『A』 STORY   作:クロカタ

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デッドエンドフィンガー……。

デッドエンド……。

………フフフ……… ( ゚д゚)ハッ!


お待たせいたしました。
最近少し忙しかったので更新が遅れてしまいました。


更新です。


全国編~決闘~

『Field8―――Sky』

 

 粒子で形作られる空、そして宙に浮く島々。

 ―――ガンプラバトル選手権、準決勝。使い慣れたガンプラ、ガンダム・ジエンドを操作した俺は、フィールドに機体を慣らしながら飛ばしていた。

 

 俺が属するチーム、『ソレスタルスフィア』の相手、チーム『イデガンジン』。そのリーダー、アンドウ・レイと初めてバトったのはニールセンラボで、我梅学園のザク使い三人と気まぐれにバトルしていた時、奴が乱入してきた事がそもそもの始まりだった。

 中途半端な出来のガンプラで何しに来たかと思えば、これまた仰天、俺のジエンドとまともにバトルできるときた……。

 

 ここで勝負を決めるのは勿体ねぇ、と思ったね。

 だから今の今まで待った。奴ならば必ずここまで上がって来る、そんな確信があった。というより、俺と互角にバトルできた奴がそう簡単に負けるとは思えなかったというのが大きな理由かもしれねぇ。

 

 案の定、昇ってきやがった。

 ナガレとヨーロッパジュニアチャンプを打倒し、俺達の前に立ちはだかる相手として、これほど楽しい事は無い。

 最高に強い奴と、本気でバトれる。今、こうして飛んでいるだけでも戦意が滾るのが分かるほどに高揚している。

 

「相手はヨーロッパジュニアチャンプに勝利した、実力者だ……心配はしていないが、油断するなよ」

「んなこと分かってるよ!」

「ええ!」

 

 ジエンドの両隣を飛ぶキジマのトランジェントガンダムとシアのGポータント。

 隠しているようだが、冷静を装っているキジマもこのバトルに高揚しているのか、声に若干の猛々しさがある。

 

 何時も冷静沈着な奴だが、無理もないだろうな。俺達はここまで来るのがあまりにも簡単すぎた。大会のレベルは低いという訳じゃない、むしろ今年は粒揃いだったと言ってもいいだろう。

 だが、生憎そいつらは俺達とは当たらなかった。それだけが心残りだが……その鬱憤はこのバトルで清算される筈だ、なにせ――――。

 

「!」

 

 センサーが前方から近づく反応を捉えた事により思考は中断される。自分の中で沸々と感情が高揚してくるのが分かる。

 

「―――どうやら来たようだぜ……ッ」

 

 近付いてくる影は三つ。

 あの日の続きをおっぱじめようぜ……ッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アドウさん!?」

 

 アドウさんのジエンドがレイのジンクスⅣオリジン目掛け先行してしまった。私も兄さんもアドウさんを後ろから追う形で進んでいくが―――レイのジンクスが先行するジエンドを迎え撃つべくスピードを上げたのを見て、思わず声を上げる。

 

「兄さん!アドウさんが!」

「好きにやらせておけ……前を見ろシア!」

 

 兄さんの声で咄嗟にジンクスⅣの後方に目を向けると、私と兄さん目掛けて巨大なビームが迫っている光景が視界に映る。すぐさま粒子変容フィールドでビーム砲を受け流し、撃ってきたであろう相手を見る。

 

 ―――頭部から粒子の残光を残しながら、ジンクスⅣの後ろをついていくガンバスター……と、イデオン。あの二機が私達の動きを牽制するようにビームを放ったのか。

 

「待ちかねたぜぇぇぇ!!」

『あの時の続きだ!!』

 

 私達の事が眼中にないのか、アドウさんは、ビーム刃を引き延ばした槍を掲げ振り下ろしたジンクスにクローを展開させ突き出した。

 高出力のビーム刃とクローがぶつかり光が走る。

 

『同じだな……!』

「ならこっからどうなるかは分かってんだろうなぁ!!」

 

 受け止めたビーム刃を掴み取り動きを封じる。ジエンドのクローは並大抵の力じゃ抗えない。これを好機と見たのか兄さんのトランジェントが、GNパルチザンを切り払うかのように振るい、ランスを掴まれたジンクスへと向かっていく。

 

「―――私も……っ!!」

 

 イデオンもガンバスターも厄介だけど、一番危険なのはレイだ。

 私もGNスマッシュライフルを掲げ、狙いを定める。集団で落とすのは気が引けるけど―――。

 

「避けなきゃ終わるぜぇ!!」

「一人で出てくるのは迂闊だぞ……っ!」

「落ちて!」

 

『勝算も無しに来たと思ったら大間違いだ―――』

 

 ジエンドが振るうクローをサーベルで弾いたジンクスは、向かってくるトランジェントと私が放った高出力のビームを一瞬だけ一瞥し、そう言い放った。

 

『――――――オリジンシステム、発動』

 

 この時、トランジェントとジエンドの後方で見ていた私だけが気付いた。

 トランザム状態でないにも関わらずレイのジンクスから赤い帯が放出されている事に―――。

 

「トランザム無しでその機能は―――」

『行け!』

 

 ジンクスが今にも斬りかかろうとしているトランジェントに腕を向け、粒子の帯の加速と共に凄まじい勢いで撃ち出す。

 腕を飛ばす―――フォンブラウンとのバトルでレイが最後に自らのガンプラの腕を引き千切って繰り出していたが……まさか、飛ばせるように改造したとでも言うの!?流石の私でもそこまでのギミックは読めない……。

 飛ばされた腕は正確にトランジェントの中心を穿つように放たれるも、GNパルチザンの柄を盾にして防御する。

 

「型破りな……ッ!」

「兄さん!?」

 

『相手は先輩だけじゃないぞ!!』

 

 飛んで来た拳によって押し出されたトランジェントを待っていたのは、この場に到着したイデオンが放った拳だった。圧倒的な膂力で振るわれたその拳をふわりと回転しながら回避したトランジェントは、GNパルチザンの切っ先を鋏のように展開させて高出力の粒子ビームを放つ。

 

 だが、イデオンは迫り来る粒子ビームに対して回避も防御する挙動も起こさず、拳を構えた。トランジェントの粒子ビームの威力は私が一番分かっている、何を待っている?

 

 その疑問はイデオンと粒子ビームの前を横切るようにして飛んだジンクスの腕によって氷解する。ただ横切っただけではない、流れ出る赤い粒子の帯をカーテンのようにイデオンの前に展開させ、粒子砲を拡散させた。

 

「っ!!飛んで来た腕が粒子ビームを防いだっていうの!?どういう発想!?」

 

 消滅した赤い帯を手でかき分け向かってくるイデオン。

 GNピアスソードを構え、迎え撃とうとする私を手で遮った兄さんは、アドウとレイの方に目を向け、若干焦燥とした声を上げる。

 

「シア!アドウの援護に回れ!」

「……っ!?分かったわ!」

 

 このバトル、今までとは違う……ッ。

 漠然とした予感を確信へと変えながらも、熱くなっていく掌を感じ、Gポータントをアドウさんの居る方向に向けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 GNアームビット、腕を飛ばすこの武装、キジマのトランジェントガンダムへの牽制とイデオンの援護の為に飛ばしたが―――問題は、アドウの方。

 

『面白れぇもん使ってるじゃねぇか……っ!』

「お前程じゃないッ!」

 

 ランスを手放しながら、GNガンランスをパージし右腕で掴み取る。ソレでジエンドが突き出したクローを弾き、ビームガンを放つ―――が、クローで防御される。

 ……クリアランスは捨てられてしまったが、右腕しかない状態で拾わせてくれるほど優しい相手じゃない。それなら―――。

 

『いいぜいいぜぇ!』

 

 戻ってきた左腕を一瞥しながら、ガンランスを戻しGNロングビームライフルを掲げる。ジエンドもリボルバー型のビームガンを取り出し銃身をこちらに向け、同時に放ってくる。

 

『片腕で俺とバトれると思ってんじゃねぇぞぉ!!』

「そんなこと分かっている!」

 

 ビームガンを帯で防ぐ、右腕しかない状態じゃ防御しかできないが―――。

 左腕が揃えば、攻撃手段はいくらでも増やせる!遠隔操作した左腕を、アドウの死角から殴り込ませる。

 

 思いつかぬ場所から突っ込んで来た拳が、咄嗟に回避しようとしたジエンドの右手のビームガンを粉砕―――死角からの攻撃に反応するのは流石と言うべきだが、隙ができたぞ!

 

「このギミックは見抜けない筈だ!」

『楽しませてくれるなぁ、おい!』

 

 ロングビームライフルを持つ右腕のアームビットをジエンド目掛け射出し、左腕のアームビットを回収し粒子を充填させながら、ロングビームライフルを持たせた右腕を操作し、ビームを放つ。俺の方も右腕の操作と共に、GNバルカンを放つ。

 

『かはは!すげぇ変な使い方するなぁ!!』

「自覚している!」

 

 このまま絶えず死角から撃ち出しファングを出す暇を与えず、その間に左腕を飛ばしアドウに捨てられ宙に浮いている島に引っかかっているクリアランスを掴み取る。やっぱり結構この腕は使える、この腕を飛ばす機構を考えた人は天才だな。

 ……これで主武装が手元に戻ってきた。

 

「先輩!」

「ノリコか!」

 

 手元に戻ったクリアランスのビームをジエンドに放ちながら、到着したノリコのガンバスターに目を向け周囲を確認。―――シアのガンプラが来ているな、彼女のビルダーとしての技量は天才的だ。カリマ・ケイとのバトルを見ても、相手のガンプラの関節を的確に切り裂き、戦闘不能に陥らせたあの技量からして甘く見て良い相手じゃない。

 

 ここは―――。

 

「ノリコ、辛いかもしれないが、少し頼む。コスモと連携して戦ってくれ」

「任せてください!」

「コスモも聞こえたか!」

「はいッ!」

 

 トランジェントガンダムの槍と拳をぶつけ合いながら、鬼気迫る声で返してくるコスモ。一対一のバトルよりも連携を生かしたバトルの方がノリコとコスモにとっては得意分野と言ってもいいだろう。

 ジエンドに向けて放っていた右腕を回収しながら、シアのガンプラの方を向く。

 

『どこ行こうって言うんだァ!!』

「行かせない!」

『チッ……だが、まあ―――テメェと戦うのも悪くねぇ!!』

 

「お前なら大丈夫だ、ノリコ……」

 

 ジエンドの行く手を遮る様に割って入ったガンバスターを頼もしく思いつつも、オリジンシステムを再び作動させ、勢いに任せシアのガンプラの方へ加速する。

 

『向かってきた……レイ!』

 

 緑色の美しいGN粒子を輝かせふわりと浮き上がった緑色のガンプラが、その手に持ったGNソードに類似した剣を振るい、刃の先から鞭に似た粒子をこちらに繰り出してくる。

 恐らくあれは触れれば切れる。カリマ・ケイのヴェイガンギアの改修機を切り裂いた武装―――。

 

「こちらも似たような事はできるッ!!」

 

 ランスを左手に持ち替え、右腕部の手首付近の放出口の一つから伸ばした赤い粒子の帯を掴み取り、シアの粒子の鞭と同じように振るう。

 宙を切り裂くように振るわれた双方の粒子ビームは、バチィと反発しあう様に火花を散らせながら弾き飛ばす。

 

『私と同じ……!』

「ちょっとした応用、ってとこだ!」

 

 ミサキならこう言いそうだ。

 GNソード(?)を構えたシアのガンプラがこちらに迫っているのを見据え、こちらもクリアランスを突き出す。

 

「あの時は、君と戦う事になるとは思っていなかったな!」

『私はなんとなくそう思ってたわ!セカイと同じように!』

 

 突き出したランスを流れる様に回避され、シアのガンプラのライフルがこちらを向く。そのまま撃たれれば胴体を貫かれてしまうが、こちらもそう簡単にやられてあげる程、優しくないつもりだ。

 

「サーベル!」

『っ!』

 

 空いた左腕でサーベルを引き抜きライフルを破壊する。が、一瞬間に合わなかったからか、ブースターのGNバスターソードにビームが直撃し、バスターソードがブースターから弾け飛ぶ。

 ―――軽くなったと前向きに考えておこう。

 

 サーベルとソードを打ち付け合いながらも、宙に浮く島々の間を飛ぶ。

 クリアランスとブースターのGNガンランスからビームを放つも、それは粒子変容フィールドによって防がれる。

 硬い、恐らく生半可なビームじゃあの粒子変容フィールドは越えられない。クリアランスの最大出力の粒子砲なら突破できそうだが、それをさせてくれる程相手は甘くはない。

 

『貴方のガンプラの名前はなんて言う名前!?』

「ん!?」

 

 戦闘の最中、突然シアがそんな事を聞いて来た。

 純粋な好奇心ともとれるし、こちらの油断を誘っているかに思えるが……この子の場合は前者と考えるのが自然かな。

 

「―――ジンクスⅣオリジンだ!!」

『私のガンプラはGポータント!』

 

 Gポータント―――00系列のサキブレに酷似しているが、どことなくレコンギスタのG系のMSにも精通している部分がある。どちらにしろまだまだ隠されたギミックがあっても不思議じゃない。

 ファイターとして見るならば、厄介なガンプラ。

 ビルダーとしてなら―――

 

「凄いガンプラだ!」

『貴方のも!』

 

 だが俺のジンクスのアームビットの性能は全て出したつもりは無い。

 粒子変容フィールドを張り続け防御に徹するならそうすればいい、クリアランスを腰に戻しブースターのGNガンランスを両手に装備させる。

 

「突破する」

『―――その武装では……ッ』

「ガンプラの手首は回る!!」

 

 手を覆う様に改修したGNガンランスが、手首の動きと同調して共に回転し始める。余りにも回転の勢いが強いせいか腕が引っ張られるが、無理やり引き絞る。

 

「ぐ、……行ッけッ!」

 

 暴れ狂う両腕を突き出すと同時に放つ。複雑な軌道を描き、Gポータント目掛け飛んで行く。アシムレイトで補助してはいるものの、余りある回転力に操作するのも一苦労……まるで暴れ馬だが……ッ。

 

「威力は折り紙付きだぞ……ッ」

『え、なにそ―――』

 

 アームビットを回避しようにも、回転するGNガンランスにより複雑な軌道を描く為か動きを予測できず、慌てて粒子変容フィールドを張るGポータント。

 粒子変容フィールドにまず右のアームビットが突き刺さり、後から続くように繰り出された左のアームビットが、Gポータントの粒子変容フィールドを突き破る。

 フィールドを突破したアームビットは左腕部を穿ち、脇腹を抉り取る。

 

『くぅ……』

 

 ブースターを噴かせ、損傷したGポータントへ接近する。その最中に、回転を止めた両腕部を回収しクリアランスを腰から引き抜く。

 

「頂くぞ!!」

 

 

 

「先輩避けてください!!」

 

 

 

 シアにトドメの一撃を繰り出そうとしたその瞬間、こちら目掛けて黒色の粒子ビームが迫って来るのが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レイに高出力の粒子ビームが放たれる少し前、選手控室、天大寺学園チーム『ビルドバスターズ』のサカイ・ミナトは、試合の様相に驚愕の表情を浮かべていた。ビルダーとしての活動が主だった彼としては、両チームのガンプラはとても興味深いものだった。

 

 しかし―――。

 ジンクスの腕がロケットパンチさながらにぶっ飛んでからは違った。

 

 最初は「あの人、ロマンっちゅーもん分かってるやないか!」と目を輝かせてはいたが、腕にライフル持たせて疑似ファンネルにするわ、腕を飛ばして武器を回収するわ。

 彼は思わずツッコんだ。

 

『スパロボか!?』

 

 これには流石のチームメイトであるコデラも苦笑い。

 

「どっちも化け物や、な」

 

 トランジェントとジエンドを任された二機は、巧みな連携で互角にまで持ち込んでいる。……一方のガンプラ学園のガンプラは良くも悪くも我が強いチームだ。これまでのバトルでも、圧倒的な腕と性能で苦戦と言う苦戦も無く勝ち上がってきた。

 サカイに言わせてみれば、この状況は強すぎたからこそ起きた事態。

 

『まさか画面越しの存在と合間見えようとは……ッ』

『―――貴方達は俺とノリコが抑えて見せる!』

 

 トランジェントの突き出したGNパルチザンを手首から生やしたビーム刃で切り払ったイデオン。これまでのバトルから、イデオンガン、イデオンソードによる大出力の攻撃に目が行きがちだが、キジマ・ウィルフリットと打ち合えるだけの近接戦闘能力、それがイデオンのファイター、ユズキ・コスモの真骨頂。

 

「そして―――」

 

『そう!任されちゃったんだから!!』

『大口叩けるほどの実力が備わってるのかよぉ!ファング!!』

 

 異形のガンダム、ジエンドのクローから射出された銃弾型のファングを一度身に受けながら、迸る電撃で破壊するガンバスター。

 こちらはイデオンとは違い、これまでの印象の通りに格闘と大出力の砲撃、そして堅牢な装甲。愚直な程に繰り出される一撃は、並のガンプラなら一撃で粉砕されてもおかしくない程の威力がある。

 

「だが、ガンプラ学園はそんな甘くはあらへん」

 

『ハハハハハハ!!俺のファングを受けてその程度かよ!硬すぎだろ!!ならこいつはどうだぁ!!』

 

 再び撃ち出されたファング、しかし今度は分散して当たって来るのではなく、砲弾のように集約されガンバスター目掛け撃ち出される。

 

『ノリコ!そいつには当たるな!!』

『余所見する暇がどこにあるかァ―――――!!』

 

 トランジェントから一時離れたイデオンがガンバスターの方に腕を向け、叫ぶ。大会6連覇を成し遂げている強豪ガンプラ学園に対し、意識を裂く行為は傍から見ればマヌケとしてしか見えないが、イデオンのファイターはそれを理解した上でガンバスターに腕を向けた。

 

『頼むよッ、バスタァァァ――――ミサイル!!』

『イデオンソードッ!!』

 

 ガンバスターに伸ばされた―――否、ガンバスターへ迫る砲弾と化したファングに向けられた腕から放たれたイデオンソードが一瞬でファングを消滅させる。

 同時、大きく腕を広げたガンバスターの指から小型のミサイルが多量に放たれ、攻撃を仕掛けようとしたトランジェントと、ファングを撃ち出したジエンドに殺到した。

 

『―――ッ!!キジマ!!こいつは撃ち落とせ!!』

『分かっている!』

 

 迫るミサイルを残り一丁のリボルバー型のビームガンで撃ち落とすと、ミサイルが爆破地点を中心に強烈な粒子爆発を起こした。原作通りなら、バスターミサイルはブラックホールなんちゃら……だった筈だ。

 あれに飲み込まれればジエンドとて危険。

 

 あれがもしトライオン3に当たったらと考えたら―――そのもしもの可能性に、サカイ達は背が凍るような感覚に陥った。

 

「あ、サカイ君!!」

「なんや、コデラはん」

「ジンクスⅣのバトルの方!!」

 

 やけに焦ったようなコデラの声に視線を別のモニターに向けると、そこには粒子変容フィールドを貫かれ、深い損傷を負うガンプラ学園ガンプラ、Gポータントの姿が映っていた。

 

「は、はぁ!?何があったんや!?」

「え、えと、ジンクスⅣの腕にランスがついてそれが回って……飛んで…ガンプラ学園のガンプラを貫いた、ごめんこれぐらいしか言えない……」

「こ、コデラはんが謝らなくてええんや……というかスパロボか!!もう一度言う!スパロボかっ!!トライオン3だってしないわそんなこと!!」

 

『―――ッ!シア!!損傷したのか!!』

 

 別のモニター内で戦っているキジマもアドウも気付いたのか、シアが戦っている宙域に目を向け驚きの声を上げている。

 

『しゃらくせぇ!キジマ、一旦立て直す!!俺が一発かましたらシアを回収して来い!』

『了解した!』

 

 禍々しい両肩のクローを開いたアドウは、それをシアの居る―――レイのジンクスⅣに狙いを定める。勿論、イデオンとガンバスターが止めようとするも、させないとばかりにトランジェントが妨害する。

 

『デッドエンドォフィンガァァァァァァッ!!』

 

 二つのクローから放たれた強力な粒子ビームは、島々を抉り取りながら的確にジンクスⅣ目掛け突き進んでいった。

 

『先輩避けてください!』

 

『!!』

 

 ガンバスターのその声に停止したジンクスⅣは迫り来る粒子ビームを視界に収めてから、あっさりと退がりビームを回避する。その間に、接近していたトランジェントは損傷したGポータントを回収し、その場から離れて行った。

 粒子ビームを放ったジエンドもすぐさま島を盾にしながらその場から離れて行った。

 

「これでまだ5分も経ってないとかおかしいやろ……」

 

 バトル開始から4分33秒、戦況はまだ大きく動いていない。

 しかし、ガンプラ学園不敗神話を信じてやまなかった、会場の観客達の予想は大きく覆された。

 

 

 

 

 

 

 

 

「Gポータントは?」

「左腕はもう駄目だけど、胴体の損傷なら直せるわ」

 

 Gポータントの腰に装備されたタンクから放たれた、ガンプラを修理する機能、カレルを操作しながらシアは、周囲を警戒しているキジマのトランジェントにやや焦燥気味に言う。

 

「俺がレイの相手をする」

「アドウ!」

「悪いがアイツとのバトルは俺が先だ。誰にもやらせねぇ」

 

 操縦する球体から右手を離し見る。あの医者からは俺の手首が限界近いと言っていたが―――今はすこぶる調子が良い。これまでのバトルがファングとクローだけで事足りたからかもしれないが、これで正真正銘の本気でジエンドを動かすことができる。

 

「―――……分かった。俺とシアはガンバスターとイデオンを相手しよう」

 

 俺の心情を察したのか、キジマが大人しく引き下がる。思う存分にやる事を認められた俺は、すぐさまファングの制御をオートからマニュアルへと変更し、右手を慣らすように振ると球体を強く握りしめる。

 

「ようやく、本気(マジ)でやれる」

 

 ガンダム・ジエンドの本領を見せてやるぜ……ッ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たか……」

 

 バトル開始から8分、ノリコ、コスモと共に島々を飛び敵機を索敵している最中、レーダーに三つの機影を捉えた。

 先程のような総力戦をすればパワーのあるこちらに分がある。が、相手はガンプラ学園、わざわざ自分達が不利になる土俵でバトルするという危険は犯さないだろう。

 

 相手の得意な勝負、一体一のバトルに引き込んで来る可能性が高い。

 クリアランスを左手に持ち替えながら、ライフルを取り出し戦闘に備えていると、目視できる距離にまで迫った敵機から黒と青、二つの光が煌めくのが見える。

 

「―――!散開!!」

 

 俺の声に反応し、ノリコとコスモがその場から離れる。前方から発射されたのは、二機のガンプラから放たれた高出力の粒子ビーム。こちらの最初の攻撃の意趣返しとも取れるが―――違う。

 

 粒子ビームを回避し、仲間の場所を目視で確認しようとすると、それをさせないとばかりに黒色の粒子ビームを放ったガンプラ、ガンダムジエンドが銃弾型のビットを放ちながらこちらに接近してくる。

 

『―――さあ、やろうぜぇ!ガンプラバトルをなぁ!!』

「やられた……ッ!」

 

 クリアランスを構えながら、コスモとノリコが回避した方向を確認すると、そちらには損傷したGポータントとトランジェントガンダムと交戦しようとしているイデオンとガンバスターの姿が見えた。

 

『行けよッファングッ!』

「……っ!」

 

 放たれたファングにGNロングビームライフルとクリアランスを向け狙いを定める。確かに速いが、見えない程じゃない。

 後方に退がりながらビームを放つ。

 

『前と同じだと思ったら痛い目みるぜ!!』

「!?」

 

 ファングを撃ち貫かんばかりに放たれたビームは、生き物のような複雑な軌道を描くファングによって回避されてしまった。

 

 何だ、今の動きは……。

 先読みして放ったビームをファングが回避するように避けた……?

 

「手動で操作しているのか……?」

 

 俺のアームビットのように操る対象が二つだけならまだしも、アドウは10個以上のファングを扱うんだぞ。それほどの操作技術を有していてもおかしいとは思えないが、どちらにせよ人間業じゃない事は確かだ。

 

 狙いの着けにくい軌道でこちらに迫るファング。ノリコやコスモならまだしもジンクスが食らったら、致命的な損傷になること間違いない。

 GNロングビームライフルを腰に取りつけ、クリアランスを両手で握りしめる。

 

「撃ち落とせないなら薙ぎ払えばいいだけだ……ッ!」

 

 オリジンシステムの発動と同時に、緑色のクリアランスが赤く染まりビーム刃が形成される。後方への加速をストップさせると同時に、それを横薙ぎに振るい、3つのファングを消滅させる。

 

『まだファングはあるぜぇ!』

「これは防ぐ!」

 

 頭上から突き刺さらんとする二つのファングを、オリジンシステムによって生成された赤色の帯で止め、突き上げたビーム刃で消し去―――ろうとするが、ファングと同タイミングで繰り出された顔つきのクローの一撃で突き飛ばされる。

 機体に衝撃が襲いモニターが揺れる、空に浮く島々の一つに機体がぶつかるもすぐさまその場から浮かび上がり、GNダガーを三つ引き抜き、追撃のファングへ投擲し一つ落とす。

 

『後ろががら空きだ!』

「く……ッ!!」

 

 それでも流石に縦横無尽に動き回るファングに対処できるほど俺の腕は速くない。背後から抉り取られるようにブースターに一筋の裂傷が刻まれる。幸い、GNドライブは無傷だが、このままではなぶり殺しだ。

 

 一気に接近戦に持ち込んでもマニュアルで操作しているアドウからすれば、距離なんて関係ないだろう。下手すればクローとファングの板挟みで詰み。かといって遠距離攻撃に徹していても、こちらに有効な遠距離攻撃手段がない限り、勝つことは不可。

 

「対処しきれればいいんだろ……ッ!!」

 

 赤い帯とクリアランスでファングとクローをいなしながら、ジエンドと一定の距離を保つ。

 反応はできている、それでも手が追い付かない。

 

「方法は……ッ!ある!!GNクナイ!!」

『ああ?』

 

 パキンとブースターのGNクナイが弾け飛ぶようにパージされる。この場面でリーチの短い武器を取り出した俺にアドウが疑問の声を上げるが、構わずクリアランスを腰に戻しながら、両腕を横に掲げ――――

 

「アームビット!」

 

 粒子を十分に貯蔵させたアームビットを撃ち出すと同時にGNクナイを掴み、制止したジンクスを貫こうとしているファングを切り飛ばす。

 

「手が追いつかないなら追いつけるようにすればいい……ッ!!」

『本当変な使い方してんなぁ!!おい!!』

 

 何がおかしいのか笑いながら追加のファングを射出したアドウに、GNアームビットと本体のジンクスを操作する。迫るファングは約15個。

 モニターにせわしなく目を移しながらアームビットを操作し、ファングを弾いては斬る。背後から、側方から、前方から、斜めから迫る、大量のファングの全てを対処した上で、ジエンド本体から放たれるクローも防ぐ。

 

「防戦一方なだけとは限らないぞ!!」

 

 アームビットとジンクスを操作しながら、ブースターのGNガンランスを展開させ、ショットランサーとビームマシンガンをジエンド目掛けて撃ち出す。

 

 撃ち出した攻撃を防御、回避したアドウ。

 彼は機体をこちらに向け、禍々しい程にクローと腕を広げジンクスを威圧するように嬉々とした声を上げた。

 

『面白ェ……ッ!!』

 

 ここから先はギリギリの攻防戦、集中を切らしたら機体に風穴が空く……。集中しろ、俺……ッ。




 本編ではガンプラ学園の中心はキジマでしたが、この話ではアドウが中心となります。
アドウもキジマと同等の実力を持っているという設定だったのと、ニールセンラボでレイと再戦の約束をしていたからですね。



今話はジンクスⅣオリジンのアームビットの変態的な応用を披露しました。

・ロケットパンチ。
・武器を拾う(マジンカイザーSKL)
・GNガンランス付アームビット(スレードゲルミル)

・アームビットから出る帯で味方を守る。
・ライフル持たせて飛ばす。
・GNクナイ付アームビット。

 書いていて気付いたのですが、GNクナイ付アームビットでファング弾くのって、完全にH×HのVSユピーの時のシュートだった………。


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