ち上り、長い首をコキッと鳴らした“彼”――否、魔王“アジ=ダカーハ”は、その三つ首の全てを用いて、天地に産声をもたらす。
「――――GYEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」
アジ=ダカーハとして生まれ変わった今、彼の目的は"
――――今ここに、三つ目の が生まれた。
*
ある二匹の龍が、その産声を聞いた。
*
何もない空間。虚無の世界。或は次元の狭間とも言うべき場所で、黒の神龍は彼の者の産声を聞いた。
「……我、探す。三つ目の 」
客観的に述べたような口調で話すその龍は、何の動作も無しに、その場から消え失せた。
――――その口に、僅かな三日月を携えて。
*
何もない空間。虚無の世界。或は次元の狭間とも言うべき場所で、紅の神龍は彼の者の産声を聞いた。
『………………………』
虚空を暫く見つめ、そして紅の神龍は再び泳ぎ始めた。
――――その口に、獰猛な笑みを携えて。
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