インフィニット・ストラトス ~ダークサマー~   作:kageto

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臨海学校編第2話

ちょっと長め。ある意味のほほんさん回


第32話

 青い空、白い雲、透き通る海、水着ではしゃぐクラスメイト。夏だね。

 

 だけどもう少しだけ待ってください。私のライフは今回復中です。

 

 砂浜に何ヶ所か立てられたビーチパラソルの一つで膝を抱えて海を眺めつつ回復中。ちなみにこのビーチパラソルは日射病対策に一定間隔で立てられてる。いくら海に入るとはいえ、夏の空の下だからな。対策は出来る限りってことなんだろう。

 

「あれ?一夏。こんな所で一人で何やってるのさ。バスの中でみんなと色々約束してたみたいだったのに」

 

「シャルか」

 

 声をかけてきたのはシャルだった。オレンジ色のビキニタイプで、下はスカート型のパレオをまいてる。意外と胸あるんだよな。そう思ったところで、すぐに視線を海に向ける。

 

「ちょっとな。自分の未熟っぷりを反省中なんだ」

 

「なにそれ?ま、いいや。横、座るよ」

 

「あぁ。気にせず座れよ。影のところは思ったより涼しいぞ」

 

 ちょっとだけ端によける。シャルが気にせず影に座れる様にだ。決して水着姿のシャルの真横に座るのが恥ずかしかったからじゃない。だが、これだけは言っておこう。欧州人って肌の白さすごいな。オレンジの水着との対比がすばらしい。

 

「にしても、やっぱり日本は暑いね。フランスとは大違いだ」

 

 そっか、フランスって日本より緯度が上なんだっけ。

 

「向こうの夏はもっと涼しいのか」

 

「向こうが涼しいんじゃないよ。日本が暑いんだよ」

 

 あ、さいで。そういや鈴も昔、同じようなこと言ってたっけか。

 

「そういや、他は?」

 

 シャルなら誰かしらと一緒だと思ってたんだが。

 

「鈴は暑くてかなわないから、先にちょっと泳いでくるって。なんか念入りに体ほぐしてから海に入っていったよ」

 

 鈴らしい。ちょっととか言いながら結構長いこと泳いできそうだな。体ほぐしてから行ったってことは、遊泳範囲限界に挑んでくるな。

 

「簪はさっきまで一緒だったんだけど、クラスの子達にちょっとはこっちにも顔を出せって誘拐されてったよ」

 

 おぉ、ボッチじゃなくなってるじゃないか。ついにクラスにも友達出来たんだな。クラスに友達いないって落ち込んでたのが嘘みたいだ。

 

「ま、まぁあれだ。4組の子達も簪の性格少しはわかってるだろうから、そこそこでこっちに来るだろ」

 

「だろうね。で、本音はまだ見てないかな。たぶん清香たちと一緒だと思う」

 

 あぁ、相川さんたちね。谷本さんと三人でいるのよく見るしな。

 

「ねぇ一夏。あっちに見える、すごい勢いで泳いでくるのって……」

 

「鈴だな」

 

 本気で一番遠いブイまで泳いできたな、ありゃ。にしても、どんだけ本気で泳いでんだか。波掻き分けてるぞ。お、ゴールした。さすがに砂浜に突っ込むなんてギャグはしないか。

 

「あ、一夏。やっと来たのね。競争しようと思ってたのに、あんまり遅いからあたし一人で行ってきちゃったわよ」

 

 お?髪型がツインテじゃなくてアップだ。泳ぐのに邪魔にならないようにしてきたな。泳ぎにどれだけ気合入れてんだ。遊べよ。にしても、鈴の水着もオレンジなんだな。ビキニタイプじゃなくてセパレート?スポーツタイプ?まぁ、そんな感じだ。鈴の雰囲気には合ってるな。

 

「ん?なによ?水着姿なんて中学のときに何度も見てるじゃない」

 

「いや、鈴もオレンジだろ?シャルのもオレンジだけど、オレンジっていっても結構色の方向性違うよなって」

 

「そうね。あたしのは赤に近いオレンジで、シャルのは黄色に近いオレンジね。大枠でオレンジって言っちゃったらそこまでなんだけど、細かい色の分類するとかなり離れるわね」

 

「そうだね。ボクのはたぶん黄色で分類されるかもしれないね」

 

 シャルと会話しながら鈴もパラソルの下に座った。やっぱ直射日光下はつらいよな。

 

「そういや、一夏。水着新調したのね。一昨年は『大きめのサイズ買ったからこれで数年は使える』なんて言ってたのに」

 

 あー。言ったな。そんなこと。

 

「使えるものなら使ったさ。去年引っ掛けて穴開いたんだよ。だからこの間買ったんだ」

 

 黒地に白い一本線の入ったデザイン。無難だが、希望のサイズだとこれしか良いのがなかったんだよ。

 

「ちょっとゆったりしてるよね。それ、来年も使うの?」

 

「いや、来年使うかはわからんが、サイズが大きいのは下にもう一枚穿いてるからだよ」

 

 じゃないと臨海学校なんて参加できません。男の尊厳的な意味で。

 

「あー。そうゆうこと。こういう時大変ね。男一人って言うのは」

 

 鈴はわかったらしい。ニマつくな。そしてシャルに耳打ちするな。あぁもう、シャルがリンゴカラーになったじゃないか。ちくしょう。男はつらいよ。

 

「こんなとこいたんだ」

 

 膝を抱えなおして自分の世界に篭ろうか本気で考え出したところで簪が来た。なんか順番に集まってくるな。顔を上げて驚いた。ビキニ、だと。恥ずかしがり屋な簪がビキニを着てくるとは。しかも黒。白いフリルがアクセントになってるが、黒ビキニ。それ以上に驚いたのが、シャルよりも小高い丘。着痩せするんだな。

 

「じ、じろじろ見ないで欲しい」

 

「す、すまん。あ、あれだ。似合ってるぞ」

 

「あぅ。ありがと」

 

 ほんとに女は視線に対して鋭いのな。

 

「はいはい。甘酸っぱい青春はその辺にしてよ~。それより簪、本音は一緒じゃなかったんだ。てっきり一緒かと思ってたんだけど」

 

「私は、クラスの方にいたから」

 

 まさかの、のほほんさん見当たらない事件。だがその前に鈴。ありがとう。話題をそらしてくれて。ほんとにありがとう。そして俺はもっと反省しないとダメらしい。

 

「ね、ねぇ。みんな……」

 

「どうしたシャル?」

 

 急に震えた声を発したシャルに俺達の視線が集まる。

 

「ボクの目がおかしくなければ、なんだけど。きつねが波打ち際で遊んでる」

 

『はぁ?』

 

 珍しく声がかぶった。それよりもシャルの視線を追ってみる。

 

「きつねね」

 

「きつねだね」

 

「きつねだな」

 

「ね?きつねだよね」

 

 おそらくカチューシャだろうきつね耳をつけたきつねのきぐるみ姿で、のほほんさんが遊んでた。遠目でも寮で着てたパジャマと材質が違うみたいだから、水着仕様なんだろう。色々と突っ込みどころはあるが、これだけは言っておきたい。どこで売ってんだよそんなもん。

 

「あ、おりむ~。か~んちゃ~ん。り~んり~ん。しゃるる~ん」

 

 こっちに気が付いたようで、手を振りながらぽてぽてと駆け寄ってくる。異様な光景だろこれ。真夏の、快晴の、海岸で、きぐるみを着た、女子高生が、駆け寄ってくる。『きぐるみを着た』が余計だ。この一言で全てがカオスになってる。

 

「ちょっと本音。リンリンはやめなさいっていつも言ってるでしょ。パンダみたいじゃない。それよりもアンタ。その格好なんなのよ」

 

「えへへ~。かわいいでしょ?お店で見つけたときに、びびび~ってきたんだよ。これはもう買うしかないって思ったのだ~」

 

「ね、ねぇ簪。ボク、本音が何を言ってるのか理解できないや」

 

「私も出来てないから大丈夫だと思う。私達は正常だよ」

 

 あ、二人現実逃避した。ある意味正しい反応なんじゃないのか?

 

「下に水着着てるの?」

 

「ん~?着てるよ?」

 

「よし、じゃぁあ脱ぎなさい。というか脱がせるわよ。見てると頭がおかしくなりそうだわ」

 

 鈴ナイス判断。のほほんさんだけ見てると、ここがどこで、今の季節がなんなのか、どっちもわからなくなる。

 

「後ろにファスナーがあるのね。ていっ」

 

 ぶっ。メロンが二つ並んでる。慌てて視線を逸らして鼻を押さえる。鼻血出てないよな。いや、でかい。簪も着痩せしてると思ったけど、のほほんさんのは次元が違う。山田先生に追いつけるレベルだろ。だけどそれ以上に問題なのは水着だ。純白のマイクロビキニ。胸の肌面積の3分の1も隠れてない。凶器だ。水着の下にもう一枚穿いててよかった。

 

「ちょ、ちょっと本音。その水着は過激すぎると思うよ」

 

 シャルよく言った。ご馳走様ですと言いたいけど、シャルの指摘は正しい。過激すぎるんだって。きつねを脱がせた鈴が口半開きで呆然としてるぞ。簪なんて真っ赤になってフリーズしてるし。

 

「これ着てると中が暑くて、ちょうどいっかな~って。すずしいぞ~。それに、おりむ~をの~さつできるかな~って」

 

 悩殺された後に社会的にも、今後の学校での立場的にも殺されかねないからやめて。お願いやめて。だけどありがとう。

 

 

 その後、呆然とする鈴と簪に、動けない俺、のほほんさんと問答を続けるシャルというカオス空間だったが、様子を見に来た山田先生にのほほんさんは連行されていった。アウトと判断されたようだ。

 

 

 

 

 

 山田先生>>のほほんさん>>簪>シャル>>>鈴の並びだな。心のメモに記しておこう

 




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