ソロアート・オフライン   作:I love ?

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短いです、すみません
あとがきにちょっとした補足あるので、読んでナニイッテンダ状態になった方は是非見てください
あとガンゲイルのアニメのかれん可愛すぎないですか?可愛いなぁ…


ようやく彼の選択は意味を持つ。

サチに連れられた場所は、一層攻略会議をした広場だった。もう二年前の話なのに、懐かしさを感じない。前までは訪れる度になんらかの感慨をもたらしたはずなのだが。

 

「……ここ、エイトとキリトが初めて攻略会議に出た場所なんでしょ?」

 

「……ああ、そうだが」

 

だからなんだ。

 

「二層では、とある武具屋さんのいざこざにあったんだよね?」

 

「そんなこともあったな」

 

それがなんだ。

 

「三層では…」

 

「なぁ、なんなんだ? さっきから」

 

どこにもそんな要素はない。だと言うのに、どうしようもないほどサチの言葉にイライラしている自分がいることを認めざるを得なかった。どうしようもなく。

 

「……なんでもないよ。ただ、エイトは自分が思ってるよりすごい人間なんだよ」

 

「……すごい? ふざけんな。一層や二層でのことを知ってんなら、もっと最近のことも知ってんだろ? 例えば…」

 

「ラフコフのこと?」

 

正直、怒りを覚えるより先に呆れの息が漏れ出た。一周回って冷静になり、サチってこんなやつだっただろうかと昔のサチを少し思い出そうと頭を働かせる。

 

「知ってるならよくそんなこと言えたな? なんだ、サイコパスか?」

 

「あはは、違うよ。私は……ううん、キリトとアスナさんと私と、エイトの見方は違うだけ。だから……今、キリトやアスナさんがエイトをどんな風に思っているかちょっとだけわかるんだ」

 

どんなことがわかっているんだと意地悪く問おうとしたが、少なくとも人殺しの俺なんかよりサチのほうがよっぽど理解できているのかもしれないと思う自分もいた。今までの流れから、俺から芳しくない反応が来るのだろうと予想していたサチは少し間を開けて続けた。気に障ったらごめんなさいと前置きをして。

 

「……エイトはさ、人を殺したんだよね?」

 

質問というよりかは確認に近い語感で訊いてくる。どうあがいても誤魔化しようのない事実に、掠れた声で肯定するしかなかった。

 

「……私にはエイトの気持ちはわからないよ、なんで人を殺せたのかもどんな気持ちでその決断をしたのかも。……でも、わかることもあるんだ。エイトは意味なく人を殺せるような人じゃないって」

 

俺は何も言えなかった。俺にだってわからない、なぜ自分が人を殺せるようになってしまったのか。わかるのはあそこで何もしなければ、今ここに俺はいないということだけだ。

 

「エイトは優しいんだよ。ロクに関わったこともない私の頼みで、私のメッセージが入った記録結晶をキリトにわざわざ届けてくれたりしてさ。だから、そんな優しいエイトが人殺しなんて怖いことをしたのは、そうせざるをえない状況だったんでしょう?」

 

「それでも人殺しは人殺しだ」

 

サチではなく、自分を戒めるために言葉を被せた。どうしようもないことだったのかもしれない。まちがってはいなかったかもしれない。しかしそれは正しくはないのだ。

だから、次に言われたことに頭を殴られたかのような衝撃を覚えた。

 

「でも、それで救われた人たちがいる」

 

弱々しいイメージだったサチとは微塵も重ならない凛とした声で、断言するような強い口調で、彼女はそう言い切った。まるで正しさを真っ直ぐに持ち続ける彼女のように。

 

「エイトは確かに人を殺したのかもしれないよ。だけど、人の命を奪うのと同時に人の命を救ってるんだよ。キリトや、アスナさんや、みんなの命を。エイトがそんなに苦しんでるのは、命は軽いものじゃないってわかってるからだよね? そうだよ、みんな死にたくないよ、生きていたいよ! 死ぬのは怖いよ! ……でも、人を殺すのだって同じくらい怖いことなんだよね? だからエイトはそんな苦しそうにしてるんでしょ?」

 

そうだ、怖い。怖かった。自分の振るった剣が生きている人間の命を刈り取ることが。それでも、生きるためにはやらなくてはならなかった。それがどうしても言い訳がましく聞こえて、自分をよりキツく縛る

 

「……私はその場にいなかったし、偉そうに言えないけど、死にそうになるのは死にたくなるほど怖いことはよくわかってる。だから、人を殺したことを気に病まないでなんて言えないけど……気づいてほしい。エイトはみんなの命を守ったんだって。きっとキリトやアスナさんもそう思ってると思う。友達が苦しんでる姿を見るのは苦しいんだよ」

 

見れば、サチは涙を零していた。自分の頬を触れば、温かいものが流れていた。ずっと考えていた、俺のしたことは正しかったのだろうかという自問。答えはやはり正しくなかったのだろう。しかし問いに対する別解に、どうしようもない俺の行動が何か意味があったことなのだと教えてくれた。自分をただ責め続ける者の言葉ではなく、自分をただ慰める者の言葉でもない。

俺という人間を断片的にしか知らない者に言われた言葉。前までの自分ならロクに理解をしていない人間に言われたことなんて気持ち悪くて仕方がなかっただろう。しかし、今はただ嬉しかった。

 

「エイトってどうでもいいことには正直で、大事なことには嘘つきだよね」

 

サチは、寂しそうにそう呟いた。より一層の涙を流して。




どうしようもなく嫌なことが起こった時、人は一人称(エイト自身)でも二人称(キリトやアスナ)でもなく三人称視点(サチ)の意見を信じるのではないかと思います。その点で、八幡とあまり関わりがない且つ死ぬということを身近に感じたことがあって、それを怖がるサチはある意味適役だと思いました。
簡単にまとめると、
ラフコフ事件→エイト人を殺す→それを気に病み、精神が不安定に→キリトやアスナは心配しつつもかける言葉が見当たらず、アクションを起こせない→エイトは人殺しの自分がキリトやアスナと関わってはいけないと思う→サチと話し、少しだけ前向きに

今回の話がわけわからん方へ補足
現在エイトは人殺しのために精神が不安定です。なのでズカズカ人の傷に触れるサチにイライラしてます。あとエイトは今人を殺したという部分にしか目がいってないです。なので人を救ったという部分をラフコフの件に全く関わっていないサチから指摘されたのは大きな意味があるのです。また、最後のサチはセリフの通り、八幡はどうでもいいこと(人)には嘘をつかないし、感情も素直に出します。つまり、感情を隠そうともせずに怒られたり涙を見せられたサチからしたら、八幡にとってサチはそれほど大事な人ではないと言われたも同然なんですよね。
そんな感じです。分からないこと、矛盾点、誤字脱字などがあったら遠慮なく質問や指摘お願いします!

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