幻次元ゲイム ネプテューヌ 白の国の不思議な魔導書 -Grimoire of Lowee-   作:橘 雪華

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Act.8 ギャザリング城と黒衣の少女

ミナさんからプラネテューヌが攻め落とされたという報告を聞いて(その時ラムちゃんはまた? みたいな顔をしていた)、わたし達はラステイションへと来ていた。

まぁ分散したのはルウィー、ラステイション、リーンボックスの三国だから、その真ん中のラステイションに集まろう、って事なんだろう。

 

守護女神が出て国の防備は平気なのか、と思うかもだけど、基本的には女神が多少国を開けても軍とかがいるから落とされることなんて言うのは普通はないはず。

そもそも今回のって確か、元々の狙いはプラネテューヌだけで、陽動もリーンボックスだけだったはず…それは覚えている。

ただ、わたしのせいで色々おかしなことが起こってるせいで、わたし自身も少し混乱してしまっていた。

 

確かプラネテューヌを落とすために、四天王のトップも出てきてた、よね…イストワールさんとエストは大丈夫なのかな…

 

「アイエフさん、コンパさん! どういうことなんですか!?」

「いーすんは!? いーすんは大丈夫なの!?」

 

と、少し早く着いて残りの到着を待っていると、遅れてネプギアちゃん、ネプテューヌさん、ベールさんもやってきた。

特にネプギアちゃんとネプテューヌさんは慌てた様子。まぁ当然だけど…

 

「落ち着きなさいネプテューヌ。…って言っても無理な話よね…」

「自分の国が落とされ、教祖の行方も聞かされてないんだもの。当然よ」

 

冷静なコメントをするノワールさんとブランさん。だけどそう言いつつ二人も真剣な表情。

 

「…順番に話すわ。まず、今回のあの三国に現れた黒い球の騒動……それがそもそもの陽動でしかなかったのよ。…ネプ子達をプラネテューヌから引き離すためのね」

「それで、わたし達が分かれて三国の対応に向かってる間に、敵の主力にプラネテューヌを取られた、ってとこでしょうか」

「はいです…」

「まんまとしてやられたって訳ね…」

「それよりいーすんはー!?」

「それについてはボクから話そう」

 

アイエフさんからあの黒い球の騒動が陽動だったこと、それよりもイストワールさんが気になって落ち着かない様子のネプテューヌさん。

わたしもエストが気になるところだけど…そこへラステイションの教祖、ケイさんが口を挟んで来た。

 

「キミ達がうちに集まっているとどこからか仕入れたようでね、先程連絡があったよ。『イストワールを返して欲しければ、女神候補生だけでギャザリング城まで来い』…とね」

「…ギャザリング城」

 

プラネテューヌの北方に存在する寂れた廃城…ギャザリング城。

わたしとしては…あそこには基本的に良い思い出はない。

 

「…あぁ、キミ……ディールだったかな。キミは来ても良いそうだよ」

「……え?」

「『ただし女神候補生の一人に似た幼……子供の同行は許可する』…とね」

「………あぁ…はい…」

 

少し複雑な気分になっていると、ケイさんからそんな言葉が。

……()()の事もあるけど、こっちの事もそう。だって、あの城で待ってるのって…

 

「人質を使って呼び出し、ね。…随分とあからさまな手。罠ですって言ってるようなものじゃない」

「……私、行きます」

 

余計に沈んだ気持ちでいても、話しはどんどん進んで行く。

そう、ここで黙っているような奴じゃないんだ、ネプギアちゃんは。

 

「あなたね、人の話を聞いていたの?」

「そうね…向こうの企みも全く読めない今、素直に従うのはあまりに無謀よ」

 

当然、罠だと見え見えなこの誘いにはノワールさんもブランさんも反対な様子。

でもネプギアちゃんも引き下がる様子はなく、食いついていく。

 

「だって、いーすんさんが捕まってるんですよ! 早く助けに行かないと!」

「だからそれが罠だって言ってるの! 素直に行ったところで人質を助けられるかだってわからないのよ!?」

「そうかもしれません…けど! 行かなかったら絶対助ける事なんてできませんし!」

「そ、それは…だから何か手を考えて…」

 

ノワールさんとしては多分、前にギョウカイ墓場に乗り込んだ時のネプギアちゃんのイメージでも残っているのか、一歩も譲らないネプギアちゃんに少し押され気味。

…なんて、ネプギアちゃんとノワールさんが言い合いをしていると、横から「はぁ…」と誰かが溜め息を吐いた。

 

「…仕方ないわね。ネプギア、アタシも付き合うわ」

「ユニ!? あなたまで…!」

 

溜め息の主はユニちゃん。

まさかの自分の妹までネプギアちゃんの側について、これにはノワールさんも驚いている。

 

「…いいの? ユニちゃん」

「良いも何も、向こうの条件は女神候補生と…そこのだけで来い、でしょ?」

 

そこのって…まぁいいけど。

 

「…わたし達も、行くっ(きりっ)」

「まったくしょーがないわね。でもこれは貸しなんだからね! ちゃんと後で返してもらうんだから! ね、ディールちゃん!」

「う、うん。貸し借りはともかく…わたしも行く事には反対しない…っていうか、わたしもついていきますし…」

 

正直行きたくないし憂鬱だけど…ラムちゃん達を放ってなんて置けない。…指名もされてるし。

 

「あらあら。女神候補生ちゃん達はすっかり誰かのお人好しが伝染ってしまったようですわね」

「……あなたの妹のせいよ、ネプテューヌ。どうしてくれるのよ?」

「…二人が怪我したら、許さないから」

「えぇ!? わ、わたしに言われても困るよー!」

 

四女神の方でなんか揉めてるみたいだけど、とりあえず方針は決まった。

 

「…大丈夫です。絶対いーすんさんは助け出して見せますから!」

 

ぐっと気合十分といった様子のネプギア。

こうして、候補生+わたしの5人はギャザリング城へと向かう事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがギャザリング城…?」

「随分ボロっちい場所ね…崩れたりしないのかしら」

「…おばけ、出そう…(ぶるぶる)」

「だいじょーぶよロムちゃん! お化けなんかわたしが全部凍らせちゃうんだから!」

 

プラネテューヌ北(プラネテューヌは犯罪組織に占拠されているから、ルウィー方面からだけど)にある、ハートの形をした大きな湖。

その湖の中心にぽつりと建っていた寂れたお城の前に着地すると、それぞれ城について一言こぼしていた。

…お城なのは知ってたけど、場所までは覚えてなかったから道案内とかまではできなかった。

 

というか、不用意に前の次元の知識を明かしてもまたあの黒い球騒動みたいなわたしの知らない出来事が起きたりしたら混乱しちゃうから、あえてそう言った事は言わないでおいてある。それについてはブランさん達に事前に話したからみんな知っている。

 

「……あれ?」

 

と、ここであることに気付いて思わず声を上げる。

他の皆も「どうかしたの?」とわたしの方に近寄って来た。

 

「ディールちゃん、どうしたの?」

「まさか…おばけ…!?(びくびく)」

「お化けじゃないけど…あれ」

 

そう言ってわたしが指差したのは…お城の正面の大きな門。

そこは瓦礫が積み上がっていて、とてもじゃないけど中に入れる様子ではなかった。

 

「入口…よね? 崩れてるけど」

「あそこ以外に入れそうなところは…窓?」

「いや、窓は流石に危ないと思う…多分中にはモンスターいっぱいいるだろうし…」

 

崩れた入口に近づいて、どうにか入れないか観察するわたし達。

うぅん…やっぱりわたしの知ってるのと違う…わたしの時は入口が崩れたりはしてなかったはず……

 

……と、入り方に難儀している時だった。

 

「っ!? 魔力反応…足元!?」

「え!?」

「しまっ、罠──」

 

突然足元から魔力が吹きあがるのを感じて、ネプギアちゃん達もそれに気づいたけど既に遅くて…

 

わたし達の視界をまばゆい光が包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はいはーい! ところ変わって本編の主人公オブ主人公!

ネプテューヌだよーっ!

 

「…って自己紹介してる場合じゃないよ! ネプギア達消えちゃったんだけど!?」

「だから罠だって言ったのに…」

「…ネプテューヌぅ…?」

「だ、だからわたしに怒られても困るんだけど!?」

 

一緒にこっそり来てたノワールとブランの怒りの矛先がわたしに向けられるけど、わたし悪くないよね!?

…じゃーなーくーてー! どうしよう、お城の前でうろうろしてたネプギア達が急に光ったと思ったらいなくなっちゃった。

これには流石のわたしもどうしようかと思うね。…どうしよう……

 

「ブラン、あの光は」

「えぇ…。恐らく、設置型の転移魔法陣ね」

「という事は、ユニ達は消えたんじゃなくってどこかに移動させられたってことよね。私達がこうやってついてくるのを見越されたって訳?」

 

ベールに言われて冷静に分析するブランと、悔しそうにするノワール。

うーんでもどうしよう、折角四人でバレないように後を付けて来たのに、これじゃ追いかけようが…ん?

 

「あれ? 誰かいる…」

「え?」

「…どこ?」

「ほら、あそこ。あの黒いの」

 

ふと、お城の前に誰かがいるのに気が付いて、その人影を指刺す。

なんていうか、黒だね、黒。真っ黒! 黒コートでフード被っててすっごく怪しい!

 

「…暫く、様子を伺いましょう、もしかしたらあの魔法陣をしかけた犯人かもしれませんわ」

 

ベールの言葉にわたし達は頷いて、物陰に隠れながら黒い人の様子を伺う。

 

「…にしても今どきあんなザ・不審者な格好の人なんているんだね。もしかしてⅩⅢ人いる機関の人だったり?」

「ただでさえ犯罪組織に迷惑しているのに、そんな連中お断りよ…」

「しっ! 何かしてるわ…」

 

様子を見ながら軽口を叩いていると、黒い人が入口の瓦礫近くをウロウロし始めた。

…もしかして中に入りたいのかな?

 

「…はぁ!? 何よそれ! 意味わかんないんだけど!」

 

とか思ってると人影が急に怒鳴るように独り言を喋り始めた。

あっ…もしかしてアイちゃん系の人だったり? というか声からして女の子っぽい。

 

「っ~…はぁ、ったく……で? いい加減、コソコソしてないで出てくれば?」

「「「「っ!」」」」

 

別に誰かが足元で禁忌の枝を踏んだとか、くしゃみをしたとかそんなことは無いはずなのに、その黒い人はため息を吐くとびっとこっちを指さしてそう声をあげた。

嘘っ! バレてる!?

 

「……ねぇー、さっさと出てきなさいよ。じゃなきゃ壁ごと吹っ飛ばすわよ」

「…仕方ないわ。行きましょう」

 

イライラしたように明らかにこっちにわたし達がいることをわかってるように話す黒い人。

ノワールも流石にこれ以上は無理だって思ったみたいで、そう言って最初に黒い人の前に出ていった。

 

「……あなた、何者?」

「はぁ? コソコソ変態みたいにこっち見てた奴等なんかに、なんで名乗んなきゃいけないのよ」

「なっ!? 別にあなたをつけてた訳じゃないわよ!」

 

そして早速口論し始めるノワール。

や、喧嘩早すぎない? あっちが怪しいのはわかるけどー

 

「…………チッ…まぁ、こんな格好してればそう思われても仕方ないか、めんどくさい…」

 

なんかぶつぶつ呟きながら黒い人(近くで見ると背とかはノワールくらいかな)は、すっとフードを取った。

素顔を見て目に付いたのはポニーテールにされた長い髪とさっきまでの話し方通りのキツそうな表情の女の子だった。

そういえばポニーテールってゲイムギョウ界じゃあんまり見ないよね。ベールが女神化したときくらい?

 

「……わたしは、そうね…トレジャーハンターとか、そういうアレよ。分かんでしょ?」

「あー、アイちゃんがたまにやってるとか言ってたような…」

「…誰か知んないけど、要はそういう事。ま、入口がこれで発足行き詰まるとかいう最悪な出だしだけど」

 

トレジャーハンターと言われて真っ先にアイちゃんを思い出していると、忌々しげに入口の瓦礫を指さして溜め息を吐く女の子。

 

「だからって、あなたが不審なことに変わりはないんだけの」

「はぁ? あーあ、めんどくさい…別にあんたらにどう思われようが知ったことじゃないんだけど。ただそういうチンピラみたいに突っかかってくるならさっさと消えてくれない? ウザい」

「チンピラぁ?」

「まーまーノワールもブランも落ち着いて」

 

ノワール達の接し方もあれだけど、この子も大分喧嘩腰だなぁなんて思いながら二人を宥める。

っていうかわたしどっちかって言うとボケ側のはずなんだけどなー

 

「わたし達、妹が心配で来てるんだ」

「ちょっとネプテューヌ…」

「妹? どこにいんのよ」

「えっとねー……」

 

こういう時は自分達の事を話すのが一番。ということでノワールが止めようとするのをスルーしながらわたしはさっきの出来事を女の子に伝えた。

 

「急に光ってから消えた、ねぇ」

「そーなんだよー。多分このお城の中にいるとは思うんだけどわたし達も入り方わかんなくってさー」

「……ふぅん」

 

腕を組み、つまんなさそうにしながらも女の子はちゃんとわたしの話を聞いてるみたいで、一瞬場が静まり返ると「で?」と続きを促してきた。

って言われてももう話せることないんだけどね!

 

「いやぁ、わたし達が見たのはそこまでで…」

「話の続きじゃないわよ、その光ったのはどの辺かって聞いてんの」

「え? えーっと……ベール見てた?」

「ええ、確かあの辺りでしたわね」

「……そ」

 

女の子にそう聞かれて、わたしよりしっかり見てたっぽいベールにパスしてみれば、女の子はベールに言われた場所に向かって屈み込んで地面を調べ始めた。

 

「ちょっとネプテューヌ、なに勝手に話してるのよ!」

「え? いやー何となくあの子なら大丈夫かなーって」

「何となく…はぁ、あなたって人は…」

 

女の子が地面を調べてる間ノワールとブランがこっそり話しかけてきて、話をした理由を言ったら呆れた顔をされた。

えー、でもホントに大丈夫だって思ったんだけどなー。なんか誰かに似てるような感じがして、つい。

 

「もし犯罪組織の奴だったらどうするのよ!」

「その時はその時、サクッとやっつけちゃえば大丈夫!」

「はぁ…考えてるのか考えなしなのかわからないわ…」

「…コソコソ話すんならもう少し周りに聞こえないようにしたらいいと思うけど?」

 

とかなんとか話してる内に、いつの間にか女の子が手に白い石みたいなものを持って地面に何か書き始めていた。

 

「何をしていますの?」

「見りゃわか……んないわね。描き足しよ」

「描き足し?」

「そ。欠けた魔法陣にね」

 

そう言いながら地面に落書きでもするように何かを書いてるような動きを見せる女の子。

でもわたしには何かを書いてるようにはみえなかった。だって何にも見えないし。

 

「…貴女、魔法の心得があるのね」

「……まぁね。何かと役に立つから」

 

でも魔法の国の女神なブランには何かをしてるのが見えてるみたいで、一人だけ感心した様子だった。

 

「で、それをしてどうなるのよ」

「さーねー。その消えた妹と同じ場所に飛ばされるか、壁の中にでも飛ばされるか」

「壁の中に飛ばされるのは割とシャレになってないんじゃー…」

 

*かべのなかにいる*とかで全滅なんて流石にやだなーとか思ってると女の子は魔法陣を描き終わったみたいでさっと離れると、地面が淡く光り始めた。

 

「……多分この中に繋がってると信じてわたしは行くけど。あんたらはどうすんの?」

「貴女が私達にとって敵だって疑いはまだ晴れてないのよ?」

「別にどう思われようがどうだっていいけど。使い切りのを無理に再起動させたからこれ消えたらもう起動させらんないから」

 

そう言って女の子は「じゃーね」と言い残し光に飛び込んで消えていった。

残されたわたし達もどうしようか…そんな雰囲気。

 

「……これも罠だって可能性は捨てられないわよ?」

「ですが、もたもたしていれば消えてしまいますわ」

「そうね…」

「……ま、いいじゃんいいじゃん! きっとネプギア達と同じ所に行くって! ほらどーん!」

「のわあああ!? なんでわた」

 

こんな所で話し込んでたってネプギア達の無事はわからないんだし、飛び込めばいーのいーの。ということでノワールの背中をどーんと押して光に押し込んだ。

 

「ネプテューヌ…あなたね」

「じゃ、わたしもー!」

 

ブランが何か言いかけてたけど、もう決めたことだもんね。

わたしも続けて光の中に飛び込んだ。

 

「うおっまぶし!」

 

するとばーっと視界が真っ白になって浮遊感。

不思議な感覚だなーなんて思ってると案外すぐに光は収まって、気がつけばわたしは見知らぬ場所に居た。

 

「このなんか古めかしい部屋、ボロっちい感じ…ホントにお城の中に来れたのかな」

「…ねーぷーてゅーぅーぬー…!」

「ねぷっ!? 床が喋ってわたしの名前を!?」

「違うわよ、わたしよ、ノワール! っていいからさっさと降りろー!」

 

辺りを観察してるとどうやらノワールの上に移動してたみたいで、踏まれてた事を怒ったように大声を上げるノワール。

 

「いやーごめんごめん」

「ごめんじゃないわよ! なんで私を最初に押し込んだのよ!?」

「えー、その場のノリ?」

「あんたはぁ…! のわぁぁっ!?」

 

怒り心頭な様子で起き上がろうとするノワールだったけど、それはできなかった。

 

「……うまく移動できたみたいね」

「あらネプテューヌ。…ノワールはどこに行きましたの?」

「やー二人も来たんだ。ノワールなら…」

 

後からきたブランとベールにそっと下を指さして見せると、二人も自分達の下敷きになってるノワールに気づいた。

 

「あら、失礼」

「なんで私ばっかりこんな目に…」

 

連続で下敷きにされて流石のノワールもぐったりしてるみたい。

 

「ふーん。来たんだ、あんた達」

 

そこについさっき聞いた声が聞こえてきて、声のした方を見るとさっきの黒コートの子が立っていた。

 

「うん、来たよー。ネプギア達がいるかもだしね」

「…あっ、そ」

「なんにせよありがとね! おかげでお城の中に来れたし!」

「……別に、わたしが来たかっただけだからあんた達の為じゃないんだけど」

「んー? ツンデレかな? でもお生憎ツンデレならノワールで間に合ってるんだよねー」

「は?」

 

お礼を言いつつちょっとした小粋なジョークを言ったらものすごーく冷めきった目で見られた。

さ、さすがのネプ子さんも傷つくかなぁ…

 

「……バカやってる暇があったら、少しは身の回りの状況とか見た方がいいと思うけど?」

「え?」

 

ため息を吐きながらそう言われて…今度は壁とか天井じゃなくちゃんと周りを見る。

と、いつの間にか大量のモンスターがわたし達を囲んでいた。

 

「あらあら、荒っぽい歓迎ですわね」

「言っておくけど、わたしが呼んだとかじゃないから。わたしが来た時点でこれだったし」

 

不機嫌そうに呟く女の子。

確かにモンスターは女の子も敵として見てるし、嘘は言ってないっぽいけど。

 

「…それにしたって多くない? あれ、この小説ネプU系列だったっけ?」

「だとしたら攻撃は喰らいたくないものね…破けるから」

「メタな事言ってる場合じゃないでしょ!」

 

モンスターの量が多かったものだからちょっと現実逃避気味にボケてみたら、剣を取り出して戦闘の構えを取ったノワールに怒られた。

もーノワールったら真面目なんだからー…と思いつつもわたしも刀を装備する。

それじゃーサクッと倒しちゃおっか! …なんてやる気十分な所のわたし達に、横から声を掛ける人物が。

 

「なーにやる気満々で戦おうとしてんのよ、あんたらは」

「…何よ、貴女。まだいたの?」

「そりゃこんな状況からするっと抜け出せるわけないじゃない」

 

ふん、と鼻を鳴らしながら相変わらずのむすっとした顔で話すのは、黒コートの女の子。

 

「別にわざわざ相手してやんなくたって、道を切り開けばいいじゃない」

「それが出来たら苦労は──」

 

簡単そうに言う女の子にブランが言い返そうとして、突然部屋に突風が吹き荒れた。

それと同時にあたりのモンスターが吹っ飛んで、次々消滅していく。

 

「…え?」

「こんな奴らに無駄な体力使うくらいなら、引っ込んでろって言ってんのよ」

 

突風が収まると、ガァンッ! 金属音が鳴り響いて全員がそっちを見る。

そこには黒コートの女の子が、大剣を手に立っていた。

 

 

 

「安心しなよ? 女神様。こう見えてわたし──」

 

女の子はニッと今日出会って初めての笑顔を見せながら大剣を持ち直して、言った。

 

「──最強だから」

 




〜パロディ解説〜
・ⅩⅢ人いる機関の人
「キングダムハーツシリーズ」より「XIII機関」のこと。
そういえば彼らの衣装である黒いコートって確か王様も着ていましたが、身体の大きさやら耳の形やらで意味を成していたのでしょうかね…?

・*かべのなかにいる*
「Wizardry」シリーズに登場する文章。
とはいえネプテューヌ達ならば壁を粉砕して脱出できそうな気もします。

・うおっまぶし!
「MUSASHI -GUN道-」より、ムサシの台詞。
原作の方では別に眩しくもないのに放たれた台詞だそうですが……パロディ的には眩しそうなシーンで活躍してるイメー日がありますね。

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