インフィニット・ストラトス ~ダークサマー~   作:kageto

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前後編の前編。箒&セシリア回
後編は明日か明後日。

本筋はもう少し待ってください


ダーク要素が減ってから批判メッセージがたまに来ます。
最後までダークで通せなかった私の文才のなさが原因です。
残り数話ですがお付き合いいただけると幸いです。


番外編04話

「すまない。相席いいだろうか」

 

「ええ、よろしいですわ・・・。あら?」

 

「む?」

 

 不意に掛けられた相席の確認に返事をしたセシリアは、声の主を見て少しだけ驚いた。

 

 食事の乗ったトレーを持ってそこにいたのは、篠ノ之箒だったからだ。

 

「オルコットか。すまないな、失礼する」

 

「構いませんわ。たまには一人じゃない食事というのもいいものですわ」

 

 セシリアの自嘲めいた笑いに、箒も苦笑を返した。

 

「お互いにクラスであぶれてしまったからな。一人での食事が当たり前になってしまったな」

 

「そうですわね。けどまぁ、学園に来る前と変わりませんから苦痛ということも無いのですけれど」

 

「ふふ。私もだ。どこに行っても一人だったからな。今更だよ」

 

 互いに苦笑を浮かべて食事の手を進める。

 

「箒さん。とお呼びしても?」

 

「かまわんよ。セシリア」

 

 先に食事を終えたセシリアからの問いに、味噌汁の椀を傾けながら箒が応えた。

 

「これまでと、これからをお聞きしても?」

 

 箒の手が止まり、ゆっくりと椀を下ろした。

 

「少し長くなる。先に平らげてもいいだろうか」

 

「ではお茶でもお持ちしますわ」

 

 二人の表情は、苦笑だった。

 

 

 

 

 箒のトレーも下げられ、紅茶のカップだけがテーブルにあった。

 

「そうだな。まずは私の原点を話そうか」

 

 箒は一口だけ紅茶に口をつけると、ゆっくりと語り始めた。

 

 

 

 私にとって姉である束は自慢であり、憧れだ。そう、現在進行形だよ。今でも自慢の姉で、憧れの人だ。

 

 私に最大の愛を注いでくれて、勉強が出来て、何でも知ってて、優しくて。たぶん何も無ければ私はシスコンをこじらせた駄目な妹になったと思う。

 

 そんな私の最大の失敗が、姉の隣に並び立つことを望んだことさ。滑稽だろう?あの天才に追いつこうとしたんだ。

 

 勉強も頑張った。私の成績を知ってるか?これでも学年10位以内をキープしてるよ。それでも姉には追いつけない。私に学問という分野で、姉に追いつくだけの才は無かった。

 

 だから私は武道に身を投じた。文の姉、武の妹。言葉にしたらかっこいいものだろう?実際私にはそっち方面に才能があってな。実家が道場だったこともあって、実力はすぐに実を結び始めた。私は舞い上がったよ。姉の横にいける道を見つけた気がしたんだ。

 

 だけどな、そこにはすでに立ち誇る人物がいた。わかるだろう?織斑千冬だよ。そこそこに頭もよく、女だてらに、子供のくせに、大の大人を圧倒する武を示した存在だ。私の敵だよ。

 

 なぁセシリア。私はどうしたと思う?簡単だよ。織斑千冬にくっついて回ったんだ。子供の考えそうなことだろう?嫌いなやつをまねて追い抜こうって算段だった。幸い私は気に入られてね。いや、ここは不幸にも、が正しいな。私は数年間織斑千冬と行動をともにしていた。小学校に上がる前からだよ。どうなったかはわかるだろう?

 

 私は言葉より先に手が出るようになっていた。そう躾けられ、習慣付けられ、習性付けられた。私は私の武を制御できなくなってたんだよ。

 

 果たして暴走しだした私は織斑、あぁ一夏の方な。を巻き込み始めた。両親は一夏を遠ざけるために非常識に振舞った。そうすれば織斑は寄り付かなくなると判断してな。思惑通り、織斑は道場に近寄らなくなった。もっと大人な方法で織斑を遠ざけることも出来ただろうが、そうすると娘である私が傷つくと、暴走の原因が織斑の姉である千冬だと知って織斑が傷つくと判断して、そうしたらしい。今はもう父も道場を畳んでしまったよ。私の暴走を防ぐことが出来なかったことで思うところがあったらしい。申し訳ない限りだ。あぁ、本当に申し訳ないと思ってるよ。

 

 

 

 すまない。この話題になると涙もろくてな。続きを話そうか。といっても、もうそんなに話すことは残ってないんだが。

 

 

 入学初日からの一ヶ月、私はクラスメイトを遠ざけることに終始力を入れていた。すぐに手が出ると思わせてるのもその一環だな。今はもう自分の武を暴走させるなんてことはないんだよ。本当はな。

 

 入学より少し前、姉さんと話をしたんだ。そう、篠ノ之束だよ。遠くない未来にISのあり方が変わると聞かされた。あぁ、私は学園の誰よりも先に知っていたよ。ISが宇宙開発用にしか使えなくなることを。

 

 姉さんは私に選択を迫った。姉さんとともに行くかどうかを。私は違う道を行くことにした。私は、私達篠ノ之の家は織斑一夏に迷惑をかけすぎた。これから先の未来には織斑の夢を叶える手伝いのできる、姉さんだけがいればいい。だから私はいなくなるんだ。

 

 ん?言葉通りだよ。顔も声も血液型さえも手術で変えて、まったく違う場所で生きていくことになっている。篠ノ之箒という個人はそう遠くない未来に事故に遭うことになっている。私は篠ノ之箒でいることに疲れてしまった。

 

 

 

 そうだな、私のことはこんなところだ。

 あぁ、最後にこれだけは言っておこうか。姉さんと一緒に星空を見上げていた少年は、私の初恋の男の子だったよ。

 

 

 

 初恋は実らないというのは本当だったと身を持て知ったよ。

 

 




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