幻次元ゲイム ネプテューヌ 白の国の不思議な魔導書 -Grimoire of Lowee-   作:橘 雪華

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Act.16 希望への道筋

『ぬぅぅらぁぁぁぁ…』

『いやあああああああ!?』

 

突然ですがわたし、超巨大なスライヌに追いかけられています。

いえ、突然すぎて何言ってるんだと思うのはわたしもだけど、気付いたら追われてたんだもん、それ以外にどう伝えろと!

 

『ふぎゅっ!!』

 

必死になって逃げはしたものの、巨大なせいですぐに距離を埋められて…

ずしん、とわたしは巨大スライヌの下敷きに。

 

ぐ、くるしいぃ…

 

「いやぁ…スライヌに…つぶされるぅ…」

「誰がスライヌよ!」

「ひぃ…!? スライヌが喋ったぁ…!」

 

押しつぶされながらジタバタともがいていると、突然巨大スライヌが怒ったような言葉を発した。

 

………って、待って、今の声、聞き覚えが……

 

そう感じてハッと目を覚ませば、お腹の上に馬乗り状態でわたしを見下ろすラムちゃんの姿が視界に入った。

ああ、今のスライヌは夢か…

 

「…ラムちゃん、何してるの…っていうか、苦しい…」

「何って、みてのとーり、ディールちゃんのお見舞いにきたのよ!」

「ぐぇっ、ぇ…っ…お見舞いに来たのなら、お腹の上で揺れるのやめて…」

 

楽しげに人の上で揺れるラムちゃんに苦しめられながら、どうして眠っていたのかを思い出そうとする。

ええと、確かわたしは…マジックと戦ってるみんなと合流して…それで、ラムちゃんが……そうだ、ラムちゃんが!

 

「ら、ラムちゃん、怪我、大丈夫なの…?」

「んぅ? うん! ロムちゃん達がちりょーしてくれたから、もうバッチリよ! ほーたいは巻かれてるけど」

「そっか…よかった…」

 

それを聞いて一安心。

覚えてる限りだと、確かラムちゃんがロムちゃんを庇って大変な事になって、それから……

 

…朧気だけど、なんとなく思い出してきた…わたしは…

 

「ふぅーん……何だか随分とディーちゃんに懐いてるのね、ラムは」

「う、うん…ディーちゃん、優しいし…」

 

と一人で考え込んでいると、視界の外から別の声(と言っても片方は目の前の子と同じ声で、もう片方は自分の声をカセットか何かで聞いた時のような声)が聞こえてくる。

つまり、すぐ近くにエスちゃんとロムちゃんもいるってこと。

 

「なるほどねー? そんならわたしはロムちゃんと仲良くしちゃおうかしらー」

「ふぇっ!? は、はわわっ…(あわあわ)」

 

そして何だかよく分からないけどエスちゃんがそんな事を言い出して、困ったようなロムちゃんの声が聞こえてくる。

何を言ってるのあの子は…

 

「ちょっと!「ぐぇぁっ」エスト! 何ロムちゃん盗ろうとしてんのよ!」

「えー? あんたがディーちゃんとイチャイチャしてるんだから、別にいいでしょー?」

「よくなーい! ロムちゃんもディールちゃんもわたしのなのー!」

「あ、あの…ふたりとも…」

「なによそれ! 欲張り過ぎ! ディーちゃん返してよ!」

「やだもーん! もうふたりともわたしのだって決まってるもーん!」

「くっぬぬ…こうなったら力づくで…」

 

「…もうっ! ラムちゃん! エストちゃん! ディールちゃんがしんじゃう!」

「「え? …あっ」」

 

………きゅぅ……

 

 

 

 

 

 

 

……ラムちゃんとエスちゃんの喧嘩が勃発して、興奮によりわたしの上に乗ってる事を忘れたらしいラムちゃんにぐりぐりとお腹に体重をかけられて、危うく色々出ちゃいけないものが出そうになった。危なかった…

 

で、その原因になった二人はというと…

 

「…ディールちゃん、起きたばっかりなんだから、もっとだいじにしなきゃ、だめっ…!(ぷんぷん)」

「ご、ごめんなさい、ロムちゃん」

「で、でも今のはラムが「……めっ!」ごめんなさい…」

 

ぷんすかとお怒りのロムちゃんによってお説教をされていた。

ロムちゃんって滅多に怒ることないような気がするし、ある意味レアだね…

 

「…ごほん。とりあえずディーちゃん、起き上がったり動いたりは大丈夫そう?」

「んぅ? …うん、大丈夫…かな?」

 

正座したままのエスちゃんの言葉に、ベッドから降りて軽く身体を動かしてみながら答える。

大丈夫どころか、むしろ身体が軽いような…?

 

「そ。なら今後について話すらしいから、来てって」

「ん…そっか、わかった」

 

正座しながらシリアスな表情で話すエスちゃんはちょっとシュールだったけれど…それは置いといて、あまり悠長にしていられない状況なのはエスちゃんの雰囲気から感じ取れた。

部屋を出て三人の後に続いていくと、女神と教祖が勢ぞろいして待っていた。

 

「…ディールは目を覚ましたようね」

「あ、はい。…ご心配をおかけして、すみませんでした」

「心配したのは事実ですけれど、揃ったところで早速本題に入ってもいいでしょうかー?」

「そうね。気になることもあるし…」

 

ひとまず心配をかけたことを頭を下げて謝る。

するとエスちゃんと同じく真面目っぽい雰囲気のグリモがそう言った。

なんだろう、何があったんだろう…? というかノワールさんになんだか見られてるような…

 

「ええと、堅苦しい話は抜きにして、まずはディールさんのことに関して話しましょうかー」

「…」

 

グリモの言葉に、思わずびくりと身体が跳ねた。

多分、グリモが言ってるのって…

 

「ディールさん。あの時の事は覚えていますか?」

「あの時……って、もしかしなくても…マジック・ザ・ハードと戦った時の事…だよね」

「なるほどー…記憶はあるんですね」

「うん…といっても、朧気に、だけど」

 

そう。あの時、ラムちゃんがあいつにやられたときの事。

ラムちゃんがやられてショックを受けたのと同時に、わたしの奥の方から何か黒いものがこみあげてきて……それにわたしは、身を任せたんだ。

 

「わたしは倒れてたから見てなかったけど…そんなにすごかったの? ディールちゃん」

「すごかった、というか…」

「ちょっと、怖かった…」

「そうね…攻撃とか危うくお姉ちゃんとネプテューヌさん巻き込みかけてたし」

「流石のネプ子さんもあれにはちょっと焦ったねー」

「ご、ごめんなさい…」

 

皆の反応に思わず再び謝ってしまう。

 

「あれに関しての説明をここですると、読者の皆さんに「その話は前に聞いた」と思われてしまうのでさくっと説明して終わりますけど、カオス化…とでも呼称すればいいでしょうかね」

「カオス化…」

 

それはネガティブエネルギーとはまた違ったエネルギーだからそこまで脅威ではないらしく、眠ってる間に調べた結果今のわたしからはネガティブエネルギーを感じ取れなかったらしくて、カオスエネルギーとかいうのに変容したんじゃないか…とグリモは考察していた。

 

「っていうかそんなメタな感じに説明飛ばしちゃっていいの…?」

「同じ説明する方が進行テンポ悪くなりますからねー」

「テンポは大事だからしょーがないねー。ようはディールちゃんがヘンにバグとか踏んづけて汚染度80%以上になったりしないようにしたら平気なんでしょ?」

「それだとカオススタイルじゃなくってグリッジスタイルですよね…? わたしあんな過激な格好ヤですしまずゲームが違いますよ…」

 

あっさり飛ばしたのは…まぁ、わたしが暴れてた時に説明済っぽいからいいとして、

その仕様だとこの作品デッドエンドの分岐まみれになっちゃう…

 

「格好って…女神化だって結構あれじゃない?」

 

エスちゃんうるさい。

 

「まったく…あなた達ねぇ…」

「とりあえずディールに関しては私の方で調査中ですのでー、皆さんは精神状態に少し気を配るようにしてくれれば大丈夫です。と言ったところで、それよりも問題の話に移りましょうかね」

「問題の話? まだなにかありますの?」

「というよりは皆さんとしてはこちらの方が本題になるかとー。ケイさん、ギョウカイ墓場の調査についてお願いしますー」

 

グリモ…いつの間にケイさんにまで指示を…

やっぱり本質的には軍師とか参謀とかそういうタイプなのかな、グリモって。

 

「ああ。言われた通りに少し調べてみたけど、ギョウカイ墓場から夥しい量の邪悪な念が溢れ、流れ込んでいるという情報が入っている。人間でも感じ取れるほどのね」

「邪悪な念? それは、まさか…」

「……犯罪神、マジェコンヌで間違いないと思います」

『…!』

 

ケイさんの報告になにかを察したように表情を険しくするブランさん。

そしてイストワールさんから告げられた言葉に、全員が息を飲んだ。

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。四天王を倒したんだから、復活も阻止できたはずじゃないの!?」

「確かに、四天王及びその筆頭であるマジック・ザ・ハードを撃破したことにより、犯罪組織自体はほぼ壊滅したと言っても過言ではないでしょう。…ですが、奴らにとって()()()()()()()()()()()だとしたら、どうでしょうー?」

「…どういうこと?」

 

ユニちゃんの言葉に淡々と説明し返すグリモ。

ただ回りくどい言い方なせいで、ノワールさん達にはいまいち伝わっていないみたい。

 

そこで、エスちゃんが付け足すように話し始めた。

 

「よーするに、四天王ってのは犯罪神が作り出した、マジェコンヌシェアを集めさせるための存在なの。だからあいつらを倒したら、あいつらの力は犯罪神本体に戻っていくってわけ」

「そ、それじゃあ、ギョウカイ墓場からの邪悪な念っていうのは…」

「そ。犯罪神サマ大復活、ってことよ」

 

倒した四天王が犯罪神の下に還ることで、犯罪神は復活するに至る力を取り戻してしまった…

纏めると、そんな感じ。

 

「むぅ、やっと犯罪組織を壊滅させたと思ったのにー!」

 

強大な敵の復活という事実に沈もうとしていた空気の中、割と普段と変わらないのはいつも通りネプテューヌさん。

ずずーんと沈み切るよりは士気的には良い事だけど。

 

「犯罪組織も完全に壊滅した、というわけではないでしょうけど。ただ、今まで以上に大きな活動はできないでしょうね」

「となれば、問題は犯罪神…ってことね」

「犯罪神…正しくゲームのラスボス、といった感じの呼び名ですけれど。ミナさん、何か情報はありますの?」

 

ネプテューヌさん以外の女神は至って真面目に話を進めて

いく。

話題は犯罪組織から犯罪神へと移り、ベールさんがミナさんにそう訊ねた。

 

確かに、ルウィーは犯罪神が誕生しただとか云われていたし、ミナさんならその辺りは調べていそう。

 

「はい…ルウィーに伝わる伝承によれば、犯罪神はゲイムギョウ界のすべてを食い殺す邪神と云われています。放置しておけば間違いなく、ゲイムギョウ界は滅亡することに…」

「物騒な話ね…」

「でも、はんざいそしきってなんでそんな悪い奴なんかふっかつさせようとしてたのかしら? 自分たちだって死んじゃうじゃない」

「それでも、一部の人は本当に滅びを求めていたんでしょうね。邪神崇拝なんてそんなものだし」

 

世界の滅亡を望む人…かぁ。

そんな人はいない、なんて断言できないもんね。女神だって全部綺麗事で済ませられる立場じゃなさそうだし。

 

……それに、前の次元(せかい)じゃ、わたしだって……

 

「…逆に、大半の人は何も知らず、ただ利用されていただけ」

「マジェコン欲しさにどんな神かも知らずに信仰してた、なんて人が殆どかもだしねー。…人の欲を否定するつもりは無いけど、なんか哀れね」

 

…でも、例え哀れだとしても、女神としては正して世界を守らないといけないんだろう。

守護女神だもん。自分の国だけじゃなくて、世界も守護しないと。

 

「まぁまぁ、そんな難しい話しててもしょうがないよ。それよりさっさとその犯罪神? 倒してきちゃおうよ!」

「ネプテューヌ…簡単に言うんじゃないの。そうやすやすと行ってたら誰も苦労なんてしないわ」

「ああ、それに関してなんですけどねー」

 

難しい顔で話す皆に向けて、犯罪神を倒しに行こうと言うネプテューヌさん。

と、そのでグリモが口を挟んできた。

 

「んん? どしたのぐりもん」

「…そ、そのぐりもんって言うのはもう確定なんですー?」

「え? うん。だっていーすんはイストワールでいーすんでしょ? だからぐりもんはグリモワールだから、ぐりもん!」

「は、はぁ……じゃあもうそれでいいですよー。それで、犯罪神に対抗する手段なんですけどー」

「何かあるんですか?」

 

イストワールさんみたいなあだ名をつけられて複雑そうにしながら、グリモはエスちゃんに向けて何か合図を送った。

するとエスちゃんは何故だか嫌そうな顔をしながら、はいはいと何かを取り出した。

 

「──え」

 

エスちゃんの取り出したもの。

朽ちているものの、それはわたしにとっては見覚えのある()──

 

 

──魔剣ゲハバーン。

 

「何? それ。ボロボロの剣みたいだけど…」

「な、なんで、そんなものを…!」

「……ディールちゃん? 顔、まっさお…(あわあわ)」

 

見たことがない皆は朽ちた剣を見て不思議そうにしているけど、わたしにとっては記憶が戻った今、見間違えようもない。

エスちゃんが嫌そうな顔をしたのも理解した。

 

そして持ち込ませた本人であろうグリモは、隠す様子もなくそれの正体を告げた。

 

「それが、女神の命を糧とする魔剣、ゲハバーンだったモノ、です」

「なっ。グリモワール!? 貴女は何を考えているのですか!」

「何を考えているかって、それは勿論──」

 

イストワールさんも怒った様子でグリモを問い詰める。

けどグリモは意に介さないまま、言葉を続けた。

 

「今から皆さんに、ちょっと殺し合いをしてもらいます」

 

 

 

 

 

 

「──というのは冗談です」

「いやいやいやキツすぎるよぐりもん! 流石のネプ子さんでもシリアスモードに切り替えなきゃダメかーって思いかけたよ!?」

「だってー、あんな台詞、そうそう言えないじゃないですかー」

「パロディの為にそこまでしなくていいからね!? ほら皆固まっちゃったよ!」

 

ネプテューヌさんが怒涛のツッコミを入れていく中、わたしは半分くらい放心していた。

ちらりとエスちゃんの方を見てみれば、頭を抱えてやれやれと言った様子。

 

……本当に、心臓に悪い…!

 

「……そこのアホ魔導書の代わりにわたしが説明するわね」

「アホとはなんですかー」

「ネタの為に場の空気にエターナルフォースブリザードするようなのをアホって言って何がいけないのよ」

 

ふん、とグリモに対して冷めきった態度を取りながら、エスちゃんは話し始めた。

 

 

始まりは、プラネテューヌが襲撃されて、イストワールさんが捕まったりした頃のこと。

 

混乱の中、エスちゃん側のグリモワールと連絡をとっていたグリモは、どうにかしてエスちゃんと合流。

その後エスちゃんと行動を共にしつつ、ある考えの為に魔剣を探し始めたという。

 

グリモ的には、クロムが持ってたのは本物じゃないと思っていたらしい。

 

そして魔剣のありかがギャザリング城の奥にあることを突き止め、その場所に向かう途中でネプギアちゃん達を助けに行こうとするネプテューヌさん達と遭遇したそう。

 

「グリモワールからは聞かされていたけど…あれが貴女だったのね」

「私は今の姿の方が可愛らしくて好きですわ!」

「姿が違ったのは、魔法だったのね。……ところで、よければその魔法私にも「ブランがおっきくなっても胸は変わんないと思うよー?」…ネプテューヌゥッ!!」

 

ギャーギャーと騒ぎ出す四女神。

でも、わたしもちょっとネプテューヌさんと同じこと思ってたり…

 

「で、なぜ魔剣を取りに行ったか、ですがー。正確には魔剣としての力は必要としてません」

「どういうことだい?」

「魔剣の力ではなく、その力をため込めるガワが欲しかったんですよー。つまりは素材として使いたかったわけです」

「素材、ねぇ。それはつまり、魔剣を使って別のものを作ろうってこと?」

 

チカさんの言葉に頷き、グリモは説明を続ける。

 

「女神の命という、大きなエネルギーを糧として強くなる剣、という話でしたので、その糧とするエネルギーを別のものに置き換えられれば、犠牲を出さずとも強力な力が得られるかなーと」

「別のもの、ですか? ですが、女神の命の代わりになるものなんて…」

「同等のエネルギーになるかはまだなんとも言えませんけど、女神にはあるじゃないですかー? 強いエネルギーとなるものが」

 

代わりになるエネルギー…?

それって、もしかして…

 

『シェアエネルギー?』

 

思っていることは同じだったのか、候補生組の声が揃った。

つまり、シェアエネルギーを剣のエネルギーにするってこと…?

 

「はいー。ですが、普段皆さんが戦闘で使うようなものではありません。それこそ、各国のシェアクリスタルを使うくらいの量が必要だと予想していますがー…」

「四ヶ国分のシェアクリスタルを使った剣……そうなったらもう魔剣というより、聖剣かしら」

「私は良いアイデアだと思いますわ。全員の敵は決まっているのですし」

「そうね…仮に犯罪神を倒した後、それをどうするかって問題もあるけど…まずは倒さないとそんな事考える間もないしね」

「世界の為に、みんなで力をあわせる、って王道な感じだよね! 私も賛成ー!」

 

魔剣があることとか、色々含めた衝撃で少し理解が遅れてるけど、

とにかく、犠牲を出すことなく、世界を救えるかもしれないんだ。

そっか、そうなんだ、良かった……

 

「……ディーちゃん」

「…? なぁに、エスちゃん」

「もう…気づいてないの?」

 

安心したような、変な気持ちになりながら結託した様子で話す皆を眺めていると、エスちゃんが声を掛けてきて、

どうかしたのか、と思っていると、エスちゃんはわたしの顔に手を伸ばして、目元を拭った。

 

あ、れ…わたし、泣いて…?

 

「…わたし達の時も、こうやって皆で力を合わせられていたら、良かったのにね」

 

慌てて涙を拭いながら見たエスちゃんの横顔は、どこか遠くを見ているようだった。

エスちゃんの言う通り、そうだったならわたし達も離れ離れになったり、お姉ちゃんや友達をなくすことも無かったかもしれない。…けど

 

「…それは、うん。そう思うけど…でも…」

「でも?」

「あんな事が起きて、わたし達がこうなってなかったら、こうしてラムちゃん達には出会えてなかった、から」

 

お姉ちゃん達が死んで良かった、なんてそんな事は絶対に思ったりはしないけど、

わたしがこの次元のラムちゃんやロムちゃんと出会えたのは、あの出来事があって、グリモと出会えたからこそ、だからね。

 

「…ロムちゃん(ディーちゃん)にとっては、もうこっちのラム達(わたしたち)も大切なのね」

「うん。…だから、わたしは…この世界を、皆の世界を守りたいって、思うの」

「そっか。…でもまぁ、こうなっちゃったからにはお姉ちゃんも怒ったりしないよ。きっとね」

「…うん」

 

…きっと、ホワイトシスターのロムとしてのわたしは、あの時にお姉ちゃんと一緒に死んだんだ。

だからわたしは……ディール(わたし)として、この次元で出会ったみんなを、守りたい。

 

その為にも、犯罪神……クロムには負けられない…

 

「……って、そうだ。盛り上がってるとこ悪いんだけど、その剣? は作るのにどれ位かかるのよ? 流石にそんなに時間の余裕ないと思うんだけど」

 

と、エスちゃんが思い出したかのようにグリモに訊ねる。

確かに、出来上がる前に世界滅亡とかなったら最悪だ。

 

「犯罪神復活と言っても、すぐに滅ぼすーなんてことにはならないかとー。暫くは寝起きみたいなものでしょうからね」

「かと言って、あまり猶予が無いのも事実です。一日で仕上げる、とまでは行きませんが、数日程頂ければあ」

 

流石にそんな決戦武器を一日で完成、なんてのは難しいだろう。

某ソードマスターくらいの切り詰め方してたらもしかしたらできたかもだけど。

 

「じゃあ、決戦はそれが完成したら…ってことですか?」

「はい。なるべく早くに終わるよう努力はしますので、それまで皆さんは英気を養ってお待ちください」

「いよいよって訳ね。アタシもしっかりメンテしておかないと…」

「ふふん、まぁわたし達美少女ルウィー四人組がいればらくしょーだし、安心していいのよ!」

「…ん? 四人ってわたしも入れてるの?」

「わたしも、負けない…がんばる(きりっ)」

 

うん、負けない。負けられない…みんなの為にも。

 

そして、自分自身と決着をつけるためにも。

 

 

 

──最終決戦まで、あと僅か。

 




──長くのんびり続いてきたこの物語も、いよいよ終盤」

──ま、このエスちゃんも合流したんだし、サクッと倒してやるわ」

──むっ、わたし達だって、ザクッとやっちゃうもん! ね、ロムちゃん!

──う、うん。みんなで、がんばろ…?


聖剣を手に、女神達は決戦の地へと赴く。

例え、どんな結末が待ち構えていようと、少女の決意は揺るぐことはない。

この世界を、出会った仲間を守るため、

自分自身が生み出した闇と向き合うために。

そして、少女は──


次回、超次元ゲイムネプテューヌmk2 蒼と紅の魔法姉妹 -Grimoire Sisters- 第5章

-深淵なるマジェコンヌ-


──わたしはもう、迷わない。だからわたしは──





〜パロディ解説〜
・「ヘンにバグとか踏んづけて〜」
メーカー繋がりの作品「Death end re;Quest」に登場するバトルシステムから。
シナリオ描いてる人がコープスなパーティとかの人なので、表現が結構すごくて驚いた作品でした…

・「今からちょっと、殺し合いをしてもらいます」
小説「バトル・ロワイヤル」より。
女神でバトロワしたら誰が残るんでしょうね。と思ったけど割と無印とかで争ったりしてましたね…
そもそもこういうのは元々戦えるキャラでは微妙になりそう。

・某ソードマスター
ギャグマンガ日和より「ソードマスター・ヤマト」のこと。
Re2じゃあそこまでとはいきませんが、トゥルーエンドの圧縮版みたいな感じでしたからね、聖剣ルート。
ラムちゃんもネプギアと和解しない(はず)し、魔剣が軽く見えてしまうので自分の中ではなんとも言えない評価だったり。

あ、ラムちゃんはツンツン期もデレデレ期も両方大好きです(聞いてない)

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