幻次元ゲイム ネプテューヌ 白の国の不思議な魔導書 -Grimoire of Lowee-   作:橘 雪華

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#12 魔導人形レム

「改めまして……お姉ちゃんの妹のネプギアです」

「プルルートです~、よろしくぅ~」

「今日は厄日ね……ラステイションの女神、ノワールよ」

「……ルウィーの女神、ブラン」

「イオンだよー!」

 

 超次元から来た組と神次元組が自己紹介を交わす中、苦笑いのネプテューヌちゃんと未だにわたしをマスター呼ばわりするこれがよくわかってないわたし。いや多分みんなわかってなさそうだけど。

 と、とりあえず……レム? とかいう鬼がかってそうな名前の奴は後回し、ネプギアが来ちゃったことの方が問題だから、まずはそっちよ。

 

『あ、あの、皆さん……結構それどころではない状況なのですが……』

「でしょうね……これからどうするつもり?」

『わかりません……とりあえず、落ち着いてお話をさせてもらえませんか?』

 

 オープン回線になったあっちのイストワールさんの疲れたような声が聞こえてくる。

 

『割と真面目に笑いごとじゃない状況ですからねー。女神が両方不在だなんてプラネテューヌ消滅の可能性が加速してきましたよー』

『……大丈夫なの?』

『流石にヤバそうなので私の方でも誤魔化す手を考えないとですねー』

 

 真面目にあっちのプラネテューヌが存亡に危機に瀕し始めたからか、グリモまでそんなことを言い出した。

 んんー、そうだとしても女神不在でどれくらい持つか。

 

 で、落ち着いて話をするなら子供達もそろそろ起きてる頃合いだろうし、一度教会に戻ろう。とプルルートさんの提案に、新たに増えたネプギアとレムを連れてプラネテューヌのプルルートさんの部屋へと向かうことに。

 

「……だえ? こいつ」

「しらないひとれすぅー……」

「わ、わ。この子達って、アイエフさんとコンパさんですか!? うわぁ、かわいい……!」

 

 部屋につくなり、ネプギアはアイエフさんとコンパさん、ピーシェさんの相手をし始める。

 

「うう、マスター……レムには子供の相手をする知識は入ってませんですよぅ……」

「あんた自分の外見どんなかわかってる?」

 

 で、もう一人の方はわたしの背中に隠れて子供達から距離を取っていた。

 あの三人程じゃないとはいえ、レム(こいつ)も元になったのが多分あの二人(ロムとラム)っぽいし、見た目は完全に子供なのよね。……いや、そもそもヒトの年齢換算したらこいつってば0歳……? 

 

 呑気に子供の相手をするネプギアをノワールさんが窘めて、それからあっちのイストワールさんに説明を要求する。

 

「で、結局どういうことになったの?」

『……あの道は、一人が一回通るのがやっとだったんです。なのでネプテューヌさんがこちらに帰ってくればそれで終わり……のはずだったのですが……』

「ネプテューヌちゃんレス状態で会いたい欲を抑えきれなかったネプギアが使っちゃった、ってわけね」

「そ、そんな中毒者みたいにはなってないよ!?」

「ふーんどうだか。あんたのことだから人手不足をユニちゃんに手伝ってもらっておいてお姉ちゃんお姉ちゃん言って怒られてたんじゃないのー?」

「な、なんでわかったの!?」

 

 ネプテューヌちゃんのいないネプギアがやってそうなことに当たりをつけて言ってみれば本当にやってたらしく、驚いた顔をされた。

 ふんだ。結末がどうあれわたしだってネプギアとは同期みたいなもんなんだから、それくらいなんとなくわかるっての。

 

『はあ。今度は二人が通れるだけの道を作らないといけませんね……しかしこちらの世界にプラネテューヌの女神がいなくなった状況を考えると、必要なシェアを集めるのにどれだけかかるか……』

「ということは……」

「はい。もうしばらくそちらでネプテューヌさん……と、ネプギアさんを預かって頂けないでしょうか」

「当然、そうなるわよね……」

 

 それで、再び次元を超えるゲート()を、今度は二人分開く為にまた時間が必要となるわけで。

 ネプテューヌちゃんとネプギアのプラネテューヌ滞在が決定した、と。プルルートさんなんかはお別れが先延ばしになって嬉しそうだけどね。

 

「はあ。まあ起きちゃった事は仕方ないわね。こっちに残る以上は今まで以上にしっかり働きなさいよ? あなた達が向こうに帰る為にも」

「うん! これまで以上に頑張っちゃうよ! まっかせといて!」

「わ、私も頑張って、何でもお手伝いします!」

『……では、わたしはこれで。大分長電話になってしまいましたし……また何か動きがあり次第、ご連絡しますね……はぁ……』

「うぅ……長く交信し過ぎて疲れました……申し訳ありませんが、先に休ませてもらいますね……」

「おつかれさま~」

 

 ネプテューヌちゃんとネプギアちゃんが頑張る宣言をした後、イストワールさんとの通信は終えられた。二人に関してのお話はこれで終わりね。

 

『イストワールがこの世の終わりみたいな顔してますねー、気持ちはわからないでもないですがー。ま、暫くは私もプラネテューヌ女神の不在を悟られないようにお手伝い、ですかねー。最近きな臭い動きをする連中がいるのが不安要素ですがー』

 

 わたしとグリモの方はまだ繋がってるんだけど。

 通話の終わり際からも察せたけど、やっぱりイストワールさんの精神状態が大分アレみたい。そっちらへんはグリモにどうにかしてもらうしかないとして、それよりも気になることを言ったわね? 

 

『きな臭いって?』

『んー、どうも反女神勢力と言いますかー。そういった連中の活動が活発化してるんですよー』

『……また犯罪組織?』

『いえ、犯罪行為に手を染めてはないですねー。女神統治国家は不要だと訴える市民団体ですー。どうにもそれが勢力を徐々に大きくしているようでしてー』

 

 ふぅん、女神を否定する団体か。イストワールさんホントに大丈夫なのかしら? 

 そういえばこっちでも似たような集団がいるわね、七賢人とかいう。

 

 ……まぁ、ゲイムギョウ界の女神の有り様って、本来の神様みたいな『崇拝される精神的な拠り所』というより『国を守り民を導く』っていう、王様とか為政者みたいな感じなのよね。

 ヒトは少なからず自分達と違うモノを嫌う奴らだし、ヒトじゃない為政者が気に入らない連中が七賢人やらそういう団体に入るのかなぁ。

 

『……まぁ、その辺はおいおい考えるとしてよ。()()、送り込んだのあんたでしょ。説明しなさいよ』

『お、聞きますー? 聞いちゃいますー?』

『あー、じゃあいい』

『聞いてくださいよぉー!』

 

 一転して何やら腹立つ口ぶりでそう聞いてくるもんだからつい意地の悪い事を言ってしまった。

 ……あ、ちゃんと聞くよ? 

 

『でもまぁ多分本人に聞けば大体答えてくれると思いますよー』

『あんた戻ったら一発殴らせなさいよね』

『やーですぅー』

 

 こんにゃろ……はぁ、もう。

 とりあえずグリモがそう言うんならそうしましょうか……

 

「……話がひと段落したところで、わたしはこのわたしのそっくりさんから話を聞こうと思うんだけど、多分あんた達とは関係のない話になると思うし場所変えた方がいいかしら?」

「えー。エストちゃんそれはないよ! わたしだってその子の事気になってたんだからねー!」

「まあ、そうね。正体不明の子がいるっていうのはちょっと落ち着かないし」

「そ? ならここで聞いちゃうわ」

 

 ネプテューヌちゃん達が今後の話をするのに別の話で邪魔するのはどうかな、と思ったけど、みんな気になってるならいっか。

 みんなの視線がレムに集まって、わたしはレムに説明を求めた。

 

「はいです! ええと、レムはグランドマスター・グリモワール様とロム様ラム様に制作された魔導人形で、女神様の機能を支援する人型デバイスです! Limit(L) Expansion(E) Memory(M)で、レムといいますです!」

「まどーにんぎょー? 人形さんなの~?」

「つまり……ロボットですか!?」

「うん、違うと思うよーネプギア」

 

 人形、ねぇ。その割にこう、表情豊かだし感情もあるように見えるんだけど……

 

「大丈夫? なんか黒魔術とか人の魂入ってない?」

「黒魔術は使用されてないです。禁術をちょこっと」

 

 禁術。

 

「……それは、大丈夫なの?」

「禁術指定の魔法には、悪用するのを防ぐために指定されてるものもあるです。レムに使われたのはそういうタイプですので、大丈夫です!」

「そ、そう。ならいいんだけど」

 

 いや良くはないけど、最悪ではないだけで。

 ただまぁ危ない禁術にロムちゃんとラムを巻き込んだとかディールちゃんが知ったらグリモが塩水に沈められそうね。そうじゃないみたいで安心したけど。

 

 支援機能に関しては短期間で作られたからなのか、今のところはわたしじゃないとダメらしい。他の女神を強化出来るようにするならもっと期間かけて調整しないといけないんだとか。

 ふーん。

 

「ま、人手が増える事に越したことはないかな……他に何か言うことある?」

「いえ、これで全部です! これからよろしくお願いしますです、マスター!」

「……そのマスターってのやめて欲しいんだけど」

 

 色々整理して冷静になってみれば、似た顔にマスターとか呼ばれるのはなんかあれだ。

 

「えぅっ!? で、ではなんて呼べば……」

「マスター以外なら何でもいいけど」

「あ、あうう、ええと……」

「もーダメだよエストちゃん。レムちゃんが困ってるー」

 

 それ以外なら何でも、と思っていたらなぜかイオンに怒られた。

 困ってるって言われてもねぇ、名前とかでいいんじゃないの。

 

「ううん……レムはロム様とラム様を元に作られたので……ええと……で、では姉様(あねさま)とかは……?」

「姉……好きにしたらいいわ。何でもいいってわたしが言ったんだし」

「は、はいっ、ではそのようにします、ですっ!」

 

 不安そうな顔から一転、ぱぁっと嬉しそうな笑顔を浮かべるレム。犬だったら尻尾ぶんぶんしてそう。

 

「んー、とりあえず新しい仲間が増えたってことでいいのかなー?」

「ネプテューヌちゃんとかからの認識はそれでいいんじゃない? こっちの事情だし」

「そっかぁ〜。レムちゃん〜、よろしくねぇ〜」

「はいです! どうぞよろしく、です!」

 

 ちょっと雑かもしれないけどレムの自己紹介も終えて、次の議題に移る。

 超急ぎって訳じゃないけど、喧嘩売られてるんだしね。

 

「それじゃ、目下のところ私達がやらなきゃいけないのは……」

「リーンボックス、ね。まさかこの大陸以外にも国があったなんて……」

 

 そう、リーンボックスについて。

 個人的にはあの人苦手なのよね、押しが強いって言うか、目が怖いっていうか……

 

「まあ折角のご招待なんだし、私としてはとりあえず相手の顔を拝んで来ようと思うんだけど、あなた達はどうする?」

「……珍しく意見が合ったわね。罠の可能性もあるけど、その時は返り討ちにすればいいだけだわ」

 

 ノワールさんとお姉ちゃんは向かう気満々。

 んー……とは言え"宣戦布告"なのよね。

 

「ボクはエストちゃんについて行くから……エストちゃん、どうするの?」

「……とりあえず今回はお姉ちゃん達に任せるわ。大勢で押し掛けても仮に罠だった時に動きにくいでしょ」

「んん……そうね、動けるメンバー結構な数いるし。だとしたら呼ばれたのは女神だし……」

「……女神四人で行くのが妥当かしら」

「決まりね。ほらネプテューヌ、プルルート、さっさと準備しなさい」

 

 わたしがそう言って不参加を告げると、ノワールさんとお姉ちゃんでメンバーを選定したらしく、ネプテューヌちゃんとプルルートさんが名前を呼ばれた。

 女神四人の編成ね。

 

「え? わたしまだ何も言ってないけど……」

「二人で決めちゃってずるい〜」

「どうせあなた達二人に聞いても、無理矢理ボケるか天然でボケるかのどっちかでしょ。時間の無駄よ」

「なっ!? わたしの洗練された計算ずくのボケを無理矢理だなんて……あんまりだよ!」

「計算されてるかは置いといて、ネプテューヌちゃんがいると話がちょこちょこストップするのは確かよね」

「あ、あはは……否定できないかも……」

「味方がいない!?」

 

 ネプテューヌちゃんがボケてそれにツッコむからね、無視すればいいんだろうけどそしたらそしたでうるさくなるし。

 

「それでえっと……まだこっちの事とかよくわかってないんですけど、私は何をしたら……」

「大人数で押し掛けてもって言ったでしょ。あんたはわたし達と留守番よ、ネプギア」

「ええっ!? ど、どうして!?」

 

 ネプギアが指示待ち状態だったから、わたしから残るようにと言うとネプギアは抗議的な声を上げた。

 

「あっちが呼んでるのはこの次元の女神なんだから、今女神化も出来ないあんたがついて行ってどうするのよ」

「え? へ、変身できないの? で、でも折角お姉ちゃんと再会したばっかりなんだし、出来れば一緒に居たいというか……」

「女神の力が皆無な状態のスペックダウンがどれだけかわかんないんだから、最悪足手まといになるかもだし」

「そんなぁー……」

 

 まぁ呼んでるのがこっちの女神全員ならわたしも該当するんだろうけど、別にいいでしょ。

 後はまぁ……わたしが苦手な事を手伝わせるためにも行かせる訳にはいかない。

 

「ぐいーっ」

「あいたっ! や、やめて! 髪の毛を引っ張らないでー!」

「やーらよ! ぐいーっ!」

「ぎゃーちゃん、おいしゃさんごっこするれすぅ~」

「え? ま、待って!? その注射器本物じゃ……」

「ぷぎゃー……ぱーんちっ!」

「ほぐっぅ!? う、うぅ……み、鳩尾は、叩いたら、ダメだよ……?」

「ふえ? みぞち?」

 

 つまり……こういうことよ! 

 

「ほら、この子達もあんたと遊んで欲しいって。どの道この子達のお世話する為に残らないといけないし。よね? プルルートさん」

「ふぇ~? あ~、そうだねぇ~。あたしの代わりに手伝ってくれるとうれしいなぁ~」

「という事よネプギア。ほら、あんた言ったよね? ()()()()()()()()()()って」

 

 にこり、と笑顔でそう言ってやれば、ネプギアは何も言い返せない。

 ふふん、無暗になんでも、なんて言うからよ。

 

「なるほど、ネプギアなら安心だねー」

「みんなも懐いてるみたいだし~、あんしん~」

「うぅ……」

「ま、この場は自分の迂闊な行動が引き起こした事ってことで反省して、わたし達と残る事ね」

「……わかりました……」

 

 場の流れもネプギアが残ることに異存が無い空気になってしまい、しょんぼりとしながらも残ることを了承したネプギアなのでした。

 ……今度何かで埋め合わせしておこうかしら。

 

「ぷぎゃー……きーっく!」

「づああぁっ!! こ、こっ……! む、向う脛を……本気で、蹴っちゃ……ダメ……だよ……?」

「ふえ? むこじゅね?」

「……ま、まぁとりあえずこの子らのお世話はわたし達がしとくから、ネプテューヌちゃん達でベ……リーンボックスの女神に会ってきなさいよ」

「そうだねー、うん! それじゃあ行ってくるよ! ちゃんとお土産買ってくるから!」

「みんなの事お願いするね~。いってきま~す」

 

 向う脛を蹴られて悶絶するネプギアを横目に、ネプテューヌちゃん達を見送る。

 よし。それじゃあ後は──

 

「ネプギア、イオン! 子守りは任せたわ!」

「「えぇーっ!?」」

 

 子供の相手を二人に任せてわたしも退散! だって苦手なんだもん! 

 スイーツ買ってくるから、許してねっ☆


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