こんな不定期更新な作品ですが、少しでも多くの皆さんに楽しんでいただけるよう、これからも頑張っていきたいと思います!
それにしても、しばらくハーメルンで投稿していなかった間にすごい便利になったなぁ。何日分も予約できるという機能は、僕みたいなものにしてはすごく嬉しいです。
今回は、佐天さんのオリ能力の話です。出来る限り頑張ってみましたが違和感があったらごめんなさい。
この物語ではこれで行きたいと思います。
その後、なんやかんやで補習を終え、お昼頃下校した。
(「上条ちゃん用の特製テストを作ってきますよ!」と小萌先生は言ってくれていた。その献身ぶりに上条は、今のままで受けても受かる気がしないとは言えなかった。「……不幸だ」)
校門前で青髪ピアスと別れ、上条と土御門は待ち合わせ場所の某ファミレスへと向かった。
「えぇと……ここでいいんだよな?」
店内に入り、目的の人物達を探す上条。
すると――
「……かみじょ~さ~ん……こっちです~……」
と、まるで地獄の底から死者がおいで~おいで~と生者を誘うような低い声に、上条たちはギョッとし、そちらに目を向ける。
そこには――
「――これと!あと、これも食べたいんだよ!」
「……い、インデックスちゃん……も、もうそろそろ勘弁していただけないでございます!?」
自分のキャラの本領を発揮するシスターと、顔面蒼白で涙目の保護者がいた。
×××
「とうまはね! もう少しデリカシーってものを身に付けるべきなんだよ! いきなりレディに向かって出会い頭に拳骨なんて、英国紳士を見習うべきかも!」
「うるさい。まだ、一日が半分残っている時間帯にも関わらず、ファミレスを営業停止に追い込むレベルで暴飲暴食のなんちゃってシスターを止めるためだ。英国紳士も褒め称えてくれるさ」
あの後、上条がインデックスに愛(?)の鉄槌を食らわし、流れるように店員さんに向き合ってまだ来ていない注文をキャンセルし、テーブルの上の――すべて綺麗に完食していた――料理を下げてもらい、ようやく本題の話に入った。
インデックスはまだガミガミと文句を言い、佐天はそれを苦笑しながら宥めつつ、上条はそれをはいはいと受け流している。
土御門は、上条がインデックスに触れる際、一瞬ピクリと右手を動かし、改めて左手で拳骨したのを見て、少し悲しそうに目を伏せたが、サングラスの為か、誰にも気取られることはなかった。
「さて。今日集まってもらったのは、他でもない」
と、土御門は気持ちを切り替えるように、明るい口調で切り出し、自分に注目を集める。
「――佐天涙子。君に目覚めた、能力の話だ」
その言葉に、佐天は居住まいを正し、ゴクリと生唾を呑んだ。
場も一気に真剣な空気になり、インデックスも口を閉じる。
まず、上条が土御門に問いかけた。
「……お前がわざわざ説明するってことは、やっぱりあれは超能力じゃないのか? 俺はてっきり、
上条の問いに、土御門は首を横に振った。
「いや、それはない。念の為に調べたが、昏睡状態から目覚めた後も強化した能力を使えたって奴は一人もいなかった。一度たりともな。…………お前も、それは試しただろう?」
そう言って、土御門は佐天に問う。
佐天は項垂れつつ、答えた。
「……はい。目覚めてから一度試しましたけど、能力を発動することすら……」
上条は、そんな佐天を悲しげに見つつ、表情を切り替え、再度土御門に問いかける。
「じゃあ、やっぱり魔術か?……でも、能力開発を受けたこの街の学生は、魔術を使うことは出来ないんだよな? 確か、無能力者でも?」
上条は、最後はインデックスに目を向け、問いかけた。
インデックスは大きく頷く。
「そうなんだよ。だから、るいこの能力は魔術でもないと思うんだけど……」
インデックスは最後の方の言葉を濁した。
上条も戸惑った。超能力でも、魔術でもない、異能。上条も、さすがのインデックスも、まったく見当がつかない。
上条は、諦めて土御門に目を向ける。上条だけでなく、インデックスも、佐天も土御門を見た。
土御門は、大して勿体ぶることもなく、簡潔に答える。
「簡単に言うならば、佐天の能力は魔術で超能力を強化したものだ」
土御門の言葉に、上条は怪訝な反応を示す。
「それってつまり……どっちも使ってるってことか? でも、それじゃあ――」
「いや、簡単に言えばってだけで、仕組みはもう少し複雑だにゃ。まずカラクリは、その俺がやったお守りだ」
そう言って土御門は、佐天のカバンに付けている二つのお守りの片方を指差す。
「こ、これですか?」
「ああ。実は、それは俺の実家の――土御門家の代物でな。」
土御門は、にやりと得意げに笑って答えた。
「――人工的に作り出した、疑似精霊が宿っている」
「ええ!?」
インデックスがその言葉に驚愕し、上条と佐天は呆気にとられる。
「そ、それって、そんなにすごいの? インデックスちゃん?」
「す、すごいなんてものじゃないんだよ! も、もとはるが言う土御門家って、あの安倍清明の土御門家だよね!? ジャパニーズ陰陽師が精霊の作成に乗り出してたなんて、私も初耳なんだよ!」
「……ああ、残念ながら、そこまで大層なものじゃないぜい」
興奮するインデックスとは対照的に、土御門は淡々と言い募る。
「元々、陰陽師――というより
「……つまり、世間一般――という言い方も変だが、魔術師の中で世界的に広まっている精霊とは、また違うものってことか」
「そうだ。天使なんかとはまた違う――言うならば、術式の一部ってことだにゃ」
そこまで説明すると、インデックスはなるほどと言った表情で、おとなしく席に座る。
だが、佐天はさっぱり分からないようで、真剣な顔をしているが、無意識に首を傾げている。
土御門は説明を続行した。
「まぁ、そんなこんなで、ある日誰かが考えた。だったら、“あらかじめ精霊をこちらで作ってしまえば、もっと強力な術式を、スムーズに行えるんじゃないか”、とな。それで、行われたのが、人工精霊の作成だ。……だが、元々精霊――少なくとも、当時彼らが考えていたような精霊――なんて、存在すら不確か。結果、作っては見たものの、効果はいまいち検証しづらく、中にはまったく効果を生まないものもあったそうだ。……その内、徐々に他の魔術文化に触れるようになり、もっと効果的な魔術知識を得て、精霊文化は衰退していった」
「……そっか。だがそうなると、どうしてお前はそんなものを持っていて、そして佐天にそのお守りを渡したんだ?」
上条の疑問はもっともだった。
言うならば、その人工精霊は大昔に失敗した実験成果に過ぎないはず。
なぜ、今になってそんなものを持ちだして、なおかつ佐天に授けようと思ったのか。
土御門は、ニッと笑い、上条の右手を指さした。
「前に、カミやんは自分の右手――
「……まぁ、人に言われた考察だけどな。それも、あくまで似たようなもので、これと同じものとは限らないし」
インデックスと佐天はほえ~といった表情で呆気にとられる。
自身の思っていたよりも、上条の能力のスケールが大きくて驚いているようだ。
「――それに、俺なりの考察を加えてみた。つまり、異能の力――超能力や魔術は、“世界を在るべき状態から外れた形に改変する力”なんじゃないか、とな。だから、基準点であるカミやんの右手――
「なるほど……すごいんですね! 上条さん!」
「いや、あくまで土御門の推測だからな」
上条は苦笑といった表情を浮かべる。
前回の世界では、あの魔神になりそこなった男――オッレルスに似たようなことを言われた。
上条の右手は、というより
そんな魔術師の願いの、夢の形である、と。
この世界に来て、あの戦いを経て、前回より“深い部分”で
上条は、それを痛感していた。
「……それで。それが今日の話とどうつながるんだ?」
上条が話を、佐天の能力の話に戻す。
「――つまり、超能力も、魔術も、仕組みや方法はまるで違えど、事象の改変って結果は同じだってことにゃ。つまりどっちも、世界に歪みを齎す手段なんだ」
土御門の言葉に、上条、インデックス、佐天の動きが止まる。
上条の表情が心なしか引き締まり、インデックスもプロとしての顔を見せる。佐天はただ一人少し戸惑いを隠せないでいた。
土御門は、そんな面々を見て、少し愉しげに話す。
「そして、その歪みを齎す力の強さが、超能力で言うレベルだ。もっというなら『
「……そ、そうですよね」
佐天が改めてお前の単純な力不足だと言われて落ち込むが、上条が土御門に言い放つ。
「つまり、それを人工精霊のお守りで解決したってわけか?」
その言葉に、佐天はハッとする。
そうだ。よく分からないが、自分はあの時能力を使えた。それも
土御門は、再びニヤリと笑い、言う。
「賭け、だったがな。……今回、佐天に渡した精霊は、本来別の精霊と併用して使うものなんだ。いうならば、“特定の歪みが起きやすいよう”に“特定のエリアを改変”する、といったところか。そうやって、自身の攻撃を強化するのに使われるんだ。だからこそ、佐天の貧弱な改変力で、あれだけの威力が発現した」
「ひ、貧弱……」
遠慮のない物言いに少し凹んだ佐天だが、その通りだ、と思った。
自身の手の中にあるお守り。この中にいるという精霊が手助けしてくれたからこそ、自分はあれだけの力を発揮できた。
そこに、上条が再び疑問を呈す。
「……仕組みはなんとなく分かったが、それって結局魔術を使ったってことじゃないのか? なんで佐天は無事なんだ?」
「そうなんだよ。能力開発を受けた人が魔術を使ったら、全身の血管が破裂して血みどろになるはずなんだよ!」
「そうなの!?」
佐天は驚愕した。あの時、魔術に心奪われて使ってみたりしたら、自分はそんな目に遭っていたのか、と。
土御門は笑って答える。
「その点は心配いらないぜい。その人工精霊は、いわゆる自律型――自我をもっているからな。事象改変は、精霊自身の魔力で行う。だから、扱い的には霊装と同じ。魔力を流すわけじゃないから、副作用はない。……強いて言うなら、そうやってお守りに触れることによって、精神に同調するってことくらいか。つまり、身に付けておくことで、精霊に心を読まれているんだよ」
「え!? そうなんですか!?」
佐天は驚き、思わず身を仰け反らしてお守りを注視する。
だが、なぜか手放そうとは思わなかった。
「ああ。そうやって、同調することで、所有者がどういった能力を――事象改変を行いたいかを読み取るんだ。……もっと言うなら、同調することで、所有者の人柄を把握する。この精霊にはさっきも言った通り自我があるから、そこでこの精霊に認められなければ、何もしてくれない。……こういったところが、使い勝手が悪くて廃れた要因でもあるんだけどにゃ」
土御門の説明をぼけっと聞いていた佐天は、その言葉に何とも言えない不思議な感情を抱く。
すると、上条が優しい表情で、佐天に言った。
「つまり、佐天はその子に選ばれたってことだな」
佐天は思わず、上条を見る。
上条はすげぇなと言って笑っていた。
インデックスも優しい表情で佐天を見つめる。
佐天は、特別な力というものに憧れ続けた少女だった。
だが、特別な力はことごとく佐天を選ばなかった。
そのことにどうしようもなく苦しみ、嫉妬し、嘆いたこともあった。
だが、ついに舞い降りた。
佐天を選んでくれた、特別な力が、今、佐天の手の中にある。
「……何度も言うようだが、その精霊には自我がある。今は、お前の力になってくれるが、嫌われたらお前の元から離れていくぞ。……精々、愛想を尽かされないようにしとくんだにゃ」
土御門は、言葉は厳しいが、優しい口調で言った。
佐天は、溢れそうになる涙を袖で拭いながら、両手の中にふんわりと包み込んだお守りを優しく見つめつつ、語りかけるように言った。
「はい。……あたしを、選んでくれて、ありがとう。……これからも、よろしくね。」
『了解です! マイマスター!』
「――――へ?」
自分の呟きに可愛らしい返事が返ってきたことに、佐天は呆気にとられ、間抜けな声が漏れた。
その事に、上条達は訝しげな反応をするが、佐天はそちらには気づかない。
なぜなら、佐天の両手の中――お守りに腰かけるように。
手の平サイズの、背中に透明な羽を生やした美少女が、こちらをニコニコしながら見ているのだから。
佐天は混乱する。思考が真っ白になる。
少女はふわりと、自身のその羽を小刻みに高速に動かすことにより宙に浮かぶ。
その姿は、精霊というより、むしろ――
『こちらこそ、よろしくお願いします!』
自身の顔のすぐ近くに、その光輝くような笑顔を向けられた佐天は、なんかもう可愛いからいっか、と色々な疑問を
「うん。よろしくね! あなたのお名前は?」
『私、まだ名前とかないんです……こうして、マスターの人とお話したの初めてで……ですから! ですので、よかったら、マスターが私にお名前つけてください!』
「え!? そんなの困るよ……あたしネーミングセンスとか自信ないし……」
『いいえ! マスターに付けていただきたいんです! もし、マスターがつけてくれたら、私、その名前をずっと大事にします!』
「そっか……じゃあ、頑張って付ける。……えぇと……みなさんは、どんな名前がいいと思います?」
と、佐天が他の人たちの方に目を向けると、なぜか三人とも優しい顔をしていた。
「……え? どうしたんですか、みなさん?」
「大丈夫だ、佐天。俺たちが付いてる」
「……そこまで、うれしかったんだな。俺も、そこまで喜んでくれるなんて嬉しいぜい。だから、自分をしっかり持て!」
「……だいじょうぶ。たとえ、るいこが普通じゃ見えないものが見えるイタイ子でも、わたしはずっと友達だからね!」
最後のインデックスの言葉で、佐天は自分の状況に気づき、顔を真っ赤にして猛抗議する。
「ち、ちがいますよ! 別に幻覚を見てるわけじゃないんです! ここにちゃんといるんですよ! っていうか、精霊ってこういうものじゃないんですか!?」
佐天の抗議を聞いて、上条は土御門に問いかける。
「……そうなのか?」
「いやぁ~。何しろ大昔のものだからにゃ~。俺もお宝感覚で持っていたものだから、詳しいことは知らないんだぜよ。だが、自我を持った精霊を宿していることは確かだからにゃ。もしかしたら、所有者にだけ姿が見える機能があってもおかしくはない。と、思う。…………佐天が、正常ならば、にゃ」
「せい! じょう! です!」
佐天が涙目で抗議していると、上条ははははと笑い、佐天に言う。
「だが、そうなると、佐天は相当その子に気に入られたんだな」
「――え?」
「名前、付けてやれよ。頼まれたんだろ?」
「あ――」
そこで、佐天は再び、この子の名前について考える。
佐天が縋るような目で上条を見ると、上条は――
「大丈夫だ。佐天が一生懸命悩んでつけた名前なら、きっと気に入るさ」
佐天はその言葉を受け、インデックスに顔を向ける。
インデックスは、花が咲くような満面の笑みで佐天を勇気づけた。
二人の励ましに背中を押され、再び精霊の少女と向き合う。
精霊の少女は、にっこりと笑って、佐天の言葉を待っていた。
佐天もそれに気合いを入れた笑顔で応え、自身の心に湧き上がってきた、その名を伝える。
「うん、決めた。あなたの名前は――
「……ミウ……それが、私の名前……はい! ミウはすっごく気に入りました! ありがとうございます! マスター!」
佐天は凄く嬉しそうに微笑む。
それだけで上条達は、佐天に頼もしい友達が増えたのだと分かり、嬉しく思った。
「……まぁ、これでとりあえず一通りの説明は終わりだ。カミやん。間違っても、あのお守りに右手で触るなよ」
「分かってますよ。佐天の大事な友達だしな。……さて、とりあえず昼飯でも注文するか。この後、俺たちは力仕事が待ってるしな」
「ホント!? じゃ、じゃあ、このページが食べたいんだよ!」
「お前はさっき散々食ったろうが! それからページで注文すんのやめろ!」
「あんなのオードブルですらないんだよ! まだまだメインディッシュはこれからかも!」
「ま、まぁまぁ……一応、私、ステイルさんと神裂さんから生活費はもらってますから……」
「……それ、この後使う分残ってるのか?」
「…………私服を我慢して、残りの夏休みを制服で過ごせば、何とか……」
「…………佐天」
佐天が目を逸らしながら言った言葉に、上条の涙腺が崩壊した。
「だ、大丈夫ですよ! 御坂さんや白井さんは校則でいつも制服ですし! 初春も
「店員さん!! 今すぐ、このページの料理持ってきて!! あと、このケーキも
「……ふっ。カミやんの分の昼飯は、俺が奢ってやる。思う存分、男を見せろ、カミやん」
「ああ……。恩に着るぜ、土御門」
思わず目の端から美しい雫を流した佐天を見た時、すでに
三十分後、パスタを一皿ずつ頼んだ上条と土御門よりも早く、一ページ(ステーキ類)分の料理を食い果たしたインデックスに絶句しながらも、楽しいランチタイムは幕を閉じた。
「ど、どうだ、インデックス。……満足したか?」
「う~ん。まぁ、五分目ってところだけど、とりあえずやめとくんだよ。夕ご飯もあるしね」
「「なん……だと……」」
「……前回、よく破産しなかったな、カミやん」
インデックスのこの倍はイケます宣言に、顔を青くしながら上条と共に絶句した佐天だったが、とりあえず空気を変えようと、上条に話かける。
「え、えぇと、上条さん、今日は本当にありがとうございます」
「あ、ああ、大丈夫大丈夫。佐天も、コイツの食費に悩まされたらいつでも言えよ。また奢るから」
「い、いえ、もちろんそれもなんですが。……今日の、この後の……」
「ああ。そっちの方こそ、もちろんだ。こういう時に、男手は必要だろう。遠慮はなし! 困った時は、お互い様だ」
そう言って、上条達は席を立ち、ファミレスを後にする。
「それじゃあ、行こうか」
「腕が鳴るにゃ~」
「はい! よろしくお願いします!」
「よろしくなんだよ!」
×××
「――と、いうわけで、木山春生の証言の元、数人の実験の被害に遭った
「了解しました。その子たちの容体は?」
「バイタルは安定してるわぁ。……けど、さすがの親船さんのチームでも、木山の言う通り目を覚ます目途力は立たないそうよぉ。引き続き、研究力は続けるそうだけどぉ。木山はそこまで重い罪にはならないそうだから、釈放し次第すぐにチームに合流力できるようにするわぁ」
「ご苦労様です、操祈ちゃん。本当にありがとうございました。上条くんにも労いたいのですが、今日は、彼は?」
「し~ら~な~い~わ~よ~。今日は用事力があるからって、私一人で親船さんに事件の報告力をしてこいって言って行っちゃったんだものぉ~。なんかぁ、私抜きであの後でっかい事件力に首突っ込んだみたいだしぃ~。最近、構ってくれなくてつ~ま~ん~な~い~」
「女王。駄々っ子みたいに手足をバタバタするのは、止めてください。いくら派閥の者がいないからと言って自由過ぎます」
「ふふ、いいのよ。操祈ちゃんが我儘を言ってくれるのは、私と上条くんと縦ロールちゃんくらいだもの。ここでくらい言わせてあげましょう」
ここは、学園都市統括理事――親船最中の執務室。
食蜂操祈と縦ロールは、親船から依頼を受けた
しかし、適宜、縦ロールは親船に事件の捜査状況を報告していたため(実際、上条も電話ではあるが、きちんと解決報告をしていた)、これは形式上のもので、言うならばきちんと区切りをつけるといった側面が大きかった。
なので、残りの時間は、堅苦しいのは抜きにしてのガールズトークとなるわけだが、ここ最近上条とあまり会えていない食蜂は少し不貞腐れ気味で、親船と縦ロールに愚痴を零す感じになっていた。
その年相応の可愛らしい行為に、親船は微笑ましく、縦ロールはため息を吐きながら聞き役に徹していた。
「最近、どうもほっとかれている感じがするのよねぇ~。
「ぶっちゃけましたね。それが本音ですか」
「そうよぉ! もっと、私に構ってほしいのよぉ!」
「ふふ。可愛いわねぇ、操祈ちゃん」
親船は、そんな普通の子供のように青春を謳歌する食蜂を、本当の娘を慈しむように見ていた。
食蜂も親船の前では無意識の内に十四才の女の子でいられた。
「もぉ! 上条さんは何してるのよ! また何か事件力に巻き込まれてるのぉ!?」
「いえ、今日はもっと平和的な日常編の用事ですよ」
「…………え? 縦ロールちゃん、上条さんの用事力がなにか知ってるの?」
「? ええ。
「え? え? 白井さん? 白井さんも一緒なの?いったいどうい――」
「――上条さんは今日、佐天さんとインデックスさんのお引越しを手伝うそうです。なんでも、上条さんのお部屋のお隣にお引越しなされるとか」
食蜂は硬直する。
常盤台の女王が、ひきつった顔で面白リアクションをするほど、その話は衝撃的だった。
そして、数秒の沈黙。
親船が、テーブルの緑茶を上品に啜った数秒後――
「なんなのよ、それぇ~~!!!!!」
完全防音の室内に、女王の叫びが響いた。
次回も、穏やか日常編。
でも、相変わらず僕は何気ない会話というのが恐ろしく苦手だ。
いつか西尾先生のような面白い軽快な会話劇というのを書いてみたいなぁ。