幻次元ゲイム ネプテューヌ 白の国の不思議な魔導書 -Grimoire of Lowee-   作:橘 雪華

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 少女は絶望した。
守ると誓ったはずのものを奪われて。


 少女は絶望した。
自分達を拒絶する世界に。



 そして少女達は引かれ合い、出会った。

 世界を越えて、次元を超えて。


 2つの世界を取り巻く戦いを前にした少女達が選択する未来は、交わるのか、それとも──





というわけで神次元編です。
ただ大まかな流れはあるものの細部がうろ覚えなのでプレイし直ししつつになるから前より長引きそう…が、がんばります。











 どうして……?

 ───何もしていない。していないのに。どうして、いじめるの……? 

 ただ仲良くしたい、それだけだったのに……


 こんな悲しい事……悲しい世界は、間違ってる。

 ───悲しませる奴らなんかいなくなればいい。みんなみんな……消しちゃえば。
 そうすれば、悲しくない。この悲しみもなくなる。


 ……これで、いいの。これで……







神次元ゲイム ネプテューヌ 楽園の奏者は悲哀を奏でる -Desire of Eden-
Ouverture そして紅い翼は舞い降りた


「空間の歪み?」

 

 犯罪組織と犯罪神の騒動から一年くらいは経って、残党への対処も済み始めて来た頃のある日のこと。

 珍しくグリモに呼び出されて、彼女が居座っている書斎へとやって来ていた。

 

 わたしはルウィー女神候補生専属侍女のエスト。

 またの名を、グリモアシスター・ラム。

 元別次元じゃホワイトシスター・ラムだったんだけど、色々あって次元を超えて、今はこうして非正規女神なメイドさんをしているの。

 

 ……え? レッドハートじゃないのかって? 

 確かに少し前まではそう名乗ってたけど、正規の女神じゃないしそもそも元は候補生なんだからって、お姉ちゃん(ブラン)とグリモに変えられたの。

 ま、こっちの方が語呂がいいから良いんだけど。

 

 っと、脱線しすぎないように、戻って戻って〜

 

「はい〜。なんだか妙な空間のズレといいますか、おかしな感覚を感知しまして〜」

 

 この白い本に乗っかってふわふわ浮いてるのがグリモこと、グリモワール。

 こんなでもすっごい魔導書で、わたし達に力を貸してくれたりするスゴいやつ。なんだけど、引きこもりがちなのよね。

 

「うーん……放っておいたらダメなの……?」

 

 で、このわたしに似てすっごく可愛い子がわたしの双子のお姉ちゃんの、ルウィー女神候補生専属侍女ディール。

 そしてまたの名を、グリモアシスター・ロム! 

 察しの通り、元はホワイトシスター・ロムだった子よ。

 わたしの強さはディーちゃんの為だけと言っても過言じゃないかもね! 

 

「放っておくと誰かが誤って引き込まれて、別の次元に飛ばされちゃうかもですねー。時折あるでしょう? そういう案件」

「ああ、なんか、イセカイテンイ? だか、そんな感じの。そういえば何度かあった気がするわ」

 

 別世界の人が、なんかしらの影響でゲイムギョウ界に飛ばされて来ちゃうのよね。

 あの人が流れ着いてきたりするのも似たようなもの。逆にディーちゃんが言う変なとこに行ったとか言うのは別件ね。

 

「それは……確かに、危ないかもだけど」

「そうね。調査するとしても、危険はないの?」

「無いとは言いきれませんが……放置する訳にも行かない、そんなもどかしい事態ですねぇ」

「ふーん、メンドーね」

 

 放置しても面倒だし、行っても絶対なんか起こりそうなフラグ立ってるし。

 ……むー、仕方ない、行くしかないか。

 

「おねーちゃん達は……わざわざ付き合わせる程でも無いわね。わたし達で十分でしょ」

「そ、そうかな……まぁ、そうだね。えっと、気を付けることとかはある?」

「不用意に近づかないこと、ですかねぇ。あんまり近づきすぎると別次元に飛ばされちゃうかもですし。そうなると私でも探すのに多少時間がかかっちゃいます」

(多少で済むんだ……)

 

 前から思ってたけど結構ハイスペックよね、グリモワールって。

 まぁそれはいいとして、流石のグリモでも自分の力以外で別次元に飛ばれると探すのに時間がかかるってわけか。

 

「現場に行ってくれれば後はわたしの方でどうにかしますのでー」

「……それ、グリモが直接行くんじゃダメなの?」

 

 結局グリモがどうにかするんだったら、わたし達が行く意味なくない? と思ったことを聞いてみる。

 

「ああ、えっとですねぇ……ここに居座ってたらブランさんに資料管理を押し──────任されちゃいまして……」

「そ、そうなんだ……何もしないよりはいいんじゃないかな……?」

「そんなー」

 

 今コイツ押し付けられたって言いかけなかった? ……まぁいっか。

 わたし達だって働いてる……手伝ってる? し、何もしないで本ばっか読んでりゃそりゃあね。

 

「ま、理由はわかったわ。じゃあディーちゃん、ささっと行ってきましょ」

「うん」

「お願いしますねー」

 

 そんな訳で、わたしとディーちゃんは普段着に着替えるとグリモの指定した場所へと向かうのだった。

 

 

 


 

 

 

 

 そしてやってきたのはとある森。

 ダンジョン指定もされてないただの森で、グリモが言うにはこの辺で歪みだか何だかを感知したらしいけど……

 

「ディーちゃん、何か見つかった?」

「ううん、何も。ここであってるのかな……」

 

 エスちゃんと二人で辺りを見て回ってみるけど、特に変わった所はない。

 うーん? 分かりにくい感じなのかなぁ

 

「もう……あいつもガタが来てるんじゃないの? ちょっとグリモに聞いてみるわ」

「あ、わかった。お願いね」

 

 エスちゃんが端末を取り出してグリモと連絡を取り始める。

 その間にも一応と感知魔法とかを駆使してみるものの……やっぱり変わった様子は──

 

 

 

 ──────。

 

 

「えっ?」

「ん? どうかした?」

「今、何か声が……って、エスちゃん!?」

 

 変な声が聞こえた気がして顔を上げると、そんなわたしをみてエスちゃんが不思議そうにこっちを見てくる。

 そのエスちゃんの背後──何もないはずの空間に、突然穴が開いて……

 

「エスちゃん危ないっ!」

「え、きゃあっ!?」

 

 咄嗟にエスちゃんを突き飛ばして庇うと、穴から飛び出してきた触手の様なものがわたしの身体に巻き付いた。

 な、なにこれ……!? 

 

「っく、ぅ……なに、力が、抜けて……」

「ディーちゃんッ! あぐっ!!」

 

 エスちゃんも異常に気が付いてわたしの名前を呼ぶけど、別の触手がエスちゃんをも捕えてしまう。

 そして触手はそのままわたしたちを穴の中へと引きずりこんでいく。

 

「く、そっ……! こんな程度の、どうして……!」

「エ、ス……ちゃん……」

 

 謎の空間に引きずり込まれたのも大事だけど、どんどん力が抜けていく。奪われて行ってる? 

 駄目だ、意識が遠のいていく……

 

(く……せめて、エスちゃんだけでも……)

 

 遠のく意識の中でエスちゃんだけでも助けようと、彼女を捕らえる触手に手をかざしてまだ残ってる力の全部を魔力にして叩き込む……! 

 

「っあ! ディーちゃん、何を!?」

「え、へへ……エスちゃん……」

 

 その一撃でどうにかエスちゃんを捕まえていた触手だけは消し飛ばせて、エスちゃんは真っ暗な中落ちていく。

 ──どこに落ちるかはわからないけど、グリモだっている。このまま捕まった先よりはマシな状況になるはず……

 わたしの方は……力を使ったのもあって、もう限界……

 

「ごめんね、エスちゃん……あと、お願い……」

「ディーちゃん……? ディーちゃん!? ……ロムちゃぁぁぁぁんッッ!!!」

 

 大丈夫。エスちゃんならうまくやってくれるって、信じてる……から……

 

 

 エスちゃんの悲痛な叫び声を最後に、

 

 わたしの意識は、そこで途絶えた。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 そんな、どうして、なんで、なんでわたしだけ! ディーちゃん……!! 

 

 そもそも誰がこんなことを……絶対に許さない……ッ! 

 絶対絶対、助けるんだ。守るって決めたんだから、絶対に! 

 

 でもってこんなことをした奴は絶対にぶっ飛ばす……絶対! 

 

 

 真っ暗な空間を落下……落ちてるのかもわからないままでいると、不意に辺りが明るくなる。

 

「うっ……」

 

 真っ暗から急に明るくなって思わず目を細める。と同時に風の音としっかりとした落下の感覚。

 どうにか目を空けてわたしの目の前に広がったのは、一面の青空。

 

 つまりどういうことかというと……

 

「……落ちてるぅぅっ!!」

 

 空。空中。すかいはい。

 どういうわけかわたしは今、空から落ちているのが現状みたいだった。

 

 身体を捻って態勢を変えてみれば、地面も見えた。当然どんどん近づいてくる。

 

「うわわ、ヤバ……っ!!」

 

 流石にこのままの落下速度で地面に激突したら、ネプテューヌちゃんでもなきゃ大怪我は免れない。

 こうなったら女神化して、それからどうにか着地するしかない。

 

「セット! ……あ、あれ?」

 

 そうと決まればと、早速女神化を試みる。

 

 ……けど、力が満ちる感覚はない。というか、力が抜けっぱなし……? ……さっきの触手のせい……!? 

 ひぃ! 地面が、地面が!! 

 

 こ、こうなったらイチかバチか! 女神化で飛べるからって使ったことないけどアレを試すしか無い……! 

 

 内心大慌てになりながらも、わたしは両手に残っていた魔力を集中させていく──

 

「これで……!!」

 

 

 


 

 

 

「~♪」

 

 人気のない広場の、切り株に腰かけて、

 憧れの人を真似て始めた……はずの、愛用のギターを弾きながら鼻歌をリズムに合わせる。

 今日は特に決まった曲もなくて、ただ適当に弾いて歌っているだけ。でも、そんなその場限りの旋律だけでも、ボクは楽しい。

 

「……うわっと。もう、イタズラはめっ、だよ?」

 

 そうやっているだけでもこうして、ボクの"おともだち"だって楽しそうにしてくれるから。

 ボクはそれだけで満足だった。

 

「ん、んーっ……今日もいい天気だねぇー」

 

 一度ギターを弾くのを止めて、ぐぐーっと両腕を伸ばす。

 見上げた空は雲一つない青い空。いい天気! 

 

 村の人と仲が悪いわけじゃないけど……なんか居辛くって、ついここに来てしまう。

 ここの方が落ち着くし、みんなとも話しやすいし……

 

 ──え、ふーちゃん? どうしたの、逃げてって──

 

「ギャオオオオ!!」

「……えっ」

 

 ”おともだち”が突然騒ぎ始めて戸惑っていると、木々の間から凶悪なモンスターが飛び出してきた。

 ど、どうして、こんな奴が……この辺りじゃ見たことない……! 

 

「あ……ぁ……」

 

 突然のモンスターの襲撃に腰が抜けてしまう。

 切り株からずり落ちて、地面を這うように後ずさりするけど、モンスターはどんどん近づいてくる。

 

 どうしよう、どうしよう……どうしよう……!! 

 

 恐怖で頭がいっぱいになって、でも腰が抜けて立ち上がれそうにもない。

 思わずぎゅっと、ギターを強く抱きしめる。

 

「ガアアアッ!!」

「っ……!!」

 

 モンスターが咆哮して飛び掛かってくる。

 反射的に目を閉じ、伏せる。

 

 

 

 目の前の現実から目を背けて震える。けど、何の衝撃も痛みもない。

 恐る恐る目を開けると──

 

「……落ちた先でたまたま人が襲われてるなんて、色々起こりすぎよ、ったく」

 

 ──バチバチと紅い色をした雷と風を、まるで羽のように背に纏った小さな女の子が、倒れたモンスターの上に立っていた。

 

「……羽? ……あなたは、天使?」

 

 目の前の幻想的ともとれる光景に、ボクは思わずそう呟いていた。

 

「天使じゃないわ、わたしはエスト。……あんたの名前は?」

 

 ジジ……と彼女が纏っていた雷が消えると、女の子──エストはボクにそう訊いてきた。

 

「ボクは……イオン、です」

 

 

 ──これが、ボクとエストちゃんとの出逢いだった。

 

 この出逢いを、ボクはきっと生涯忘れることはないだろう。

 

 

 ボク達に希望への飛翔するきっかけをくれた、紅い翼の事を──

 




5pb.(ごっぴー)ちゃんっぽいけど別人ですよ、ええ、別人。見た目とか違いますからね!
まぁ、諸々似てる理由は後々…ということで! まだ1話ですもん!

あ、元ネタ解説は今シリーズはなしです。ないけどパロディはちゃんとぶちこんであります。決して自分で探してくのが面倒になったとか……そ、そんなことはないですよ?

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