そして偶然、八月八日はSAO十六巻、アリシゼーションエクスプローディングが発売しますね! いいねいいねェ、最ッ高だねェ!
最近八幡のSAO装備のイラストを描いたんですが、下手すぎました(笑)
だれか、おらにイラストをわけてくれェーッ!
「武器作製ィ? 今棚に飾ってある剣じゃダメなの? あたしの最高傑作よ!」
自信満々に差し出される一振りの剣。キリトと「どっちが先に持つ?」とアイコンタクトをし、結局柄に近い位置に立っている俺から持つことになった。
「軽ッ。これじゃ
小声でボロ剣などと言ってしまったが、ヒュン、ヒュンと、明らかに軽い感じの空気を切る音が聴こえたら不安にもなる。せめてブンブンとまでは行かなくとも、ビュンビュンくらいまでは行ってほしかった。濁音をつけると重い感じがするのってふしぎ!
軽い剣は俺のビルドからも相性がいいし、嫌いではないが、ソロで戦う以上耐久力はできるだけ欲しい。それに基本的に軽い剣は一撃の威力も落ちるしな。
大体感触を確かめ、好みに合いそうにないなと結論付ける。キリトは俺なんか比にならんくらいにストレングス要求が高く重い剣を好むから、多分お気に召さないだろう。
「うん? うーん……」
ちょ、キリトさん? いくら耐久度チェックしたいからって、魔剣と軽く当てちゃダメでしょ? 最高傑作がガインガイン言ってるよ? 鍛冶屋は鍛冶屋で、「アタシの剣が折れるわけない」みたいな顔してるし。折れちゃうよ? 最高傑作折れちゃうよ? もうそれはゼット○ードとか天鎖○月みたいにポッキリ。
「き、キリト。一応それ売り物だからな?」
「あ……」
左手に握る売り物の剣を見つめ、いきなり肩を組んだと思うとひそひそ話並みに小さい声で話してくる。ふえぇ、耳がくすぐったいよぉ……。
(ど、ど、ど、どうしよう、エイト!? ちょっと欠けちゃった、刃毀れしちゃったよ!)
(バカ野郎! だからエリュシデータをぶつけるなって言ったんだ!)
(いや、言われてないよ!)
(言ってなくとも俺知らね。関係ないし、なんもやってないし、ちょっと剣を振っただけだし)
(それはないよ! 私達は一蓮托生でしょ!?)
(知らん。うまい言い訳でも考えてくれ。シャトルは切り離し作業に移ってるんだ)
(言い訳はエイトの専売特許でしょ?)
(その言葉でお前が俺を言い訳製造マシーンって思っていることがよく解ったよ)
我関せずのスタイルを保つことにした俺を見て助けは望めないと判断したのか、嫌な汗を掻いて元々白い顔をさらに白くしていた。諦めたらそこで試合終了だから、断固たる決意を決めて鰈のように泥にまみれて頑張りなさい。……名言を複合するとありがたみがなくなるな……。
とは言え、この生殺しみたいなシチュエーションはさすがに居たたまれない。というか、ウェイター(仮)さん? あなたなんも話しかけてこないから、その笑顔が逆に怖いんですけど。
「あ、あのー。ち、ちょっと、好みに合わないかな〜、なんて……」
なんで俺が気を遣ってフォローをせなあかんのや。似非関西弁なんて使ったら関西人が怒るぞ。使ったの俺だけどな(心の中で)。
「ふぅーん? どこらへんが気に入らないのか言ってくれる?」
自分の最高傑作を貶められた憤慨よりも鍛冶屋としての向上心が勝っているようで、若干眉を寄らせながらも訊いてくる。
「あぁ……まず一つ。これは個人的趣味だが、軽い。まぁ、回避主体の戦い方をするやつなら問題ないだろうが……」
(……エイトにピッタリじゃん)
黙れ。俺だって軽すぎて頼り甲斐がない剣を好き好んで使いたくないわ。むしろ人生に於いても嫁さんに頼りきって天寿を全うしたいわ。
「で、二つ。これは軽い以上仕方ないが、威力がない。細剣みたいに点の攻撃で弱点を突くとかならまだやりようがあるが、面で攻撃する片手剣はそんなことできないしな」
「ふぅん……。他にもまだあるの?」
「あと一つだけな。最後。脆すぎる。これは致命的だ。さっきも言ったように、攻撃回数を少なくしたウィークポイントアタック特化の細剣ならそれでもいい。けど……」
「急所を狙いにくく、広い範囲で攻撃する片手剣じゃ以下略、ね」
あとこれは機能に関係ないが、光沢が激しい。鈍い感じに光るのが個人的には好みだ。目立ちたくないしな。
「……と、言うわけで……ちょっと、欠けちゃった」
「ハアアァァァッ!?」
耳をつんざく絶叫。もはや新たな攻撃用スキルと思うほどの音響が工房内で反響する。
聴覚が一時的に殺られ(割りとマジで)、気のせいだろうが心なしか頭が痛くなってきたと感じていると喧嘩上等の番長よろしく胸ぐらを掴んでくる。
「なにしてくれてんのよ! 仮にも人の最高傑作を!」
「落ち着けよ、別に折れた訳じゃないから、修復できるから! それに簡単なことで欠けるくらいに柔いこの剣が悪い!」
鍛冶神に恋慕を抱く唯一魔剣造れるレベル2の冒険者も言ってただろ? 『使い手を残して壊れる魔剣を造るのは好きじゃない。俺は間違っていない。だから魔剣を造らないのはいいことなんだ』って。……途中から違うな、うん。
「ふふふ、ふざけんなぁー!」
「あぶねっ!」
戦鎚を振るってくるので、膝と腰を曲げ低い姿勢になり躱す。こうやって攻撃を避けられるのを実践すると、この一年半で反射神経とか動体視力が鍛えられているのが実感できる。見える、動きが見える! ア○ロ、行きまーす!
「ちょ、やめ、キリト、たす……」
「フンッ、フンッ、フンッ!」
現実だったら間違いなく人を撲殺できる戦鎚が顔に迫ってくるせいで反射的に避ける。ヤバい、ボス戦でこれ以上のサイズのハンマーは見たことあるが、現実でもまだあり得る大きさという要素が恐怖心を煽ってくるんだが……。実際剣を欠けさせたのキリトなのに。
……仕方ない。
「南無三……」
雷のごとく一瞬だけ煌めいた俺の剣が残したのは、一閃の余波による突風と轟音、そして……鍛冶屋の手から儚げに散っていく鎚だった。
「ア、アアァ……」
絶望。からの茫然自失。千尋から千になって、さらに千から千尋になった神隠しの映画に出てくる顔がない黒いやつみたいな声を上げ、膝から崩れ落ちた。ぶっちゃけ鍛冶屋としての顔無しである。要は面目丸潰れ。
さすがに
「ふ、ふふ……。解ったわよ、やってやろうじゃないの。あんたの剣がポッキーみたいに折れるほどの名剣を造ってやるわよ!」
半ば……いや十割ヤケクソ気味に怒鳴り散らし、仮にも俺の愛剣がポッキーになる剣を作ってやると豪語されては黙っていられない。そのうち始解ができるまである。
「ハッ、最高傑作(笑)が何回かキリトの剣に当たったくらいで欠けるなら無理だな」
ブチッ。ブチ……ブチ? なんだブチって。おおよそこの世界でもあっちの世界でも出ちゃいけない音だよ?
(……エイト、十分後に生きて会おうね)
キリト、なんで俺の死を匂わせる言葉を言った? デスゲームである今の環境と、目の前にいるヤバい形相をしてる鍛冶屋が揃ってる今の状況じゃ洒落にならん。
「ふふふ……」
「ははは……」
獲物を狙う狼のごとく鋭い眼をし、ユラリユラリと近づいてくる名も知らぬ鍛冶屋。キリトはいつの間にかいない。
類は友を呼ぶ。なるほど、やはり鬼の友達は鬼だった。
さすがキセキの世代エースを有するバスケ部主将の言葉だけはある。確かにことわざは趣味で作られているわけじゃないわ。
「……出直してきます」
そして鬼が顕現したときの対処は三つ。逃げろ。捕まったら土下座しろ。隙があれば迷わず逃げろ。間違っても抵抗はするな。あ、これじゃ四つだ。いや、同じことを二回言ってるから三つだな。
思考を割くかのように拳が飛ぶ。
容赦なく顎に当たる。
俺が宙を飛ぶ。
俺の意識も飛ぶ。
……なんで、アッパーカットなんて知ってんだよ……。
最近、バイオレンスなことが多い気がする。
意識が覚醒したときに第一に思ったことがそれだ。
どこぞのラノベみたいに、起きたら気絶前の記憶が消えているなどあるはずもなく、あとに残ったのは強制的に眠りにつかされる恐怖だけだった。ヤベェヨ、イママデトハチガウイミデ、ジョシッテチョウコエェヨ……。
「ん、あれ? あいつらが消えた……」
どうやら気遣いの欠片もなくそのままの状態で商店で気絶していたらしいが、ピンクと黒の色はもうない。武器作製のための素材でも獲りに行ったのだろうか。
こうなっては仕方ないから、出直すか……。
……それにしても、あのパンチ速すぎだろ……。
結局、キリト&鍛冶屋(どうも店主らしいので、恐らく名前はリズベットだろう)が戻ってきたのは翌日だった。
キリトもいる原作沿いだと思った? 残念、置いていかれてからのオリジナルでした!