『A』 STORY   作:クロカタ

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お待たせしました。
更新がかなり遅れてしまい申し訳ありません。


続編~コンサート3~

 あの謎のガンプラファイターとのバトルから数日。

 俺達はマゴコロのガンプラの改修と、彼女自身のファイターとしての腕を磨くことに手を尽くした。

 既にコンサートに襲撃することは決まっているのならば、それ相応の準備ができる。加えてあのマガツアストレイの装備と動きについての対策も講じることもできたし、準備は万端とも言っていい。

 彼女が控室でコンサートの準備をしているその間、ステージの側方で会場スタッフとして様子を見守っていた。会場内は既にココロネ・ヒツキのコンサートを見に来たファンで埋め尽くされており、彼女の登場を今か今かと待ち構えていた。

 

「こんな近くでヒツキちゃんの歌う姿が見れるなんて……感激や……レイさん、ホンマありがとうなぁ……」

 

「サ、サカイ君、マゴコロとは何度も顔を合わせているんだし何も泣くことはないだろう……」

 

 今、隣で号泣しているサカイ君にも感謝だ。

 彼が居なかったら彼女のガンプラの改修も間に合わなかった。まあ、ある意味でマゴコロのガンプラと彼女の歌が彼を此処に呼び寄せたという意味で彼女の力と言ってもいいかもしれないな。

 ……でも、最初にマゴコロと顔合わせした時のサカイは凄かったな……、訝し気な様子からマゴコロを見たその瞬間、突然尻餅をついて―――

 

『あれ、おかしいねん、涙が出て来る……一つも悲しくないのにぃ……』

 

 無表情で涙を流し、マゴコロと握手を交わしていた。

 人は歓喜に満ち溢れると逆に泣いてしまうという噂を目の前で目撃してしまった瞬間だった。

 

 その後、サカイ君にも事情を話した。彼もオレと同じくガンプラを悪用する輩が許せないとのことで、快く俺達の誘いを受けてくれた。

 それからの数日はガンプラの改修と、マゴコロのガンプラの特訓に費やした。

 

「やれることは全部やった……後は奴がどう出るか、だな」

 

「もしもの時はワイも力を貸します」

 

「……相手はガンプラマフィア。君が危険に晒される必要はない。ましてや君は中学生だ」

 

「ヒツキちゃんのライブを邪魔するってだけで万死に値しますわ。それに……ワイもレイさんと同じ気持ちや、ガンプラを悪用するクソ外道を許せる程人間できていません」

 

「サカイ君……」

 

 本来はガンプラの改修にだけ手を貸してもらうつもりだったが、彼自身ガンプラマフィアについては思う所があったみたいだ。

 父さんには一応サカイ君の事は伝えておいたが、彼をいざという時の為の戦力としては数えてはいなかった。なにせ彼はまだ中学生、オレと違ってまだ幼い。だが彼が俺と一緒に戦いたいというなら―――

 

「分かった。でも、せめて顔は隠してもらうぞ。流石にカメラが入っている所で顔を晒すわけにはいかないからな」

 

 此処に来る前に父さんから渡された顔を隠す為のマスク。

 重さ的に何個か入っているようだが、中身は見ていない。父さん曰く「私のとっておきだ、きっとレイにも似合う」と言うので変なものではないのは確かだ、後でサカイ君にも一つ渡しておこう。

 

「……俺達が彼女にしてやれることは僅かだ。後は彼女がガンプラをどれだけ使いこなせるかにかかっている」

 

ヴィクトリー(victory)バルキリー(Valkyrie)ヴィクトリーン(Viktorín)の名を冠する中近接型変形ガンプラ―――V3ガンダム!!ワイとレイさんの手が入ったハイブリッドガンプラや。生半可なガンプラと侮ったら痛い目見る事間違いナシや……!」

 

 ああ、彼女を侮るのも今の内だぞガンプラマフィア。

 目標へ、ゴールへ向かって進む人間は強い。彼女を取るに足らない存在だと考えているようなら、その考えは甘い。マゴコロ・サツキは強い、ガンプラの操作だけじゃない、どんな事も諦めない強さがある。

 

 ―――そろそろコンサートが始まる時間だ。

 備え付けられた時計に目を移しながら気を引き締めていると、会場全体を照らしていた照明が消える。それと同時に隣に居たサカイ君が足元に置いていた紙袋から法被のようなものを取り出し、バッと着込んだ。

 

「サカイ君、それは……」

 

「ワイの今回の目的はヒツキちゃんの応援の為です!一人のファンとして応援させてもらいます!」

 

「お、おう」

 

 少し気合が入りすぎている気もしなくはないが、なんだか幸せそうなので何も言わないでおこう。

 やや引きながら、彼から反対側の控えの方を見れば、コンサート用の衣装に着替えたマゴコロが緊張した面持ちでやって来ているのが見えた。

 

「頑張れ……」

 

 誰にも聞こえない位の声でそう呟いた俺は、煌びやかに輝きだしたステージを前にしてより一層気を引き締める―――。

 ココロネ・ヒツキのガンプラライブが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 正直、コンサートというものを侮っていた。

 熱狂する観客たち、ステージを彩る照明、空気を震わせるココロネ・ヒツキの声。

 その圧倒的な迫力に思わず気圧されたほどだ。

 

「これは、ファンになる気持ちも分かるな」

 

「ヒツキちゃ―――ん!!」

 

 だが、歌に心を奪われている場合ではない。次は大型バトルシステムを用いたガンプラのデモンストレーションをするのだ。恐らくガンプラマフィアが介入してくる瞬間はそこだ。

 

「あら、アンドウ君」

 

「カミキさんか」

 

 俺達の居る控えにコンサートのゲストとして呼ばれたカミキ・ミライさんがやってくる。

 彼女が来たという事は、デモンストレーションの時間がもうすぐという事だ。

 

「ミライで構わないわ。セカイとも仲が良いし、それに年も近いのだし。サカイ君もこんにちは」

 

「んぅ?……って、うぇぇえ、か、かかかかカミキ・ミライさぁぁぁん!?」

 

「あれ、言ってなかったか?カミ、じゃなくてミライさんはマゴコロのコンサートのゲストとして呼ばれているんだ」

 

「初耳ですぅ!?」

 

 ミライさんはマゴコロから聞いていたのかな?

 どちらにせよ、サカイ君が居ることを知ってみたいだ。

 俺はミライさんの方に向き、今回のコンサートでの注意をする。

 

「くれぐれも気を付けてください。ガンプラバトルができると言っても相手はガンプラマフィア、どんな手を使ってくるか分かりません」

 

「ええ、でも……私は私の仕事をします。ヒツキちゃんをよろしくね」

 

 彼女の言葉に頷く。

 すると時間なのか、スタッフの人が彼女を呼ぶ。

 返事をした彼女は、もう一度笑顔をこちらに向けると手を振ってステージの方へ飛び出していった。

 

「―――サカイ君、気を引き締めるぞ」

 

「レイさん、あんたはやっぱり凄いお人や……」

 

 何で君は俺を尊敬の眼差しで見ているんだ……サカイ君。

 

 

 

 

 

 

 

 

 コンサートは滞りなく進んだ。

 私としては何時、ガンプラマフィアが襲ってくるか気が気ではなかったけど、ここまで手を出してこなかったということは、この次の―――ガンプラを用いてのデモンストレーションで私を潰そうとしているのだろう。

 レイ君とたくさん練習して、強くなった今でも……怖い。

 

「……でも」

 

 真っ暗なステージの上で私は自分達が作り上げたガンプラを見つめる。

 V3ガンダム。それがヴィクトリーンが新しく生まれかわった姿。

 加速と方向転換の役割を担う、膝の側面に増設されたGセルフ型のスラスターと、背部に装着されたストライカー型のスラスター。

 そして、腕部に取り付けられた二つのウィングシールドと、肩に装備された二つの三連ビーム砲。

 手持ちには、ヴィクトリーンの時に使っていたメガランチャーを改良した多機能型砲塔『VR・ランチャー』。その姿は丸型の時とは違い、長方形型となり、ビームラム及びアルケインの大型ビームライフルと同形のビームソードの展開が可能になっている。

 全てが一新され、コンパクト化したV3ガンダムは、完全に私専用のガンプラとなって、今ここにいる。

 

「……」

 

 正直、かなりの高性能且つデタラメガンプラになってしまった感は否めないが、V2ガンダムの進化形というならばかなり良い線をいっていると思う。

 こんな私に、ここまでしてくれたレイ君とサカイ君には感謝の気持ちで一杯だ。

 だから……。

 

「行きます……」

 

 『目の前』のベースにV3を置き、出現した球体の操縦桿に手を乗せ深呼吸する。

 きっと奴らはやってくるだろう。

 でも、私は絶対に負けない。

 ―――瞬間、消灯していた照明に光が灯り、会場内を照らす。

 視界には一杯の人達と、広大なバトルシステム。その光景に一層の笑みを浮かべた私は力の限り声を張り上げる。

 

「StandUp!! V3!! いきます!!」

 

 広大なフィールドに私のV3は今、煌びやかに輝く粒子と共に飛び上がった。

 まず見えたのは広大な自然の中心にある巨大な湖。大型バトルシステムだけあって、凄まじい広さのフィールドを飛ぶのは凄く気持ちいい。

 さて、私の役割を果たさなくちゃ……。

 

「これが私のガンプラ!! ヴィクトリーン改め、『V3ガンダム』!! 私の大事な友達と一緒に作り上げた最高のガンプラです!!」

 

 私の声に歓声が返って来る。

 V3を停止させ、手を振らせた私は、今日の特別ゲストを紹介する。

 

「そして、今日は私のコンサートに友達が来てくれました! 皆は勿論知っているよね? ガンプラバトル選手権でイメージガールを務めたカミキ・ミライさんで―――す!!」

 

 会場がどよめくと同時に、会場に満面の笑みのミライさんが入って来る。

 彼女は大勢の人たちの前でも笑顔を絶やさずに、軽いお辞儀と共にマイクを口元に近づけた。

 

「どうもカミキ・ミライです。今日はココロネ・ヒツキちゃんのコンサートにお呼ばれしちゃいました」

 

 お呼ばれというか、来てくれたというか。

 どちらにせよ、彼女の存在は私にとって強い心の支えになったことは確かだ。

 ミライさんにはガンプラの操縦で手が離せない私の代わりに、司会を務めてくれる役割を担っている。彼女に司会を任せつつ、私は再びV3を飛ばす。

 一瞬で最高速度までに達したV3は縦横無尽に空を飛びまわる。

 

「―――っ」

 

 やっぱり凄まじい性能だ。

 でもこれはまだMS形態―――私の本命は―――、

 

「もっと速く!」

 

 V3が人型から飛行機型へと変形する。

 脚部の稼働型スラスターは後ろに移動し、背部スラスターは翼となる。

 V3ガンダムファイターモード。

 まんまマクロスだったので、そのままの名称にしちゃったけど、レイ君は『良い名前』だと言ってくれて、サカイ君は『マジかこの人』みたいな目でレイ君を見ていた。

 ……それで、なんとなくレイ君のことが分かってしまったけど……。

 ここまで来たらやるしかない。

 

「私の……」

 

 マクロスで歌手なんて、そこまでやってしまったら私のやることは決まっている。

 理解されなくても歌い続け、

 攻撃されても歌い続け、

 そしてその果てに銀河をも歌で救い、

 感情を持たないと言われる宇宙クジラをも歌わせた、あの熱い魂を持ったロッカーと同じように、私も歌う。

 

「私の歌を聞けぇぇぇぇ―――!」

 

 来るならどこからでも来いガンプラマフィア。

 私はどこにも逃げない、私は―――此処に居る!!

 

 

 

 

 

 

 

「ヒツキちゃ―――ん!!! サイッコーやぁぁぁぁ!!」

 

 マゴコロが歌い始めた。

 それに合わせて、サカイ君が奇妙な振り付けを始めたことに驚きつつも、俺はバトルシステム上方に映し出されたバトルシステム内の映像を見やる。

 ……もう文句の無い程に扱えている。

 それも当然か。彼女はガンプラが好きで、それ相応の努力をしたんだ。

 

「良い歌だな、サカイ君」

「そうでしょう!! そうでしょう!! あ、レイさんの分もあります!!」

「そ、それは遠慮しておこう……」

 

 流石にここでその法被を着るのは憚れる。他のスタッフさんの目もあることだし。

 苦笑いしつつ、押し付けられそうになった法被を押し返していると、不意にポケットの携帯が振動している事に気づく。

 確認してみると、父からの電話だった。

 

「もしもし?」

『レイ。バトルシステムのサーバーが占拠された。恐らくガンプラマフィアだろう』

「はぁ!? 確か警備がいるって……ッ」

『落ち着けレイ。システム内のサーバールームの扉が施錠されている今、そちらの干渉は避けられない』

「……」

 

 ……この落ち着き様、この状況は想定内ということか。

 なら、心配はいらないな。俺は俺の仕事をすればいいだけだ。

 

「父さんが何を考えているかは分からないけど……任せろ。こっちは俺がなんとかする」

『フ、任せたぞ』

 

 携帯を切ると、会場の方でざわめきが起こる。

 見れば、バトルシステム内に正体不明の二機のガンプラと一体のモビルアーマーが出現していた。その内の一機は重武装の『マガツアストレイ』。

 ガンプラマフィア、こぞってやってきたようだが―――

 

「やらせないぞ」

 

 突然現れたガンプラマフィアにマゴコロのV3は一瞬、動揺しつつも、一気に加速し向かってくるマガツアストレイから身を翻し振り切っているのが見える。

 だが、あのマガツアストレイ相手には些か分が悪い。

 だから―――、

 

「サカイ君、予定通りに行くぞ」

「ええ、分かってます!! ヒツキちゃんのライブを邪魔する不細工共はワイらがまとめてぶっとばしてやりましょう!!」

「その為には――」

 

 父から渡された顔を隠す覆面が入れられた袋に手を入れ、二つあるうちの一つを取り出す。

 サカイ君も同じく、もう一つを取り出し広げる。

 

「これは―――っ!?」

「な、なんやてぇ!?」

 

 こ、これを被るのか? 

 というより父は何故これを持っていた?

 困惑するが、今はそんな悩んでいる状況ではないので、俺は意を決してその覆面を被り、ステージの方へ駆け出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 歌の最中に現れた正体不明の三体のガンプラ。

 真っ黒い機体はマガツアストレイ。

 金と黒色の配色がされているザムザザーの改修型。

 そして、真赤な配色とその手に持たれた大型ハンマーが特徴的な、装甲特化と思われるグシオンの改修型

 突然の出来事に会場の面々は困惑したようにざわざわとどよめくが、ステージ上にいるミライさんはこの事態を予想しての対応策をレイから既に聞いていた。

 

「ココロネ・ヒツキさんから皆さんへのサプライズイベント!! 今現れた三体のガンプラはヒツキちゃんのライブを妨害しようとする魔の手―――さーて、立ちはだかる強敵にガンプラアイドル。ココロネ・ヒツキは勝つことができるでしょうか!!」

 

 既に予想できた事態ならば、この襲撃さえも演目にしてしまえばいい。

 ミライさんの言葉にどよめいていた観客は一転して、熱狂したような歓声を上げる。

 しかし、一方でバトルシステム内のヒツキは、三対一という劣勢に、防戦を強いられていた。

 

「く……」

 

 マガツアストレイからの正確無比な射撃を、ギリギリ回避しながらも、ザムザザーから放たれたミサイルをサーベルで切り払う。

 

『うおらあああああ!!』

 

 しかしミサイルの煙で視界が遮られたその瞬間に、怒号と共に赤色のグシオンが凄まじい跳躍と共に巨大ハンマーを振るう。

 そのあまりの迫力に小さな悲鳴をあげながらも、ハンマーの一撃を回避し、グシオンの頭部に蹴りを入れ、地面へ叩き落とす。

 

『巧く利用されたなぁ、ココロネ・ヒツキさんよぉ』

 

 静かに息を乱していると、不意にマガツアストレイと通信が繋がる。バトル内でのプライベート回線だから会場にこの声が聞こえる事がないことに安堵しながら、その声に耳を傾ける。

 前、レイ君が戦った時のボイスチェンジャー越しの声とは違って、今度は肉声。乱暴且つ、相手を嘲るような声に眉をひそめながらも答えを返す。

 

「それが貴方の本当の口調って訳ね……」

『ああ、もう、少し戦えるようになったからって……まぁ~強気になっちゃって……』

 

 三機のガンプラに囲まれ、冷や汗を流しつつも眼前のマガツアストレイを見やる。

 基本となったアストレイゴールドフレームの金色のフレームが、全て禍々しい紫色に変えられたガンプラ。

 その装備も様変わりし、背部に装備されているマガノイクタチはノコギリクワガタの顎のように刺々しく変り果て、一見なんも装備されていないように見える両腕には、レイ君とのバトルの時に見せた指から発生するビームサーベルと、小型のビームガンが取り付けられている。

 

 そして、マガツアストレイの少し後ろに浮かんでいる、大型MAザムザザーの改修型。

 これに関してはただただ不気味という答えしかなかった。

 ザムザザーの四本のスラスターの役割を担う脚は異様な程に大型化され、それにともない胴体の方も大きくなっている。

 恐らくIフィールドを積んでいるのだろうけど、体の良い的だ。

 それとも、そのリスクを冒しても取り付けたい機能があったのだろうか?

 

 最後に、グシオン。

 ガンダム鉄血のオルフェンズに登場する敵のガンダム。

 これが一番厄介だ、とヒツキは思った。

 何せ、原典の圧倒的な防御力を誇ったグシオンをさらに装甲とスラスターを追加させ、さらに堅牢なナニかへと変わり果てている。

 例えるなら、フルクロスを纏ったグシオン。悪夢以外の何物でもない発想である。

 

「何で、こんなことをするんですか……?」

『全てはビジネスなんだよ。雇われ先のクライアントがアンタの失脚を望んでいる、ただそれだけの理由だ。後はそうだなぁ……俺達が楽しくぶっ壊せればそれでいい』

 

 分かっていたけど、この人たちはガンプラを自分達だけが楽しむ道具としか思っていない。自分本位、というだけならまだ良かった。だけど、その為に他人が一生懸命に作り上げた努力の結晶を踏みにじるような真似をして楽しむのは、絶対に許せない。

 ヒツキはVRランチャーをマガツアストレイに向け、小さく呟く。

 

「……あなただけには、負けられない」

『ハッ! 言うだけなら簡単だよなぁ。だけど悲しい事に、お前にはそれを言うだけの実力が無い』

 

 そう言うやいなや、ヒツキを囲んでいる三体のガンプラが装備を向けて来る。

 確かに今の彼女にはこの三体を相手取るほどの実力は無いに等しいだろう。だけど、そんなことで諦めるほど、私は潔い女じゃない。

 戦える限り戦ってやる。

 今一度、操縦桿を握りしめ、上方への飛翔を試みようとする。しかし、その瞬間、別方向からこの場の誰でもない第三者の一筋の光線がマガツアストレイ目掛けて放たれる。

 

『っ!?』

 

 突然の攻撃に危なげなくビームを回避したマガツ・アストレイは、ビームが飛んで来た方向を見据え狂笑をあげる。

 

『カ、カハハハハッ!! 待っていたよ!!』

 

 私もそちらを見れば、灰色のガンプラがGNロングビームライフルを構えていた。そして、その傍らには黄色いガンプラ。

 姿形は初めて見る二体のガンプラだけど、その灰色のガンプラの姿を見て私は思わず、近くのバトルシステムに立つ彼を見て、その名を呼ぶ―――

 

「レ―――ッ」

 

 が、レイ君の姿を見た瞬間、私は主に彼が被っているであろうその仮面に呆けた声を出してしまった。

 なぜなら、そこにはガンダムF91に登場する『鉄仮面』のマスクを被った高校生くらいの少年と、ガンダムwに登場する『ゼクス・マーキス』と同じ、長髪のカツラがつけられたマスクを被った中学生くらいの少年がいた。

 というより、『鉄仮面』がレイ君で『ゼクス・マーキス』がサカイ君であった。

 

「え、えええええええ!?」

 

 どういう経緯でその仮面を被る事になったのぉ!?

 衝撃が抜けきらない私にレイ君の灰色のガンプラがこちらに通信をつなげて来る。

 

「は、え……」

「ココロネ・ヒツキ、大丈夫か!!」

「え、ちょ……レ……君だ、よね?」

 

 流石にオープン回線で名を呼ぶわけにはいかないので、震える声で確認してみると、

 

「今の俺は鉄仮面先輩だ」

「鉄仮面先輩ィ!? そっちの彼はぁ!?」

「ライトニング後輩だ」

「どうもライトニングですぅッ!! 助太刀にきましたぜぇ、ココロネさぁん!!」

 

 いやちょっと待ってだからその仮面はなんなのぉ!? 顔を隠さないといけないのは分かるけど、どうしてそのキャラクターをチョイスしたの!? しかもなにその仮面キャラ同士での先輩後輩みたいなコードネーム!?

 あまりにも予想外過ぎる援軍に彼女は思い切り動揺する。

 

「これで三対三だぞ、ガンプラマフィア」

『ハハッ! これでようやく面白くなってきた。君も俺もようやく本気のガンプラで合間見えた事だしなぁ。トグサァッ! お前はそっちの黄色いやつを相手しろォ! 俺とツクモはこいつらと遊ぶとする!』

 

 赤色のグシオンにマガツアストレイがそう叫ぶ。

 どうやら、私とレイ君がザムザザーとマガツアストレイを相手にしなきゃいけないようだ。

 

「ライトニング後輩ッ!! あの赤いのは任せた!!」

「合点承知ィ!! うぉぉらぁぁ!!」

 

 レイ君の灰色のガンプラが上昇すると共に、サカイ君が操作しているであろう獅子を彷彿とさせる黄色いガンプラは、その手に持つ巨大なレンチを回転させながら、猛スピードで突進するグシオンを迎え撃った。

 サカイ君なら心配はいらない、それに見た感じあのガンプラがどのようなガンプラか、私は知っている。

 

「レ―――鉄仮面さん!!」

「行くぞココロネ、俺と君で奴を倒すぞ」

「はいッ!!」

 

 こちらまで上昇してきたレイ君は、その灰色のガンプラ……否、ジンクスをV3の隣にまで移動させ、マガツアストレイとザムザザーと向き合わせた。

 横目で彼のガンプラを見る。

 ジンクスⅣ―――だけど、その姿は大会で見たその姿とは大きく違う。

 

「鉄仮面さん、そのガンプラは……」

「フッ、今日初披露のジンクスだ」

 

 背部スラスターは大会と同じような形状のものだが、プラフスキー粒子が後ろへ流れる翼のように展開されており、まるで光の翼のようにたなびいている。

 右手にはGNロングビームライフル、左手に持たされたその身を覆う程の大型シールドの先端には彼の十八番ともいうべき武装、GNクリアランス。

 左肩部にはGNキャノンと右肩の複数の突起が見えるミサイルポッドに似た装備。

 その武装、姿に私は自然にあるロボットの名を口にする。

 

「グレイター、キン」

「……ライトニング後輩と同じことを言う。コイツの名は―――」

 

 鉄仮面先輩、レイ君は眼前の敵機にGNロングライフルを向け、言い放つ。

 

「ジンクスⅣオリジンType『G』。熱い魂を持つ俺の仲間の為に作ったガンプラだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけーそのころ、ネットではー

 

701名前:名無しさんとガンプラ、投稿日20??/??/??(?)??:??:??.?? ID ????????

 

 あれ、おかしいな?

 ココロネ・ヒツキの生放送ライブ見てたら、突然スパロボ時空に突入したんだけど

 

702名前:名無しさんとガンプラ、投稿日20??/??/??(?)??:??:??.?? ID ????????

 

 所属不明のガンプラ三機。

 俺達のココロネちゃんのガンプラ

 変態仮面のガンプラ二機(なお、どちらもスパロボ)

 

703名前:名無しさんとガンプラ、投稿日20??/??/??(?)??:??:??.?? ID ????????

 

 私、あのジンクス見覚えあるわ

 

704名前:名無しさんとガンプラ、投稿日20??/??/??(?)??:??:??.?? ID ????????

 

 奇遇だな俺もだ

 

 

705名前:名無しさんとガンプラ、投稿日20??/??/??(?)??:??:??.?? ID ????????

 

 鉄仮面先輩……一体、どこのジンクス乗りなんだ……?

 

706名前:名無しさんとガンプラ、投稿日20??/??/??(?)??:??:??.?? ID ????????

 

 あんなスーパー系ジンクスを使う変態は一人しか知らないわ。

 しかも今度はジム神とザク神じゃなくて、スフィア持ち連れてきやがった。

 グシオンと殴り合うってヤバすぎだろ……。

 

707名前:名無しさんとガンプラ、投稿日20??/??/??(?)??:??:??.?? ID ????????

 

 なんであのジンクス乗り、俺達のココロネちゃんと一緒にバトルしてんだよぉ!!

 羨ましぃぃぃぃぃ!!

 

708名前:名無しさんとガンプラ、投稿日20??/??/??(?)??:??:??.?? ID ????????

 

 本当になんでいるんだろう……。

 知り合いっぽいし、ゲストとして呼ばれたんじゃないか?

 

709名前:名無しさんとガンプラ、投稿日20??/??/??(?)??:??:??.?? ID ????????

 

 謎のガンプラファイターとして登場したはずなのに、即座に正体看破されるとか……。

 それどこのメイジンwww

 

710名前:名無しさんとガンプラ、投稿日20??/??/??(?)??:??:??.?? ID ????????

 

 ゲストとして呼ばれたなら、あのグシオンと殴り合っている関西弁の中学生くらいの子……。

 もしかして……トライオン3の……?。

 

711名前:名無しさんとガンプラ、投稿日20??/??/??(?)??:??:??.?? ID ????????

 

 ……もしかして選手権スパロボ組のリーダー二人が参加しているってことか? 

 

712名前:名無しさんとガンプラ、投稿日20??/??/??(?)??:??:??.?? ID ????????

 

 やばい(確信)

 

713名前:名無しさんとガンプラ、投稿日20??/??/??(?)??:??:??.?? ID ????????

 

 本人は隠しているつもりなんだよなぁ。

 ジンクスでモロバレだけどwww

 

714名前:名無しさんとガンプラ、投稿日20??/??/??(?)??:??:??.?? ID ????????

 

 しっかも、またグレードアップしているしwww

 ヴァイサーガの次はグレイターキンかよwww

 一体この人はどこに向かっているんだwww

 

715名前:名無しさんとガンプラ、投稿日20??/??/??(?)??:??:??.?? ID ????????

 

 ジンクスⅣオリジンtype『G』って……あ(察し)

 

716名前:名無しさんとガンプラ、投稿日20??/??/??(?)??:??:??.?? ID ????????

 

 待って、ココロネちゃんのヴィクトリーンがマクロス仕様になっているのってまさか……。

 

717名前:名無しさんとガンプラ、投稿日20??/??/??(?)??:??:??.?? ID ????????

 

 今すぐココロネちゃんを隔離しろスタッフゥゥ!!

 スパロボ脳に汚染されても知らんぞぉぉぉぉ!!

 

718名前:名無しさんとガンプラ、投稿日20??/??/??(?)??:??:??.?? ID ????????

 

 やりやがったwww

 

719名前:名無しさんとガンプラ、投稿日20??/??/??(?)??:??:??.?? ID ????????

 

 いや待て、ことガンプラの技術と発想に関しては鉄仮面は凄い。

 しかも脳波コントロールできる。

 

720名前:名無しさんとガンプラ、投稿日20??/??/??(?)??:??:??.?? ID ????????

 

 とりあえず次スレはヒツキちゃん実況スレじゃなくてスパロボ実況スレに変えよう

 

 




マクロス7ダイナマイトは見る価値アリです。
私は熱気バサラの歌では、New frontier が好きです。

ジンクスⅣオリジンtype【G】のモデルはグレイターキンでした。
レイとしては近接を得意とするガンバスターのサポート機としての役割を追求した末にこのような姿になった、という感じですね。

マガツアストレイについては、ゴールドフレームとリジェネレイトガンダムの特性を合わせた感じです。
つまり、ザムザザーは―――、

仮面に関してですが、鉄仮面は完全なネタです。
サカイ君のマスクは最初はフル・フロンタルのものにしようと思いましたが、そうなると呼び名が、【全裸後輩】という酷いものになってしまいますので、ゼクス・マーキスのものと変えさせていただきました。


更新が遅れてしまった理由については活動報告の方に書かせて貰いましたので、そちらをよろしくお願いします。

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