いや、今回は勉強の合間や気分転換にちょこちょこ書いてたんですけどやっぱり遅いですね(笑)
さっさと受験終わって、さっさとSAOその他シリーズ終わらせてアリシゼーション編に行きたいです(笑)
さて、近況と願望を言った後の、約一週間ぶりの第六十四話、どうぞ!
視界右下の時計が、午後二時になったことを指し示す。
普段なら、午前中の攻略を終えた攻略組が、昼飯を食べた後の迷宮区攻略午後の部を開催している頃だろう。
そして俺は、迷宮に向かうプレイヤーを
不真面目な俺と、基本真面目だがおおらかなキリトはいいが、最近は鳴りをひそめていたが、《攻略の鬼》とまで言われていた《閃光》様の胸中やいかに。
俺がそんなことを考えているとは知る由もない副団長は、キリトと一緒になんかの店を冷やかしたり、どこに続いているか判らない暗渠を覗き込んだり……なんか深淵っぽいな。
そのくせ俺がため息を吐くと、「どうかした?」みたいな眼で見てくるときたもんだ。「お前本当に最恐プレイヤー、《攻略の鬼》と言われてたアスナ?」と思わず訊きそうになったが、恐らく黒歴史であろうその地雷を踏んで、また幽鬼阿修羅モードにでもなられたら目も当てられない。
これは余談だが、最恐はアスナ、最強はヒースクリフ、最凶はPoh、最驚は俺らしい。語源は影が薄く、いつの間にかいて驚くからだそうだ。……俺は黒○なの? 影になっちゃうの?
「どうしたの?」
いや、お前がどうしたの?キャラ変わりすぎだよ?
そう言いたい衝動をグッと堪え、開きかけた口を無理に閉じたため、引きつっているであろう顔で首を横に振る。
「変な人。今に始まったことじゃないけど」
「バッカお前、俺ほど普通な人はいないよ?戦うときもヒット&アウェイ、超安全性重視な戦い方だろうが」
「エイトの場合、10ヒット&アウェイだと思うけどね……」
いや、しょうがないでしょ?
実はクラインみたいにカタナスキルで一撃一撃が重い攻撃にする方針にしようとしたことが無いわけでもないが、スキル熟練度の問題もあったし、何より片手剣――正確には片手用直剣――は使いやすい。
まあ、その要因となったのが、中二病時代に剣のレプリカを振り回していたから馴染みがあったからというのが、何とも言えないな……
もちろんそれ以外の理由もある。主武器を変更すると、《
二つ目は――これは俺がソロプレイヤーのことが原因だが――ソードスキルを使うタイミングがよりシビアになるからだ。
短剣は一撃の威力が軽い代わりに、手数が多く、ソードスキルにはMobをデバフするという付随効果があるが、デバフレジストがある相手に遭遇したら太刀打ちできない。対してカタナは手数が少なく、一撃が重い。――故に、技後硬直の時間も長いのだ。それはソロプレイヤーの俺にとって、あまりよろしくない。
だから俺は間をとって片手剣にしている、というわけだ。まあ、だからと言って、片手剣の一撃がカタナ程重いというわけでもないから、手数でダメージを稼いでいるのだが……
ちなみに俺と同じ片手用直剣を使っているキリトは俺とは違い、手数重視より一撃重視だ。同じ武器と言えども、プレイスタイルはプレイヤーによって千差万別というわけだ。
などなど脳内武器辞典を開いている間に転移門広場の喧騒が近づいてくる。ホーム買うときは、絶対に人里離れた……とまでは言わなくとも、静かな所にしよう……と、俺が改めて決意した瞬間だった。
「……さて、これから、シュミットに、話を、聞くわけ、何だけども……」
正直気が乗らないどころの話ではない。テンションダダ下がりである。その証拠に気分が声にも出ている。ただでさえ働くのが嫌なのに、聞き込みとかマジ罰ゲームにござる……
「もうちょっとやる気出そうよ、エイト……」
ならどこにやる気が出せる要素があるのか教えて欲しい……
「どこにやる気出す要素があるんだよ……」
Q.DDAのプレイヤーに話を聞くのに、テンションが上がる要素はありますか?
A.いいえ、ありません。皆無です。
はい、証明終了。というわけで、
「というわけで俺、帰っていい?」
「どんな起承転結があって帰っていい結論になったのよ……」
「俺、シュミットと話すの嫌だ→なら帰ってしまおうという結論に至りました。というわけで帰っちゃ……ダメですよね、すいません」
へ、へへ。そんなマジになんなよ、冗談だよ。
悪口を言っていたことを問い詰めると半分の確率で返ってくる常套句を心の中で呟く。ちなみにもう半分はしらばっくれ。
「でも、この時間ってDDAも狩りに出てるんじゃないの?」
「ハッ、それはないな」
アイツがそんな図太い神経を持っているとは思えん……いや、アイツのことなんか知らないけどね?
「なんで?」と言っているように小首を傾げる《黒の剣士》と《閃光》に、つらつらと説明を始める。
「いいか? まずアイツが知っている情報を整理するとだな、《被害者がカインズである》ことと、《凶器のショートスピアの作成者がグリムロック》であることは、多分アイツも武器鑑定して知っているだろうな」
二人が頷いてここまでは理解していることを確認しながら言葉を続けた。
「で、カインズ、グリムロック……アイツからしてみれば、この二つの名から思い浮かぶのは、当然《黄金林檎》だ。しかも指輪売却に反対したカインズが殺された……しかも圏内で殺されたと知っているなら、シュミットはどうすると思う?」
「そう言われると、街にいてもPKされるかもしれないから……」
「だからこそ、最大限の安全を確保しようとするでしょうね。となると宿屋に閉じこもるか、あるいは……」
「あるいは《籠城》するか、だね。DDAの本部に」
はい、よくできました。百点……いや、八万点満点です! ……言いにくいし桁多いな。
三大ギルドの一角《聖竜連合》が五十六層に本部を構えたのはつい先日のことだ。何の意地なのかは知らんが、《血盟騎士団》が居を構える五十五層の一層上なのは決して偶然ではないだろう。初めてこの建物を見た、お情けで呼ばれた披露パーティーでは《ホーム》と言うよりかは、《
俺を無理矢理パーティーに参加させたキリトが食い過ぎた――正確には過剰な味覚信号が入力された――せいで異常な満腹感に襲われて歩けないと言ったときにはわりと本気で悩んだものだ。
キリトにとっては飽食ならぬ嘔食の館だからか、建物を見ている眼は若干虚ろになり、顔も青ざめているように見える。だがアスナには関係ないらしく、赤レンガでできた坂道を、自分の領地だと言わんばかりに登っていく。
銀の布地に青のドラゴンの染め抜きされているギルドフラッグを見ると、どっかの軍事国の所有物みたいだな……と思ってしまう。
白い尖塔群を見上げ、この要塞はいったいいくらするのか……と、わかるはずもない予想をして遊んでいると、同じことを考えていたのかキリトがぼやく。
「それにしても、いくら天下のDDAって言っても、よくこんな物件買えたよね……」
「まーね、DDAは
「ほお……(へぇー)」
関西弁が上達してるな……最後に聞いた時は、全く抑揚がなくて棒読みだったのにな……
ファーミングスポットというのは、Mobを高回転で狩り続けるという意のMMO用語だ。しかしその場所で発生した時間辺りの経験値が閾値を超えると、この世界のシステムの神――《カーディナル・システム》の手によって下方修正されるのだ。
ゆえに俺達が優秀なファーミングスポットを見つけたときは公平を期すために場所を公開するのが暗黙のルール……と言うよりマナーなのだが、さっきアスナが言っていたように隠すやつもいる。
もちろんその行為はモラルに欠けるが、人が複数存在する以上平等なんて言葉は眉唾物だし、結局は攻略組全体の戦力で見れば総合値が上がることは間違いないので、一概に悪いことばかりとは言えない。
つまるところ、これはエゴなのだ。誰よりも強く、上でありたいという競争本能。本能は誰しもが持っているものだから、人は皆エゴイストと言える……じゃあ皆で合唱しよう、ギルティ○ラウンの歌! ……あれは合唱するもんじゃないな。大人数で『世界は終わりを告げようとしてる』とか『もうあなたから愛されることも、必要とされることもない』とか合唱したら、「なんの宗教団体?」となるな、うん。
それにしても……あれ主人公が報われない話だったな。軽く人生の縮図? とか思っちゃったよ。「いのりぃぃぃーー!」とか「祭ぇぇーーー!」とか「キャロルぅぅぅぅ!」って叫んだのを親に聞かれて、「やっぱ千葉は海苔だよな!」とか「明日は晴れだな!」とか「キャラメルうめえぇ!」とか苦しい言い訳しちゃいましたよ……
最終的に綾瀬ルートとかの説が出てきたけど、実際はどうなんだろうな……て言うかこの坂、こんな無駄なことを長く考えながら歩いてるのに未だ入り口に着かないとか長すぎません?
次回!『シュミットからの事情聴取』です!