さて、今日『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』10・5巻読みました。いろはす巻でしたね。表紙もいろはすですし。
是非皆さんもお読み下さい!と宣伝してみたりします(笑)
そんな宣伝は置いといて、フィリア編第三話、全体で第四十六話、どうぞ!
既にマッピングを完了していた金窟を踏破し、金廊に足を踏み入れたのだが……フィリアに振り回されて疲れました。
いや、だって、トレジャーボックス見つけたら走っていくんだぞ?護衛の身としては辛いことこの上ない。
「ごめんなさい……ついテンション上がっちゃって……」
それ聞いた。
「いや、別にそれはいいが、一言言ってくれ。護衛がしづらい」
いきなりダッシュされると驚いちゃうし。
「はい……」
フィリアも反省はしている様なので、これ以上言う必要もあるまい。
「いや、まあ、反省してるならいいんだが……ッ!止まれ」
「え?」
右手を出して静止させる。発動させていた《索敵》スキルで、モンスターが近くにいるのを感知したのだ。
このダンジョンでは、ゴブリンやコボルド、オークやトーラスなどの所謂亜人系Mobが多い。例外はトレジャーボックスに擬装しているミミックくらいである(俺がヒヤヒヤする原因もここにある)。
今回はトーラスであるようだ。名前は《バーサク・ブル・アックス》……暴れる牛の斧、と言ったところだろうか。
「いいか?一応確認しておくぞ。俺達は二人とも敏捷寄りのビルドだ。片手武器なら兎も角、五十層クラスのMobの両手武器は筋力値が足りずにパリィすることが出来ない。だから……」
「防御方法は基本回避、危なかったら武器で受け流して、片方のHPが危なくなったらソードスキルで攻撃してタゲをとる、だよね?」
しっかり覚えていたみたいだ。俺はああ、と答える。
「んじゃ、行くぞ」
「うん!」
今回の相手はトーラス……牛人間で、禍々しい、鹿のように捻れた角と、褐色の顔に鼻についている金色の輪。顔と同色の筋骨隆々の体に、黄色の腰巻きと、見るからに攻撃力が高そうだ。
フィリアは飛び出し、俺はダガーの投擲体勢に入る。
投剣スキル上位剣技《ミーティア・シュート》。このスキルは敏捷力が高ければ高い程威力が上がるため、かなりお気に入りだ。
ただし、欠点もある。威力、速度という点では文句はないが、速度が速すぎるがためか(そもそもSAOに現実の物理法則が当てはまるのか解らないが)、投擲する物自体がそれなりに性能が高くないと敵に着弾する前に燃え尽きてしまうのだ(正確には耐久値がなくなる)。
今は最前線のダガーを使っているため大丈夫だったが、最前線がどんどん上になるにつれて俺のレベルも上がり、それに伴い敏捷力もどんどん上がる。敏捷力に比例してミーティア・シュートの威力と速度は上がるので、装備と同様、投擲武器も更新しなくてはならない。
欠点が多い流星は、偶然後ろを向いた牛の後頭部にクリーンヒット。
バックアタックだからか、いつもより多いダメージ量にラッキーと思っていると、牛がこちらを振り向くが、既にフィリアが懐に潜り込んでいる。
牛男の腹に四連撃スキル(名前は知らない)を喰らわせる。
牛男の腹には赤い点が四つついており、線で繋げば正方形になるようなところにあった。
「スイッチ!」
技後硬直から立ち直ったフィリアがバックステップ。《ヴォーバルストライク》を発動させ、入れ替わるように前へと突進する。
俺のヴォーバルストライクは、二メートル程もある巨大な体を持つ牛男の胸にヒット、攻撃が当たっても突進の勢いは緩まず、牛男を吹っ飛ばす。
「ブルモオッ!!」
情けない声を出して吹き飛んでいく牛男を硬直体勢のまま眺め、再びスイッチする。
フィリアは今度は短剣の二連撃スキルで牛男を攻撃、HPを余すことなく0にした。
「ふう……」
攻撃を喰らうどころかさせてもいないから当然HPバーは減っていない筈だが、つい戦闘後には確認してしまう。これは一年以上の歳月で染み付いた、謂わば癖みたいなものだから仕方ない。
見ると、フィリアが片手を挙げている……何で?
「ハイタッチだよ、ハイタッチ」
「ああ……」
触れた瞬間「菌がついた!」とか言わないよな……
ズボンのポケットから右手を出してハイタッチ、
鈍い黄金色に輝く回廊にパァン!と手と手がぶつかる音がした。
「よーし、じゃあどんどん行こう!」
「え……ゆっくりがいいです……」
「でも、まだ六十層クラスの武器出てないよ?」
「そうなんだけどな……」
そうなのだ。今までにドロップしたのはせいぜい最前線クラス。これでも充分強いのだが、六十層クラスの物はまだ出てない。
そもそも情報がデマだったんじゃないかと思い始めた時、前方に三メートルはあろうかという巨大な二枚扉があるのが目に入った。
「なんだろう……あれ」
「普通に考えたらボス部屋……か?」
どうする?という視線をフィリアが向けてくる。
「……ここまでもう一度来るのもめんどくさそうだし、覗くだけ覗いてみるか?」
「そうだね」
別にやる必要はないのだが、緊張から抜き足差し足忍び足になってしまう。
扉に手をあて、軽く押すとゴゴゴゴゴゴ……という音をたて、ゆっくりと開いていく。
案の定ボス部屋だったそうで、奥に巨大なシルエットが見えた。
転移結晶を手に持ちながら部屋に入ると――広い。二十メートル四方くらいだろうか。
壁にある松明が奥へと火が灯っていくのは、一層のコボルドロード戦を思い出させる。
と、その時シルエットが動いた。壁に立て掛けてあった装飾が派手な金色の両手剣を手に取ると、こちらにノシノシと近づいてくる。
目を凝らしカーソルを合わせ、名前とHPバーを見る。HPバーは二本、名前は……《ザ・デューク・オブ・デミヒューマン》とあった。
顔は牛で角もついている。防具はオークが着ているような物で、リザードマンの様な尻尾に、全身鱗で覆われていて体色はゴブリンの様な緑色と色々な亜人が混ざっていて、デュークと言うよりただの出来損ないに見える。
「気持ち悪……」
「……同感だ……」
人体実験でもしたのか?と言いたくなる容貌である。怖いものと怖いものを足せば更に怖くなると思っている様なスタッフが創ったんじゃないだろうか。
「ブルワアァァァァッーーー!!」
迫力はあるが、イマイチカッコ悪い咆哮をしてこちらに突っ込んでくる。
お互い左右に分かれて回避、振り向いて通常攻撃をするが鱗があるためかそこまで効かない。
「チッ」
益々コボルドロード戦に似てきた展開だ。こうなるとメインアタッカーはフィリアになる。
「フィリア!コイツにはあまりダメージが通らない!だから、お前の短剣スキルを使ってデバフをかけるぞ!」
「了解!」
短剣スキルの強みは手数もさることながら、様々なデバフにかけられるという付随効果があることだ。
今回は麻痺などの動きを止めるデバフはあまり意味がない。効果的なのは毒や出血といった持続ダメージを与えられるデバフだ。
フィリアもそれは理解しているのか、五連撃スキルを亜人王に喰らわせると毒になった。
技後硬直で動けないフィリアに、亜人王は両手剣を降り下ろすが、ただの通常攻撃なので俺のソードスキルで相殺をする。
ノックバックした亜人王に技後硬直が解けたフィリアは、今度は四連撃スキルを叩き込み、出血状態にする。これで二重デバフだ。
……どうやらこのボスは防御力は高いがデバフレジストが低いようだ。
ボスのソードスキルは避け、通常攻撃は俺が相殺し、出来た隙でフィリアがソードスキルを叩き込み、デバフをかけるという戦闘を三十分ほどしていると、俺のヴォーバルストライクがクリティカルヒットし、亜人王は爆散した。視界にラストアタック・ボーナスを取得したとのメッセージが映る。
またもやフィリアが手を挙げているためハイタッチ、フィリアがラストアタック何だった?と訊いてきたのでオブジェクト化する。
アイテム名は《ダークスカイ・ネックレス》というらしい。見た目は暗い空の色の宝石が、紺色の金属に埋まっている様にはまっている。
……第一印象が灼○のシャナのアラス○ールじゃね?って思ったのは仕方ないだろう。……形状がすごい似てるし。
「うわあ……綺麗……!」
男である俺には全く解らないが、フィリアにとっては綺麗らしい。
「あー、その、なんだ、気に入ったならやるぞ?」
「えっ!いいよ、悪いし……」
わざとらしく『私これ欲しーい!』とか言っているのなら俺もやらんが、純粋に欲しそうだからと俺は別にいらんからな。
「……別に俺はいらんから、取っとけ」
「……じゃあ、貰うね?その……ありがとう」
「……おう」
そうやってはにかまれると、妙な気恥ずかしさがする。
そういえば身につけるプレゼントは女子的に重いと小町から言われたのを思い出したが、フィリアが喜んでいるので大丈夫だろう。……多分。
「……さて、このダンジョンも最奥まで来たし、探索終了、か?」
ラストアタックが六十層クラスの装備かと思ったが、性能を確認したところ、あれも最前線クラスだった。
結局六十層クラスの装備なかったなーと思っていると、フィリアから声が掛けられる。
「待って、エイト。あれ……何かな?」
「あ?」
フィリアが指差す方を向くと、何やら光る物体が。目を凝らして見ると、ボス撃破が出現のキーだったのか、デカイ転移結晶があった。
「マジか……」
どうやら、まだまだ俺達の探索は終わらないようである。
次回!『新たなダンジョンの探索』です!