ソロアート・オフライン   作:I love ?

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……オリジナルにしたはいいものの、リズベットを八幡にどう惚れさせるか思い付かない! いっそのことキリトに惚れていることにして、レズベットにすれば……ダメですよね、はい。
あ、あとお気に入り登録数二千件突破のアンケートはそろそろ締め切るので、要望がある人は書いてください。書くだけならタダタダ!
あ、あと八幡のSAO装備のイラストも募集しています。まぁもちろん描いてくださる必要はないですが、描いてくれたら嬉しいな〜(チラッ
長くなりましたが、第九十話、どうぞ!


昨日の敵は寒さ、今日の敵は暑さという状況に、とある鍛冶屋は苦悩している。

俺、比企谷八幡は情熱で赤くなっているという設定の千葉県公式キャラクターとは真反対の人間である。『押してダメなら諦めろ』。我ながらいい言葉を座右の銘にしているだけのことはあると、平塚先生(皮肉)や小町(皮肉)、更には雪ノ下(挽き肉)までもが言ったものだ。……て言うか最後、俺の座右の銘ミンチにされてるだろ。

現実の壁にぶつかったら五十メートルもの壁をも破壊したどこぞの超大型巨人とは違い、迂回ルートを探すまで根性に染み付いている。言うなればジ○ンポジションだ。最前線にもいるしな。

とある漫画に、『諦めたらそこで試合終了ですよ』という名言がある。確かに間違ってはいない。

だが三○さんは諦めなかったから勝てたのではなく、勝つべくして勝ったのだ。本当に諦める場面っていうのは、もう本当にどうしようもないときのことを言うのだ。……今の俺のように。

この敵は強大すぎる。

殴ってもびくともせず、剣で斬りつけても傷ひとつない。今までそれなりに研鑽してきたと自負できる剣技ですら弾かれる。

その敵の名は――――

 

「……やっぱり壊すのは無理か? 扉」

 

閉鎖空間。閉店状態になっている工房内から、鍵を開ける手段を持たない俺が出られるわけもなく、もちろん破壊不能オブジェクトである建物を破壊など――一応試みたが――できるはずなく、マジで閉じ込められた。

 

「……まさか、あいつらが帰ってくるまでこのまま?」

 

やだ、留置場に収監されてる犯罪者みたい。カーソルはオレンジじゃないけどね!

以下、延々と暇潰しの独り言が続く……。

   (とあるソロ剣士(ぼっち)のモノローグ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁーに人ん家で寝てんのよ!」

 

「ブッ!」

 

六月下旬の今日のこの良き日、朝起きたら初めに見たものは人の足の裏でした。

 

「いてぇな……」

 

「あんたが仮にも人の家で寝てんのが悪いんでしょ!?」

 

「その人の家に閉じ込めたのは誰だよ。昨日俺にも予定あったのにな〜」

 

宿屋で寝るという予定が。俺の睡眠時間を減らさないで欲しい。俺は別に守鶴の人柱力じゃねーんだよ。言うなれば不覚の人柱力だ。

 

「どうせ寝てるだけだったんじゃないの?」

 

さすがに一年半もの付き合いとなればある程度相手のことが解るようで、俺の休日スタイルをピタリと言い当てられた。

 

「いや、バカ、お前、睡眠不足はマジ命取りだぞ? つまり自分の命を護るために必要な行為であり、特に攻略組には必要不可欠なことだから俺は超攻略熱心だと言える」

 

「それならリズに新しい剣を造ってもらった後に一緒に攻略でも行こっか」

 

「あたしが今日もっかい素材取りに行くことは確定なのね……」

 

「は? 別にお前と一緒に素材取りに行く必要はないだろ」

 

「はー……、いい鉱石ってのは、大体マスタースミスがいないとダメなの。昨日キリトと取りに行った奴も然り、ね」

 

ほー、今まで武器作製なんてお願いしたことがなかったから知らんけど、どうやらそうらしい。まぁ鍛冶屋と戦闘職を兼業してやれるやつはそういないはずだから、一緒に取りに行かなければならない、っていう条件は確かにシビアなんだろうな。でもな……

 

「……お前レベルどれくらい?」

 

「……六十半ばくらいね」

 

六十半ば。安全マージンを気にしなければ最前線クラス。気にするならば、五十五層くらいが限度だ。

 

「……ちなみに、鉱石を取りに行く層は?」

 

「六十層よ」

 

……かなりギリギリだな。いや、それ以前に……

 

「……と言うか、お前俺の剣造ってくれんの?」

 

「え? あぁ、まぁ一応お客様だしね」

 

「そこは一応なんだね……」

 

「まぁ、俺の剣も造ってくれるってのは解ったが……、今更だけど、キリトの剣を造らなくていいのか?」

 

一晩かけてようやく素材を手に入れたのだから、すぐに新しい剣を見たいはずだ。造られる側(キリト)造る側(リズベット)も。

 

「あぁ〜、私、ちょっと予定あるんだよね……。まさか一晩もかかるとは思ってなかったからさ……」

 

用事。キリトの用事内容を予測するのは実に容易い。アスナと攻略もしくは出掛けるか、クラインと情報交換、エギルとレアアイテムの話、《鼠》になんか依頼でもされたかのどれかだろう。やだ、キリト検定一級を飛び越えてストーカー扱いされちゃう!

 

「キリトも新しい剣は一番に見たいでしょうし、そうなるとこいつとあたしで素材取りに行ってる間に用事を済ませてもらって、あんたたちが揃ってる時に剣を打つしかないわね」

 

「……まぁそうなるな」

 

ぶっちゃけ馬が合わないこいつとパーティーを組むなんて仮想体(アバター)の胃に穴が開きそうだが、致し方ない。SAOには精神安定剤とかないのだろうか。

 

「うん、それじゃあ二人とも、がんばってね〜」

 

ゆるゆるほわほわ手を振って店から出ていくキリトから逆捩じされたように沈鬱な雰囲気を漂わせる俺達は、とてもこれからパーティーを組む二人だとは思えなかっただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、その武具素材入手クエストが受けられるのはどこなんだ?」

 

「ちょ、ちょっと待って……」

 

ぜー、はー、と荒い息をしながら後ろを着いてくるリズベットさん――いや、しっくりこないからリズベットでいいや――で、リズベットが休憩要求をしてくる。仕方なくそこらに腰を下ろし、水分補給をした。

 

「昨日は寒かったし、今日は暑いし、もういや……。て言うか、キリトといいあんたといい、なんで全然平気そうな顔してるわけ!?」

 

お、おおう。そんな平気ではないぞ? そこらからダメージは受けないただのオブジェクトだろうけど火柱が上がってるし、くそ暑いし。

 

「ま、まぁこれよりひどい環境もあったしな。……水飲むか?」

 

「へぇ、例えば? ……あ、水頂戴」

 

水筒をオブジェクト化し、リズベットに投げつけながら今まででも酷かった環境を思い起こす。……あれ? 暑さのせいとは違う汗が……。

 

「例えば……指」

 

「は?」

 

「……ある日、俺はある隠しダンジョンを探索していてな、まぁ当然ダンジョンの最奥にはボスがいたわけで……アイテムもレベルも余裕があったし、ちゃんと転移結晶で逃げれるようにしてからボス部屋に入ったんだ。なぜか綱が張り巡らされてたな」

 

「ほうほう」

 

話してるうちにさらに克明にあの時の状況が脳内に描かれる。

 

「……そしたら部屋に入った瞬間下の地面が崩壊してな、張り巡らされてた綱……いや、糸に掴まって事なきを得たんだ」

 

「い、糸?」

 

「ああ、クリスタル無効化エリアだったのか、転移結晶が使えなくてな。そんで上を見たら足が八本に複眼が大量にある虫がいてな……。そいつがボスだったんだが」

「…………」

 

もはやなんのリアクションもしてくれなくなったリズベットにも構わず、俺は語る。

 

「下は底が見えない深淵だし、足場指くらいの細さしかないし、ボスは襲いかかってくるし……あ、でも糸は粘着性はなかったな。で、糸から糸に跳び移ったり、投剣スキルで攻撃したり……あれは軽業スキルなかったら落ちてたな、ハハッ」

 

俺が笑うことはあまりないと自負している。それでも笑ってしまうほどあれは酷かった。今でも笑えてくる。ハハッ(乾)

 

「あの、もういいから。充分よ」

 

それはありがたい。このあと特に語るないようなかったしな。ボスを倒したら地面が復活したってことくらいだ。

 

「……行きましょうか」

 

「……あぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あのあとNPCの老人に、北にある《煉獄の山》というマップの(ボス)であるドラゴンの核……つまり心臓が目的の鉱石であることを教えてもらい、クエストを受託したのが十分前。

 

「……なんか一際炎がすごいとこに来たわね……」

 

確かに。松岡○造もビックリの暑さだ。だが登場演出が派手なボスだとしたならばこれ以上にうってつけな場所はこの山にはないだろう。

 

「多分、ここで例のドラゴンが出てくるだろうから逃げる準備だけはしとけよ」

「はいはい。レア武具素材がドラゴンから取れるのってSAOじゃ決まってんのかな……」

 

意味不明なことを呟きながら転移結晶を用意するリズベットから目線を外し、前を見据えると山からまるで噴火した火山のように火が噴き出す。

 

「キャアッ!」

 

「どっか掴まっとけよ〜」

 

軽い感じに忠告しておき、山が動いていると錯覚しそうなほどに激しい揺れに備える。

――――と。

 

「グオァァァォォアアアッ!」

 

まるで山全体に轟かせんと響く轟音。その振動によってかは判らないが、火の粉がパチパチと当たるがやはりダメージはない。

「来るぞ!」

 

呼び掛けた通りにこっちに突進してくる紅い影。さすがにこれを受け止めるのは不可能なため、リズベットを抱えてその場から離脱する。

 

「ちょっ! あんたなにすんのよ!」

 

「黙ってろ! さすがに死にたくはないだろ!」

 

むしろ死ぬことより俺に抱えられることの方が嫌だとか言われたら、俺が精神的に死ぬ。材木座並みにキモい声を出して死んじゃう。

ドラゴンが地面に激突して散弾の如く飛び散った石の破片は《スピニングシールド》で防ぎ、相手が自滅して動けないでいる間にリズベットをまた岩の陰に隠す。

 

「いきなりとかスゲェ驚いたぞこの野郎」

 

いくら索敵スキルを発動させてなかったからといって、ここまで不意を突かれたのも稀だ……が、逆に言えば、不意を突くことに長けているやつは不意を突かなければ勝てないということだから戦闘能力が欠けている。

 

「ギギャアァァグアァッ!」

 

周りの火よりも遥かに赤い焔が視界を覆い尽くす。後ろにはリズベット、避けられない。

 

「チッ……」

 

数少ない広範囲攻撃迎撃用武器防御スキルを使い、相手のブレス(多分)を霧散させる。

 

「……攻略組って、どいつも化け物みたいなやつなの……?」

 

後方から不本意極まりないことが聞こえてきたが今はスルー。多分タンクならこのくらいは防げると思う。ダメージディーラーだと……判らんけど。

鉄が赤熱しているかのような赤銅色をしている鱗……いや、あれは岩石か? 俺と同じくらい大きい岩が何百個か無理矢理くっついて龍の形作っているようでかなり歪だ。

 

「ああいう敵には衝撃とか打撃が効くと相場は決まってんだが……まぁ、なんとかなるか」

 

見たところレベルは七十ちょいらしいし、俺でも充分なダメージは与えられるはずだ。

俺が初撃に選んだのは《ソニックリープ》。時間を跳躍したかと見間違うほどのスピードで肉薄し、ライトグリーンの光が発せられる剣を振り下ろす。

 

「うっそ〜……」

 

うっそ〜……俺も驚いた。まさか片腕もげるとは……。腕とかを最低限に曲げたり、他にも色々工夫したから速さはそれなりだと思うけど、え〜……。

 

「脆……」

 

いや、俺のメンタル並みに脆い。雪ノ下の口撃が物理化したら一発K.O.されるんじゃないんだろうか。でも俺は口撃に耐えてるからあっちのほうが脆いな、うん。

右手の剣をペン回しするように弄びながら前を見据えると、超次元サッカーならぬ超次元バスケのなかでも限られたものしか入れない……要は集中力百%状態みたいに眼が光っていた。つくづく思います。火○君は、誠凛のエース()だと。……ドラゴンは○神君じゃないけどね!

アホなことを考えながらもしっかりと剣を構え、隻腕の龍との第二ラウンドに備えた。




ちなみにリズベット編の後は、原作に出てきたけど触れられていないあの戦いです。八幡のユニークスキルもそこでお披露目!

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