インフィニット・ストラトス ~ダークサマー~   作:kageto

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時間も精神的にも余裕なんて無いのに、精神的に行き詰ったからか逃避するように書いた。
なにをやってるんだろう。

勢い任せに後何話かを書くつもりです。


あと、問題が発生。ここから先、一夏が黒くなる予定が無い。タイトルを変えた方が良いんだろうか。



第34話

 

『あ、あ。テステス。一番後ろの方聞こえてますかぁ?大丈夫でしたら手を上げてください。……はい、大丈夫ですね』

 

 旅館から十分ちょっと歩いたところにある公民館の会議場の前方で、山田先生がマイク片手にちょこまか動き回っている。身長の関係上、踏み台が用意されてるのはご愛嬌だろう。なかったら後ろの方は見えにくいだろうな。見えないとは言わない。山田先生の名誉のためだ。

 

『それでは特別講義を始めますね。午前中だけで全部終わって、午後と明日のお昼まではまた自由時間を予定してますから、この時間は集中してくださいね』

 

 山田先生の声に、生徒達の雑談が消える。下手に騒いで時間が延びたらその分自由が減るわけだから、静かにもなるか。

 

『講義の内容は、ISの利用方法の制限と、今後についてです。先日、篠ノ之束博士の会見で発表されましたが、ISの軍事的及び恣意的な悪用の一切が出来なくなりました。簡単に言うと、戦争と犯罪には使えなくなりました。ということですね。これによってISの保持数を国の戦力の比率とすることが出来なくなったわけです。ISが登場する前にまで軍事力は後退したことになります。私達は言い方は悪いですが、兵器を扱うための勉強を今までしてきたんですが、それがまったく意味をなさなくなったということですね』

 

 そう、この時間は俺達のこれからについての説明会みたいなものだ。今まではパイロット志望のほとんどは軍人になったし、整備課は軍技術部に入っていたけど、そうはいかなくなったわけだ。

 

『では、私達はどうなっていくのか。それにはまず、ISがどうなったのかということからですね。皆さんご存知の通り、ISは宇宙開発事業にのみ使用することが出来るものとなりました。というか、それしか出来ないものになったということだそうです。そもそもISは宇宙空間作業用の専用スーツとして作られたそうです。宇宙服越しではなく肉眼で手元を見て、自分の指で行うように作業をして、必要な道具を自由に出し入れする。酸素自体も持ち運びが可能で、エネルギーの充電だけで行動の範囲に制限はない。確かに宇宙空間で作業するための条件を備えています。それを今まではやむにやまれぬ事情で軍事的に使っていたんだそうです』

 

 いたるところからカリカリとメモをとる音が聞こえる。幾人かは端末にキーボード入力でメモしているみたいだけど、手書きが圧倒的に多い。こういった講義でのメモって手書きの方が取りやすいと思うのは俺だけだろうか。

 

『ISがそう言った方向にしか使えなくなったということは、学園も当然それに沿った方向転換を行ってゆきます。基本学科はそのままですが、IS学科は戦闘関係の実習がすべてなくなって、無重力空間での作業に関する実習を中心に取り入れる予定です。皆さんは入学してまだ時間も経っていませんので、戦闘実習もほとんどありませんでしたから、影響は大きくないと思います。大きくないといっても、これからガラッと変わることを考えると、大変ではあるんですが……』

 

 山田先生がちょっと考えるように言葉を途切れさせた。

 

『そうですね……。今後の学園の動きをお話しておきましょうか。臨海学校後すぐに早めの夏休みに入ることが決まりました。今は7月の頭ですので、ほぼ二ヶ月の休みになります。その間に学園の方で新しい教育プランを作る予定となっています。夏休み明けて一週間で新教育プランと学園のあり方についての説明会が行われ、学園に残る生徒には新プランに則った授業を、残らない生徒には新しい学校の紹介と編入手続きを行うことになります』

 

 学園の方針についての話が進み始めたときに、そっと肩を叩かれた。

 

「織斑。ちょっといいか」

 

 神妙な顔をした。織斑先生(ヤツ)がいた。ちょっと悩んだが、呼ばれるままにそっと席を立つ。山田先生がちょっとだけ微笑んだような気がした。やっぱり癒しだわ。

 

 先導されるがままに公民館を出る。

 

「山田先生が話しておくべきだと言ってな」

 

 横に並んできて、缶コーヒーを渡された。ブラックだ。

 

「こうやって授業を抜け出すようなことは好まないんだろうが、たぶん最後の我侭だ。ちょっとだけ付き合ってくれよ。一夏」

 

「…………千冬姉ぇ、なんだよ改まって」

 

 俺が名前で呼んだことが意外だったのか、驚いた顔をしてこっちを見たけど、薄く笑ってまた前を見た。

 

「私は学園を去ることになったよ。この臨海学校が教師としての最後の行事だ。終業式にもでない」

 

 今度は俺が驚きで顔を見た。え?マジで?

 

「今の私にはISは起動も出来ん。束からメッセージで、これが私への罰のひとつだと言われたよ。私はISを動かすことを教えるために招かれた特別教員だったからな。ISが動かせなくなった時点で学園にいる意味はない。学園長に申し出て、聞き入れてもらった」

 

 ISが動かせない、か。

 

「で、どうすんだよこれから。自分の仕出かしたことから逃げるように身でも隠すのか?」

 

「いや、束の依頼で動く傭兵みたいな事をする予定だ。私が作ってしまった社会の闇を全て潰すまで私に安らぎはないそうだ。まぁ、私は基本的に戦うことしか出来んからな。自衛隊にでも入って社会奉仕でもと思っていたが、自分の蒔いた種を刈りに行くさ」

 

「チッ。なんだよ満足そうな顔して。あークソ。色々言ってやろうと思ってたのに」

 

「すまない」

 

「あやまんなよっ」

 

 なんだよ。あやまるなよ。俺が駄々こねてるみたいじゃないか。クソッ。

 

「俺を理由に世界を“こんな”にしたんだ。俺が与える罰も一つだけ背負っていけよ」

 

 互いに立ち止まり、しっかりと眼を見る。

 

「全部終わるまで死ぬなよ。束さんがホントに全部終わったって言うその日まで死なずに生き残って、自分の罪を全部見てこいよ。そして全部を俺に話せ。俺が理由なんだ。俺にも知る義務があると思う」

 

「わかった。いつになるかはわからんが、全部終わったら、全部話すよ。あぁ約束だ。信用されてない私が言うのも頼りないものだが、約束だ」

 

 先に戻ってるからゆっくり戻るといい。と言って一人残された。

 

 

 

 

 あぁ、俺の知らない俺の罪が重い。

 

 

 

 




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