3歳から始めるめざせポケモンマスター!   作:たっさそ

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第11話 3歳児は主人公に出会う

 

 

 休日! それは自由の象徴。

 

「おばーちゃん、わたし(・・・)は旅に出ます。お夕飯までには戻るので心配しないでください。お夕飯までに戻らなくても心配しないでください。遅くなる場合はなんとかして連絡をするから、慌てず騒がず待っててね。」

 

「はいはい、わかったわ。元気に遊んできなさい、オレン。」

 

「いってきまーす!」

「みゅー♪」

「ブイブイ!」

 

 そう、今日は待ちに待った旅立ちの日。

 エリカお姉さまにも許可をいただいて、旅立つことができるようになりました!

 

 

 

 今のレンジの手持ちはこうだ。

 

イーブイLv.43

ピクシーLv.45

ウインディLv.45

ピジョットLv.45

タツベイLv.6

ユンゲラーLv.17

 

 イーブイは俺の相棒だが、この面子では他の子達の方が攻撃力があるので、しばらく戦ってはいないのだ。

 なので、他の子達よりもレベルは低い。

 進化させたウインディにも全体的に負けてしまい悔しそうだが、なんというか、もう意地でも進化しないでお前をぶっ倒してやる! って感じに燃えてるんだよね。

 

 俺がウインディに自由に戦わせて、俺がイーブイに指示を出すと、まぁイーブイが勝つのだが、なんというか、力が弱いのだ。

 うーん。エーフィかブラッキーにでも進化しないかな。

 

 ウインディは、ガーディがフレアドライブを覚えた時に、進化させた。

 ついでになんと“しんそく”を覚えたので、こりゃよかったと一安心。

 

 いつかはわざマニアのところに行って覚えさせようと思っていたところだからね。

 もしかしたら、Lv.以下で覚えていたわざなら修行しだいでレベルに関係なく“かみなりのキバ”も覚えられるかもしれないね。

 レベル以上の技を使えるようになれるかも

 

 さすがは“でんせつポケモン”大きい身体でものすごいモフモフだ。

 

 わーいと身体を埋めると、炎タイプ特有の熱気が俺の身体を包むのだ。

 ちなみに、ウインディの上に乗って移動することも可能。

 

 レンジ は いどうしゅだん を てにいれた! ▼

 

 ってね。

 

 最後にユンゲラー。彼はロケットゲームコーナーでこつこつ稼いだコインで買った由緒正しきケーシィから進化させたばっかりのユンゲラーだ。

 覚えている技は、テレポートとねんりきのみ。現在はまだまだ育成途中である。

 

 捕まえたポケモンは、現在のところ、こうなっている

 

 レンジのスマホの中身は、これだァ!

 

 ウツボット・キュウコン・ラフレシア・クサイハナ(進化分岐用)・ペルシアン・カビゴン・ストライク・カイロス・ポリゴン・コイキング・そして、ベトベター

 

 先週の休日にタマムシシティの池で釣りをして、コイキングと一緒にしっかりベトベターも捕まえ、レンジのスマホの中にブチ込んどいた。臭いもん。

 

 

 きれいな街として君臨するカントー地方の中心地、タマムシの汚点だよね。

 いくら綺麗に着飾っても、工場排水とか、ロケット団の基地から出る排水とかが、さ。

 

 きれいな都会のど真ん中でベトベターが釣れるっていうのは、なんというか、感慨深いものがあるよね。

 まぁそんなことは、今は置いておこう。

 

 今度は“オレンちゃん”の手持ちのポケモンはこうだ。

 

 

 色違いのミニリュウLv.5

 

 リハビリを毎日頑張り、順調に大きくなってきたミニリュウは、もうレベルが5なのである。

 イーブイたちに修行を付けさせてもらっているので、経験が溜まってレベルが上がっているのだ。

 別にポケモンを倒すだけが経験値を稼ぐ手段じゃないってことだ。

 なにせここは現実なのだから。

 

 レベルが5になったということは、だ。

 

 旅に出ても、それなりに戦えるレベルでもある。

 初心者用の居場所に行けば、なんだけどね。

 

 というわけで………

 

「ピジョット! マサラタウンまで連れてって!!」

 

 

 トレーナーIDを二つ持っている利点。

 ポケモンを連れて歩けるのは12匹まで!!

 

 いやあ、ワタルさん。こんな許可をしてはいけないでしょ。

 チャンピオンでしょあなた。

 

 ん? もしかしてワタルさんも2つIDをもっててサブ垢として一から旅してたりしないよね?

 ………しない、よね?

 

 でもワタルさんはチーターだからなぁ。プテラはいわなだれ覚えないのに………。

 

 疑惑の判定………。

 

 考えるのはよそう。チャンピオンかっこいい。この幻想を壊したらダメだ。

 

 

「よっと。ようやく着いたか。ありがとう、ピジョット」

「ピジョットー!」

 

 ピジョットをボールに戻す。

 ピジョットの背に乗って旅をするのは、キンタマがひゅんってなるね。

 

 と言っても、今のわたしは女の子。キンタマなんて汚い言葉はつかいませんのことよ。

 ピジョットの背からマサラタウンの場所をわたしが指示して、そっちに向かわせたのです。

 

 早朝からピジョットの背に乗って約3時間で到着だ。ゲーム時代のように一瞬で到着なんかできるわけがない。

 ゲームの頃よりも広くなっているし、移動に時間がかかるのも当然だよね。

 ピジョットが飛ばしてくれたから、これでもめちゃくちゃ早く着いた方かな

 

 さあ、マサラタウンから冒険を始めようじゃないか。

 

 一度、ゲームをなぞって旅してみたいと思っていたんだ。

 誰だって思うでしょ。

 まさかタマムシシティからスタートだなんて普通は思わないしさ。

 

 

 マサラタウン。来てみたはいいものの、本当になんにもない田舎町だなぁ。

 ここに、未来のチャンピオンが二人もいるんだ。いい町だね。

 

 自然がいっぱいだ。だからこそ、オーキド博士がここでポケモンの研究に専念できるってわけか。

 

 家は、主人公の家らしきものと、その隣にライバルの家らしきもの。

 その他数軒とオーキド研究所がある。

 

 町というよりも村と呼んだ方がいいかもしれない。

 それほどまでにのどかな場所だ。

 

 

「おーい! 待てよグリーン!」

 

「ぶっ!!?」

「みゅ?」

「イブイー?」

 

 研究所の中から急に聞こえてきた声に、わたしは吹き出してしまった

 なぜ噴き出したのか理解していないミニリュウが、わたしのカバンの中からひょっこりと顔を出して首を捻る

 イーブイはわたしの隣でお座りしながら「どーしたの?」と心配げに見つめてきた

 

 

 グリーン? 誰だそれ!

 

 いやわかるけどさ。

 それ、日本の名前じゃないでしょ!

 

 ここにきて、ライバルの『大木戸グリーン』という名前が判明しました。

 

 おいユキナリィ! 孫の名前がおかしなことになってるぞ! どうにかしろ!!

 ってそうだった、オーキド博士は孫の名前を忘れるくらいボケてるんだった。

 

 グリーンって名前なら現実逃避したくなるのも分かる気がするわ。

 

 

 声の主の方を、看板に隠れて覗いてみる

 

 ん? この看板は………

 

『マサラタウン。マサラは真っ白。始まりの色』

 

 うっわ、懐かしい!

 こんな看板あったわたしかに!

 

 いやいや、気を取られないで。様子を見ましょう。

 

 

「早く来いよレッド! ま、お前は一生俺の後ろを追っかける運命にあるんだけどな、バイビー!」

「ゼニャー!」

 

 うっは、ライバルのBGMが脳内で聞こえてくる!

 

 この傲岸不遜な態度。

 まさしく、グリーンである!

 

 グリーンは研究所の中から“ゼニガメ”を引きつれて走り去った

 

「くっそー! あいつ、自分ばっかりお姉さんから地図を貰いやがって………俺だってナナミさんに地図をもらってやる! 行くぞ、“カゲどん”!」

「カゲカゲ!」

 

 グリーンの後を追いかけて研究所から出てきたのは、レッドと呼ばれた12歳くらいの少年だ。

 

 10歳でトレーナーの資格を貰えるとはいえ、ここは凄いド田舎だ。

 

 10歳から旅に出るというのは最低限の年齢であり、通常はこうして義務教育分の学業を終わらせてから旅に出るのが一般的だとか。

 彼らも12歳でも十分に中学卒業くらいの知識は詰め込まれているはずである。

 

 つまり飛び級であるわたしは異常そのものってことだね

 ちなみに、グリーンも12歳くらいの少年だったよ。

 

 レッドと呼ばれた少年は“ヒトカゲ”を引きつれてナナミさんの家に走って行った

 

 なんというタイミング。

 これは………主人公がポケモンを選んで最初のバトルを終えた後だ。

 

 主人公、レッドは“ヒトカゲ”を選んだようだ。それでさっき、グリーンが“ゼニガメ”を連れて走っていたんだな?

 

 となると、“フシギダネ”が研究所に余っているはずだ。

 盗んじゃおうかな。

 でもオーキド博士に残された最後のポケモンだ。

 盗むわけにもいかないか。

 というか、盗む度胸もないんだけどさ。

 

「ずるいよお兄ちゃん! わたしだって地図が欲しいのに!」

 

 そうこう思っていたら、研究所の中からさらに、ひとりの女の子が現れた

 

「あれは………」

 

 

 長い栗色の髪に、白い帽子。青のタンクトップ。赤のスカート。

 これは、見覚えがある!

 

 FRRGの女主人公!!

 

 なんでこんなところに!!

 

 しかも、『お兄ちゃん』………だとぅ!?

 

 

 どういうことだっ!

 

 彼女の名前は………“ブルー”? それとも、“リーフ”?

 

 

 はたまた、“イエロー”の可能性もあるぞ!

 

 

「置いてくぞ、くりむ!」

 

 レッドがその声に反応して大きな声を出す。

 公式で名前の無かった可哀想な女主人公。

 名前は“くりむ”らしい。

 

 ああ、“クリムゾン”………主人公と同じ、赤ってことね………

 

 正直、公式の女主人公のデータファイル名“LEAF”の『リーフ』が名前かと思ってたよ………

 

 この世界に入り込んでから、びっくりすることが多いなぁ………

 レッドも無口じゃないしさ。

 というか、主人公は活発に人に話しかけることによって情報を得ているから、無口じゃなりたなないか。

 

 レッドに妹。しかも年齢が離れていない………つまり

 

「双子、もしくは年子、か」

 

 こんな設定は無かったはずだが、主人公を両方ねじ込んだ結果、そうなってしまった可能性が大!

 

「もー! いくよ、フッシー!」

「ダネダネ!」

 

 しかも、くりむちゃんはちゃっかりフシギダネを手持ちに加えている。

 

 

 生息地不明のポケモン………全員持ってかれた………。

 図鑑コンプできないよー!!

 

 

「待ってー! きゃん!」

「ダネ!?」

 

 そしてなんというご都合主義。

 

 くりむちゃんがズッコケてしまい、さらにポーチの中にしまっていたモンスターボールが飛びだして、こちらに転がって来たではないか!

 

「うわっわ!」

「ブイッ!」

 

 慌ててモンスターボールを拾う。

 わたしが二つ。イーブイが一つ。転がってきたボールを受け止める

 

 

「ごめんなさーい! それ、とってもらえますかー?」

 

 もう取ってますよ

 隠れる意味もなくなったので、きちんと姿を現した。

 

「はい、これだよね」

 

 イーブイが受け止めたボールを手に取り、三個のボールをかえすと

 

 

「えへへ、ありがとう!」

 

 と、花咲くような笑顔を向けてきた

 

 その瞬間。わたしの身体に電流が走る!

 

 美少女! 美少女である!!

 

 12歳くらいでありながら、若干大人の色気も持っている。どのへんかって?

 膨らみかけの胸と、色気を醸し出す“絶対領域”だよ!

 

 しゃがんで背の低いわたしからボールを受け取った際、スカートの奥から“白い布地”が見えたっ!

 

 無防備!!

 

 

「ブイ………」

 

 

 ええい、足を踏むんじゃない、イーブイ!

 シャッターチャンス! シャッターチャンスを見逃すわけにはいかないんだ!

 スクリーンショット! 脳内メモリに保存。永久保存! 完了!

 バックアップ完了! USBメモリにもいっぱいに保存しなくては!

 

 

「あら? 初めて見る子だね、どこの子かな?」

 

 ニコッと微笑んでわたしの頭を撫でてくれるくりむちゃん

 

「タマムシシティから来たの。」

「わざわざタマムシシティから来たんだ! すごいね、私はこのマサラタウンから出たことがないから、都会ってどんなところか知らないの。」

 

 

 そうなんだ。温室育ちっていうか、自然の中で育ったんだな

 

「おねーちゃんはなにしてるの?」

「私はね、今日、ポケモントレーナーになったの! だから、これから旅に出るんだぁ」

 

 こんな無防備な女の子が旅に出るなんて、おじさん許しませんよ。

 こーんな美少女が旅をしたら怪しい男に連れ去れてしまう!

 

「今日はオーキド博士からポケモンを貰える特別な日なの。えへへ、見て。ポケモン図鑑ももらっちゃったんだ」

 

 そこまで聞いていないのに、赤い図鑑を見せてくる。

 それだけうれしいんだろう

 

 

「でもね、私はまだポッポとコラッタくらいしかポケモンを見たことがないの。どんなポケモンがいるのか、すごく楽しみ! あれ? そう言えば、あなたのすぐそばにいるその子は、あなたのポケモン?」

 

「ブイ?」

 

 くりむちゃんが、わたしの足を踏み続けていたイーブイに気が付いて、図鑑をイーブイに掲げる

 

「へえ、イーブイって言うんだ! かわいいわね!」

 

 くりむちゃんは俺のイーブイに手を伸ばし、頭を撫でる

 まだポケモンに慣れていないようで、撫で方はぎこちない

 

 

「みゅー♪」

 

「あ、こら!」

 

 イーブイが頭を撫でられているのを見て、ミニリュウが自分も撫でてとわたしのカバンから飛びだしてくりむちゃんの目の前にポテッと転げ落ちる

 

 お前は色違いなんだから、あんまり人前に出たらダメなんだぞ。

 好奇心が旺盛なのは仕方がないけどさ。気を付けてね。

 

 攫われるかもしれないんだから。

 

「あ、この子もかわいい! この子はなんていうの?」

 

 くりむちゃんがミニリュウの頭を撫でながらわたしに話しかけてくる

 

「この子はミニリュウ。ちょっと身体がよわいけど、わたしの大事な大事なポケモンだよ」

 

 幸いにして。くりむちゃんはまだポケモンの知識が薄い。

 

 色違いだとかそう言うことに気付いていないんだ。

 

「へぇー、うふふ、かわいい………」

 

 

 くねくねと身体をくねらせるピンクのミニリュウに、くりむちゃんはもうメロメロだ。

 

 

「あれ? でもキミ3歳くらいだよね、ポケモンを持っててもいいの?」

「うん、お世話するだけならトレーナーの資格はいらないし、わたしはトレーナーカードはちゃんと持ってるしね」

 

 そう言って、わたしは“オレンちゃん”のカードを見せる

 

「いわゆる飛び級ってやつだよ。」

「ふわ~、すっごーい!」

 

 すぐにカードを戻す。なぜなら性別のところにシールが貼ってあるから。

 

 

「オレンと言います。でも、わたしはトレーナーとしてまだまだ初心者だから、オーキド博士にアドバイスでも貰おっかなーって思って、居ても経ってもいられなくてマサラタウンに来たんだ」

「そうなんだ、あ、オーキド博士は研究所の中だよ。今さっきね、オーキド博士からモンスターボールを貰ったんだ。これでさっき見かけたポッポとコラッタを捕まえるの! そしてキミ………ええと、オレンちゃんの持ってるポケモンもかわいいからゲットしたいなぁ」

 

 にへっと笑うくりむちゃん

 くぅ………笑顔が素敵ですぜ!

 

「ブイ………」

 

 だぁから、足を踏まないでってば、イーブイ

 

 そういや、さっきくりむちゃんはポケモン図鑑を開いていたよね、ということは、一度トキワシティに行ってお届け物を届けたあとなんだな。

 

「それじゃ、私達は今日からライバルだね! いつもいつもお兄ちゃんとグリーンばっかりお互いにライバル視してるから、私にはそういう友達っていなかったし、オレンちゃんが私の友達でライバルになってくれたら、とてもうれしい! さっきだってお兄ちゃんばっかりバトルしてー! むきー! うらやましいわ!」

 

 うはっ! なんていい子なんだ、くりむちゃん!

 

 なるよなっちゃう! お友達になりましょーう!!

 

 

「もちろん! これからよろしくね、くりむちゃん!」

 

 くりむちゃんが差し出した手を握って握手をすれば、立派なライバルだ。

 思わず口元が綻んじゃう

 

「ライバルになったなら、最初にやるべきことはひとつ!」

「ふぇ!?」

 

 

 ライバル認定された途端に、くりむちゃんは眼の色を変えてわたしからばっと距離を取ると

 

 

「トレーナーなら目が合ったらそれは、バトルの合図!! おねがい、“フッシー”!」

「ダネフッシィ!」

 

 くりむちゃんは足元のフシギダネを繰り出してきた

 

「なるほど………わたしを3歳児だと見下さない人は初めてかも。全力でお相手するよ、くりむちゃん! 行け、ミニリュウ!」

「みゅー♪」

 

 くりむちゃんは思ったよりも熱いトレーナー魂を持った娘だったようだ

 

 

 

 




イーブイ「ブイブイー!(わたしもたたかいたいー!)」

オレン「ごめんね、イーブイはレンジのポケモンだから、今回はおやすみなんだ」

イーブイ「ブイ………」


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