やはり鋼鉄の浮遊城での奉仕部活動はまちがっている。   作:普通のオタク

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頑張りますとしか言えないし、頑張るしか無いネ


そして、ここからすべてが始まる

奉仕部の活動理念について、雪ノ下雪乃はこう言っていた。

魚を与えるのではなく魚の取り方を与える、と。

では、このデスゲーム内に於いて、魚とはなにか。リソース……主にアイテムだ。

ではアイテムの取り方は?

これは4通り。買う。クエストや戦闘で入手する、謂わばドロップ品。自身の手で作る。そして、奪う。

最後のは問題外としても3種類。それぞれには共通する要素がある。それは、敵を狩る必要があるということだ。

先ほど、俺はスキル云々なしで活動と言ったが、現実的に見れば奉仕部をやるにあたってスキルは必要だ。魚の取り方を教えるために、俺達は……少なくとも……戦闘ができねばならない。

 さらに言えば、SAOの武器は多岐にわたるために、自分達の使用する以外の武器も知った方が良いだろう。

 支援内容を広げるのであれば、装備の使い方やコツを教えることは必要になるだろう。

 その為には、レベルが、経験が必要だ。なければ教えることもできない。自分のことで精一杯になる姿が目に浮かぶ。

結論を述べよう。

 

「駄々をこねるな、由比ヶ浜。近くのザコを狩るならともかくこの選択はゲームクリアまで終わりはないぞ」

「……ヒッキーとゆきのんは自分1人で外に出るつもりだったのに、戦闘を必要な事で言うのはずるくない?」

由比ヶ浜がジト目で言った。そして、それを言われると痛いのも事実だ。

慎重に動けばどうにか、死なない程度には立ち回れるだろうという思いが確かに俺の中にはあった。おそらく、雪ノ下も同様だろう。

だからこそ、さっき俺たちは自分だけ街から出ようとしたのだ。

もっとも、今は由比ヶ浜の涙と俺達だって離れたいわけではないという本音があり、置いてけぼりにする手段はあくまで保留にしたのであるが。

「ま、そりゃそうだな。けど実際、ノーリスクノーリターンはないが、俺の選択肢にお前らを危険な目に合わせるってのはない」

「それは私にも言えることよ比企谷くん。私からしてもあなた達を危険な目に合わせる選択肢はないもの」

「はい、やめやめ! さっきと同じ流れだよ二人共!」

由比ヶ浜の静止が入り、俺達は一息つく。やはり、どうしても冷静になりきれないからか、内容がここから進まない。これでは時間だけが過ぎていくことになるだろう。

ため息をつき、頭を片手で掻きむしる。頭に刺激が走りイライラをごまかす程度にはなった。フケなどは飛ばないから不潔ではないので、雪ノ下。そんな目でこっちを見るな。

ため息を一つつき、手でメニューを表示する。

「……妥協が必要だな。とりあえず、ボス戦には参加しない。安全マージンを高めに取る。この2つか?」

「それだと、いざという時に攻略プレイヤーからの要請を蹴ることになるのだけれど……このゲーム内だと評判が悪くなるのは避けるべきではないかしら」

「まぁたしかに。前線での高効率な金策はできなくなるかもな。だが、俺達の目的は生き延びることだ。脱出は最終的な結果として着いてこればいい」

言いながら、インスタントメッセージ記入の画面を表示し、先ほどと同じように可視化する。そのままついでに方向性をメモして箇条書きにした物を二人に見せた。

 

・当面の目標:攻略組、始まりの街のプレイヤーの支援による擬似的な奉仕部活動。ただし始動までに相応の準備が必要

・実際の行動:レベル上げを近辺でしつつ情報収集。奉仕部の活動のためにもいろいろな武器を使って行うべきか

・前提条件:安全第一。絶対に死なないこと。

 

「……まぁこんなところか」

今書いたインスタントメッセージを二人に送信しつつ確認を取る。二人共それを読み、頷いたのを確認し……俺は、由比ヶ浜の方に視線を向ける。

「由比ヶ浜。俺と雪ノ下が外でレベル上げをする間、頼みたいことがある」

俺の発言に二人共、驚いた表情になる。由比ヶ浜本人はどちらかと言えば困惑か。

「ちょ、ちょっと待ってヒッキー。私だって戦えるよ!?」

「分かってる。ただ少しやってもらいたいことがあるだけだ。俺と雪ノ下には不向きな内容で、だ」

俺の言葉から雪ノ下は察したのか、由比ヶ浜の方に視線を向けた。

「私と比企谷くんは情報収集が不得手なのよ……コミュニケーションを取れないわけでは、断じてないのだけれど。お願い、できるかしら」

歯噛みするように言う。ボッチだものね……俺達。

「ま、ありていに言えばそういうことだから……情報屋を探して、合流して欲しい。これは俺達のこれからを決めるために必要なことだ」

俺の言葉に由比ヶ浜は少しの間考えるように俯いていたが、

「……わかった。見つけられるかどうか、わからないけど……任せて、二人共!」

俺と雪ノ下の言葉聞いて、由比ヶ浜は元気に頷いた。

それを見て俺達は立ち上がる。

やると決めた以上、足を止めてる時間は……働きたくはないが……あまりないのだ。




正直、難産でした。
感想、いつもありがとうございます。返信はまた余裕ができたら、回答してないものにもしていこうと思います。

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