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あかん、3巻読んだけどネタが出てこない(白目)
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2週間近く経過 ← 今ここ
アルビオンからグリフォンに乗って脱出した俺はグリフォンを頼りにイーグル号に乗っているワルドの元へ向かっていた。戦地で死に行く兵達に敬礼。
船に着き、同じくイーグル号に乗っていたルイズは、俺の顔を見て何か言おうとしていたが、一瞬顔をしかめてから、声をかけてきた。
「ご苦労様。あんたのお蔭で殿下達が生き残れたわ。ただ・・・・・・ちょっと汗臭いから着替えてきなさい」
ああ、戦場での血や硝煙の臭いが堪えるのか。俺の鼻は麻痺しているが、汗も混じってさぞや酷い状態なのだろう。
「了解しました。しかしその前に一つ、今回の報酬に「始祖のオルゴール」と「水のルビー」の貸与を申し出ると良いでしょう。それからの話は着替えた後で」
船が一隻増えたお蔭で多少の財宝、特に王家所縁のものは回収済みである。どこぞの無能王はルビー一つで香炉とオルゴールを使用していたから多分問題ないだろう。
「やあ、サイト君。いや、ここはミスタを付けるべきかな? 今回の戦果。我々が突撃していただけでは成し得なかった。もし家名があるなら教えてくれないかい?」
途中、指揮を執っていたウェールズが俺の姿を確認すると気さくに声をかけてきた。ここではこういう友達感覚の貴族や王族は少ないからな。出来ればそのままで居てもらいたい。
「今まで通り気軽に呼んで下さい。俺もその方がありがたいんで。家名はヒラガと言います。遠い異国から来たのでこちらでの身分は平民か使い魔辺りとなっております」
「そうか。まあ、君がそれで良いのならそうしよう。改めて礼を言う。ありがとう」
「恐縮です。では、主にちょっと汗臭いと言われてしまったので着替えてきますね」
「何、それは勲章だよ。照れ隠しさ」
「そうだと良いんですけどね」
ルイズは傭兵共を処刑した時の事でも思い出したのだろう。特に考える必要も無い。
ちなみにワルドにグリフォンを返した時に会話したが、この任務の褒章で軽い休暇でも取ってアカデミーに接触すると言っていた。ヴァリエール公爵経由で長女に掛け合うのだろうか。もうワルドがあの人貰ってやれよ。
トリステインに到着し、港に船を停めた俺達は報告の為、一足先にグリフォンに3人乗りで王城へ向かった。後ろからワルド、俺、ルイズと言った順番で。ワルドがレビテーションで体重を浮かせた力技である。ワルドに抱きすくめられているようで全然嬉しくない。ルイズはなんか良い匂いがするけど。
報告した時のアンリエッタの表情は喜びを隠しきれていなかった。アルビオンが倒れ、ウェールズの父王が散ったが、恋人が生きていたと言うのが大きいのだろう。こいつ見た目と色香がすごいけど、その香りはウツボカヅラに似ているからな。目を付けられる前にウェールズに貰ってもらうに限る。さっきからなんかそういう思考に寄ってるな。どうでも良いが。
「そうですか。みなさん、ご苦労様です。今回は秘密の命なのでご期待に沿える報いを与えられないかもしれませんが、力の無い私をお許し下さい、そしてウェールズさま達を助けてくれてありがとうございます」
その後ろでマザリーニ枢機卿が胃を押さえている。うん、仕方ないね。トリステインに攻め入る口実が出来ちゃったもんね。でも相手はどうあがいても攻めてくるんだ。一応、ザ・カインドマンと言われる俺としては現状を教えておいてあげよう。
「時にマザリーニ枢機卿。直に目にしてきた私の意見ですが、相手は手段を選ばない卑劣漢共で、未知の水魔法を「虚無」と称し洗脳などを平気で行っていました。アルビオンが倒れたのもその所為で、奴らはどんな事があろうとここトリステインに攻めてきます」
「なんと・・・・・・ではゲルマニアとの同盟を組み、戦力による拮抗で休戦を計るのは難しいと言うのかな? 使い魔殿」
「その通りです。そして、未知の水魔法、先住魔法などと言いますが、エルフ達や亜人、韻竜たちは「精霊の力」によるものだと文献には書いてありました。よって、ここ、水の国であるトリステインからなんらかの水の精霊の力が宿るマジックアイテムが盗まれた可能性があります」
「確か、モンモランシ家が代々交渉役を務めていたが、当代がなにやら水の精霊に粗相をしたとのことで、それ以来交渉役がうやむやになっていましたな」
ルイズが「あの子も大変ね」と呟いているが気にしない。
「そこで、「これ」が役に立ちます」
俺はグローブを外し、ガンダールヴのルーンを見せる。
「それは?」
アンリエッタが聞いてくるが、まあ、姫様は知らんわな。
「「ガンダールヴ」のルーンです。水の精霊が先代などのこのルーンの持ち主と接触していたらなんらかの交渉が出来るはずなので、日程を調整して精霊の元へ行ってみる事にします。交渉には学院にモンモランシ家の子女が居たので、今回貸しにして交渉役を引き継いでもらいましょう。このままうやむやになっているのも王家にとってもあまり良いとは言えない状態でしょう?」
どこぞの仲介人のような口調で話す。伝説のルーンとあってマザリーニ枢機卿ははっとした表情を見せるが、アンリエッタは軽く、そして胡散臭い口調をおどけていると捉えたのか苦笑している。
「分かりました。では、使い魔殿とその主であるヴァリエール嬢に委任状を渡しますので、日取りを見てラグドリアン湖に向かって下さい」
よし、これで惚れ薬事件が仮に起こってもただで転ばない。
「私からは以上です」
「はい、それでは皆さん、改めてお疲れ様でした。後は任務の疲れをゆっくり癒して下さい」
アンリエッタがそう締め、今回の報告は終わった。
その後特に問題もなく学院に帰り、ギーシュやキュルケ、タバサたちも無事帰っている事を確認し、今回の件は一段落着いた。今回の命を認められ、ルイズの護衛として平民の宿舎から隣室へと移った俺はギーシュたちからものすごい嫉妬の視線を感じつつ、今まで忙しかったり人間関係の構築で出来なかった風呂作りをしていた。
「で、だ。相棒。使ってくれるのは良いんだが、俺様は斧じゃねーんだぞ」
「良いじゃないか。これも鍛練の一環だ」
俺はデルフリンガーで木々を倒し、それを荷馬車で運び、壁として加工していた。一応簡易の屋根も作り、それっぽくしている。
「よし、完成。なんかログハウスっぽくなったが、まあ良いだろう」
気合を入れ、所によっては衛兵さんたちに(チップで)手伝ってもらって原作より大分立派な風呂場が出来た。これに俺は魔術で水を溜めたかったがあんまり積極的に魔術が使えるのをばらしたくなかったのでおとなしく水場から水を汲み、溜め、それから火を着け、いい頃合いになったところで身体を洗って風呂に入った。
「あ゛~」
今までサウナだったからね。時によっては桶に水汲んで温めて拭くくらいだったし、変な声が出ても仕方ないね。
「サイトさーん」
そうしてくつろいでいると、シエスタが風呂場に声をかけてきた。そういやシエスタにはここがまだ風呂場って言ってなかったんだっけ。
「サイトさ・・・・・・きゃっ」
隠れる場所なんぞ無いのでいっそ堂々としていた。次から札でもかけておくか。
「どうした? シエスタ。お盆を持っていない手で隠しても隙間からチラチラ見られるとちょっと恥ずかしいんだが」
「あ、えっと、あの、ここにサイトさんが居るって聞いて、東方から珍しい飲み物が来たので飲んでもらいたいなって・・・・・・」
あーそっかー、そういうことかー。
「そうだったのか。ありがとうシエスタ。じゃ、頂くよ」
「はい、「お茶」って言うらしいです」
こっちだと紅茶がデフォだもんね。
「これは・・・・・・うむ、緑茶だ。久しぶりに飲んだ。ありがとう、シエスタ」
「いえ、エヘヘ」
はにかみ顔も可愛いが、こっちを見たシエスタがまた顔を紅くして聞いてくる。
「ところでサイトさん。これはなんでしょう?」
「これは風呂だよ。サウナじゃ物足りなくてね」
「そっかーお風呂だったんですかー。じゃあこれじゃマナー違反ですね」
そう言ってシエスタは服を脱ぎ始めた。眼福だが、いっそ開き直るべきか?
「うん、もう男女がどうとか野暮なことはいらないか。シエスタ、ここは身体を先に洗ってから入るんだよ。香り付けした洗剤があるから、今回は頭を洗うのを手伝ってあげよう。しっかり目を瞑っていないと目に入って痛いからね」
ちなみに俺はいつもシエスタたちに対してはこんな調子で取り繕わないのであちらも結構大胆になってる気がする。
「はい、お願いします。サイトさん」
「じゃ、ちょっと向こう向いてて」
設けた棚からタオルを取り出し、腰に巻いてからシャンプーもどきを出す。
「ふわぁ、いい匂いですね。それにこうして洗ってもらって、貴族様になったみたいです」
「それはよかった。後で分けてあげるから、メイドの皆と使うといい」
「ありが、ふ、あんっ耳がくすぐったい」
「俺は自分の頭はガシガシ洗うけど、痛いのは嫌だろう」
「うう、そうですけど・・・・・・」
「じゃ、泡を流すからね。じっとしてて」
(バタフライ婦人でもこんな展開なかった。目を開けたら痛いって言うし、でも、サイトさんならこそこそ変な事しないし)
そのままざばーっと流し、軽く髪を揉んで泡の残りが無いことを確認したところで声をかける。
「はい、終わり。目を開けて良いよ。後は身体用の洗剤と垢すりがあるから、そっちは自分ですること」
「ありがとうございます。サイトさん。ええと・・・・・・背中は手が届かないので洗ってもらっても良いですか?」
「気持ちいいですねー」
「気に入ってもらえたか」
俺とシエスタは改めて湯船に浸かっていた。実は水底にデルフリンガーも浸かっているが、こいつは緊急用だし呼吸はいらんので無視だ。
「それにしてもサイトさんの国って平民でもこんな素敵なお風呂に入れるんですね。羨ましいなぁ」
「俺の国は時間に追われている人が多くて、逆にこんな湯船に浸からず軽く流すだけで済ます人も多いんだけどね」
シャワーって言っても伝わるか怪しいからそう濁した。
「もったいないなあ。毎日こんな素敵なお風呂に入れるなら私なら絶対入るのに」
「なら俺の居る時だけでも入る?」
「良いんですか?」
「ああ、一人で入ってるとちょっと心配だしね。それに水を温めるのにちょっとコツがいるんだ」
温めている熱は石に火のルーンを刻んだものや、手から直接火の魔術で温めたり、呪符と言ったものなどを用意してあるが、あらかじめ魔力などを込めないといけない為、ある意味人力だ。それに、今はもう居ないが万が一馬鹿な貴族がここに来て、シエスタと遭遇したら無事でいられるか疑問が残る。
「じゃあ、お風呂に入りたい時に声を掛けてくれればいいから。あ、でもあんまり自慢はしないように。こういうのはいらない嫉妬を買うから」
「はい、分かりました、サイトさん!」
シエスタはどこで仕入れたのか分からないが、狭い湯船の中海軍式の敬礼をビっと冗談交じりにするのだった。
風呂シーン書いていて変な顔になるわ血を吐きそうになるわで大変でした。
どうでもいいけどジル・ド・レさんの名前ってモンモランシーって含むんだってね。