ソードボッチ・オンライン   作:ケロ助

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結構書いてるのに、話題にならないことで話題のケロ助です。
現在忙しすぎてなかなか早く書けませんが、来週はそんなに忙しくないような気がします。

……俺、夏休みになったらたくさん投稿するんだ……。夏休みだいぶ先だけど。


第22話

「はぁ!?また折ったぁ!?あんたふざけてんじゃないの!?」

 

キーンと耳鳴りがするほど大声で怒鳴られる。当の怒鳴ったピンク髪の少女、リズベットはまだギャーギャーと喚いている。しかしそれも仕方のないことなのかもしれない。

 

彼女と出会い、契約という名の都合のいいごんぎつねにされてから二週間。俺がへし折った彼女の作品の数は、先ほど七本になった。

 

「どんだけ耐久度重視にしたと思ってんの!?それを三時間で折って帰るって……わざとでしょ、わざとなんでしょ!?」

 

「いや、わざとじゃねぇって……」

 

柳眉を吊り上げるリズベットを、どうどうと落ち着かせる。

 

「考えてみろ、折ったのは俺じゃなくて、攻撃してきたモンスターだ。つまり俺は悪くない。なんならあの剣の仇は取っておいた」

 

「尤もらしいこと言ってんじゃないわよ!あんたが無茶な使い方するからでしょ!うわーん!」

 

剣のついでに、少女の心も折ってしまったらしい。産み出した我が子とも言えるべき作品を次々と破壊され、涙腺が崩壊したようだ。

 

「仕方ねぇだろ……。つかお前にも話しただろ」

 

「下手くそ〜!ゴリ押し〜!たまたまレアスキル持っただけの素人〜!」

 

「…………」

 

反論できないけど言い過ぎじゃないですか?わんわん泣き続けるリズベットに、なにもできず立ち尽くす俺。俺も泣きたくなってきた……。

 

なぜこうも武器を壊してしまうかというと、もちろんそれには理由がある。ひとえに、俺の持つユニークスキル《暗黒剣》のせいだ。

 

暗黒剣は両手剣からの派生(だと考えている)ユニークスキルで、使用するには『両手剣』を『片手』で持たなければならない。片手直剣や他の武器では発動しない。

 

特性としては、とにかく攻撃力の高さだろう。両手剣も高攻撃力広範囲のスキルだが、暗黒剣はその上を行く。というか、攻撃力だけ見れば同じ武器を使っても、両手剣の五倍近くの威力を出せる。神聖剣が攻防自在ならば、暗黒剣は攻撃偏重といったところか。

 

だが、やはり強大な力にはそれなりの代償が存在するのだ。

 

「暗黒騎士(笑)〜!」

 

「おい馬鹿やめろお願いします」

 

今現在、アインクラッドで唯一衆目にユニークスキルを曝した男、ヒースクリフ。元々騎士団長な上にユニークスキルが《神聖剣》なので、付いた二つ名が《聖騎士》ヒースクリフ。

 

それを聞きつけた鼠女が俺に付けたあだ名が、《暗黒騎士(笑)》だった。

 

鼠には高いコルを払って口止めし、同席していたアスナには全力で土下座して口止めした。アスナは快く(ドン引きして)承諾してくれた。

 

中学生の頃の俺ならば喜んだかもしれないが、今の俺はもう厨二病を患ってはいない。こんな二つ名を付けられ、あまつさえその名で呼ばれるようなことがあれば、宿に戻って一日中布団の中で叫ぶまである。

 

「暗黒騎士(笑)〜!」

 

「つかなんでお前が知ってんだよ……」

 

俺はまだ泣き止まないリズベットの容赦ない罵倒の嵐に耐え続けることとなった。……こいつに教えたのだーれー?

 

・ ・ ・

 

この手は、いつも届かない。

 

正確には、肘から先は斬り落とされ、砕け散る。

 

斬り落としたモンスターはニヤリと笑い、俺に見せつけるように武器を振り上げる。

 

彼女を守らなければ。けれど残った隻腕では両手剣を振るうことはできず、ただ目の前の惨劇を見せ付けられる。

 

振り下ろされた凶器は彼女のHPバーをあっさりと削り取り、ゼロにする。

 

そして俺に覆いかぶさるように倒れ込む彼女は、俺の目の前でただの青い光となって砕け散る。

 

もう、この光景は何回目だろうか。この気持ちは何度目だろうか。

 

俺は調子に乗っていたのだ。このレベルなら、この層ならなにが起ころうと問題はないと。

 

「ゲームであって、遊びではない」と、茅場晶彦が一番最初に説明したルールを聞いていたにも関わらず、図に乗った。なんでもできる気になっていたのだ。

 

口では気をつけろなどと偉そうに抜かしておきながら、一番気を抜いていたのは俺だった。その結果がこれだった。

 

俺の傲慢さが、この結果を招いたのだ。

 

恐怖に怯える彼女を無責任な言葉で唆し、挙句殺した。

 

だから、これはきっと呪いなのだ。

 

優しい彼女が遺したものではない。

 

俺が、俺自身にかけた呪い。

 

・ ・ ・

 

俺はクエストで草木の生えない砂漠へとやってきていた。

 

この間開放された四十七層は、四十六層とは打って変わって寂しい砂漠地帯だ。とはいえ、季節は冬なので、昼でもそこまで気温は高くならないし、夜は極寒になる。

 

元々砂漠の夜は寒いというが、下手したら四十六層よりも寒い。

 

俺は次々とポップするサボテンやらガイコツを薙ぎ払いつつ、目的地へと進む。

 

クエスト名《女王の秘法》。

 

砂漠のある場所にある女王の墓。そこに眠る女王の宝を回収するクエスト。ぶっちゃけ墓荒らしである。

 

なんでも、その墓に眠る女王は生前魔女と呼ばれた悪女で、美貌を武器に男を籠絡し、王の妻となる。その後すぐに毒を盛って夫を殺し、女王へと即位した。

 

しかし女が王になるなどあり得なかった時代で、それはかなりの異常事態であり、多くの人間が反発した。女がしたように、毒を盛り、罠を仕掛け、刺客を差し向けた。

 

けれど女王は秘術を用いてそれを凌いだという。そして最後には自分の権力を知らしめるために巨大な墓を作らせ、その中でゆっくりと死んでいった。

 

女王の死後、彼女の秘法を求め数多の冒険者が墓地へと足を踏み入れたが、無事に戻ってきたものはいない。

 

怪談話でよく聞いた内容だが、今回のクエストはその理由を探れ、さらに色々と持って帰ってこいというものだ。

 

……なんて言うか、全体的に馬鹿じゃないの?墓荒らしやめればいいだけじゃん……。

 

そうは言いつつも、クエストをクリアすればボスなどの情報が入ることはままあり、そのために誰も受けていないまたはクリアできていないクエストが鼠から回されてくる。

 

色々と弱みを握られている俺としては、鼠からの依頼は受けないわけにはいかない。よってあまり気の進まない墓荒らしも社畜のようにこなさなければならないのだ。

 

それからしばらく歩くと、巨大な四角錐の建造物が見えてくる。

 

砂漠と墓というキーワードで予想はできていたが、今回のダンジョンはやはり例の石造りの建物のようだ。

 

俺は肩を落とし、若干うんざりしながら、その遺跡の中へと足を踏み入れる。

 

中は侵入者を阻むためか、迷路状になっていて、進むだけで面倒臭い。さらにトラップも多々仕掛けてあり、容赦なく俺の命を狙ってくる。

 

俺は慎重に迷路を進み、二時間ほどかけてようやく女王の眠る部屋へとたどり着く。

 

中央に棺が安置された部屋に一歩足を踏み入れ、そこでふと思う。ここまでの道のりは、確かにモンスターやトラップが少なからずあった。

 

そのどれもがダメージを与えるものであり、確かに最前層ゆえにモンスターのレベルや、トラップによるダメージもそれなりに大きい。

 

けれど、ソロの俺でさえ時間はかかれどあっさりとここまでたどり着いた。それなのに誰もこの遺跡から帰ってきたものはいないという。

 

つまりどういうことか。

 

ガタリ、と部屋の中心部から物音が聞こえてくる。

 

生前も死後も、危険なのはあの迷路ではない。

 

石の棺の蓋がずれ、ズシンと音を立てて落ちる。

 

伝説に引き寄せられた冒険者、そして暗殺者を殺してきたのは、すべて『彼女』の仕業なのだ。

 

そして棺の中から起き上がり姿を見せたのは、

 

俺のよく知る人物だった。

 

「……いらっしゃい、ハチマン」




スランプ!というほど元々上手くないので通常!ただ筆が全く進みません。

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