幻次元ゲイム ネプテューヌ 白の国の不思議な魔導書 -Grimoire of Lowee- 作:橘 雪華
遅すぎるし他のコラボしちゃってるし、OP終わってるだろうって? ごもっとも…いやはや本当、申し訳ないです…ほんとに。
……あ、ということなので他作者様とのコラボの内容を含みますので、苦手な方はスルーしちゃって大丈夫です。そうでないかたは上記作品でのコラボ回をみてくると良いかも…?
2022/4/27:人物名[コーフリ→フーリ]に変更しました。
またディールからの呼び方を[フーちゃん→フーリ]に変更しました。
人物名[エミュ→ミュー]に変更しました。
パコーン
スパーン
「………」
「ふっ! てやっ!」
パコーン
スパコーン
「ぜやぁーっ!!」
パコココーン!!
「……エスちゃん、いつまでやる気なの?」
「わたしが! 納得! 行くまで! うりゃぁぁああ!」
そう言ってエスちゃんは
なんだって突然こんな所に来て、しかもコート一つ分魔改造させてまでこんな事をエスちゃんがしてるかと言われれば、十中八九先日の再会が原因だろう。
別のゲイムギョウ界から迷い込んで来た、いつか共に戦った人……原初の女神イリゼ。
ひょんな事でわたし達のゲイムギョウ界に来ていたイリゼさんが滞在中にわたし達と繰り広げたあの
そう──テニス勝負。
「確かに負けて悔しい気持ちはわからないわけじゃないけど、なにもそんなムキにならなくても……」
あの日、イリゼさん対わたしとエスちゃん(と後から来たロムちゃんにラムちゃん)が
あの後エスちゃんは気にしてなさそうな、いつも通りのテンションだったけど、イリゼさんが帰って次の日にはこれだった。
「ムキになんかなってない! これはこれで特訓になるし、それに……」
「……それに?」
「…ワタシが納得してないから!!」
魔法は使ってない(のかな?)はずなのにもの凄い速さでコートを動き回って返球しながら答えるエスちゃん。いや今ちょっとミューちゃん出てなかった?
ま、まぁ、
「イリゼさんだって言ってたでしょ、遊びなんだから意地にならなくてもって…」
「甘いよディー姉! いちご大福よりも甘々! スポーツだろうとゲームだろうと、勝負は戦いなんだよ! 負けたって事はワタシがイリゼおねーさんより弱いってこと! そんなの嫌だもん! 弱いのは嫌!」
「あ、うん。そうだね……」
完全にミューちゃんに呑まれてるなぁ、と思いながら、スパコンスパコンボールを打ち返して行く
あ、因みにミューちゃんはわたしの事を何でかディー姉って呼ぶよ。フーリのことはフー姉。
それ以外の年上には名前におねーさん。ロムちゃんとラムちゃんのことは……何て呼んでたっけ。まぁいっか。
「でもあの時のイリゼさん、単純に強いのもあるけど、なんていうか、こう……補正みたいなのがかかってた様な気がするよ? テニス関連特攻みたいな」
「だとしてもー! ワタシは誰よりも強くなくちゃ嫌ー!」
「……あんまり無茶しないでね? 後でエスちゃんがで反動で苦しむから…」
鬼神の如き勢いでコートを動き回るミューちゃんに一応注意をしておく。
ミューちゃんの意識が表に出ていると、不思議と普段のエスちゃんよりも速さとか強さが上がるんだけど、身体のリミッターでも外してるのかああいう無茶な速度・動きをしてると後で引っ込んだ時にエスちゃんが反動を受けるんだよね。
身体はエスちゃんのものだし、当然だけど。
「無茶なんかじゃないよ、だって、ワタシは強くなくちゃいけないんだもん。誰よりも、強くないと!」
「……そう」
けれどわたしの声は届かなかったみたいで、ミューちゃんはボールの相手を続行する。
あの危うさはエスちゃんのデザイアソウル故か、それとも……
結局、
「いたた…身体のふしぶしが痛い!」
「だ、大丈夫…?」
案の定、無理な動きをした(させられた?)エスちゃんは身体の不調を訴える。
ミューちゃんの思考、反応速度にあわせて無理矢理身体を動かしてるわけだから、当然だけど。
「……まぁ、アイツが言ったことに嘘は無いのよ。わたしだってやっぱり負けて悔しかったし」
「それは、わたしだってそうだけど……」
「多少の無理は必要経費よ。イロージョン*1でリミッター外れたまま戦えば反動はあるけどその分経験にもなるしね」
「うーん……」
なんというか、ミューちゃんの気質もあって本当に危ういなぁ……
「まぁなんだかんだで、いると退屈はしなさそうな人だよね、イリゼおねーさんって」
「それは、そうだね。面白い人だし、頼もしい人でもあるから」
「一緒にいるとどーにもあっちのペースに呑まれちゃうけど」
「それは色々おとなのじじょうが絡んでるから仕方ないよ?」
主に書き手とかそういう……ごほん。
「イリゼさんはイリゼさんで大変そうだよね。今回のも来ようと思って来た訳じゃなかったんだし」
「大変じゃない女神はいないと思うけどねー」
「それはそうだろうけど。あの人の場合自分の立ち位置とか」
あっちはあっちで大変そうだし。詳しくはお互い深入りしない方がいいんだろうけど、それでもやっぱり心配は……ある。
「そう? わたし達が気にすることでもないと思うけど。なんであれおねーさんはおねーさんでしょ」
「んー……ほら、ちゃんとあっちの仲間に打ち明けられたかな、とか……」
「おねーさんならだいじょーぶだって。そんなのこそ、わたし達が気にしたってしょーがないでしょ? できる限りの後押しはしたつもりだし。ね?」
「……うん」
「……。ああもう! ほら!」
わたしの煮え切らない態度が気に入らなかったのか、エスちゃんは手に持っていたラケットをわたしに押し付けてきた。
「折角来てるんだから、ディーちゃんもやりなさい! 打ち返すの楽しいから気晴らしになるし!」
「あ。う、うん……いや、再戦はエスちゃんだけにしてね?」
「えーっ!?」
折角来たからやるにはやるけどね。
わたしは負けると分かってるのに挑んだりはしないのだ……って言ったらやっぱり焚き付ける為に煽られるかなぁ?
わたしが知ってる人達って基本好戦的だから、挑発されたりしたりを良くしてそう……イリゼさん含めて。
「……いつか、わたしかエスちゃんか…それとも両方が、今度はイリゼさんのとこに飛ばされたりしてね」
「えー? 無いでしょ急にそんな事。あ、ディーちゃん動かすよー」
「かなぁ? っと……はぁい」
冗談交じりのやり取りで会話を切り上げると、エスちゃんが機械にコインを入れて動かし始める。
動き出す機械を見つめながら、わたしはまたいつかの再会を願うのでした。
「うわ、わっ…えいっ!」
──パコーンっ