幻次元ゲイム ネプテューヌ 白の国の不思議な魔導書 -Grimoire of Lowee- 作:橘 雪華
乗っ取られてたルウィーを立て直すミナちゃん達のお手伝いをしたりして何日かが経って、
やっとひと段落ついたって頃に、ネプギアからの連絡が。
『ロムちゃん、ラムちゃん。そっちの様子はどうかな?』
「心配されなくったって、避難してた人達も戻ってきたしもうほぼふっかつしてるわよ!」
「ふっかつ…(あんしん)」
『そっか、よかった…』
まぁ、わたし達には教会の中のお仕事はまだ難しくって、いつも通りっていうか街の近くまで来ちゃってたモンスター退治してただけなんだけど。
「で? そっちはどーなのよ」
『あ、うん。それなんだけど…』
なんか急に呼び出されて帰ってたのが気になっててそう聞き返してみると、
ユニちゃんは無事に見つかって、ラステイション近くに来てたマジェコンヌのやつも追い返せたとか。
それで、ゲイムキャラだかも集まったからいよいよお姉ちゃん達が捕まってる場所に乗り込むらしい。
お姉ちゃんの、捕まってる所…
…ディールちゃんも、そこにいるのかな…
『ええと、ミナさんは?』
「ここにいます。…もしかして、二人についてでしょうか」
ネプギアはミナちゃんに話があるみたいでそう言うと、いっしょにいたミナちゃんがそう答えた。
『はい。やっぱり、女神候補生の二人の力も借りたいと思って…』
「……私としては、まだ幼い二人を危険な目に合わせるのには賛同できません。ですが…」
通信先のネプギアから、わたしとロムちゃんの方をちらりと見てくるミナちゃん。
するとロムちゃんがおずおずと口を開いた。
「わ、わたし…お姉ちゃんを助けに、行きたい…!」
「わたしだって! それに、ディールちゃんだってあいつらに連れてかれてるし…」
そう言ったロムちゃんに続いてわたしも行きたいとミナちゃんに言う。
するとミナちゃんはため息を一つ吐いてから、そう言うと思ったわ、と小さく呟いた。
「…二人がこう言っているのなら、私にはもう止める理由はありません」
「「ミナちゃん!」」
「ただし! …決して、無理をしてはダメよ」
厳しいように、でも心配そうなミナちゃんに、わたしとロムちゃんは揃って頷いた。
そんな感じで、わたし達は今プラネテューヌに来ている。
あの時はそれどころじゃなかったけど、なんとなくリーンボックスに似たような…それよりももっと、えっと…キンミライ? って感じの所。
「……」
でも、なぜかエストは難しそうな顔。
こいつ、ここに来るって決まってからずっとこんな感じ。
「何よエスト、プラネテューヌ嫌いなの?」
「いや、そうじゃない…と思うんだけど…まぁ、ちょっとね」
気になって聞いてみたものの、エストはそれだけ言ってぽんっ、と本の姿になってしまった。
本当、よくわかんないやつ…
で、プラネテューヌの教会に到着……したら、ミナちゃんがいた。
「あれっ、ミナちゃん?」
「ああ、ロム、ラム。ちゃんと来れたのね」
「うん。迷子にならなかった(えへん)」
話を聞いてみるとネプギア達もゲイムキャラを集め終わって、女神候補生も全員揃うから、いよいよお姉ちゃん達を助けに行くってお話を教祖みんなでするんだって。
なーんだ、だったら一緒に来ればよかったのに。
「これで文字通り、全員揃いましたね」
部屋にいた、ふわふわと浮く本に乗った小さい人がそう言った。
あの人がイストワールって人かな? …よく考えてみると、エスト…グリモワールと名前が似てるかも…
「…ラムちゃん、どうしたの?」
なんて色々考えていたら、ロムちゃんが心配そうにわたしの顔を覗き込んできた。
「あ、ううん。なんでもないよー」
「…そう?」
「こら、二人とも。しっかり話を聞いておくのですよ」
「「はーい」」
…ま、後でエストに聞けばいいよね。
「アタクシ達も揃うだなんて、何時ぶりかしらね」
「まぁ、お互い多忙な身だったからね、そうなってしまったのも仕方の無いことだろうさ」
リーンボックスで見たことある人と、見たことない人が話す。
ええと、リーンボックスの教祖と…多分、ラステイションの教祖かしら?
「あ、ロムちゃん、ラムちゃん!」
「アンタ達ももう来てたのね」
そこにネプギアとユニちゃんと、ネプギアの仲間もやってきた。
「ふふん、わたし達の方が早かったわね!」
「えへへ…ネプギアちゃん、ユニちゃん、げんき…?」
「まぁ、そうね。元気よ」
「二人ももう大丈夫そうだね」
四人の教祖と、四人の女神候補生(あとおまけが何人か)
ほんとに勢揃いって訳。
「あいちゃん、変な顔してどうしたですか?」
「…なんか今雑な扱いを受けたような気がしただけよ」
「大丈夫? ヨメに来る?」
「行かないっての…」
…あのREDってやつも何だかんだずっといる気がする。
ま、今はそんなのいっか。
「っていうか、ここに勢揃いしちゃって良かったんですか? 都市の守りとか…」
「各都市の守りは、ネプギアさんが旅先で出会った方などに頼んであったりしますから、問題ないかと」
ユニちゃんの質問に答えつつ、では…とイストワールさんが咳払いをひとつ。
「皆さんにお集まり頂いたのは他でもない、現在囚われの身となっている四女神の救出についてのお話の為です」
その言葉に、流石に皆真面目な顔に。
とーぜんわたしとロムちゃんも黙ってお話を聞く。
…お姉ちゃんやディールちゃんを助ける為だもん。
「まず現在…ケイさんの協力の下、シェアクリスタルの力を増幅させる装置にてクリスタルの力を強化しています」
「アンタ、なんかプラネテューヌにいたと思ったらそんな事してたのね…」
ユニちゃんがどこかじとーっとした目でラステイションの教祖、ケイさん? を見つめる横で、ネプギアがあっと声をあげた。
「もしかして、私やユニちゃんに集めさせてたあの素材って…」
「その通り。本来ならラステイションだけで行動を起こすだったんだが、ことここに至ってはそうも言ってられない状況なのでね」
…えーっと、つまり…?
『あんたがまだ出会ってない頃か、別行動の時にあった話でしょ』
「い、言われなくてもそれくらいわかってるわよ! あんたは黙ってなさい!」
ぼそぼそと本のエストがツッコミを入れてきて、ぺしっと本を叩いて黙らせる。
わああっ、ミナちゃんがこっち見てる…ちゃんと話聞かなきゃ…
「シェアクリスタルの準備にはもう暫く掛かりますが、明日の朝には完成します。そうしたら皆さんには…」
「ギョウ界墓場に乗り込む、ってことだよね」
「いよいよです…」
いっつもヨメヨメ言ってるREDも真面目な感じでそう呟くと、イストワールさんもこくりと頷く。
明日…明日やっと、お姉ちゃんに…
『…ディーの事、忘れないでよね』
「…」
勿論ディールちゃんの事も忘れてないけど、あんたは黙っててって言ったでしょ!
「できる限りのことはやりました。今度こそ、失敗は許されません……ですが、皆さんなら必ず成功させていただけると信じています」
「イストワール様、あまりプレッシャーかけない方がいいんじゃないですか?」
ふん、失敗? そんなのありえないわね。
なんたって今回はルウィー最強の女神候補生のわたし達がいるんだもの!
「私は…大丈夫です! 今度こそお姉ちゃんを助けるって決めましたから!」
「ま、当然よね。このアタシだって協力してあげるんだから」
「そーよ、わたし達だって!ね、ロムちゃん! がんばろっ!」
「…うん!」
「ふふ、その心配は無さそうですよ? アイエフさん」
「…そのようですね」
そんな感じで、今日は明日に備えて準備と休みをしっかり取るように、と言われて、解散になった。
よーし、じゃあロムちゃんと遊びに…
『ちょっと』
行こうとしたのに、エストに呼び止められた。
むぅぅ…
「何よ」
『ちょっとイストワールに伝えて欲しいことがあるんだけど』
そんなの、自分で言えばいいでしょ。
って思ったんだけど、一応元マジェコンヌ側だったから、いきなり飛び出して騒がれるのが嫌なんだと。
別にヘーキだと思うけど…しょーがないやつね。
「あ、あの」
「…? 貴女は、ルウィーの…ラムさんですね。何でしょう?」
「えっとね、イストワールさんと話がしたいって奴がいて…」
「私と…?」
不思議そうに首を傾げるイストワールさんの言葉にこくんと頷く。
「今日の夜、できたら他に誰も呼ばないで話せる場所で待っててー、って」
「ふむ…? …分かりました。では今夜、プラネタワーの屋上、展望台で待っていると伝えておいてください」
「わ、わかったわ。じゃない、わかりましたっ」
そう言ってイストワールさんは、今日はしっかりと休んでくださいね、と言って去っていった。
「…言っとくけど、これでイストワールさんになんかしたらこの本海に投げ捨てるからね」
『そんなことしないわ、今更。私もちょっと頭に来てて何も見えてなかったの。…大切なものを奪われてからそれに気付いたって、遅いのにね』
「エスト…」
こいつとディールちゃんに何があったのか、まだ知らないし、エストもまだ教える気はないみたいだけど…
でも、エストもエストなりに、せきにんを感じてるのかな…
…いつか、教えてくれるといいな…
──夜 プラネタワー展望台──
「細かな時間は指定されていませんでしたが…」
「あら、ちゃんと待っててくれたのね」
静まり返り、誰もいない展望台にて、
プラネテューヌの教祖イストワールへと近付いてきたのは…
「あなたは…ラムさん? いえ…」
「…ああ、悪いわね。色々事情があってこんな姿だけど…」
「この感じ…あなたは……グリモワール?」
正解ー、と白い本を指先でくるくると回しながら答える少女、グリモワールことエスト。
そんな彼女に、イストワールは身構える。
「あなたは過去に…魔導書にして強大すぎる力を持ち、悪しき者の手に渡らぬようにと自らを封印したと記録していますが…」
「そうね。封印を解いて出てきたのは…まぁ色々あるけど、今は置いとく」
本を回すのを止めて、それよりも、と間を置きながら話し続けるエスト。
「一応、貴女には先に話しておこうと思ってね」
「…なんでしょう?」
「……そもそも、予想してた通りそっちは私の事を知ってるみたいだけど、こっちとしては
「…どういう意味ですか?」
「要するに──」
窓際に近づき、夜景を眺めるように外を見下ろし…
そしてイストワールへと振り返り、エストは言った。
「私…いや、私ともう一人。こことは別の次元のゲイムギョウ界から流れ着いたイレギュラーが、今回の件に厄介な絡み方をしてるって話よ」