ソロアート・オフライン   作:I love ?

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圏内事件がOWARANEEE!こんなんじゃまだ募集しているアリスに関してのアンケート、いつ募集終了するんだ……
この調子じゃ受験もあるし、SAO編すら今年に終わらないな……と半ば諦めながらも書いた第六十二話、どうぞ!




あ、まだアリスのアンケートは募集中です。要望がある場合もそこに書いてください。


やはり底が知れない人物は、比企谷八幡の警戒の対象である。

俺がオゴる(という設定)はずなのに、なぜかキリトが案内して辿り着いたのは、どこから見ても胡散臭いとしか言いようがないNPCレストランだった。

迷宮区よりも入り組んでいるとさえ思える隘路を右へ下へ左へ上へと五分ほど歩いてようやく着いた薄暗い店を眺め、アスナが言った。

 

「……帰りもちゃんと道案内してよね。わたしもう広場まで戻れないよ」

 

「キリトに頼め、キリトに」

 

俺も一ヶ月半前くらいに迷ったんだよ。というか、ここまで案内したのキリトだし。

 

「その場合は、道端のNPCに頼めば、10コルで広場まで案内してくれるのだ。その金額すら持っていない場合は……」

 

両手を持ち上げ、すたすたと店に入っていくヒースクリフを見て、アイツも道に迷ったことがあるのか?などと考えながら、ヒースクリフの後に続き、二番目に店に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

汚く狭く暗い店内は、どこか現実世界で行ったことがある古いラーメン屋を彷彿とさせる。そこのラーメン屋の味は……老舗と古い店は紙一重、とだけ言っておこう。

つまり、このラーメン屋(ラーメン屋かは知らないが)は、あまり美味くないだろう。……いや、見た目で判断するなと言うし、俺だってさんざん悪口を言われる腐った眼をしているけど、心は清み渡った清水みたいに綺麗だしね!

《アルゲードそば》なるものをキリトが四人前注文してから、周りに水滴が付いているコップを傾け水を飲む。(行ったことないけど)節乃食堂のお冷やには及ばないな……凄い飲んでみたい、エアアクア。

 

「なんだか……残念会みたくなってきたんだけど……」

 

「祝勝会も残念会も認識の違いだろ。食って飲んで騒いで疲れて散財するのは一緒なんだからな」

 

「うわあ……エイトの打ち上げ、凄い楽しくなさそうだね……」

 

「甘いな、打ち上げなんて一回行ったら、もう誘われなくなったわ」

 

「「……」」

 

おい、そこで黙るんじゃねえよ、打ち上げなんてものに行って、金払って黙々と隅っこで飯食うくらいなら、小町と一緒に小町の美味い飯食う方が百倍……いや、打ち上げはマイナスだから、×(−百倍)くらいいいわ。

 

「……そんなことよりも、多忙な団長様のためにさっさと用件を伝えた方がいいんじゃないか?」

 

皮肉にも聞こえる強引な話題転換。やっぱりあれか、無理に喋ろうとしたことが致命的な失敗だったか。

昨夜の事件のあらましをアスナが簡潔かつ解りやすく説明している間に、何が致命的な失敗だったかを考え、全部だったことに気づいてしまう。

態度……キョドっている。口調……噛みまくり。顔……にやけている。スリーアウトチェンジ!

俺が脳内野球で攻守交代していたら、どうやら説明が終わったようだ。

 

「……そんなわけで、ご面倒をおかけしますが、団長のお知恵を拝借できればと……」

 

恐らくだが、この四人……いや、アインクラッドで一番博識なのはこのヒースクリフだ。……何それ、SAOプレイヤー最強で最強ギルドの団長なのに博識とか、どんなハイスペック?もはや廃スペックだろ……じゃなくて、そのハイスペックさのせいなのか、こいつは雪ノ下さんと同じくらい……いや、もしかするとそれ以上に底が知れない。故に俺はこいつを信用していない。大魔王を越える存在……魔神だな。神聖とはほど遠いわ。

俺がそう評価を下している男は、氷水を再度口に含み、ふむ、と呟いた。

 

「では、まずエイト君の推測から聞こうじゃないか。君は、今回の《圏内殺人》の手口をどう考えているのかな?」

 

話を振られ、先ほどのヒースクリフと同じように水を飲んでいた行動をやめる。

 

「……一つ目は、可能性は低いが、圏内デュエルによるもの。二つ目は、何らかのシステムの組み合わせによってできた抜け道によるシステム的ロジック。三つ目は……アンチクリミナルコードを無効化する何らかのアイテム、もしくはスキル」

 

四つ目のカインズはそもそも死んでいないという可能性は言わない。不確かな希望は、より大きい絶望を与えるだけなのだから。

 

「三つ目の可能性は除外してよい」

 

断言したヒースクリフに疑わしげな眼を向けるが、無表情な真鍮色の瞳からは何も窺い知ることは出来なかった。

 

「……断言しますね、団長」

 

「想像したまえ。もし君達がこのゲームの開発者なら、そのようなスキルなり武器を設定するかね?」

 

「ま、しないな」

 

「何故そう思う?」

 

隣に座っているKoB団長の小、中学校の先生が生徒にするような問いかけ方で訊いてきたこと問いを、コップを見つめながら答える。

 

「まあ、そりゃゲームである以上、公平(フェア)じゃないとダメだろ。チートみたいな違法改造ツールみたいなのを使って不公平(アンフェア)になったら、MMOはゲームバランスが崩れる。……まあ、そんなことが出来る(違法改造ツールが使える)なら、とっくにアインクラッドは百層まで攻略出来ているけどな」

 

水を飲んで一息吐き、最後に付け足すように言う。

 

「……ま、ゲームバランスを崩すっていう意味なら、あんたの《ユニークスキル》……《神聖剣》もそうなんだがな」

 

実際あのユニークスキルはゲームバランスを崩している。ここ五十層……つまりクォーターポイントのフロアボスの猛攻を何分も一人で凌げる奴は、今のレベルのままの壁戦士(タンク)でも一人では防げないだろうから、このヒースクリフの他にいない。

嫌みを込めた笑いを、同種の笑いで返してくる。少し焦るが、いくらKoB団長と言えども、他人のスキルスロットを覗けるはずがない。当然、俺の《奥の手》を知っているはずがないのだ。

お互いの腹の内を探り合うかのように笑いを応酬していると、アスナがため息を吐きながら俺達を順に見やり、口を挟む。

 

「どっちにせよ、今の段階で三つ目の可能性云々を考えるのは時間の無駄だわ。確認のしようがないもの。てことで……仮説その一、デュエルによるPKから検討しましょう」

 

「よかろう。……しかし、料理が出てくるのが遅いな、この店は」

 

「……まあ、ここの店の店主NPCは、私の知る限り一番やる気がないからね。そこも含めて楽しんだ方がいいよ。水はお代わりし放題だから」

 

キリトに言われた通りに楽しむことにしたのか、水差しからコップに水を注ぐヒースクリフを俺は見ていた。

 

「今までの通例からいくと、圏内でHPがなくなるのはデュエルだけだが……まあ、可能性は限りなく低いだろうな」

 

「ほう、何故かね?」

 

その声音は、どうしてそう思うかを自分が解らないから聞きたいのではなく、何故自分と同じその答えにたどり着けたのかを答え合わせをしているようだ。

 

「……まず目撃者の証言を信じるなら、カインズは飯を食いに来てたらしいし、見失ってから数十秒で窓から吊るされていたらしい。そんな速攻決着デュエルがあるとは思えない、余程のレベル差がない限りな。それに被害者の抵抗も無さすぎで色々おかしい点がある……更に、あの大人数で探して広場にも教会の中にもウィナー表示窓が見つからなかったことから、デュエルの可能性ほぼないだろうな」

 

「うむ。それにウィナー表示が出る位置は、決闘者ふたりの中間位置、決着時に十メートル以上離れていた場合は双方の至近に表示される。つまり……」

 

「……つまり、少なくともカインズから五メートル弱の位置にはウィナー表示が出ていた、ってことでいいんだな?」

 

声を遮り、言葉を紡ぐ邪魔をしたのにもかかわらず、嫌な顔どころか表情筋すらピクリとも動かさず、肯定する。まるでロボットのようだ。

自分でも何の感情から来たのか判らない若干ヒクついた笑いを、KoB団長様はどう解釈したのか、再び笑みを向けてくる。二度目の笑いの応酬……いや、牽制の方がこの状況では正しいのかもしれない。

「「(あの二人、仲良さそうだなぁ……)」」

 

全てを見透かされそうな瞳から視線を外し、正面に体を向けると何やら不満そうな眼を向けてくるので、その視線から逃げるためにまたもコップに視線を移す。……俺、何も悪いことしてないよな?

 

「……まあ理由はどうあれ、結論としては圏内殺人はデュエルによるものじゃない、ってことだ」

 

長々とグダグダ喋ってしまったが、一言で言えばそう言うことだ。

だから、話が長くなったのは謝りますから二人とも、その眼をやめてください……

 




次回!(今回も昼食はしていなかったので)『続・検討&昼食』です!

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