インフィニット・ストラトス ~ダークサマー~   作:kageto

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今回の話において、原作からの変更点があります。
原作ですと、弾は中学からの友人で、数馬に関しては詳しくいつからとか書かれていないのですが、
この作品においては、
弾は幼少からの友人で、数馬は中学からの友人としました。

弾に関しては、蓮さんの保護責任者の設定から、なんとなく小さいころからの友人という雰囲気を出してはいましたが、正式にその設定にしました。


残り数話。


第40話

 

 議論の熱中する三人を眺めながら、椅子を引っ張り出して隅に座る。

 

 鈴は蘭と二人でシャルの説得に入っている。断るそぶりを見せながらも、目は興味に輝いてるから、そう時間もかからずに陥落するだろう。

 

 俺たちが買い出しから戻ってしばらくしてから戻ってきた虚先輩と弾の距離が少し近くなってた。大方、弾が空回りしてテンパったところを虚先輩がフォローして、全力感謝した弾に男慣れしてない虚先輩がときめいたとかだろう。傍から見てて思うが、あの二人は純少女マンガ系だろう。よほどがない限りはうまくいくんだろうな。

 

 最初は一人だったのに、いつの間にか大所帯になったもんだ。

 

 

 

 

 小学校も高学年に差し掛かる頃には、一人での生活に慣れていた。

 

 家の事もしなくてはいけないのに、篠之乃の道場に無理矢理連れて行かれ、心身ともに追いつめられてたのだけはよく覚えてる。

 

 学校の行き帰りや道場からの帰り道、空を眺めることが多かった。何も考えず、空を見上げて歩く。何の束縛もない自由を空に求めてたんだと今は思う。

 

 そんな生活を続けていた時にISが世に出て、篠之乃の家は離散した。そして、今まで以上に家に帰らなくなった姉を忘れ、俺は弾の家でバイトさせてもらいながらの生活をしていた。

 小5の夏、バイト仲間に鈴が増え、看板娘目的の客の増加でてんてこ舞いだったある日、食堂のテレビで流れていたのが、鳥人間コンテストだった。

 

 ISの登場で女性の興味はそちらにほとんど移ったが、空を憧れる男たちの夢は、細々と、けれど消えることなく燃え続けていた。

 

 人力で空を飛ぶ。ただそれだけ。たったそれだけのことなのに、ガツンときた。

 

 自分の求める自由がある気がした。

 

 そこからは自分でも驚くくらい精力的に動いたとおもう。

 

 資料をネットであさり、へたくそな図面をいくつも書いて、段ボールや割り箸で模型を作っていた。

 

 俺のやってることに興味を持った鈴が参加し、弾と蘭を引き込んできた。

 

 今の形にしようと決まったのは鈴と蘭の、これってホントに飛ぶのか?と映画を見ながら放った言葉からだった。

 

 中学に上がって、弾が数馬を連れてきて、さらに加速しだした。バイトの給料でガレージを借りた。中古の自転車も買った。資材も多く買って、とりあえず組み上げた1号機は、見事に川に沈んだ。

 

 頭を突き合わせて話し合って、航空力学を知らないと話にならないということになって、専門書を買ってきて回し読みをしたけれど、理解できないことが殆どで頭を抱えもした。

 

 ちょうどその頃、鈴と蘭から告白をされた。けど、俺には二人が仲間である意識が強すぎて、恋人にとは思えなくなってた。はっきりとそう告げ、俺の前で泣くまいとこらえる二人には、すまないと思った。翌日、弾には一発だけ殴られ、数馬には肩をやさしくたたかれた。鈴と蘭は、目を真っ赤にしながらも、それまでと変わらずいてくれた。

 この時から鈴は俺との関係をダチだというようになった。

 

 程なくして、鈴が中国に帰国することとなった。鈴は、どんな手を使ってでも戻ってくる。これを飛ばすのは俺だけじゃなく、もう既にみんなの夢なんだからと宣言して去って行った。

 

 そこで一度本格的な活動を休止することにした。受験に集中するためだ。受験との両立は不可能に近いと判断して、月に数回掃除に来るだけにしていた。高校に入ったらすぐにでも再開できるように。

 

 まぁ、その思惑も束さんと姉の目論見によって遅れたんだが。

 

 けど、今はそれも必要だったんだと思う。束さんとの約束を思い出したことで、俺の空へのあこがれの原点に気が付いたんだから。

 

 にしても、

 

「束さんなぁ」

 

 これからさらに何をするのやら。

 

「篠ノ之博士なら、先日来たぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 「はぁっ?!」

 

 

 

 

 俺のつぶやきに反応した数馬の言葉に、全員の視線が数馬に集中する。

 

「この間掃除に来た時に、ふらりと入って来て、これを散々眺めてから、『頑張れ若人』って笑っていなくなった。帰ってたんじゃなくて、目の前でいなくなったからさすがに驚いた」

 

 あの人に対して俺のプライベートというものが存在するのかが本気で怪しくなってきたな。

 

「なによ。そんなこと言われたらやる気出てきちゃうじゃない」

 

 いや鈴よ。やる気が出るのはいいんだが、シャドーなんかして誰と戦おうってんだ。

 

「夏の間はこちらに泊まり込みですね。学園と実家の方に連絡を入れておきますね」

 

「夏休み終わったら、学園でシミュレーター使って理想値探さないと」

 

「かんちゃんの出した理想値で私とお姉ちゃんで模型作るよ~」

 

「じゃあ、その模型で合格ラインになったやつを、俺たちがここで作ればいいな」

 

「テストパイロットは私ですね」

 

 みんなやる気だなぁ。そうなると俺も燃えるじゃないか。

 

 

 

 

「それじゃあ、がんばりますか」




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