幻次元ゲイム ネプテューヌ 白の国の不思議な魔導書 -Grimoire of Lowee-   作:橘 雪華

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こちらは以前あっちの方でコラボし、こっちでもエピローグだけ描いたりしてたシモツキさんの作品『超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress』とのコラボエピソードとなっております為、先にそちらを読んでおくと良いかも…?
若干グリネプ本編と絡むような作りとなっておりますが、知ってたら「ああ!」となる程度になると思われますので、興味が無い、苦手な方はスルーしても問題ないお話だったりします。

時期系列的には
グリネプ:プラネテューヌ奪還後(まだそこまで進んでない為ちょっと未来)
OP:四十七話後
となっております。


Act.ex 紅と原初の邂逅(コラボエピソード)

「ねーねーエスト」

 

戦いに一区切りがついて、ロムちゃん、ラムちゃん、エスちゃんと、わたし…ディールの4人で遊んでいた時のこと。

 

「んー? なに?」

「エストって、ロムちゃん…ディールちゃんの事探して、色んな次元に行ったんだよね?」

 

ラムちゃんが前から気になってたのか、エスちゃんにそんな話題を切り出していた。

別の次元、かぁ。…そういえば皆に話すことでも無いから言ってないけど、わたしもある意味別次元との干渉はしたことあるんだよね。…もちろん、元いた次元とかそういう話じゃなくって。

 

「まーね」

「なら、何か面白い話とかないの?」

「んー…面白いかどうかはともかく、この次元(ここ)にいなさそうな人とあったりはしたわねー」

「へぇーっ、ねぇねぇ、その時の話聞かせなさいよ!」

「あ…わたしも、ちょっと気になる…」

 

なんて一人でぼうっと考えている間に、ラムちゃんとロムちゃんがエスちゃんから旅のお話を聞き出そうとしていた。

…まぁわたしも気にならないといえば嘘になるし、このまま様子を見ていようかな。

 

「……面白くなくっても怒らない?」

「「うん!」」

「む。ならいいわ、話してあげる。んー…それじゃ、あの時の話でもしようかな…えっと、確か…」

 

こうして、エスちゃんによる不思議な出会いのお話が始まった。

 

……あ、この先のエスちゃんの語りの最中、わたし達は『』で会話するよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

何度目の次元移動だったか…ある時、変な所に出ちゃった事があってね。

そこは、なんて言えばいいのか……こう、次元と次元のハザマにある、小次元? いわゆるダンジョンみたいになってる場所だったの。

 

で、まぁ、普通ならすぐにでも抜け出して別の次元に行きたいところだったんだけど…困ったことに、グリモとはぐれちゃって。

 

『…そんなことあるの?』

 

割とあるわよ? はぐれるのはしょっちゅうだし、運が悪いと空とか海中とか石の中に出ることもあるし

 

『こわい…ぜんめつしちゃう…(ぶるぶる)』

 

とりあえずグリモと合流するために、適当にうろうろしてた時、人を見つけたの。

当然、わたし以外に次元を移動する人なんて見たことないし、初めは人形のモンスターかと思ったわ。知らない顔だったし。

 

まぁ、ほっといても良かったんだけど、見つけちゃったから、そこは思い切って……

 

『話しかけたの?』

 

ううん、斬りかかったの。

 

『なんで!? ただの辻斬りだよ!?』

 

だって、なんか強そうだったんだもーん。ちゃんと寸止めする気だったしー。

でも……

 

「なっ!? くっ!」

「──へえ、防ぐんだ。不意打ちだったのに」

 

気配もちゃんと消してたはずなのに、わたしの攻撃は防がれたの。

その事に内心でちょっとびっくりしつつ、さっと距離を取って、氷剣を構え直した。

 

『……おかしいな、元はラムちゃんと同じはずなのに…』

『わたしいきなりおそいかかったりしないもん!』

『うん…ラムちゃんはエスちゃんみたいになっちゃだめだよ…?』

 

…ごほん。ともかく、不意打ちにも反応できた相手が、只者じゃないってのはすぐに把握できたわ。

 

「急に斬りかかってくるなんて、一体……」

 

それで、その人……ええっと確か、白っぽい黄色っていうか、白金? っていうか…そんな感じの長い髪の人は、突然の襲撃に戸惑いながらわたしの事を見て、さらに驚いたような顔をしたのよ。

 

『……白金色の長い髪…?』

 

ん? …まぁ、そんな顔をするものだからわたしも不思議に思ってね。そしたらその人は……

 

「……え、ラムちゃん…?」

 

って、わたしの顔…わたしの事を知ってるように名前を呼んできたの。

 

流石にちょこっと驚いたけど、次元を超えてたら別に珍しい事でもないし、きっとどこか知らない次元のゲイムギョウ界の人なのかな、なんて思ったわけ。

 

『へー。べつじげんってとこにもわたしっているのね』

 

…あのさ、そもそも、わたしとディーちゃんがその"別次元のラムとロム"なんだけど。

 

『あ、それもそうね!』

 

それで、まぁ、その時のわたし、強そうな人だって事でついわくわくしちゃってねー。

 

「いや、でもラムちゃんがこんな所にいる筈が……」

「考え事してる場合? てりゃぁッ!」

 

何か考え事してるおねーさんに、わたしはさらに襲いかかるの。

ぐっと足に魔力を回して地面を蹴れば、弾丸みたいになっておねーさんに肉薄して斬りかかったけど、

 

「ぐっ…見た目に反して、重い…ッ!」

 

おねーさんは手に持った剣……バスタードソードっていうの? で、バッチリ防いできたわ。

さっきの不意打ちと違って今度は速度もパワーもある一撃だったはずだけど、受け切られたの。

 

『バスタードソード……』

『ってなぁに…?』

『……えっ? あ、えっと…片手剣と両手剣の間って言えばいいのかな…片手でも両手でも使えるような剣の事を、バスタード……雑種って意味でそう呼ぶの』

『へー。流石ディールちゃん、ものしりね!』

『ま、まぁ、ね……』

 

…? とにかく、それでもう強い人って確信したわけよ。

 

「これも受け止めるんだ! やっぱり思った通りだ、おねーさんは、強い人ッ!」

「っ…ど、どうしてこんな事をするのッ! 何が目的!?」

 

ぐぐっ、とわたしを受け止めた剣で押し返すようにしてわたしを弾きながら、おねーさんが問いかけてきた。

 

「わああー。…なんて、ねっ!」

 

わたしは弾かれて大げさなリアクションをとりながら、くるんと空中で一回転して懐から取り出した投擲武器を"打ち出して"反撃した。

 

「いッ…! しまっ、何が…!」

「あはっ! もーらいッ!!」

 

飛び道具には流石に反応しきれなかったみたいで、着地してすぐに足の痛みでよろめいた隙を逃さずに、おねーさんの首目掛けて氷剣を振るったの。

 

『……斬ったの?』

 

まさか。

 

「……」

「……やるじゃん」

 

わたしの剣が届く前に、おねーさんの剣がわたしの首に添えられてたよ。

吹っ飛ばされたフリをしたわたしへの仕返しだったのか、足の痛みでできた隙は、わたしを油断させる罠だったみたいでね。

 

「…っはーあぁ、勝てると思ったのになぁ」

 

わたしは手にしてた杖を手放して、その場に座り込んだわ。

杖からは氷の刃も消えて、座った状態で両手を上げて降参の意思を見せてね。

 

『ヤンチャどころじゃないなぁ…もう…』

 

…だって強そうだったんだもん!(2回目)

 

「は、はぁ…もう敵意は無い、って思っていいんだね?」

「無いよ、無いでーす。降参ー」

「そ、そっか、急に来たと思ったら終わりも急だね…いつつっ…」

 

降参の意思は伝わったみたいで、おねーさんからも緊張感が抜けた…ところで、足が痛んであっちも屈みこんだの。

 

「あー。おねーさんストップ。無理に抜いたらよくないわよ」

「いや、そもそも君が投げたんでしょ!?」

「てへっ☆」

「か、かわいい…って誤魔化されないよ!!」

 

急に襲っちゃったわけだけど、話してみればおねーさんは決行愉快な人だったわ。

 

「ごめん、ごめんってばー。ほら、見せなさいよ」

「……信用薄いんだけど」

「あーもーめんどくさい! パラライズ!」

「へっ、ちょぉぉおぉぉおぉ!?」

 

そんな感じでなかなか話を進めさせてくれないから『いや、どう考えてもエスちゃんが襲ったせいでしょ…』めんどうになって麻痺の魔法をかけたの。

おねーさんは片膝立ちの体勢でビリビリしびれて動かなくなったわ。

 

『さらに悪行を重ねてきた…』

『エストちゃん……』

 

こ、これは治療のためだから仕方なくだし!

とにかく! 痺れてる内にささっと足に刺さった、わたしの棒手裏剣を抜いたの!

 

「えいっ」

「~~~~~~ッッッ!?!!?」

 

抜いた時に痺れながらすっごい顔してたけど。

 

『うわー…』

『エスちゃんの鬼畜…』

 

あ、もちろん直で抜いたわけじゃないわよ? 回復魔法の光を当てながらだから、血は出てないし。

 

『そういう問題じゃなくってね…はあ、もういいよ…』

 

なによ、もう。治療してるんだから良いでしょ。

 

「ナチュレキュア、ブースト」

 

…まぁ、お詫びには足りないだろうけど、足の傷がすぐに塞がるように治癒魔法……自然治癒の速度を速める魔法を全力でかけてあげたの。

傷自体はそれでどうにか、元通りにできたわ。

 

「ふぅ…ふぅ……よし、と…リフレキュア。…これで痛まない、わよね?」

「……あ、うん。ホントだ、もうなんともない。…抜かれた時すっっっごく痛かったけど…」

 

抜いた時痛い思いした事は流石に根に持たれたっぽかったけど、汗まみれになりながらも治療してあげたおかげかちょっとだけ警戒心は薄くなってた。

 

「ごめんなさーい。おねーさん強そうに見えたから、つい」

「本当に反省してるの…? いや、うん、いいけど…」

「……おねーさん案外お人好し?」

「いくら私でも流石に怒るよ?!」

 

おねーさんの反応が面白くて、ついからかっちゃったけど…そこであっとおねーさんが何か思い出したように声を上げた。

 

「あ、そうだ…ここ、どこだか知ってる?」

「うん」

「そっか……まあ流石に知らない…知ってるの!?」

 

おねーさんはわたしも自分と同じ迷子だとでも思っていたみたいで、わたしが知ってるって答えたら驚いた顔をしていたわ。

 

『…話聞いてるといたずらしがいがありそうな人ね!』

『ラムちゃん…ブランさんに怒られるよ?』

 

「うん。ここは、次元と次元の狭間にある、何次元でもない欠片みたいな場所。たまーにおねーさんみたいな迷子がいたりするけど、基本的に何にもないところよ」

「そ、そうなんだ……うーん、どうやって帰ろう…」

 

わたしもおねーさんがどうやってこんな所に迷い込んだかまでは知らなかったけど、その時おねーさんが妙な物を取り出したのよ

 

「いつの間にかなんか持ってたし、これが原因かなぁ…」

「…おねーさん、それ、どこで拾ったの?」

 

おねーさんが持っていた真っ白な本。

わたしはその本から不思議な感じがして、気になっちゃったの。

 

「え? これは……ある子との大切な約束が詰まった本なんだ」

「……!」

 

その時感じた事については……ま、あえて伏せておくわ。

 

『……』

『えー? なにそれー!』

『気になる…』

ダメよ、教えないもーん。

とにかく、それを見るまでは別にほっといても良いかな、なんてほんの少し思っちゃったりしてたんだけど、おねーさんを元の場所に返してあげようって、そう思ったの。

 

「…ね、おねーさん。わたしがおねーさんの元いた場所に返してあげよっか?」

「え…? で、できるの?」

「うん! ただ、ちょっとだけ時間がかかっちゃうかもだけも」

「ううん、それでもいいよ! お願いできるかな?」

 

おねーさんの頼みを聞いて、まず、わたしはおねーさんから白い本を貸してもらって、適当な場所に魔法陣を描いてその中心へと白い本を置いた。

転移門(ゲート)の魔法陣だけなら、何度も見てきて知ってたからね。

 

「ん。これであとは待つだけよ」

「氷属性に、魔法……やっぱりあなたは「はいストーップ」え?」

 

わたしの姿とか魔法とかでおねーさんはわたしの正体に感づいてたみたいだったけど、断定される前に言葉を遮って止めた。

 

「おねーさんはわたしの事知ってるかもしれない。けど、おねーさんが知ってる"わたし"とここにいる"わたし"はきっとたくさんの事が違ってるはずよ」

「う、うん」

「わたしの自意識過剰かもだけど、おねーさんはその名前で呼んだら、きっとわたしがこうなっちゃった理由も気になっちゃうかもでしょ。だから、良いじゃない? ここにいるのは、名前も知らないおねーさんと、名前も知らないわたし。それでさ」

 

もうほとんど肯定してる様なものだけど、わたしはそう言って、あくまで別人のつもりでいようとしたの。

わたしのせいで、おねーさんの知ってるわたし(ラム)を見る目が変わるのも嫌だったし。

 

…断定されなければ、まだそっくりな別人に思えるかな、なんて、ね。

 

「そこまで言うなら…これ以上は何も言わないよ」

「ん、どーもね。……代わりって言ったらなんだけど、わたしの事について以外なら答えるよ?」

 

ちら、とゲートの状況を見て、まだもう少し時間かかりそうだったから、わたしはそう言ったの。

ただぼーっとしてるのもなんだし、だからってまた戦おう! なんて雰囲気でもなかったし。

 

『…空気は読めたんだね、エスちゃん』

 

えっ、ひどくない?

 

「…あ、なら、さっき私に投げたあれって、なんだったの? 鉄の針か何かだったのはわかったけど…」

「ああ、あれ? まぁぱっと見じゃ針かなんかに見えなくもないわねー」

 

おねーさんはおねーさんで、わたしが打った棒手裏剣が気になってたみたいで、それについて聞いてきた。

本職の人でもないし、何かと使えるから使ってたってだけで隠すものでもなかったから、手持ちの物を出して見せてあげたわ。

 

「ってことで忍者じゃないけど忍者道具セットー。じゃじゃーん!」

「い、色々出でてきた……っていうか多すぎない!? それにその大きい手裏剣とかどこからだしたの!?」

 

地面に車手裏剣、棒手裏剣、苦無、煙玉、鉤爪、巨大手裏剣を並べてみせると、すかさず突っ込まれた。

 

『実際そんなにどこにしまってるのさ…』

 

えー? それは勿論…

 

「ふふん、おとめのヒミツってやつよーっ♪」

「えぇ…」『えぇ…』

 

…今なんか回想のおねーさんとディーちゃんがシンクロしたような気が。…気のせいね。

 

「わたし忍者ではないけど、結構使い道あって便利なのよー?」

 

そう言いながらわたしが手に取ったのは、おねーさんに向けて打ったもの──棒手裏剣。

 

「おねーさんに使ったこれは慣れるのちょっと大変だったけど、色んな場面で役に立つし」

「ああ、これって手裏剣の一種だったんだ。でも手裏剣って言うとこっちのイメージが強いよね」

「あー、確かにねー」

 

棒手裏剣は投げるのに技術が要る代わりに、音が出ない、風の抵抗を受けにくい、細身で携帯しやすいって利点がある手裏剣。

 

で、おねーさんが言いながら指さしたのは、車手裏剣。

棒手裏剣よりも打つのは簡単だけど、風切り音が鳴る、風の抵抗を受けやすいとかの違いがあるの。

 

一般的に知られてる手裏剣は車手裏剣の方になるわね。棒手裏剣は……こういうの。

 

『ほんとだー。なんかシュリケン! って感じしないー』

『ただの鉄の棒…? 針…? みたい…』

 

ちなみに打ち慣れてくるとだいたい似た大きさのならなんでも投げられるよ。箸とか釘とか……カードの材質次第だけどトランプとか。

 

『あ、知ってる! たまにいるよね、トランプとか武器にして戦いそうな顔のひと!』

 

言っとくけど、あくまで緊急時に使えるってだけで常にトランプなんか武器にしないからね? 武器として普通に使えるとかどんだけ硬いトランプよ。

 

…はい、話戻すわよー。

 

「んー…そうだ! 急に襲ったお詫びにはならないだろうけど、おねーさんにこれの打ち方のコツ教えてあげる!」

「え? それって……棒手裏剣の?」

「そうっ。覚えたらおねーさんも忍者ごっこできるよ!」

「それはごっこで済むことのなのかな…?」

 

正直ちょっと強引かな? とも思ったけど、おねーさんも割と乗り気そうだったから、そのまま押し切っちゃった。

っていうか忍者好きなのか知らないけど、ちょっとワクワクしてるの顔に出てたし、ほんと解りやすいのよね。

 

そんな感じで、ゲートが開くまでの短い時間はおねーさんに棒手裏剣術を教えてあげたんだー。

 

「ふっ! …こうかな?」

「おー。おねーさん飲み込み早いわね! もしかして忍者の生まれ変わりだったり?」

「う、うーん、流石にそんなことはないはず…忍者の知り合いもいるし…」

「忍者の知り合いねぇ。いいなー、せっかくならわたしもなんか秘伝忍法とか教わってみたいかも。…ごくらくせんじゅけん! なんてね!」

 

キメ台詞は「私の勝ちってことでよろしいですね!」かな!

 

「教わってみたいっていう割には技名が具体的! 流石に私の知り合いでもパイル付き手甲は使ってないから難しいんじゃないかなー…」

「むぅ、そっかー。残念」

 

まぁなんか裸に剥かれたりしそうだし、別にいいんだけどね。

と、そうこうしているうちに、ゲートが開通。

 

「おねーさん、もう帰れるわよ。知らないとこに飛ばされる~なんてことにはならないと思うから安心してね。たぶん」

「多分!? 何だろうすっごく不安になってきたんだけど…」

「だいじょーぶだいじょーぶ! ほらほら、早く帰った方がいいわよ? 次元によっては時間の流れが違って、ここでの数分があっちでの数日になったりすることもあるんだから」

「えっ、じゃあこれくぐって戻ったら色々が終わった後だったり…?」

「それか世界が滅んでたりしてね!」

「笑えないよ!? やめてよね!?」

 

冗談混ぜておねーさんをからかって遊びながら、帰るように促す。

なんていうかね、リアクションが大きいから面白いのよね、ほんと。

 

「もう…でも、色々ありがとうね」

「襲ってきた相手にお礼って変じゃない?」

「でも、ちゃんと謝ってくれたし、こうやって帰り道も用意してくれたでしょ? だから、ありがとう」

「む…どういたしましてー」

 

おねーさんがお礼を言いながらゲートの前に立って、本を拾い上げる。

するとゲートの光が強くなってきて、いよいよサヨナラの時。

 

「それじゃあ、…えっと」

「? …ああ、そういえばおねーさんに自己紹介してなかったわね」

 

光が強くなる中、何か言おうとして言葉に詰まったおねーさんを見て、あっと思い出して、

わたしはおねーさんに向けて言ったの。

 

「──わたしはエスト! もし今度会うことがあったら、わたしのお姉ちゃん共々よろしくしてあげるわ!」

「え…!? ちょ──」

 

最後の最後におねーさんは驚いたような顔をして、でも何かを言う前にそのまま光に包まれて帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、それからはディール……ああ、まだディーちゃんの格好してた時のグリモワールのことね。と合流して、わたしも出発したってわけ」

 

区切りまで話し終えて、ふぅ、と息をつく。

するとラムとロムちゃんが不思議そうな顔で質問をしてきた。

 

「ふーん……でもその人、なんで最後驚いてたの?」

「エストちゃん、知ってる人だったの…?」

「んーん、初対面よ。ただ、まぁ…」

 

ちらり、とディーちゃんの様子を伺ってみる。

ディーちゃんは何か考え事してるような表情で、ぶつぶつと「やっぱり、その人って……」なんて呟いていて、

わたしは二人に気づかれないように笑みを浮かべて、答える。

 

「…内緒っ♪」

「えー! なによそれ!」

「気になる…」

 

いつか教えてあげるわ、なんて言って二人をあしらいながら、時計を見やる。

ああ、結構話し込んだなぁ。

 

「とりあえずお話は終わり。…二人共、そろそろおやつの時間じゃない?」

「あっ、ホントだ! 早くしないとネプテューヌに取られちゃう…! ロムちゃん、行こ!」

「ま、まってラムちゃん…!(ぱたぱた)」

「行ってらっしゃーい」

 

慌てて部屋を出ていく二人を見送って、部屋に残ったのはわたしとディーちゃんの二人だけ。

すると予想通りディーちゃんがわたしに声をかけてきた。

そもそも、どうしておねーさんとの別れ際にディーちゃんの名前を出したのか。

 

それは、あの人の持っていた本から、ディーちゃんの力を感じたから。

 

「……ねぇ、エスちゃん。その人って…」

「んー。わたしは名前聞きそびれちゃったけど、ディーちゃんは多分知ってる人よ。だって──」

 

真面目そうな顔のディーちゃんに、わたしはくすっと笑顔で答えた。

 

 

「おねーさんとディーちゃんが出会っていたから、あのおねーさんがわたしとディーちゃんをこうしてまた繋げてくれたんだから、ねっ♪」

 




コラボ特別編 ~今回のパロディ解説~

・運が悪いと空とか海中とか石の中に~
Wizardryシリーズに登場する罠「テレポーター」でありがちな現象。
原作では空や海はありませんが、石の中に飛ぶと作品次第ではあるものの大体全滅するという恐ろしいもの。*おおっと*

・トランプとか武器にして戦いそうな顔のひと
めだかボックスに登場する球磨川禊が、蝶ヶ崎蛾々丸を挑発する際に放った言葉。なんっ…でそこまで!的確に人を傷つける台詞が言えるんだよお前はあああああっ!!
創作では時々本当に武器にしちゃうキャラがいますが、エストも言ってるようにそういう場合のトランプの切れ味は凄まじいですよね…普通に壁とかに刺さるし。

・秘伝忍法~など
閃乱カグラシリーズに登場する忍が使う必殺技の事。なおその後の「ごくらくせんじゅけん」「わたしの勝ち~」「パイル付き手甲」はそれぞれカグラに登場するキャラクター、夜桜の秘伝忍法「極楽千手拳」、台詞、使用武器から、エストの正体の中の人の声繋がり。
しかしスピード系であるエストがパイル手甲を使う日は来ないでしょう。…多分

・このコーナー
今回のお話のコラボ先であり、ハーメルンにて投稿されているシモツキさんの作品「超次元ゲイムネプテューヌ Origins」シリーズでの毎回のお約束あとがきコーナー。これがパロディになるかはともかく、あちらでは毎話解説されるくらいにパロディ満載となっているので、originsシリーズを読む機会があればまず自力で探して答え合わせしてみるのもいいかもしれません。

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