転生先が平賀さんな件   作:スティレット

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 最近執筆速度自体は早くなってきました。ただ、アイディアを絞るのは相変わらず大変ですが。


人見知りとコミュ障の違いを誰か教えてください

 ラ・ロシェーヌに到着した俺達とティファニアご一行は、キングベヒんもスに連結した馬車を引かせながらトリスタニアに向かった。そこに土地と建物を買っているのでマチルダと子供達にはそちらで過ごしてもらうのだ。

 

 テファはオスマンにアルビオンからの留学生と言うことで話は通してある。もちろん他言無用で虚無のこともだ。一通り事情は話してあるが、王家には落ち着いてからこちらから話を通すと言ってあるので触れない方向にしてもらった。

 

「テファ」

 

「何、サイト?」

 

「これから行く外の世界は人がいっぱいだ。しかもテファは綺麗だから、男には持て囃され、女には嫉妬で嫌なことを言われるかもしれない。だから、疲れたら俺の都合なんて気にせず、来てくれ。俺は学院ではそれなりに悪名もあるから邪な考えを持つ奴は寄って来れないから」

 

「うん、ありがとう、サイト」

 

「何、気にすることは無い」

 

 特技その2、声優の声真似の速水ボイスでそう言った。

 

 

 

「それじゃ、マチルダ。ここは村より人が多い分治安が悪いから気をつけてくれ」

 

「分かってるよ。それよりあのマジックアイテム、ありがとうよ」

 

「そこら辺の石が素材だ。代わりはいくらでも作れるけど無くした後どこかで割れたら誤解するから子供達には言っておいてくれ」

 

 ここに来る途中、拾った石に以前使った共鳴する石を作ったのだ。今回は共鳴した石も割れる仕様で、子供達には危険な時にこれを地面に叩きつけるよう指示してある。トリスタニアは大体石畳だし。

 

「みんな、長くても一月ごとには遊びに来るから、仲良く、危ないことはしないようにして遊ぶんだぞ」

 

『はーい』

 

「では、テファ、学院に行くからみんなに挨拶して。来たい時は竜を貸してあげるから、週末にでも顔を出すといい」

 

「うん、みんな、行ってきます。マチルダ姉さんの言うことちゃんと聞いてね」

 

『分かった、テファ姉ちゃん』

 

「じゃ、みんな、またな」

 

「またね」

 

「大きくなったらまた相手してあげるわ。おませな坊や達」

 

「ばいばい」

 

「諸君、また会おう」

 

「さようなら、皆さん」

 

 そうして学院に戻ったのだが、バハムートはともかく、キングベヒんもスを見た学生が魔法を放ってしまったので知能を持っている2頭が迎撃に移ってしまい、死者は出なかったものの着弾点をずらしたメテオと当たったら爆発する青白いブレスにより阿鼻叫喚の図が広げられ混乱はしばらく収まらなかった。

 

 

 

 それから一週間。

 

 テファの人気は凄かった。というか甘く見ていた。

 

 透き通るような、貴族の女子より尚白い肌と、折れそうな細い腰に反比例するその胸、そして、妖精のような美貌、トリステインになかなか居ない大人しめな性格を持って瞬く間に一年生のトップアイドルとなってしまったのだ。

 

 だが、本人はアリの様に群がる男子生徒諸君に気後れしている部分があるようで、中心で居心地悪そうに小さくなっている。あまりにも状況が悪いと俺が出て行って散らすのだが、壁があると燃えるのかその人気はますます上昇してしまった。かといって今更放置するわけにも行かない。

 

 女子生徒からもトリステインのツン気質なせいか、あまり多くの友人が作れず、また、気の弱い子は男子の壁に阻まれてしまうので近づけない。結果、まだ知り合いと取り巻きしか出来ていないのだ。今度キュルケ辺りに取り巻きの上手い使い方でも教えさせてみようかな。だめだ、その様が想像できない。

 

 ともかく、俺の部屋はルイズの部屋の隣なのでテファを招き、愚痴と言うほどのものも出ないが話を聞いてあげている。たまにルイズも同席して、公爵家特有の高飛車なアドバイスが飛び出したりもする。シエスタはおはようからお休みまで大体は俺に同伴しているので常にテファの慰め役に回っている状態だ。

 

「しかしすごいね。あの人気」

 

「本人はそっとしておいて欲しいらしいんだけどな」

 

 今は騎士隊の面々と食事を共にしている。食堂では時折こうやってルイズ達以外の席に顔を出すのだ。

 

「あいつらはなんなんだ。まるでお姫様と家来じゃないか」

 

 眼鏡のレイナールが言う。確かに後ろからぞろぞろ、一挙動の度に何かと気にかける様子は言えなくも無い。茶を一口飲んだら継ぎ足し、皿の肉を切り分けようとしたら周りを牽制しながら俺が俺がと一口大に切り分けてフォークで口に運ぼうとする。ありゃうざいね。だが、あれでまだマシではある。これ以上過ぎれば俺が出張るけど。

 

「客観的に見てテファは綺麗だし、何よりあの胸だ。本人の前では気を悪くすると思うから言わないが、あれは男を虜にする」

 

「その割には平気そうだね。顧問殿」

 

「胸に貴賎は無いからな。あれはあれで嫌いじゃないが」

 

「君の恋人達を見てると確かにと言う顔になるよ」

 

 最近はマリコルヌが独自の美学を持ち始めたようで、こういう馬鹿で下世話な話には首を突っ込んでこない。俺みたいに時折恋人以外、騎士隊と食事を共にするが、無駄な騒ぎをせず、使い魔のふくろうより鋭い猛禽のような目で静かに飯を食う。過去邪魔して睨まれたギムリが固まっていた。

 

 姫と家来と言えば、面白くないのが女生徒達だ。

 

 特に入学当初からかしずかれていたクルデンホルフのベアトリスは影で憤慨していて、何か画策しているようだ。あいつの影響で俺はツインテールに目覚めてしまったので、たまにルイズにやってもらっている。キュルケにはポニーテールが似合っているので髪の長い恋人たちの結い上げなど、遊びでちょくちょくいじらせてもらっている。ルイズの最近のお気に入りはセイバーのような編み上げで、キュルケは駆逐艦姉妹の電のように首筋を露出して上げている。涼しいからね。それ。

 

 そういや唐突だが、コルベール先生は旅立って行った。俺に自動車の原型を託して。それに感銘を受けて俺は蒸気鉄道の構想を聞かせた。俺、大隆起の問題を片付けたら鉄道整備するんだ。

 

 まあ、今は騎士隊の訓練の他にテファのメンタルケア、増えた恋人達との時間も作らなくてはいけないのであまり自分の時間は取れない。睡眠だけは重要だと思っているので、自由時間も睡眠やストレッチ、休息に当てていて一人のときはだらっとしている。

 

「サイト、聞いたか?空中装甲騎士(ルフトパンツァーリッター)の話を」

 

「ああ、竜がいなきゃろくに動けない貧弱な連中のことだろ」

 

「君やマリコルヌと比べたら皆貧弱だよ」

 

「で?クルデンホルフのならずものたちがどうしたって?」

 

「女生徒に下品に粉をかけては袖にされているようだよ。「一緒にお花を摘みに行きませんか?」とか」

 

「そりゃ下品だな」

 

 お花摘みはトイレの隠語だ。普通貴族なら遠乗りとか言い出すけど、空中装甲騎士団は端的に「やらせろ」と言っているのだろう。

 

「ちょっとあっちの殿下も君の話を聞くにきな臭いし、どうもね」

 

「情報ありがとう。ま、いざとなったら名誉ある俺達水精霊騎士隊があいつらに詫びさせればいいさ」

 

 場合によっては俺一人ででも動くがな。

 

 

 

 そうして案の定ベアトリスがテファに難癖を付けた。

 

 最初は田舎者扱い。それから王家の血がどうたらから始まり、仕舞いには始祖の信仰まで疑い始めた。テファのプライバシーの為直接着けていないが、何か騒ぎがあったときの為に一年生の使う教室に使い魔を配置してある。それごしに聞いてたのだが、話の方向性がどんどんおかしくなり、窓ガラスをぶち破って空中装甲騎士団の連中が出てきたのでこれはいかんと駆け出した。

 

 ルイズにはミカンに持たせているマジックアイテムごしに「広場でテファが危ない」と短く伝え、辿り着いた頃には大釜に湯をぐつぐつ煮立ち、テファを捕まえている空中装甲騎士団とベアトリス、それと見物客の姿が。

 

「そこまでだ」

 

「何、貴方?」

 

「ティファニアの友達だ。何をしている?」

 

「異端審問よ」

 

 ベアトリスが得意げに言う。自分はどれだけ恐ろしいことをやっているのか分かっているのか?

 

「何故その娘が異端審問なぞにかけられている?」

 

「もちろん、信仰に疑惑が生じたからに決まっているわ」

 

「ほう」

 

 面白い話をする。

 

「ちなみに異教徒で無いと証明する手立ては?」

 

「あの大釜に一分間浸かって無事なら証明されるわ。熱心な信仰者ならいい湯加減のはずよ」

 

 本当に面白い理屈だ。魔女裁判と言うのは。

 

「ならば、ティファニアより立派な信仰を持っている君はより平気なはずだ。それとも君でなくともいい。騎士団の誰かがそこの釜に腕を突っ込んでくれないか?審問内容より審問方法に疑問が残るのでな」

 

 これにはベアトリスたちも喉を詰まらせる。そもそもこれは信仰にかこつけた処刑なのだ。

 

「そ、そういう貴方が試せばいいじゃない!」

 

「ああ、俺は異邦人だ。別の大陸の人間でね。信仰心なんて持ち合わせちゃ居ないのさ。それでもブリミルの加護を証明するものはあるけどね」

 

 本当、宗教ってこれだから。

 

「なら、証明してもらおうじゃない」

 

「いいとも」

 

 俺は左手のグローブを外し、ガンダールヴのルーンを示す。

 

「これは「神の盾」と呼ばれた始祖の左手、ガンダールヴのルーンだ。俺はサモン・サーヴァントのゲートを潜り、このルーンの加護を我が主、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールから受けた。信仰心ゼロの俺がだ。これを疑うということは我が主を疑うことと同等であり、また、始祖への選別を疑うことと同等である。俺に信仰心は無いからその釜で無事では済まないが、このルーンを疑うのならば、まずは君達から大釜に浸かって貰う」

 

 これに辺りのざわつき始める。ルイズはアンリエッタから王位を約束されているし、その使い魔たる俺は何も無い状態から直々に爵位を賜れている。それも一度拒否したのにだ。

 

「して、返答はいかに?」

 

「う、うう・・・・・・」

 

 ベアトリスがうなる。

 

「始祖の左手なら、一騎当千と言われたはずよ!空中装甲騎士団を相手にして立っていられれば認めてあげるわ!」

 

「ふむ、しかしそちらの言い分だけを聞くのも面白くない。水精霊騎士隊、集合!」

 

 俺の言葉に日ごろの訓練で一糸乱れぬ統率で騎士隊の面々が現れる。

 

「俺の友達の扱いに騎士隊の皆も心を痛めていてね。よってこちらには水精霊騎士隊も加わらせてもらう。いいか、みんな?」

 

『応!』

 

「空中装甲騎士団、やりなさい!」

 

「行くぞ、水精霊騎士隊!」

 

 その掛け声を皮切りに両者がぶつかり合う。

 

「ヘルヴォル・アルヴィトル!」

 

 今回死者を出すとわだかまりを残すのを承知しているのか、大きなゴーレムを出さず、擬似ガーゴイルを呼び出しスクウェアクラスの精神力にてゴーレム部隊を作り出すギーシュ。最初は7体だったワルキューレシリーズも、装甲の簡素化と素早い動きを実現したケンプファープッペ、それを指揮するヘルヴォル・アルヴィトルで合計が3桁に達する。とにかく削るところを削って数多くのゴーレムを作ることが可能なのだ。それにギーシュが単独で遊撃に移る。具体的にはブレットやアースハンドによる牽制や足止め、擬似ガーゴイルがそれに合わせて指揮するので対人戦だととても厄介だ。

 

「ふんっ!」

 

 一方で普通に歩いていたマリコルヌが突如急加速。懐にもぐりこみ、俺直伝の掌底で騎士を鎧ごと吹き飛ばす。反対の手には杖を持っていることから、自身にエアハンマーを当て、加速したらしい。経験が生きてるな。

 

 他の面子も負けていない。怪我を負いながらも、頭から血を流しながらも笑いながら詠唱をする。または虚を突き鎧の隙間にブレイドやソードブレイカーをねじ込み、白兵戦にて圧倒する。一応死なないように配慮しているが、身体の壊し方は全員身をもって知っている。それに加えゴーレムにより数の有利が圧倒的に傾いてしまったのだ。空中装甲騎士団の士気は駄々下がりである。

 

 俺も負けていられないので、デルフリンガーと太刀を抜き、二刀流の構えを見せる。足を開き、両手に一本ずつ刀剣を構えるドヤ顔Wソードだ。謎のプレッシャーを感じているのかなかなか攻めてこない。この構え隙だらけなんだけどな。

 

 かかってこないので、仕方なく踏み込む。峰を返し、頭に強烈な一撃を叩き込んだ。ヘルムごしの耳付近を打ったので音が反響したのか、そのまま昏倒する騎士。

 

 見物していた生徒も見ていられないと言った風で、倒れたものはあちらもこちらも構わずヒーリングをかけている。回復したものはそのまま戦列に戻り、敵を倒すために再び杖を振るう。

 

 血みどろ(俺以外)の戦いをしている中、ルイズが現れた。

 

「双方、静まりなさい!」

 

 虚無の迫力にピタリと止まる。

 

「責任者はどこ?ルイズ・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールがこの騒ぎの原因を聞きに来たわ!」

 

 ルイズは左右をきょろきょろと見渡し、騎士団の中心で守られているツインテールに目星を付けたようだ。

 

「あなたね。この騒ぎの理由を説明なさい」

 

「異端審問よ!」

 

「そう、それで、司教の免状は?」

 

 その言葉に絶句するベアトリス。そう、これが無いと逆に処刑されても文句は言えないのだ。

 

「え、ええと、家に、そう、実家にあるのよ!」

 

「なら、次の質問よ。ロマリア宗教庁の審問認可状は?ここで提示出来なければあなた火あぶりよ」

 

「え、えと、その、う、うう・・・・・・ふ、ふえぇ」

 

 とうとう泣き出してしまった。

 

「才人、テファは?」

 

「テファ、テファー?」

 

「ここよ、サイト、ルイズ」

 

 人垣の中でも無いのに蚊帳の外状態だったテファが来た。

 

「あなたに判断を委ねるわ。どうする?」

 

「俺たちはあいつらの態度が気に喰わないから暴れただけだから気にしないでくれ」

 

「う、うん、その、ベアトリスさん」

 

「ふ、ふぁい」

 

 返事をしながらも後ずさるベアトリス。

 

「お友達になりましょう」

 

「え?」

 

「私は友達を作るために、外を知るためにここに来たの。戦うためじゃないわ」

 

「・・・・・・許してくれるの?」

 

「ええ、だから、友達になって?」

 

「う、うぐ、ふ、えぇん」

 

 最後はベアトリスがテファのその豊かな胸に顔を埋めて泣いていた。

 

 

 

 それから、水精霊騎士隊は傷を癒すため保健室を占有していた。俺は無傷だったので地下水を持ってヒーリングをかけて回っている。

 

「ギーシュ様素敵だったわ!あんなに多くのゴーレムを同時に操作するなんて!しかも同時に別の魔法を使うなんて!」

 

「いやぁ、それほどでもないよ。ところで、今夜暇かな?見ての通りピンピンしているからこれから君の部屋に遊びに行ってもいいかい?」

 

「マリコルヌ様もすごかった!あんなに重たい鎧を着た騎士がぽーんって飛んで!」

 

「修練の成果だ」

 

「レイナール様!眼鏡が壊れている間私が手を引きますわ!さ、お手をどうぞ!」

 

「そんな、大げさだよ」

 

 騎士隊のみんなはモテモテである。俺も声をかけられたが、その度に頭をぽんぽんと撫でて「仲間の怪我を治すから、また今度ね?」と言ったらおとなしく引き下がってくれた。

 

「サイト」

 

「ん?テファか。どうした?」

 

 テファがなにやらもじもじしながら現れた。

 

「ありがとう、助けてくれて。一番に駆けつけてくれてとても嬉しかった。あのままだと私釜湯でにされるところだったわ」

 

「友達じゃないか。助けるのは当然だよ」

 

「それでもありがとう。そんなサイトにお願いがあるの」

 

「なんだい?」

 

「その、みんな胸に注目するの。だからおかしいんじゃないかって。だから、サイトに確認して欲しいの」

 

 いやいや何を仰るうさぎさん。

 

「そういうのはキュルケかシエスタ辺りにやってもらおう。ほら、そういうのは友達じゃなくて恋人がやるもんだし、そうじゃなかったら同姓で確認してもらうほうが無難なんだよ」

 

 ほんとToラブるのは勘弁してほしい。

 

「サイト、ここ?」

 

「サイトさーん?」

 

 案の定ルイズとシエスタが顔を出した。

 

「ああ、良かった。ちょっとテファが胸について相談があるらしいからさ。キュルケとシャルロットも交えて相談に乗ってやって欲しいんだ。正直俺だけだと話しづらい」

 

「もう、仕方が無いわね」

 

 ルイズは俺の言葉に「誘惑に乗らなかったから許してあげる」と言った感じだ。おお、怖い怖い。

 

「ティファニアさんはもうちょっと自分に合う下着を探したほうがいいかもしれませんね」

 

「そこら辺も含めて頼むよ」

 

「友達・・・・・・恋人・・・・・・」

 

 そこ、意味深な台詞を呟かない。まあ、こうして一騒動あったものの、テファに友達が出来たわけだ。元カースト上位と現カースト上位が友達になれば自然と女子グループで固まるだろう。めでたしめでたし。




 本当ならアルビオン王族であるテファの方がベアトリスより順列は上なんですけどね。

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