幻次元ゲイム ネプテューヌ 白の国の不思議な魔導書 -Grimoire of Lowee-   作:橘 雪華

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戦闘描写つらい…つらたん


Act.7 絶望の嵐

「う、く…っ」

 

M.P.B.Lによる連続射撃を避けつつ反撃を狙おうとすれば、その一瞬を突くようにX.M.Bの砲撃が飛んでくる。

 

「きゃああ!?」

「あう…っ!」

 

かといってその2人にばかり意識を向けてしまえば、さらにその後ろからの遠距離魔法が、こちらの前衛を抜けて後衛に被害をもたらす。

やっとの思いで手傷を負わせたとしても──

 

「……治す」

「あーもう! 敵キャラの癖に回復使うんじゃないわー!!」

 

不意打ちクナイ*1で負わせた傷、毒を治癒魔法で回復され、エスちゃんがうがーっと怒った。

 

「無茶苦茶言うねエスちゃん…」

「くそぅ、絶妙にめんどくさい組み合わせねこいつら!!」

『うぐっ…』

「エスちゃん、言葉の刃が味方に刺さってるし、もっと言えばわたし達も含まれてるブーメランだからね…?」

 

基礎スタイルこそ変えてるけど、回復担当だって遠距離魔法担当だってできるし、わたし達(わたしとエスちゃん)

というかグリモワールなんていうズルしてるから、本当は不向きな物理系を伸ばせてる所とかあるし…エスちゃんはそれ含めた上で沢山大変な思いしてきたみたいだけど。

 

「って、うわわ…うくっ…」

「攻撃、激しい…っ」

「そりゃ偽物も大本も全員遠距離攻撃持ちだから、ねぇ…ッ!」

 

女神化済の女神候補生の偽物4人とクロムの敵編成は、距離を取っていると遠距離攻撃の嵐で攻め立ててくる。

とりあえず魔法組(わたしとエスちゃん、ロムちゃんラムちゃん)で障壁を張ってどうにかしのいでいるけど、このままはまったくもってよろしくない。

 

「そもそも遮蔽物が無さすぎるのよ、ここ」

「確かに…瓦礫はあるけど、この辺は何にもない広場だもんね」

「ゲーム的な仕様のせいじゃ、ないの…っ!?」

「それ言ったら戦う場所全部平地になっちゃうよ…!」

「なんでもいいから早くどうにかしなさいよー!!」

 

ネプギアちゃんとユニちゃんが後ろで対策を考えてくれているけど……ん、遮蔽物?

 

「……遮蔽物があれば、楽になる?」

「え? え、ええ。でもどうやって作るかって問題が…」

「なら、わたしに任せて。…エスちゃん、ロムちゃん、ラムちゃん。ちょっと3人で頑張ってね」

「ええぇ! ちょ、ディーちゃん!? く、おおおおっ!!」

「あうう…! つ、つらい…!」

 

3人には申し訳ないけどある程度の広さで展開するにはこっちに集中しないとだから…

 

 

すぅ、はぁ…と深呼吸をしながら、集中。魔力を高めていく。

 

軽めに杖を地面に立てると、目には見えない魔力が枝のように地面を伝って伸びていく。まだまだ…

 

ヴォン、と蒼色の魔法陣が地面に浮かび上がり、紋様が広がっていく。もっと…

 

もっともっと集中していけば、魔法陣が二重、三重と重なっていく。もう少し…

 

溢れ出す魔力がふわふわと身体を撫で、髪を靡かせる。……いける!

 

 

「悪しきを阻む氷樹林! フリージング・テリトリアッ!*2

 

魔法陣の中心に突き立てられた杖に、魔力を注ぎ込む。

すると地面から次々と氷の柱が伸びていき、広場の至る所に氷の樹が立ち並んでいく。

 

「わ、わ!? な、何!?」

「氷の柱…ううん、樹?」

「柱から伸びてるのを枝に見立てると、確かに樹みたいに見えるわね…」

 

地面から伸びた氷柱は、氷の枝を伸ばしてそれぞれの柱と繋がっていく。

本当なら大型相手の方が効果的だけど、これも遠距離攻撃を避ける手のひとつになるはず。

 

これでもうここは、わたしの領域。

 

「ディールちゃん、すごい…!」

「ふぅ。…ゆっくりしてる暇はないよ。うーん……ひとかたまりで攻めるより、ペアで3手に分かれたほうが、いいかも」

 

一息着きつつも、直ぐに動くようにと提案。

それとペアを組んで分散して攻め込むということも告げれば、初めに動いたのはエスちゃんだ。

 

「ん。じゃ、ラム。あんたはわたしとね。…ちゃんと着いて来なさいよ?」

「え? むっ、何よ! 着いていくくらい、余裕なんだから!」

「ならいいわ。前に教えたあれをやるから、しっかりね!」

「あれ? …あれね!」

 

ラムラムペアは何か作戦があるみたいでそんな会話を残して飛び立っていく。

 

「えっと、ユニちゃんは…ネプギアちゃんとの方が良さそうだし「なっ!? だだ誰もそんなこと言ってないでしょ!?」わたしはロムちゃんと行くね。大丈夫?」

「聞きなさいよ!」

「うん、わたしは、平気」

「ロムまで!? べ、別にアタシはネプギアとなんか…」

「うぅ、ユニちゃんは私とは嫌…?」

「ぐっ!? そ、そんなことは…あ、アンタがどうしてもって言うなら、一緒に組んであげても…」

 

見慣れた展開を見せるユニちゃん達はそのままに、わたしはロムちゃんと組むことに。

わたしを基準にしちゃダメだけど、ロムちゃんだって支援一辺倒じゃないから、しっかり戦えるもんね。

 

「それじゃあロムちゃん、敵の攻撃は任せてもいい? こっちからの攻撃は、わたしがするから」

「んっ。わたしがディールちゃんを守るね…?」

「うん、お願い」

 

氷柱に隠れながらロムちゃんと進んで、

柱の影からそーっと先の様子を覗いてみることに──

 

 

 

 

 

「それ、それっ!」

「止まるんじゃないわよ! 止まったらやられるっ!」

「わかってる!」

 

ディーちゃんの作った氷の柱の間を縫うように飛びながら、ラムとわたしで影どもを爆撃していく。

流石に爆煙越しに撃ち抜いてくるような技はないとは思うけど…

 

 

──この煙に紛れで斬り込んじゃえばー? なんならワタシに変わっでくれてもいいと思うなー!

 

頭の中で声が響く。

バカ、アンタは()()()()()()()()()()でしょ!

 

──えー。ぶーぶー

 

うるさい。そもそもアンタが出るとわたしの負担が酷いんだから、大人しくしてなさいよ!

 

 

「……はぁ」

「ちょっと! 集中しなさいよね!」

「わかってるっての!」

 

索敵魔法を発動して、相手の居場所を探る。

…そこね!

 

「ラム、突っ込むわよ! 接近戦の用意!」

「え、え!? ちょ、急すぎるってばー!!」

 

杖を構えて氷の刃を纏わせて、煙の中に突っ込む。

まず狙うのは……

 

「せぇいっ!」

 

索敵で見つけた相手を、煙ごと両断しようとする。

が、刃は煙を晴らすだけで、斬撃は得物……M.P.B.Lに阻まれた。

 

「ちっ! けど…ラム!」

「色々複雑だけど…ッ!」

 

仕留められなかったのは残念だけど、あくまでこっちはおまけ。

本命は、ラムの方!

 

「…!」

「消えてよ偽物! アイスハンマーッ!!」

 

わたしがネプギアを抑えている隙に、ラムが影ラムに加速を乗せた一撃を叩き込んだ。

 

「ふーん…なんでハンマー?」

「お姉ちゃんっぽく!」

 

すかさず影ネプギアの脇を抜けつつ、ラムの手を取って離脱しながら。

おねーちゃんっぽくか。まぁ、いいんじゃない?

 

「ほらほら、こっちよ。バーカ」

「バーカバーカ!」

 

通用するかどうか、と思いつつ逃げながらバカにしてみる(ラムはなんか便乗してきた)

すると影ネプギアか影ユニちゃん辺りが撃ってくると思ったら、影ロムちゃんが追いかけてきた。

 

偽物でも、そういう思考回路になってるってわけ──

 

「……!?」

「「ひっ!?」」

 

とかなんとか思っていたら、突然影ロムちゃんの胸から氷の刃が生えて、わたしとラムが揃って悲鳴をあげた。

何事かとよく見てみれば、影ロムの後ろにいたのは…ディーちゃんだ。

 

「っ…さっさと、消えてッ!」

 

影ロムちゃんを後ろから突き刺したディーちゃんは、そのまま振り回すように縦回転。

勢いをつけて影ロムちゃんを吹っ飛ばした。

 

「……うぅ、偽物だってわかっててもつらいんだけど…!」

「ディーちゃん? 多分ディーちゃんよりわたし達のがダメージ大きいからね…?」

 

全身黒色でも形はロムちゃんだったわけだし、それが急に刺されるとか精神的にキツいって。

 

「あうあう…で、でもこれでふたり、やっつけた」

「そ、そうね! あとはネプギアとユニちゃんとクロムだけ!」

「ま、あの二人は簡単に行かなそうだけど」

 

影ロム影ラムは元と同じで防御力低かったから高火力で瞬殺できたけど、ネプギアとユニちゃんはそんな極端なステータスしてなかった気がするし。

 

「っと! 休んでる場合じゃなかったわ、ねっ!」

 

暢気に話していたわたし達を狙う射撃を弾きつつ、戦闘再開。心なしか影ネプギアと影ユニが怒ってるようにも見える。

はっ、敵討ちのつもり? 偽物のくせに!

 

「ラム! 撃ち落とされないでよ!」

「言われなくたって撃たれたくなんかないわよ!」

「ロムちゃん、平気…!?」

「う、んっ…! 防御は、完璧…!」

 

魔法使いタイプ二人に元魔法使いタイプ二人が前衛で戦ってるなんておかしな話だけど、影ロム影ラムを倒したのもあってか相手二人の注意は完全にこっち。

中途半端な敵討ち思考ができるのに、肝心な事が抜けてるのよね。…ねぇ?

 

『──!!』

 

不意に影ネプギアらの背後からビーム弾の雨あられが横殴りに襲いかかる。

すっかりこっちばっかりに気を取られていた影達はなんとか避けようとするものの、何発かまともに食らってしまう。

 

「そぉら、弾幕はこっちからも来るわよッ!」

「いっけー!」

 

休む間を与えずに毒クナイをばら撒くように投げつける。

それと一緒に氷塊も雨の如く影に降り注いでいく。

二方向からの攻撃をギリギリで凌いでいた影二人は、攻撃を避けながら距離の近いこっちを先に仕留めるためか、ビームを放ってくる。

 

「当たらなければどうってことない、ってね!」

 

ビームを避けながら、できるだけ二人の注意を引く。

ダメねぇ、こういう時、片方を疎かにしたらろくな事にならないのに。

 

「「ネプギアちゃん!!」」

 

支援の為か地上に降りていたロムちゃん、ディーちゃんが、紫の光が二人の間を駆け抜ける瞬間に強化魔法(ブースト)を掛ける。

 

「──捉えました!」

 

光を増したネプギアが影の二人へと肉薄し、M.P.B.Lを振りかぶりながらビームを照射する。

一見すればそれは明後日の方を撃ってるようにしか見えない。

けれどネプギアはそのまま(ビームを照射し続けたまま)M.P.B.Lを振り下ろした。

ビームがそのままレーザーソードのように、影二人を呑み込み…押し潰した。

 

…ネプンザムライザーソード? Nライザーなんてないし違うか。

っていうかネプギアも凄いけど、しれっとディーちゃん達も移動した気配が全然なかったような。隠蔽魔法でも使ったのかな。

 

「あら、やっぱり以前出会ったときのデータじゃあダメね。レベル上げを怠っていてくれればもう少しは持ったかな?」

犯罪組織(アンタ達)のお陰様で、戦闘回数もそれなりだったし、残念だったわね」

 

そして残るは黒いディーちゃん。あいつさえ倒せば、後はおねーちゃん達に合流してそれでおしまい。

 

「ええ、ええ。成長は素敵な事ね! じゃあこんなのはどうかしら!」

 

どういう神経してるのか悔しがる訳でもなく何故か嬉しそうに、両手を天に掲げるような仰々しいポーズを取り始める。

今度は何を企ん、で……!?

 

「え…」

「ちょ、冗談でしょ…!」

 

予め仕込まれていたのか、純粋に奴の力なのかは分からないけど、

あいつの背後の宙に無数の……数えるのも馬鹿らしくなるくらいの数の魔法陣から黒い剣が現れた。

いつの間に…! 当然その剣先はわたし達へと向けられている。

 

「ふふふっ。さあ──踊って見せて?」

 

どうにかしないと、考える暇すら無いままに、奴はそうくすりと笑みを浮かべて、パチン、と指を鳴らした。

 

 

 

次の瞬間、剣の雨がわたし達へと降り注いだ。

 

*1
女神化の影響で近代風な投刃になっていた。ちょっとかっこいい

*2
地面に魔力を流し込んで充満させ、一帯に氷の樹林の如く氷柱を展開する。拡張性の幅広い魔法であり、遮蔽物・足場・敵の行動抑制等の効果が見込まれる広域支援魔法。

本来は時間をかけて発動する魔法だが、術者の一時弱体化などのデメリットを負う事で詠唱・チャージをカットすることを可能にした。




〜パロディ解説〜

・当たらなければどうってことない〜
言わずと知れた、『機動戦士ガンダム』シャア・アズナブルのセリフ。
基本なんにでも言えることなものの、このセリフが使われる時って当たったら大変なことになる場合が殆どな気がします

・ネプンザムライザーソード
『機動戦士ガンダムOO』より、ライザーソードが元。
とはいえこちらは砲撃で無理やり叩ききったように見せかけているので別物と言える。本家は確かちゃんとGNソードだったはず…(うろ覚え)


今回妙な機能を試験運用してますが、今後もあった方がいいんですかね、これ。

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