フェイル   作:フクブチョー

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第三十罪 再会と再開

 

 

 

 

 

 

 

 

『勝てない敵に勝とうとするな』

 

彼女達を弟子にとってからしばらくがたったある日、3対1の実戦稽古を行った。3人とも師匠の教えを受けた事で強くなった自覚はあった。3人がかりなら流石に少しは勝ち目があるかと思い、望んだ戦いだったが、結果は惨憺たる物だった。

 

大の字になって動けない3人に赤髪の狼、ヴァリウスはそんな事を言った。

 

『多少は実力もついて自信が出来てきた事だろう。それはいい。自分の力を正しく信じれるヤツは手強い。だがお前らは最近少し過信ぎみだ』

 

武に生きる者ならば誰もが通る道。納め始め、確かな実力をつけ始めたが故の当たり前の自負。慢心と呼ぶにはあまりに僅かな感情。しかしその僅かが戦場では命を分かつ。

 

『でも自分より強い敵に出会っちゃったらどうするの?』

 

飴玉を取り出し、咥えながら茶髪の少女、チェルシーが問いかける。今でこそ最強と呼ぶに相応しい力を持つ師だが、かつては彼より強い敵もいた筈だ。今まで彼がくぐり抜けてきた修羅場の中でそんな人がいなかったとはとても思えない。

 

『実力差を埋めるのは作戦(タクティクス)だ。持久戦に持ち込んだり、人数をかけたりとかがオーソドックスだな。それでも勝てなきゃ逃げる』

『逃げるぅ!?』

 

どんな状況であろうと諦めるな、と耳にタコが出来るほど言われた言葉に真っ向から逆らう行動を取れと言われ、チェルシーから変な声が出た。ファンとタエコも目を見開いている。

 

『諦めの定義を間違えるな。俺はお前らに負け戦をしろとはひとっことも言ってねえぞ。ヤバい相手なら逃げていい。俺だって勝てない相手からは逃げてきた』

 

その相手の名は国家という。軍人であったあの頃、自分の信念や心はこの強大な敵に隷従する事で逃げていた。

 

『絶対諦めちゃいけねえのが生きる事。死ななければいつか勝機は必ず出てくる。どんな強大な敵が相手だろうと、誰もが生きる事を諦めてしまう怪物が相手だろうと、お前らは、それでもと生き残れる人間であれ』

 

四人は戦慄していた。恐怖に身体がすくみ、畏れが心を砕く。強くなったからこそわかる、圧倒的な力の差を目の前の美しい魔神から感じていた。

強敵との耐性はあるつもりだった。それも当然だ。帝国最強の一人と毎日のように剣を交えていたのだから。

しかしそれは此方を傷つけるつもりのない、安全な稽古での立ち合い。多大な手加減をしてもらっている事は知っているつもりだったが、改めて現実を思い知らされた。

 

ーーーー間違いない……顔も姿形も今まで知らなかったけど、そんなもの聞かなくても分かる。

 

見覚えのある軍服。風に揺れる碧空色のロングヘアに寒気を感じるほど澄んだ碧の瞳。長身に尋常ならざる美貌。

 

ーーーーコレが……頂点(エスデス)!!

 

三弟子のうち、二人は似通った思考をしていた。チサトはこの難局をどう乗り切るかに頭を必死に回転させていた。

 

しかしたった一人。

 

艶やかな黒髪を波立たせ、紫紺の瞳に怒りを宿し、形の変わった槍を握り潰さんばかりに掴む少女に誰も気がつかなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その邂逅は突然だった。

 

約束の3日目となり、夜明けまで待ってもヴァリウスが帰る兆しは見えなかった。炎狼の最初の弟子にして恐らくは一番弟子、タエコの提案に従い、プトラの墓近くにまで行き、三人の少女と一人の元軍医は待つ事を決めた。

この行動はヴァリウスの命令を破るものだ。彼は帰らなければホームに戻れと指示を出していたにもかかわらず、四人はその指示を無視し、行動を取っていた。説教も罰も地獄の鍛錬も覚悟しての行動だった。その覚悟があったからこそ、監督を任されたチサトも許可したのだ。

 

途中、墓守と思わしき人間と幾度か戦ったが、四人は難なく撃退に成功している。

強くなったなと元軍医、チサトが思う中で、状況は激変した。

 

別の道から阿鼻叫喚の声が聞こえる。同時に危険種の遠吠えのような物も響いてきた。

 

「「「「ーーーっ!!?」」」」

 

四人同時に一斉に武器を構えた。その行動は殆ど反射に近い。寒いと感じたから身体が震えるように、雷が光ったら目を瞑るように、何かから身を守る為の本能的な行動だった。

 

「(ーーーー何か来る!?)」

「(危険種?いえ、足音が聞こえない。人間!)」

「(…………この圧力、存在感、私は知っている。この魔神を!)」

 

三者三様に未知の敵を感じ取る中、チサトだけはこの人物が誰かを確信し、そしてヴァリウスの指示を守らなかった事を後悔していた。

 

ーーーーなぜあいつがこんな所に!?いや、もうそんな事を考えている場合ではない。全部後だ。逃げるか?でも此方が感じ取ったという事はヤツも私達の存在には気づいている。スピードで此方は彼女に圧倒的に劣る。そんな相手に無防備に背中を向けるのは自殺行為!

 

なら戦うか?もうそれしか道は残されていないとはいえ、その決断をするにはかなり勇気が必要だった。その強さを実際に肌で感じ取った事があるから尚更だ。

 

そして魔神はその姿を見せる。血に濡れた白い肌に対照的な蒼い長髪。かつて師が仕えた死神は相も変わらず美しかった。

 

「変身能力を持つ獲物。なかなか面白い連中だ。コレだけでも危険種を乗り継いで急行してきた甲斐があったというものだが……」

 

しばらく少女達を見て目を剥く。そして普段の彼女であればありえない所作を取る。何度も何度も前に立つ四人の姿を視線がなぞった。呼吸は切れぎれになり、瞳は歓喜に揺れている。己を抱きしめるように腕を回した。

 

「フフ………フハ………はははははっ、アハハハハ!ハハハハハーーーーっ!」

 

こちらを一瞥もせず、魔神が笑う。この隙に逃げられないかと一歩チェルシーが後ずさった瞬間、チサトが手首を掴む。

 

「(背中を見せたら、やられるぞ)」

 

握った手の強さが、逃走を禁じた。その選択は正しい。こちらがflightという気を発した瞬間、魔神はfightを選択し、そして終わる。

 

「まさかこんな所でお前に会えるとはな!変わっていないな、お前は!いい構えを面白い連中に教えたものだ!才気ある者を愛し、人を育てる事が何より得意とする!ああ嬉しいよ、本当に変わっていない。コレが私を置いていって、お前が得た者たちか!!」

 

戸惑う三人。一体誰に話しかけているのかわからない。自分達が眼中にない事だけはわかる。チサトは彼女が見ている存在がわかった。

 

「教えてくれよ、ヴァル。コレが、私を捨ててまでお前がつかんだ者なのか?それほどの価値がこいつらにあったのか?なあ、なんで………」

 

彼の愛称が出てきても、すぐに師を連想する事は出来なかった。普段、彼の本名を呼ぶ事などないし、もうフェイルが彼の名前として定着してしまっていたからだ。

 

「もう誰にも渡さない。お前の全て、私が奪うよ…ヴァリウス」

 

碧の瞳がようやく四人を捉える。帝国最強が確かに敵としてこちらを見据えた。

 

「普段なら拷問室に案内してやるところなんだが、今の私にそんな余裕はない。すぐに答えろ。ヴァルはどこにいる?」

 

答えなければ殺す。そういう殺気が目に宿った。その瞬間、四人の背筋に寒気が奔る。標的が自分達になった事を殺気で感じ取った。

 

「うわぁあああああ!!」

「ばっ!?」

 

臆病ゆえか、真っ先に動いたのはチェルシーだった。ナイフを握りしめ、跳躍する。

 

チサトが止めようとした時にはもう遅い。いつの間にか抜かれていたレイピアは既にチェルシーに肉薄していた。

 

「…………っ!」

 

タエコの剣がギリギリのところでレイピアを逸らす事に成功していた。太刀筋が見えたわけではない。視認できた事は何かが光った事のみ。当てる事に成功した理由はたった一つ。同等の速度を体感した事があったから。

 

次の瞬間、大きく飛び下がる。取った距離は己の間合いから倍以上の長さ。

 

「…………ゴメン」

「集中して」

 

謝罪する茶髪の妹弟子を叱咤する。タエコにチェルシーを責める気はまったくない。この場にいる誰もがチェルシーの行動を間違っているとわかっていながら責められない。極寒の中で身震いが止められないように、圧倒的な恐怖の中、闘気で自身を守ろうとした彼女の行動を誰が責められるだろうか。

 

「よく防いだ。ヴァルによく鍛えられていると見える」

 

初めてエスデスの眼中に弟子たちの姿が入る。僅かながら興味の対象が彼女達そのものに移った。

 

「…………ん?」

 

興味を持ったからか、気配に気づく。怯えや逃走の気配の中、一人だけ異質な気を発している事がわかった。

 

「ほう……」

 

誰もがエスデスから距離を取る中、たった一人だけ自分の間合いから出ていない戦士がいる。艶やかな黒髪を揺らし、紫紺の瞳には敵意と憎悪を漲らせている。

 

「…………エスデス」

 

絞り出されるような声でその名が紡がれる。

 

「私の事を………覚えているか」

「私は弱い者を覚える事はない」

「そうか」

 

言葉が終わるか終わらないかの瞬間、クラムで突きかかる。その速度は凄まじい。常人ならわけもわからず突き殺される速さ。

しかし相手が悪すぎた。余裕の表情でかわす。

 

「この程度では……」「ないに、決まっているだろう!!」

 

一撃目を放った瞬間、ファンはすでに槍を引き戻していた。刹那に重ねられた突きがエスデスの頬を掠めた。

 

信じられないという表情で傷跡を撫でる。そこには僅かに、だが確実に赤い滴が伝っている。

 

「今度は覚えていられそうか?哀れな最強」

「貴様……」

 

恍惚とした笑みが浮かぶ。傷をつけられた事など、相棒を除けばいつ以来か。しかも力量で言えば己より圧倒的に劣る相手に。

 

「私の名はファン!誇り高きバン族最後の生き残りにして、炎狼の三弟子が一人!お前を殺す者だ!!」

 

その言葉を聞いて、碧髪の美女から冷気が立ち上る。怒りが露わになったことが、誰の目で見てもわかった。

 

「…………そうか、お前が………3年前、私の狼を惑わせた女か!」

 

氷の魔神と化した戦士が、戦いの火蓋を切った。

 

氷の柱が荒れ狂う。四人とも何とか反応し、かわすか、逸らすかに成功していたが、それが精一杯。

 

「くそっ!やるしかないか!」

 

先陣を切ったのはタエコだった。腰間の一刀に手をかけ、加速する。スピード、パワー、共に劣る相手に小細工は逆効果。最高最速の攻撃で突貫する。

 

ーーーー竜巻!!

 

脳のリミッターを解除する。師には禁じられた技だが、温存する余裕はない。

 

「光風!!」

 

襲い来る氷の氷柱を斬り伏せる。斬り伏せながらも前に進む。瞬く間に神速に達したその踏み込みは彼我の距離を一瞬でゼロにした。

 

「速いな。だが真っ向勝負は100年……」

 

迎え撃とうとしたレイピアの動きが止まる。いつの間にか巻きつかれていたピアノ線。その先には先ほど無茶な突撃を行っていた茶髪の少女がいた。

 

ーーーーいつの間に……

 

直接巻きつけたのではその瞬間バレる。というか糸を繰り出した時に察知されるだろう。実際武器を拘束した今もほぼノータイムでバレた。糸の拘束が解ける。

しかし、それでもほんの一刹那程度、動きを止める事には成功した。タエコが居合を繰り出すには十分な隙。

 

氷の剣でタエコの居合を受け止める。この顕現速度は流石の一言。3年前より帝具の扱いがかなり上手くなっている。

しかし彼女は気づいていなかった。タエコの後ろでチサトが追随している事に。

 

「ぉおおおおおお!!」

 

掌底がエスデスの氷の剣を砕く。東方の武術、カラテ。皇拳寺拳法と少し似ている。チサトの故郷の戦場格闘技だ。

 

『ーーーーっ!?』

 

地面から唐突に立ち上る氷の剣山。追撃を加えようとしていたチサトとタエコを止めるには充分な威力を持っている。あと半歩踏み込んでいれば串刺しだっただろう。

 

「いやあっ!!」

 

自由になったレイピアで二人を突き殺そうと構えた瞬間、ファンが既にクラムを振るっている。裂帛の気合いで突き出された槍がレイピアを弾いた。

 

「いい連携だ」

 

完璧な呼吸でお互いを守り合う四人の姿を見て感嘆の息を漏らす。何も知らないエスデスがこの連携の見事さを評価するのは当然だが、弟子達にとっては当たり前の事だった。

3年という月日を重ね、同じ師から技と心を学んだのだ。体得した技と呼吸が言葉となり、互いの意思を伝え合っていた。そうでなければあっという間に終わっていただろう。

一対四とはいえ、そこそこ渡り合えている。しかし四人に余裕はなかった。

 

ーーーー消耗が激しすぎる。たった一つの駆け引きにこんなに体力を奪われるなんて…

 

何か一つでも間違えれば即死に至るギリギリのやり取り。緊張感は計り知れない。一撃繰り出すのにこんなに疲れたのは初めてだった。耐えられているのは実戦経験の豊富なタエコとチサト。怒りが身体を上回っているファンの三人。既にチェルシーはもう肩で息をしている。この四対一の状況、長くは保たせられない。そしてこちらは誰か一人でも欠けた瞬間、終わる。

それはエスデスから見ても明らかだったのだろう。狂気の笑みを浮かべ、今度は向こうから仕掛けてくる。

 

「くっ、このぉ!!」

 

チェルシーが糸を張り巡らせ、突撃を防ごうとするが、時間稼ぎにもならない。

 

ーーーーならば……

 

身体を相手に対して半身で構え、腰を落とす。殺気を思い切り叩きつける事で相手の動きを縛り、後の先を取るカウンター剣技。

 

「花風……よらば斬る!」

「無駄だ」

 

構えを見ただけで技の全貌を見抜いたエスデスは無数の氷柱を顕現させる。

 

「ヴァイスシュナーベル」

 

氷の槍がタエコ目掛けて一斉に飛翔する。

 

「グッ……ぉおおおお!!」

 

前方から押し寄せる無数の氷の礫。何とか全て斬り伏せるが、こうなっては後の先もクソもない。太刀を振り切った状態で完全に無防備になってしまう。

 

「まず一人」

 

突き出されるレイピア。しかしそれはタエコではなく、別の何かに向けて振るわれていた。金属音がなる。地に落下したのは一振りのナイフ。自分に向けて投げられた物の正体を見たその時、ターゲットがタエコからナイフを投擲したチェルシーへと移った。

 

「そのナイフ、なぜ貴様が持っている」

 

チェルシーが隠れていた場所に瞬時に現れる。逃げる間も隠れる間もなかった。

 

「そうか、ヴァルからもらったのか」

 

鋒が目の前に突きつけられる。もう糸も使い切った。チェルシーに戦う術はない。

 

「動くな!動いた瞬間、こいつの頭を串刺しにする」

 

チェルシーを救うべく動こうとした三人の動きを一言で硬直させる。逆らえば彼女は本気でやる。その事を三人は本能的に察してしまった。

 

「ヴァルの居場所を答えろ。そうすればもう少し生かしておいてやる」

 

寒気が走るほど冷たく、美しい瞳がチェルシーに向けられる。逆らえば死。待ち受ける自分の未来を察するには充分な冷たさだ。

 

「ごめんなさい、先生」

 

彼の居場所を言ってはいけない。言えばきっと師匠は殺される。しかしこのままでは自分達が死ぬ。チェルシーから出た謝罪の言葉は自分に屈した言葉だとエスデスが取ったことは当然と言える。

その緩みがチェルシーに背中に携えていた長剣を掴ませることを成功させた。

 

「私………此処で死ぬかも」

 

震える手でバーナーナイフを構える。謝罪の言葉は師の教えに背くことへの謝辞だった。

 

「そうか、なら死ね」

 

レイピアが振り上がる。

 

「燃えろぉおおおお!バーナーナイフぅううーー!!」

「無駄だ。貴様のような弱い奴に扱える代物では……」

 

言葉が止まった。突如左右から現れた影がチェルシーに飛びつく。二つの影はチェルシーの手を握っていた。影の正体ははタエコとファンだった。

二人の行動にエスデスが気付けなかったのは二つ理由がある。

 

一つはもちろんファン達が気配を絶って動いていたから。その手の技術は師に真っ先に叩き込まれた。隠密起動に関して、彼女達はトップクラスといえる。

それでもエスデスを攻撃対象とした動きだったなら、彼女はすぐに気づいただろう。しかし、そうでなかったことが二つ目の理由。ただ、チェルシーを支えるための行動。三人の絆がエスデスの死の鋒を逸らしたのだ。

 

「私たち一人一人じゃ無理でも……」

「三人なら……届くでしょ」

「貴様っ……!?」

 

レイピアを繰り出すがもう遅い。長剣から炎が湧き出る。ヴァリウスのように制御もコントロールも出来ていない。ただ撒き散らされるだけの赤い炎。未熟も未熟な帝具の使い方だ。

けれど、そんな未熟な炎でも壁には充分なる。摂氏六百度を超える熱き光はエスデスにバックステップを強いた。

 

ーーーーだが所詮一時しのぎ!

 

エスデスの肢体に氷がまとわりつく。バーナーナイフの炎をデモンズエキスの氷で相殺できることは3年前、既に実証済み。炎に突貫し、殺す。この程度の炎なら充分可能だと判断した。その想定は間違っていない。

 

しかし、三人が作り出したこの数秒が、この場にいる全員の………いや、帝国の未来をも動かした。

 

「下手クソ」

 

声が聞こえる。ある者は三年間、弟子達は三日間聞いていなかった、慣れ親しんだ愛しい人の声。

 

「ーーーーっ!!」

 

その声に向けてエスデスはレイピアを突き出した。返ってきた手応えはフワリとした感触。

 

ーーーーコレは……

 

今エスデスが繰り出したのはただのレイピアではない。帝国最強の混じりっ気なしの本気の一撃だ。それをこうも容易くいなせる者などそうはいない。しかもそれは弾くような乱暴なものではなく、エスデスの腕さえ気遣うような、柔らかい受け方だった。

 

ーーーーこんな事ができるのは……!

 

歓喜の笑みがエスデスから溢れる。炎のカーテンの向こうから現れたのは火に負けないほど紅い緋色の髪に紅玉の瞳。エスデスが三年間、そして弟子達が三日間待ち続けた顔だった。炎が剣に収束していく。真の主を得た魔剣の炎は彼に付き従うように纏われていく。

 

「こうやるんだよ、魔法使いの弟子。まあ魔法が使えただけ努力賞くらいはくれてやる」

「お師様!」

 

三人の少女を守るように前に立つ。紅玉の瞳はしっかりとかつての親友を捉えている。

 

「待っていたぞ、私の人狼!」

「お前の間違い(フェイル)を伝えに来たぞ、エスデス」

 

役者は揃った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お気に入り千件突破しました。読者の皆さま、ありがとうございます。これからも頑張りますのでよろしくお願いします。最後までお読みいただき、ありがとうございました。ついに再会してしまった魔神の炎狼。死闘の末、導かれる未来は……次回で墓守編終了となります。オリジナル編を挟んで無印に突入しますので宜しくお願いします。
励みになりますので、感想、評価よろしくお願いします。面白かったの一言でも頂ければ幸いです。

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