幻次元ゲイム ネプテューヌ 白の国の不思議な魔導書 -Grimoire of Lowee-   作:橘 雪華

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#06 メガミバトル、生中継

 さて、おねーちゃんとの遭遇からその後……特に何もなし! 

 だからまた大きなイベント──ズバリ言えばネプテューヌちゃん関係の騒動が起こる時期までスキップ……え? 時間飛ばしすぎ? 

 

 だーってネプテューヌちゃんと合流するまでやってた事なんてクエストばっかりだし。わたしが一人でやってるルウィーの内情調査もまだ微妙なところで、説明できる程じゃないし……ただのクエスト消化とレベリングなんてどう描写すんのよ。

 

 

 ……こほん。というわけでまた時間が飛びまして。じゃあまずは世界情勢からね。

 結局、わたし達がルウィーに来た後もラステイションは絶好調のまま。()()()()ではトップシェアを誇っているわ。

 逆にルウィーはどんどん信仰が落ちてる。こっちのルウィー女神とは一度面識あるだけでほぼ無関係とはいえ、やっぱり複雑なものがあるわね。

 あ、プラネテューヌはいつも通りよ。残るわたしが知るもう一つの国に関してはまだ情報ナシ。というか、今までルウィーで集中して情報収集やらしてたからあの国の事は全然調べてないのよね。

 

 だって現状一番怪しいのがこのルウィーなんだもん。

 聞くところによれば「七賢人とルウィーは結託している」だとか、最近じゃ「七賢人と共にラステイションへ妨害を行っている」なんてネタも上がってるし。

 

 一応ルウィー教会の方にも探りを入れてはいるものの、警備が厳重だったりでなかなか進展しない。

 

 というより、不自然なくらいの厳重さなのよね。確かに女神のいる場所なんだから当然っちゃ当然なんだろうけど、それにしたって厳重すぎる。

 まるで何か見せたくないものでもあるんじゃないのってくらい。

 

 ゲームならどれだけ警備が厳重でも何人かこう、えいっ! として穴を作って、そこから! って流れなんだろうけど、それやったら一人でも騒動になるからね。雑兵モブだからって消したらすーっと消えて誰にも気付かれないとかないからね。彼にも家族はいるのよ! 

 とまぁ、流石にルウィーと敵対はしたくないから、そっちの方はとても難航してるって感じ。

 

 

 ここまでが情勢解説。こっからが現在、ナウなお話よ。

 なんでもついさっきこの国になんか珍しい恰好の女の子ら()()()が来たんだとか。進展なしでぐでーっとお団子食べてたらそんな話が耳に入った。

 

「ね、ね。エストちゃん。紫の女の子ってもしかして」

「多分……ネプテューヌちゃん達ね」

 

 それ以外は「可愛い」とか「美人」とか「巨乳」とか。「美人」と「巨乳」はよくわからないし、そもそも四人? 三人じゃなくて? とは思ったけど、とにかくネプテューヌちゃん達がここルウィーにやってきてるのは間違いなさそう。

 だってさっきも言ったけどラステイションが嫌がらせ受けまくってるし。我慢の限界になったノワールさんと一緒になって来たってところじゃない? 

 

「うーん、自称でも主人公だし。なんか大事になりそうねぇ」

「そーなの? 前会ったときはあんまりお話できなかったし、ボクとしてはまた会ってお話したいなーって……んんーっ、お団子おいしーっ!」

「あんたホント食べるの好きね……」

 

 お団子を幸せそうに頬張るイオンを眺めながら、探すのはこれ食べ終わってからでもいっか……なんて。

 

 そう呑気に考えていた時だった。

 

『ん、んー。こほん……全世界のみんな、こんにちわっ! 毎度おなじみ七賢人のアイドル、アブネスちゃんでーっす♪』

「わわわ、な、なに!?」

「……テレビ中継ね。電波ジャックでもしてるのかしら? 電子掲示板でも流れてるわね」

 

 突然、テレビや電子掲示板のチャンネルが変わったと思えば金髪の女の子が映り、あからさまな作った笑顔で話し始めた。

 七賢人・アブネス。たった今本人が言ったように、自らを『七賢人のアイドル』と自称する、秘匿性の高い七賢人の中で唯一表立って活動しているっぽい奴。こいつに関してだけは情報集めしてたらすぐ見つかったし。

 本人曰く、『幼女が女神になって働く』ことが許せないらしい。

 幼女って……お姉ちゃん、ネプテューヌさん……もギリかな。はともかく、ノワールさんとベールさんは良いのかしら。

 

 彼女に関してもそれくらいしか情報がない。いや、裏とかもなさそうなくらい。だからぶっちゃけどうでもいいのよね……捕まえればなんか吐くかしら。

 

『こら! 音声入っちゃうでしょ! カメラは黙って……あっ。……ご、ごめんなさぁい! てへっ!』

「うわぁ……」

 

 とまぁあのように、猫被ってもすぐはがれるくらいには残念な奴よ。捕まえても碌な情報持ってなさそう。

 というかイオンが引いてるし、初めて見たそんな顔。

 

『えっとぉ、急に放送が始まっちゃってみんなびっくりしてると思うんだけどぉ。でもでも、これは見逃せないゾッ☆』

「……なんか微妙に年寄りくさい」

「イオン、そういうのは思っても言わないのよ」

「はぁい」

 

 わたしも思ったけどさ! 

 というかアイツ何処にいるのかしら。妙に豪華そうな襖が見えるけど……

 

『なんとなんと! 今アタシの目の前では! 女神同士のガチンコ対決が行われようとしてるんでーっす!』

 

 アブネスがそう告げると、カメラの視点が拙く揺れながらも切り替わる。

 そこに映っていたのはこの国の女神ことホワイトハートと……ノワールさん、ネプテューヌちゃん、プルルートさんの()()だった。

 

「あっ! ネプむぐぅぅぅ!!」

「ちょっと黙って! あ、お団子美味しかったです!」

「お、おお? 毎度ー」

 

 イオンが映像に映ったネプテューヌちゃんを見て声を上げようとしたところを、口を押えて阻止する。

 そのままお団子代を支払ってイオンを引き連れて、人目の少ない路地裏へと移動してから手を離した。

 

「ぷはっ! ひ、ひどいよエストちゃん~」

「ごめんごめん。ただちょっと、この後の展開次第じゃ知り合いだってのを回りに知られたらマズいかもって思って……」

「そうなの……? 理由があったなら、ボクは許すけど……」

 

 結果的に乱暴になっちゃったことをイオンに(とその周りにいるであろうゴースト達に)謝りつつ、端末を取り出してテレビ機能を起動させる。

 案の定電波ジャックしてるのか、どこのチャンネルも同じ放送だ。

 

『──てめーらをぶっ飛ばす瞬間を、世界中の奴等に見せてやろーと思ってな』

『なんてこと……や、やだ。せっかくのテレビデビューなのに私、普段着で……あ、髪の毛平気かしら? 誰か鏡持ってない?』

『これ本当? マジで映ってんの? おーいおーい! いーすん見てるー?』

『これで映るの~? ぺたぺた~』

 

 相変わらずフリーダムなネプテューヌちゃんパーティは置いといて……これ、お姉ちゃん考案なの? え、一人で女神三人倒す気なの? 嘘でしょ……

 

「プラネテューヌはともかくシェア順位も負けてるのに、その自信はどこから……」

「いいなー、ボクもテレビに出てみたーい!」

『あっ触っちゃダメ! 指紋がつくでしょ! っていうかアナタ達近すぎ! アタシが映んないでしょー!』

『……つくづく緊張感がねーな、てめーらは。どういう状況だか、ちゃんと理解してんのか?』

『うっ……し、してるわよ! ほんのちょっと浮かれちゃっただけじゃない! ……ま、折角そっちで舞台を整えてくれたんだし──』

 

 気を取り直したノワールさんが、カメラ意識するようなポーズを取りながら変身する。

 

『ルウィーの女神が無様に倒される姿、世界中の人間に見せてあげようじゃないの!』

 

 そして大剣をキリリと構えてそう言い放った。

 あの人まだ浮かれてるよね、めちゃくちゃカメラ意識してるよ。

 

『ほざけ! わたし以外の女神なんざ必要ねーって、世界中の奴等に思い知らせてやる!』

『ほら、あなた達もさっさと変身しなさいよ』

『いいの~? それじゃ~……』

『あ、ちょっとタンマ!』

 

 お姉ちゃんが啖呵切って、残りの二人も変身……するのかと思いきや、なぜかネプテューヌちゃんがそれを止めて、ノワールさんプルルートさんと何かを話し始めた。

 

「あれ? どうしたのかな。放送事故?」

「さぁ……大体こういう時っていつもネプテューヌちゃんが引っ掻き回すのに、珍しい」

 

 何か理由でもあるのかしら。カメラに声届いてないから何話してるかわからないし。

 

『おい! いつまでぐずぐずしてやがんだ!』

『早く始めなさいよ! 視聴者が飽きちゃうでしょ!』

『いつまでもカメラ担いでるのしんどいっちゅ……』

『ま、待って待って! 作戦会議するから!』

 

 お姉ちゃんと外野もそんなネプテューヌさん達を急かし始める。

 なんか聞き覚えのある声も混じってたけど……ええと、どこで聞いたんだっけ……

 

『プルルート、変身しなさい! それで、遠慮せず思いっきりやっちゃいなさい!』

『いいのぉ? わぁ~い!』

『えぇっ!? ちょ、ノワール! そのプランはまずい……プランBは? プランBはないの!?』

『ないわよそんなもの! ほら、早く!』

『うん。えぇ~い!』

 

 結局ノワールさんの言葉で、プルルートさんが変身した。

 女神化の光が治まるとそこにいたのは、いつだったか、遺跡で一度遭遇したプラネテューヌの女神、アイリスハートだった。

 ああ、プルルートさんがあの女神だったのね。

 

『うふふふふ……自分から世界中に醜態を晒すことをお望みなんて、ルウィーの女神様はとぉんだマゾヒストねぇ……案外あたしとは相性バッチリだったりしてぇ!』

『ぢゅー!? あ、あいつが……あいつが出てきたっちゅ……』

『あ、こら! カメラ震えてんじゃない! ちゃんと持っときなさいよ!』

 

 で、カメラマンはわたしがアイリスハートと出会った時にいたネズミらしい。彼女に恐怖心を抱いているのか、映像がガタガタと揺れている。

 

「あ、あれ、プルルートちゃんなの? なんか怖い……」

「女神って人によっては変身すると文字通り人が変わったみたいになるのよ。わたしはそんな変わんないけど」

「ほへぇー……」

 

 まぁそれにしたってほわーっとしたのが実はあんな女王様みたいなのになるなんて思わないけど! 

 ネプテューヌちゃんが乗り気じゃなかったのはあれが全国放送されるからだったのかしら……

 

『あーあー、変身しちゃったー。わたしもー知らないよ。何があっても責任とらないからねー!』

 

 プルルートさんが変身してしまって、ネプテューヌさんも投げやりになりながら変身する。

 

『苦情が来ても、全てあなたの方で処理しなさいよ、ノワール』

『さーって。苦情は全部プラネテューヌの教会に行くんじゃないかしらー?』

『はっ! あなた、まさかそれが狙いで?』

『なんのことー? 私分かんなーい』

 

 ノワールさんもなんかアレだし、ネプテューヌさん、苦労してるのかな……戦闘前なのに心なしかげんなりしてるように見える気がする。

 ネプテューヌちゃんが持て余す人達とか、あんまりお近付きになりたくないわねぇ。

 

『よーやく出揃いやがったか、散々待たせやがって。言っとくけど容赦なんてしねーからな。全力でてめーらを叩き潰す!』

『あら、強気ねぇ。でもそういうの嫌いじゃないわぁ。そういう子が泣いて謝るまで追い詰めるのって、最っ高に素敵だものねぇ! あぁ、どんな方法で泣かせちゃおうかしらぁ。やっぱりまずは縛り上げてぇ……』

『ぷるるん、そこまでにして。世界中の人が見ているのよ』

『倒した後はあなたの好きにしていいからね、プルルート!』

『ノワール! あなたいい加減に……』

 

 イライラを隠さずにやる気満々なお姉ちゃん、そんな強気なお姉ちゃんを前に色々ヤバいプルルートさん。

 そのプルルートさんを無責任に煽るノワールさんに、すごく大変そうなネプテューヌちゃん。

 始まる前からやりたい放題な中、とうとう女神同士の戦いが始まろうとしていた。

 

『テレビの前のみんな! おっまたせー♪ 女神同士のドリームマッチ、いよいよ始まりまーっす! 時間制限なしの完全KO一本勝負! 絶対に見逃せないわよっ! チャンネルは、そのままっ☆』

「イオン、行くわよ」

「あれ? 見ないの?」

「見るけど、場所変えるだけ」

 

 アブネスの台詞とともに始まった戦いをよそに、わたしは移動を開始する。

 まだ何かをするってつもりはないけど、これの結果次第でちょっと考えがある。

 

 目指すのは、なるべくルウィー城の近くまで。


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