幻次元ゲイム ネプテューヌ 白の国の不思議な魔導書 -Grimoire of Lowee- 作:橘 雪華
やっほーみんなー! 今回はゲーム本編側の主人公の私! ネプテューヌのターンだよ!
って言っても、殆ど元のお話しと同じ場所はバッサリ飛ばされちゃうんだけどねー。気になる人はゲームをプレイ! だよっ!
……そもそもゲームやってないで読みに来る人いるのかって? それもそっかー。
でもまぁ「それじゃあはいスタート!」じゃ何かなんだかわかんないし、とりあえず前話の後の事──こっちのブランと出会った後のわたし達の話をざっくり説明するね。
ブランとノワールが顔合わせして、そこにまさかの再登場したモブのお兄さんから、ラステイションのゲーム工場が襲われたーって報告されて、慌てて戻ることになったんだ。
それで、ノワールとぷるるんとわたしの三人でゲーム工場までやってきたら、そりゃもうしっちゃかめっちゃかの大惨事、当然ノワールもカンカンになるわけで。
怒るノワールに続いて奥に進むと、どっかで会ったネズミ……ワレチューだっけ? と、声がすっごくおっきい変なロボットがいたんだ。
コピリーエースだったかな、ほんと急に大声出すから耳キーンってなって大変だったよ……
で、そのロボットが言うには、ブランがわたし達を引き付けてくれたおかげですんなり壊しに入れたーって言ったんだよね。つまりブラン……ルウィーが七賢人と繋がりがあるって話。
一瞬まさか―、とは思ったけど、私もこっちのブランの事は遠目で見たくらいしか知らないわけだし、これはその内ブランと戦う日が来そうだなぁ……
なんて内に激おこノワールは変身しちゃうし、しかもぷるるんまで変身させちゃうし。流れで私も変身してコピリエースとの戦闘……といった感じがここまでの大まかな流れだね。
というわけで、ここからは実際に戦闘してる私の視点に移るよ!
「見切れるかしら! レイシーズダンス!」
「可愛がってあげるわ……ファイティングヴァイパー!」
「この一撃で! クリティカルエッジ!」
「ぐわあああああああッ!!」
3人の女神の攻撃を浴び、叫び声を上げるコピリーエース。多分これで決着がつくでしょう。
七賢人最強と自称してた割には大したことなかったわね。
「ぐ、おお……ッ! 俺様の……俺様の最強の身体が……割れる……ッ!?」
「何が最強よ、その程度で最強なんて聞いて呆れるわ」
「そうよぉ。こんなんじゃ不完全燃焼だわぁ」
ガタガタと嫌な音を出し始めたコピリーエースに、吐き捨てる様にそう告げるノワールとまだまだ足りない様子なぷるるん。
ノワールはともかく、ぷるるんは早く変身を解いて欲しいものだけれど……
そう、勝利を確信していた時だった。
「──フン、無様だな」
いつからそこにいたのか。目元だけを隠すような仮面をつけた、真っ暗闇のような髪の女の子が、コピリーエース側に立っていた。
「あらぁ……?」
「何? あっちの援軍かしら?」
ノワールとぷるるんも気付いたようで、現れた女の子に注意を向けている。んだけど……
なんだろう、既視感? っていうのかな。私、あの子を知ってる気がする。
そんな私達の警戒の視線を受けた女の子はまた「フン」と鼻を鳴らすと、
懐から不気味な色のクリスタルを取り出した。
「き、さま……!?」
「ワタシにとってはキサマがここで朽ち果てようとどうでもいい事だ。だが、どうせ死ぬのならば少しは役に立ってもらうぞ」
コピリーエースも驚愕した様子で、けれどそんなの気にしないとでも言わんばかりに、手にした黒いクリスタルをコピリーエースへと押し込んだ。
「グッ……ァァアアアアッ!!?」
すると突然コピリーエースが苦しそうな声を上げ始め、次第に身体が黒く染まり始めていく。
「貴女、一体何をしたの!」
「…………」
黒い女の子に問いかけるものの、答える気がないらしく無視された。
「ォォオオオ……! 破壊……破壊……壊ス……ッ!」
「破壊の
ニヤリ、と口元に笑みを浮かべると女の子は後ろに下がり、
黒く染まったコピリーエースがこちらに迫ってきた。
「よくわからないけど、死にぞこないの攻撃なんて──」
「ノワールちゃん、避けなさいッ!!」
見た目が変わったとはいえさっきまで追い込んでいた相手……そう判断したらしいノワールがコピリーエースの一撃を剣で受け止めようとして、ぷるるんが叫んだ。
その声を聞いてノワールが咄嗟に後ろに飛びのくと、
轟音と共にノワールのいた場所の地面が吹き飛んだ。
「なッ……!」
「パワーが、さっきまでと段違いに上がってる……?!」
飛び散る破片を防ぎながらも、驚きを隠せない。
今の一撃は、さっきまで弱っていたとは思えない程の破壊力を見せた。
「グオオオオ!」
「チッ、面倒な事してくれるじゃない、貴女ッ!」
さっきまでの脳筋っぷりからすっかりバーサーカーと化したコピリーエースの様子を見て、ノワールは恐らくその原因であろう女の子を睨みつけながら叫ぶ。
「ノワール! 余所見してる場合じゃないわ! 油断しないで!」
「くっ……ああもう! わかってるわよッ!」
「うふふ……少しは楽しめそうねぇ」
苛立ちを隠そうともしないノワールと、対照的に楽し気なぷるるん。
本当に、この二人はキャラが濃いというか、変身前の私でもツッコミに回らないといけなくなるから大変ね。
「ハァッ!!」
「ガアアアア!」
「ッ……アレには当たりたくないわね……!」
「でもぉ、見たところ力ばっかりで動きは前よりお粗末なものねぇ」
「お粗末でもこれ以上暴れられるのは御免よ!」
ぷるるんが言ったように、理性が無くなったからか攻撃事態はよく見れば避けられる。その分当たった時を考えたくないけど。
「ウガアア!」
乱雑に振り回される腕を飛んで避ける。
……いい加減、避けてばかりじゃダメね。
「そこッ!!」
空中から太刀を構え、頭目掛けて加速。
兜割りの如く一太刀を浴びせる。
「まだよ! クロスコンビネーションッ!!」
「グウゥ!」
続けざまに連撃を叩き込むと、効いているのか呻き声を上げた。
「ねぷちゃぁん、下がった方がいいわよぉ?」
彼女にそんな意図は……な、ないのかもしれないけど、
背筋がゾワッとする声が聞こえてちらりと見ると、ぷるるんが剣を構えて何かをしようとしていた。
コピリーエースの反撃をかわしながら、言われた通りに距離を取る。
「うふふふ……痺れさせてアゲル!」
わたしを逃すまいと追いかけてこようとするコピリーエースへと、ぷるるんの放った電撃魔法が炸裂した。
というか普通に魔法使えたのねぷるるん。変身するとあんなになるからか相手に接近技が多くなる印象だったけれど。
「あらぁ、ねぷちゃん。物欲しそう見ちゃって……シてほしいのかしらぁ?」
「そんなわけないでしょ!?」
でもやっぱり苦手ね、ああいうこと言って本当にやりかねないし……
「ウオオアアアッ!!」
「ッ、く……!」
飛び回るのが鬱陶しくなったのか、近くの瓦礫を投げ飛ばしてきた。
思いのほか速度が速いそれを寸での所で斬り払って防ぐものの、太刀を持つ手が少し痺れる。
「これ以上暴れさせてなるもんですか!」
瓦礫投げでさらに工場の被害が大きくなったからか、ノワールが激情のままに飛んでいく。
「ちょっと、ノワール! 一人で突っ込まないで……ああもう!」
「もう、ノワールちゃんったらぁ、しょうがない子ねぇ」
ノワールは結構な速度を出していて太刀じゃ援護が間に合わない。太刀ならば、だけれど。
「本編じゃサポートスキルでしか出番がなかったと言うのに、こっちじゃ大活躍ねッ!!」
ノワールの後を追いながらハンドガンを構えて、ノワールへと放たれた瓦礫を撃ち落としていく。
当然ただの銃弾じゃ多少勢いを削る程度にしかならない。でも、私の放った弾丸は瓦礫を止めるどころかそのまま破壊していた。
当然ね。だってあれは《ショット》じゃなくて《チャージショット》だもの。
チャージといっても某青いロボットみたいなものではなくて、シェアエネルギーをチャージした弾丸。という意味のチャージショット。
その威力は……見ての通りよ。
「うふふふふ! いくら正確に投げたところで、届かなければ無意味よねぇ」
ぷるるんも電撃魔法で瓦礫を撃ち落としていく。
ノワールのことだから「余計なことを」とか「助けなんていらなかったわ」とか言いそうだけど、だからって助けない理由にはならないもの。
「今度こそ、終わらせてあげるわ!」
私とぷるるんの援護で落とし切れなかった僅かな瓦礫を軽く避けながら、コピリーエースへと肉薄していく。
「ひれ伏しなさいッ! ドロップクラッシュ!!」
「ぐ、ガァァァァアアアァァ!!!」
そして、ノワールのトドメの一撃に断末魔を上げると、コピリーエースはその場に崩れ落ちて動かなくなる。
今度こそ倒せた……っていうのはフラグになるかしら?
「フム。想定よりも女神共の力が勝っていたか、或いは想定よりもコレが口先だけだったか……どちらだとしてもどうでもいい事だが」
と、ここでずっと私たちの戦いを眺めていた黒い女の子がコピリーエースに近寄ると、コピリーエースに手をかざす。
するとコピリーエースが始めに戦ってた、まだ言葉を話していた時の色に戻り、女の子の手にまた黒いクリスタルが握られていた。
あれは一体……なんにしても、嫌な感じがする。
「……ああ、コレも回収しておけと言われていたか。ああ、面倒だ」
「ちょっと」
ノワールが声をかけても聞こえてないように女の子が再びコピリーエースに手をかざすと、今度はコピリーエースそのものが消えていく。
回収って言ってたし、どこかにしまったのだろうけど……彼女に仲間意識とかはないのかしら?
「……」
「無視してんじゃないわよ! みすみす見逃すとでも思っているのッ!!」
そのままノワールどころか私達なんていないとでも言うように立ち去ろうとする女の子に、ノワールが容赦なく躍り掛かる。
無防備に見える女の子に……とは言わない。どう見てもあの子は普通じゃない。
それを証明するようにノワールの大剣は女の子へと届く前に、金属音を響かせて止められた。
止めたのは勿論、黒い女の子。身の丈程の太刀を鞘にしまったまま、涼しい顔でノワールの大剣を受け止めていた。
「……鬱陶しい」
「なんですって!?」
「では聞いてやる。キサマは足元を歩く小虫共を一々気にして歩くか?」
「……私達がその虫だって言いたいわけ?」
「フン、理解しているじゃないか」
「ふざけるんじゃ──」
ノワールがそう言いかけたと思うと、女の子が振り払うように片手で大太刀を振るう。
それだけで、ノワールの身体は容易く吹き飛ばされた。
「きゃああっ!!」
「ノワール! ……くっ!!」
かなりの速度で飛んできたノワールを何とか受け止めるもののそれでも勢いを殺し切れず、プロセッサユニットの推進力でどうにか持ちこたえる。
女神化してるノワールをこんな軽々と……まさか大剣と大太刀で力が拮抗していたんじゃなくて、手を抜いていたっていうの?
「……ワタシとしては今この場で殺してやりたいところだが……ワタシが人間に従わなければならないなど、忌々しいことこの上ない。まあ、そもそも今のキサマらなぞ喰い殺す価値も無い」
けれど女の子は太刀を抜くことも、追撃をしてくる様子もなくて、そう吐き捨てて私達に背を向ける。
「身の程を知れよ、愚神。無様に死にたくないのならば精々強くなるがいい」
「……強くなったら、貴女達が困るんじゃないのかしら」
「ハッ、奴等が困ろうがワタシには関係ない。ワタシとしてはあの子だけを守れれば良い、それに──」
睨みつけながら言い返すと、女の子は嘲笑いながら仮面を外し、顔だけこちらに向け、
「──エモノは強い方が、狩り甲斐があるだろう?」
「なっ……貴女……!?」
ニタァ……と獰猛な、獣の様な笑みをこちらに向けてそう言い残し、去っていった。
それよりもあの顔……いや、まさか……
「私が、軽くあしらわれた……くっ……!」
「ノワールちゃん。気にらないけれど、今のアタシ達であの子に敵わないのは事実よぉ。見た感じ、文字通りレベルが違うみたいねぇ。……ねぷちゃん?」
「……」
悔しがるノワール、不機嫌そうなぷるるん。
でも、私はそんな二人よりも、さっきの女の子の事ばかり考えていた。
だって、あの顔は、あの見覚えのある顔は、ロムちゃんのような顔で。
それでいて、いつかブランの所に遊びに行った時、あの顔と体つきの女の子を一人、私は見ていた。
まさか……ディールちゃん……?
いや、ここは別次元。私の知ってるのと違うノワールに、ブランもいた。だから断定するにはまだ、早い。
……それでも、エストちゃんと連絡が着いたら……彼女には伝えておいた方がいいかもしれないわね。
「どうかしたのぉ?」
「いえ、何でもないわ。ノワール、一先ず七賢人は撃退したのだし、一度戻りましょう。後始末はそれからでもいいでしょ?」
「……そうね」
色々考えないといけないことはあるけど、今はとにかく帰って休みたいものね……
こうして黒い女の子の謎に黒いクリスタルの謎……それらに頭を悩ませる羽目になりつつも、七賢人の一人を撃破した私達はラステイションへと帰るのだった。