「比企谷~! 葉山く~ん!」
相模が八幡が来た方向から走ってくる。
その声に、呆気に取られていた葉山が、目の前の惨状を思い出し、相模に向かって来てはいけないと叫ぼうとする、が、葉山が気を取り直すよりも早く、八幡が瞬時に判断し彼らしからぬ大声を放った。
「来るな、相模!!」
「え、何でよ!?」
「いいから来るな!! そこにいろ!!」
相模は八幡の横柄な物言いに不満がありそうだったが、八幡の言う通りに素直に立ち止まった。
周囲の暗さがして、あの距離ならば、この残酷な光景は見ずにすんだだろう。
本来であれば葉山がすべき仕事は、この悲惨な状況を詳しく知らない、今来たばかりの八幡が代行した。
葉山は自分よりも遥かに周りのことが見えている八幡の横顔を複雑な思いで眺めていたが、次第に八幡の顔が強張っていくのが分かった。
「葉山……本当ならこの惨劇の理由とか、アイツは何なのかとか、聞きたいことは山程ある……だが、そんなもんは全部後回しだ。一刻も早く、相模を連れて出来る限り遠くに逃げろ」
「な……どうして――ッ!?」
ゾッ――と。
葉山は周囲の温度が一気に下がった気がした。
ゆっくりと、八幡の視線の先に目を向ける。
目を背けたくはあるけれど、視線が勝手にその存在に引き付けられる。
ねぎ星人父が――威風堂々と立ち上がっていた。
銃弾を五発喰らっても、流星のごとき体当たりが直撃しても、奴は倒れない。
その存在が放つ殺気は衰えを知らず、鋭い刃物のように――葉山を貫く。
葉山の体がガタガタと震える。
嫌だ。
嫌だ。嫌だ。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。いy――
「何してんだ葉山!! 早く、相模を連れて逃げろ!!」
その声を聞いた瞬間、葉山は一目散に逃げ出した。
背中を押してもらえた気がした。この恐ろしい現場から、今すぐに逃げ出していい理由を貰えた気がした。
逃げる。逃げる。逃げる。
一刻も早く。全力で。全速力で。震える膝を気力で抑え付けて。
途中、同じようにねぎ星人父を見て、顔面蒼白で佇んでいた相模の腕を取って、足を止めずに葉山は叫んだ。
「早く逃げよう!! 早く!!」
「で、でも、比企谷がまだ――」
その時、葉山はようやく、八幡に再び全てを押しつけたことに気付いた。
思わず葉山隼人は振り返る。
比企谷八幡は、一切こちらを見ていない。
ただ、葉山達とねぎ星人父の間に、自身の体を入れるだけ。
背負うように。庇うように。
「――――………ッッ!」
だが、今回はこれまでのような奉仕部への依頼とは訳が違う。
死ぬ。殺される。
このままだと、彼は――比企谷八幡は明確に死を迎える。
しかし、葉山は――足を、止めることが出来ない。
立ち止まり、引き返すことが――震える足を、止めることが出来ない。
「――大丈夫、だ。彼はスーツを着ている。さっきの凄い勢いの体当たりも、あのスーツのお陰だろう。彼は俺達よりも、あの化物に対抗できる。…………大丈夫だ。……死なない。……きっと、死なない」
「………………」
相模は、そんな葉山に、まるで自分に言い聞かせるような葉山の言葉に、何も言わず、何も言えず、ただ顔を俯かせた。
一度だけ、後ろを振り返り、八幡を心配そうに見つめ――そのまま、前を向いた。そして、葉山と共に走り続けた。
唇を噛み締め、一筋の涙を流しながらも、立ち止まることなく走り続けた。
そんな彼女を見て、葉山も、胸に鋭い痛みを覚え、心にモヤモヤを抱えながらも、走り続けた。
――これでよかったのか?
――俺は、またアイツに全て背負わせた。
そんな葛藤を胸中で繰り返してはいたが、現場から遠ざかろうとする葉山の足は、一向に速度を落とさなかった。
葉山隼人は、今回もヒーローにはなれなかった。
比企谷八幡にはなれなかった。
+++
「さて……何なんだ、コイツは」
俺は今、化け物と向かい合っている。
目の前に屹立するには、2m近い長身に、緑色の肌、そしてシャキーンって効果音が似合いそうな巨大な爪を持つ――宇宙人。
…………いやいや、おかしいでしょう。何なの? ラノベのクライマックスなの?
俺は第四真祖でもないし、幻想を殺す右手も持ってないよ? 何処にでもいる平々凡々のぼっち野郎だよ?
……まぁ、ちょっとばかし不思議なスーツを着てるだけの、な。
「……………」
どうやらこのスーツは、只のコスプレ衣装じゃないらしい。
相模を背負った時も重さを感じなかったし、さっきも全力で走ったらとんでもないスピードが出た。
そして、そのままの勢いで一切の受け身なく地面に激突しても、怪我一つしていない。
……察するに、このスーツは身体能力とか防御力を上昇させるのか。尋常じゃないレベルで。
剥き出しの顔面とかにもかすり傷一つないとか、本当どういうテクノロジーなんだ。まぁ今更か。
「グォックシャ!! グラダッシャスァ!!」
……目の前にこんな化け物いるもんなぁ。これガチで宇宙人? あの中坊が言ってたこともあながち間違いじゃなかったってことか?
マップによると、青い点は一つ。
目の前のコイツのことだろう。一つ消えているということは、相模が見たっていう追いかけられていた子供――あの球体の映像のねぎ星人は死んだのか……間に合わなかったか。
そして、赤い点は四つ。
……つまり、俺と葉山、相模、それと――
恐らくこの赤点は中坊だろう。俺が生き残っているのに、アイツが死ぬとは思えない。
この距離で姿が見えないのは疑問だが、アイツが隠れている理由くらいは想像がつく。
とにかく、今は――ッッ!!?
「ッ! くっ!?」
あぶねぇ。なんとか避けられた。何だよ、あの爪! 超怖ぇよ!
くそっ! ……落ち着け。漫画とかでも、ああいう爪武器キャラって大概大したことないだろう。
精々が序盤の小ボスの取り巻き集団のリーダーだ。具体的なモデルがいるわけじゃないが。イメージ的に。
取り敢えず、距離を取れ。そして落ち着け。落ち着け。バクバクいってる心臓を抑え込め。
俺は某上条さんのように前兆の予知なんかできない。麦わら帽子の未来の海賊王みたく見聞色の覇気なんかも使えない。
バトル漫画界を生き残れるような器じゃないんだ。さっき避けれたのは完全な偶然だ。
……この惨い惨状は、十中八九コイツによるものだ。
油断したら、間違いなくアイツらの二の舞になる。そこら辺に転がる死体の一つにされる。
身体能力、防御力を上昇させるこのスーツ――これが、どこまで頼りになるのかは分からない。
あんまり当てにしすぎて、そのまま腕を持っていかれる、なんてことになったらその時点でお仕舞いだ。
……俺はまだ――
「――死ぬわけにはいかないんだよ!!」
俺は意を決して、化物に向かって駆け出す。
緑色の化物も、迎え撃つように奇声と共に腕を振り上げた。
そして俺は、その脇の下をスライディングの要領で潜り抜ける。
相手の背後を取り、そのまま全体重を込めて――スーツが何やら発光し、駆動音のようなものが発せられた――がら空きの背中を思いっきり殴りつけた。
「グォォォオオオ!!」
確かな手応え。数メートルは吹き飛ばした。
倒してはいないかもだが――間違いなくダメージは与えた!
「…………よし」
俺は生まれてからこの方、ずっとぼっちだった。
中学や高校は、省り方も陰湿だがその分直接的な被害は少ないし、慣れていれば上手いやり過ごし方も見つけ出す。周りの連中も上手い弾き方を学び出す。
だが、小学校は違う。特に低学年――それも男子の場合は、気に食わない奴はクラスのボス的な奴によって、すぐさまジャイアン的な制裁をされる。つまりは暴力だ。
そして自慢じゃないが、俺はそんな奴らのターゲットに選ばれ続けてきた、ぼっちの中のぼっち、エリートぼっちだ。
つまりはそんな奴が、そんなぼっちが――喧嘩の経験がないわけがないだろう。
……まぁ決して強くなかったから(万が一にでも勝ったら、そのままジャイアンポジションをやらされることになって変に悪目立ちすることになるし)すぐに
腰に装着しているこの銃は、未だ試し撃ちすらしていない。
使い方も分からない道具に頼るより、あの程度慣れ親しんだ小学校時代の喧嘩殺法の方がまだ頼りになる。幸い、こんな素人パンチでも通用してるみたいだしな。
「グ……オオオォォォォ……」
……やはり、立ち上がるか。
だが、ダメージはあるみたいだ。少なくとも、さっきの体当たりよりは効いてるみたいだな。
「……………」
この住宅街に転送されてから、ずっと気にはなっていた。
まるで“ゲーム”のようなこの状況。
もし、これが本当に何かのゲームなのだとして、その“クリア条件”は何なのか?
あの球体曰く――『俺達の命はなくなった』『新しい命をどう使おうが私の自由だ』。
そして――『ねぎ星人をやっつけろ』。
誰も本気にしなかった。当たり前だ。あまりにも荒唐無稽で馬鹿げてる。
だが――。
用意されていた銃等の“武器”。“戦闘用”としか思えない機能を持つ技術レベル測定不可能なスーツ。
更に、現実に実在した、それらの武器を使わなくては到底勝てない“
ここまで来れば、ここまで揃えば、立てたくもない推論も立つ。
(――俺達は、この
そして――あの中坊はこうも言っていた。
『このゲームには制限時間があります。一時間です。
あれが本当なのか。それとも、あの場を手っ取り早く動かすための方便なのかは分からない。
だが、大抵こういうゲームには制限時間はつきもの。守れなければゲームオーバー。
……そして、コンティニューできる保障なんかない。
「ある程度コイツを弱らせないと……アイツは出てこないだろうしな」
俺がボソリと呟く間に、ねぎ星人が立ち上がった。凄まじい殺気だ。俺を自身を脅かしかねない敵と認識したか。
宇宙人にまで嫌われるとは、ここまで行くとそういう
「……だから俺はバトル漫画で生き残れるような器じゃないっつってんだろ」
それでも――生き残る為なら、あの場所に帰れる可能性があるならば。
慣れないこともしよう。似合わない役だって買って出よう。
ルフィにでも悟空にでもナルトにでもトリコにでも一護にでも。
向いてないことなど、柄じゃないことなど、百も承知だ。
+++
そしてその先の展開は、バトル漫画よろしくカッコいい爽やかな戦い――――とはならなかった。
再び、俺の拳がねぎ星人の腹部に突き刺さる。
最初の一撃のような、背後からの攻撃ではない。
真正面に向かいあって、相手の懐に潜りこんでの一撃。
俺は生まれてこの方、武術を習うどころか運動部にすら入ったことのない生粋のインドアぼっちだ。
格闘術なんて欠片も知らないし、生まれ持った特別な戦闘センスもない。
何度も言うようだが、バトル漫画の世界に放り込まれたら、即座に前線から撤退し――大会とかで「アイツ……また一段と強くなってやがるっ……」とか分かった風なことを言うことに全力を注ぐようなモブキャラ野郎だ。
そんな俺でさえ、真正面からぶん殴れるくらい、ねぎ星人はもうボロボロだった。
肩で息をし、片膝を着いて、自慢の爪も半分以上も圧し折られている。
この真っ黒スーツは――それほどまでに圧倒的だった。
余りにも一方的なワンサイドゲーム、これを自分の隠された力の結果だと自惚れることなど出来やしない。全てこのスーツの力だ。
俺は腰の銃がどれくらいの破壊力だかは知らない――だが、それこそバトル漫画の主人公クラスの戦闘センスを持つ奴がこれを着たら、と思うと、それだけでぞっとする。
このスーツは一つの凶器――このスーツだけでも、一つの兵器だ。
「ネギ……アゲマス……ユルシテ……クダサイ……」
始めはとても理解できない奇声ばかりを発していたコイツだが、いつしか地球語――それも日本語で、片言だが、必死に命乞いをするようになった。
「………………」
確かにコイツは、何人もの人間を殺したんだろう。
だが、これも恐らくだが、あの子供のねぎ星人――もしかしたらコイツの子供だったのかもな――は、あの大人共が殺したんだろうな。
きっと、悪気もなく――けれど、純粋な悪意によって。そんなきらきらの笑顔で、奴らはあの子供を追い掛けていた。
だとすれば、俺はコイツが100%悪いとは思わない。むしろコイツの肩を持ちたいくらいだ。
それでも、コイツを倒さなくては、俺達は帰れない。
この『ゲーム』を、クリアすることが出来ない。
やっつける。
アイツが――あの球男が、この曖昧な言葉を“
だが、少なくとも、ボロボロ、ボコボコという状態がピッタリな今のコイツですらダメとなると……。
俺はゆっくりと再びねぎ星人のどてっ腹に突き刺さった拳を抜く。
すると、ねぎ星人は何の抵抗もできずに、地面にうつ伏せに倒れ込む。
もう立ち上がることも出来ないようだ。
それでも、何も起こらない――ゲームクリアにならない。
「――――おい。中坊。いるんだろう? もうそろそろ、出て来い」
すると、案の定――中坊は直ぐに姿を現した。
バチバチバチと電磁的な効果音と共に、虚空から出現した。
「……便利な力だな。それも、このスーツの力か」
「まぁね。使いこなすにはコツがいるけど……まぁ、アンタならすぐに出来るようになるさ」
そう言って、中坊はニヤリと笑った。本当に見るものを不愉快にさせる笑い方をする。
中坊は倒れているねぎ星人を一瞥すると、何やらニヤニヤと呟き始めた。
「にしても、本当に凄いね。最近は生き残る人すら稀だったのに、何の情報も無しにそのスーツの重要性に気付いて、あまつさえターゲットを倒すなんて。しかもアンタ、僕が隠れてたことも、その理由にも気付いてたでしょ」
「……お前に聞きたいことは山程ある――が、それよりもだ。まずはさっさとこのゲームを終わらせてくれ。おいしいところはくれてやる。
「――くっ。くっくっくっ……やっぱりアンタ面白いや。……うん。決めた。まぁいっか。コイツ点数低そうだし、それより――」
こっちの方が、面白そうだ♪ ――そう言って、中坊は俺に丸い短銃を差し出してきた。
「……なんだ、これは」
「今回は、アンタに点数を譲ろう。コイツ――」
――殺していいよ♪
中坊は、心から楽しそうに、見るものを不快にさせる笑顔で言った。
+++
「………………」
殺す。
中坊はそう笑顔で言った。
予想していなかったわけではない。むしろ、その可能性は高いと思っていた。
これだけの武器、装備。捕獲ゲームにしては明らかに過剰だ。
現に、目の前のねぎ星人は明らかに瀕死状態――それでも、マップの青点の反応は一切消えず、ゲームも終わらない。
あの球男は、この状態ではまだ『やっつけた』とは認めていないのだ。
さっきの中坊に言ったおいしいところ譲る云々も――実際の所はただ自分に覚悟がないだけだ。
この人間のように二本足で歩き、衣服を着用し、不器用ながらも言葉を操る。
そんな、人間のような生物を――――殺す覚悟が。
彼らを殺して、自分が生き残る。
そんな野生の食物連鎖を、実行する覚悟が。
「どうしたの? やらないの? それとも、
中坊は笑う。ニタニタと笑う。
コイツは今、試している。
俺が、
これまでのコイツの言葉の端々から、なんとなく伝わってくる。
コイツはこんなことを何度か繰り返していたのだろう。
そして、コイツは分かっている。ここで殺せないような人間は、この先は生きていけないと。
暗に告げている。試している。
見定めている。見極めている。
なんて捻じ曲がった性格と根性だ。間違いなくぼっちだな、コイツ。そういう意味では、俺はお前側の人間だが。
「グ……ァァァアア」
っ! まずい、徐々にねぎ星人が回復してきてる!
「動くな」
「――! グァァァァア!!」
中坊は右手で俺に銃を差し出した体勢のまま、左手で別の銃を発射した。
差し出されている丸い短銃とはまた別の、細い三本の射出口がある短銃。
その短銃からは捕獲ネットのような不思議な光線が発射され、ねぎ星人をグルグル巻きにし、完全に動きを封じた。
「捕獲用の銃……」
「まぁそうだね。正確には『送る』用の銃」
「送る?」
「そう。こうやって」
ギュオン、と中坊は左手の銃をもう一発ねぎ星人に向かって放った。
すると、真っ暗な天から新たなビームが照射され、徐々にねぎ星人姿を消していく。
あの部屋から、俺達がこのエリアに転送された時のように。
「……これ、転送か? ……一体、何処に?」
「さぁ? どうでもいいよ。大事なのは、これでも点数は貰えるってこと。手間かかるし、こっちでぶっ殺した方が確実だから、僕はあんまりやらないけど」
中坊は右手の銃を軽く振りながら、そう軽い調子で言った。
「あ。っていうか送っちゃったよ! アンタの仕事奪っちゃったなぁ! ごめんね☆」
コイツ謝る気ゼロだわ。殺意しか湧かねぇよ。お前のテヘペロなんか。
「ま、いっか。アンタと会えたし、今回は久々に楽しかったよ。点数はしょぼいだろうけど、次回取り戻せばいいしね」
「……突っ込み所は色々あるが、これでこのゲームは終わりなのか? 俺達は――帰れるのか?」
「うん、帰れるよ。この後、またあの部屋に戻って、採点されて、家に転送されてって感じ」
「っ! 家に帰れるのか!? 葉山と相模も!?」
「その二人が誰だか分かんないけど、生き残っていれば――っと、言ってる傍から」
中坊が転送され始める。
今夜だけで見慣れてきた、人体が段々と消失していく現象。
この光景に慣れてきた自分に引くが、それも少なくともこれで終わりだ。
奴は、これが終わったら家に転送されると言っていた。
少なくとも連戦仕様の鬼畜ゲーではないらしい。
ねぎ星人はこっちにいたし、他の青点はなかったから、恐らくは葉山と相模が死んでいることはないだろう。
一先ず、一段落だ。
だが、アイツは生き残っている人間は、と言った。
…………葉山と相模以外の、他のメンバーは……。
「あ、そうそう。一つ言っておくよ」
中坊は顔の半分が消えているシュール(というよりホラー)な風体で言った。
「――最後躊躇ったよね。あれじゃあ、この先は生きていけないよ」
ホラーなカットの中坊は、けれど、そのまま半分の顔で笑い、告げる。
「まぁ、そこまで心配していない。アンタは、いざというときは、迷わず殺れる人だ。一番正しく、一番効率的な判断を下せる人だ」
その為なら、
俺は――笑っている、自信はなかった。
「これからよろしくね☆ ぼっち(笑)さん♪」
そう言い残して、そう言い捨てて、中坊は完全に転送された。
「……アイツ、俺のケース見てたのかよ」
初対面から目をつけていたのは、お互い様ってことか。
類は友を呼ぶってやつかね。あんな奴とは絶対に友達になりたくないが。
それにしても。
「……どいつもこいつも。人のことを知った風な口聞いてんじゃねぇよ」
それでも、やはり同類か。
葉山よりは、的を射ているかもな。
ついに比企谷八幡はねぎ星人と対峙する。