幻次元ゲイム ネプテューヌ 白の国の不思議な魔導書 -Grimoire of Lowee-   作:橘 雪華

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今話投稿と同時に、前話の最後に一行程だけ追加修正があったりしました。


#04 暗躍 〜 未だ霧の中

 時は進んで、ネプテューヌ達が誘拐された二人と一人を取り戻した後の事。各国で女神によって撃退された七賢人──うち一人は機体ごと鹵獲されてしまった為主要メンバーは六人だが──は、例によっていつもの場所に集まっていた。

 

 

 

「さて……とりあえず反省会でもしておこうと思ってみんなに集まってもらったんだけど……」

 

 この組織の実質的なリーダーであるヤツ(アノネデス)がそう言って、此度の大仕事を担当した一人を見やる。

 

「うへ、うへへ……あははは……」

「約一名、それどころじゃない奴がいるみたいっちゅね」

「……わしも本気でやられていたら、こうなっとったのかのう……」

 

 そこに居たのは、一体何をされたのか精神に異常をきたした憐れなヤツ(マジェコンヌ)

 余程の事があったのか、これは当分会話すらままならないだろう。

 

「困ったわねえ。コピリーちゃんは大破して女神側に鹵獲、マジェちゃんも故障中。アブちゃんは声かけられないし……これじゃ、会議なんてできないわよねえ」

「オカマの作戦が穴だらけだったのが全ての原因っちゅ」

「ん-、それを言われちゃうとねえ。一石三鳥のビッグアイデアだったんだけど……各国に大ダメージを与えつつ、プラネテューヌからは人質を取って、さらにうまくすれば、って……」

「一石三鳥どころか、三兎を追う者は一兎をも得ず、になってしもうたがな」

 

 女神達によって苦境に立たされつつある七賢人。そこから巻き返すべく投じた一手だったが、どれもこれも失敗。

 散々な結果に(ワレチュー)(アクダイジーン)が溜め息を吐く。

 

「せめて誘拐だけでも成功させてくれれば良かったんだけど。まさか一人も連れてこれないなんて……」

「あははは……へ、へへ……」

「あんな天使のような子を泣かせるなんて、おいらには無理っちゅ!」

「すす、すみません! 私、どんくさくて、えと……」

 

 誘拐とやらには憐れなヤツとネズミ、それと気弱女(レイ)が当たったらしいが、女神の追撃を受けこうなった、と言った話だが……。

 

「……()()()()()()()()()()?」

 

 普段以上の挙動不審さに、思わず口を挟んでいた。

 

「ひぃえっ?! なな、何をおっしゃるんですか!?」

「ふぅん……ねえ、レイちゃん。アナタ、何か隠してなあい?」

「そ、そ、そんなっ!? 隠し事なんて、そんな、全然、まったく!」

「思いっきり挙動不審じゃなあ」

「そうっちゅか? こいつはいつもこんな感じっちゅ」

「そそそうですよ! 私はいつもこんな感じです!」

「んー、気になるわあ。アナタやっぱり……」

 

「…………」

「すまない。不要な干渉だった」

「え……う、うん。いいよ、別に……」

「……そうか」

 

 一応この場にいるとはいえここでの会話に一切の関心がない為か、謝罪されて逆に困惑させてしまったようだ。だがしかし、何故口を挟んでしまったのか……自分でも理解し難い事だった。

 

 ……もしや肉体が目覚めつつあるのだろうか? 原因には心当たりがある。

 

「……奴との遭遇が原因か?」

「どうか、したの……?」

「いや……大したことではないさ」

「そう。……それで、できたの?」

「む。あぁ、仕込みは済ませた。後は「ガラッ!!」……騒々しい」

 

 話の腰を折られ少しばかり苛立ちながら声のした方を見やれば、小娘(アブネス)が憤怒の表情で場の者達を睨みつけていた。なにやら誘拐事件がどうのと騒いでいるが、そう言えばヤツらそんなこともしていたな。

 誘拐された人間の子らに施した所業、そして現在の事もあって小娘には秘匿されていたらしいが、どこぞで嗅ぎつけてきたらしい。

 

 が、戦闘能力が皆無に等しい小娘がいくら喚こうが真相を語る者が居るはずもなく。

 

「もういいわ! 子供達は絶対ワタシが助け出してみせるんだから!」

 

 そう言って小娘は出ていった。恐らくもう戻っては来ないのだろう。それでも奴に出来ることなど無いだろうと、残った者共は取り乱すことも無くそのまま解散の流れとなった。

 

「さて、今日はお開きかしらねえ。少なくともマジェちゃんが治るまでは、特別な活動は無しってことで」

「は、はい……」

「うむ。では、わしは娘達の世話に精を出すとするかのう」

「おいらもたまにはのんびり過ごすっちゅ。オカマはどうするっちゅか?」

「アタシは、そうねえ……」

「え? な、なんですか? なんで私をじろじろ見てるんですか?」

「うふ、なんでもないわ。アタシは個人的な調べものでもしようかしらねえ……」

 

 それぞれ思い思いに散っていき、部屋には誰も居なくなった……とはならず、他が出ていくのを見送るとアノネデスはこちらに近づいてきた。

 

「……我々がこれに参加する必要性はあるのか?」

「あらぁ、あなた達だって仮にもメンバーなんだから、ちゃんと居ないとダメに決まってるじゃない。それに、今回は珍しく口を挟んでたし?」

「あれは……偶々だ」

「ふぅん? ま、そんな事はいいの。それより()()は今どんな感じなのかしら?」

 

 なるほど、コイツはアレについて聞くために残ったらしい。

 

「フン……使う事自体には問題は無いだろう。貴様らの精神や肉体が持つのならば、だがな」

「やっぱりその辺のリスクはどうしようもないのねぇ。数はどんなカンジ?」

「……それなりだが、決して多くはない。リスクとやらを考えるならば、あまりおいそれとは切れる手札ではないだろう」

「なるほどねぇ……もう一つの方は?」

「もう暫くかかるだろう、こればかりはどう言われようと変えようのない事だ」

「うーん、そう……それじゃ、とりあえず問題なさそうな方をこっちに回しといて頂戴」

「……いいだろう」

 

 要求を了承すると、アノネデスは「よろしくね〜」と言って去っていく。個人的な調べ物がどうとか言っていたからそちらに向かったのだろう。

 この場に残る理由もなく、我々も割り当てられた部屋へと戻った。

 

 

 

 

 

「……それで、用意はできたの……?」

「ああ……だが、良いのか? その先は、お前が嫌う世界だ」

「うん……少しだけ、だから」

「……お前が決めたのなら、従うだけだ」

「…………」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「……検査結果は至って異常なし……健康そのもの、ね」

「うんっ! 元気元気〜」

 

 目を覚ましたイオンのメディカルチェックを行った所、結果はこれ。本人もいつも通りの快活さで足をぱたぱたさせていた。

 まぁ、それか逆におかしいと言うか、今まで些事だと脇において目を逸らしてた事と言うか……。

 

「寝たきりになる前と変わらず元気なのが逆に変なのよねぇ」

「んん? どーいうことよ、元気ならそれでいーじゃない」

「……例えば、ラムはルウィー(うち)に来てから少し体重が増えているわ」

「なーっ!? なな、何いきなり言ってんのよー!!」

「ラムちゃん……」

 

 突然の暴露に顔真っ赤にして叫ぶラムは置いといて。

 

「イオンの場合、前に測定した時と全く変化が無いのよ。何日も寝たきりだったのに」

「……たいじゅう、減ってないの……?」

 

 ロムちゃんの言葉に「そう」と頷いて返す。

 

「そもそも、わたしがイオンと会ってから数年は経ってるのに、成長してる様子も無いのよね」

「……? イオンちゃん、女神さまだったっけ……?」

「じゃないわね。だから妙なのよ」

「むぅぅ……そんなの本人に聞いてみればいいじゃない」

「?」

「本人があれだからますます謎なんだってば」

 

 本人もよくわからないとかでずっと気にすることがなかったけど、一体どういうことなんだろう。普通の人間じゃありえない事よね。

 

「うーん……結局判断材料が無さすぎて横に置いとくしかないのよね、とりあえず元気でよかった。って」

「ふしぎ……ちょっぴり羨ましい、かも……?」

「そーよそーよ! わたしより沢山お菓子食べてるのにー!」

「……ラムちゃんはうんどう、しようね」

 

 取っ掛りが何も無いから、どっかで運良く見つけでもしないとどうにもならなさそう。

 

 結局、気長に調べておくしか今は無理か。

 

「ねーねーエストちゃん、ボクお腹空いたよ〜」

「ああ、そうね。なんか用意するわ」

「あっズルい! わたしもー!」

「はいはいわかってるっての。ロムちゃんも来るでしょ?」

「えっと……うん」

 

 前と変わらない様子のイオンにラムとロムちゃんと共に食堂へ向かう。

 

 普段通りに振る舞う内で、ディーちゃんのこと、イオンのこと、考えるべき問題に頭を悩ませながら──

 


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