インフィニット・ストラトス ~ダークサマー~ 作:kageto
捏造設定、原作崩壊甚だしい。3話になっているので、批判も覚悟しています。
「やあやあやあやあ。ひさしぶりだね。いっくん。元気にしてたかな。束さんは最近とってもハッピーさ」
放課後部屋に戻ったら、兎がベッドで寛いでた。お菓子の袋を広げて、雑誌を読みながら寝転がってる。
「どこから入ってきやがった」
普通にドアを指差すし。不法侵入を堂々と宣言するなよ。俺のプライベートはどこなんだよ。
「ねぇ、いっくん。IS学園卒業したら自由だよ」
はぁ?いきなり何言ってんだ。ISがある限り、男で動かせるのが俺だけである限り、俺に自由なんてないじゃないか。俺の自由を奪ったヤツが何を言ってんだ。
「今の社会が俺を自由にしないでしょ」
「ISはね。一つの時代の終わりを迎えるのさ」
うん。俺の言葉は無視なわけだ。まぁ話を続けるのは良いが、ベッドに広げたお菓子の袋は片付けろ。布団が汚れるじゃないか。
「そもそも、今の使い方は予定にないんだよね」
「どういうことだ」
今の使い方?予定にない?予定にないって、いったい。
「聞かない方が良いよ。いっくんは。たぶん知るとつらくなる」
一瞬兎の目が優しくなった気がした。そこまで言われると逆に気になるところだが、聞かない方が良いのだろうか。だけど、この兎がここに来たってことは、それなりの理由があるんだろう。わざわざ直接会いに来て、そんな話の振り方をしたんだ。だったら。
「聞かせてくれ。知らずにいるよりは、知っていた方が良いと思う。それがどんなにつらいことでも」
「やっぱりいっくんはいっくんだね。そこは束さんもすごいと思えるところだ」
ベッドのふちに座りなおしてこちらを見た。
「今の使い方。女にしか使えなくて、戦う道具になった原因は、織斑千冬だよ」
え?
「あの女がそうしてくれと願ったから。そうしたんだ。そしてそれは、いっくんを守るためだよ」
な、なにを。なにを言っている。俺を、守る?
「ISを完成させた束さんは、一番最初に親友に自慢したのさ。『わたしはすごいだろ?』って。そしてペラペラとISについて語ってあげたのさ。そしたらあの女が土下座してお願いしたんだ。『私が弟を守るために使わせてくれ』って。両親が失踪して間もなかったからね。必死だったんだろう。親友が大好きだった私は、願いを聞き入れたんだよ。そうして起こったのが、いっくんも知ってる《白騎士事件》さ」
やめろ。やめろよ。
「あの女の願いを叶え続けるために私に求められたのが、《狂人》であることさ。意味もなく、理由もなく、勝手をする天才。だからみんな、疑問に思わない。『こんなものを作れる天才が、男だけ乗れないようなものを作るのはおかしい』って。それにほら、よくよく思い出してみなよ。一番古い記憶に出てくる束さんは、頭のネジの飛んだ変人だったかい?」
思い出す。昔、まだ姉弟の仲がよかった頃に、姉に連れられてうちにやってきた姉の友人は、”猪突猛進気味な姉をたしなめる優しい人じゃなかったか?”
「束さんは、私は、あの女の願いを叶え続けてたんだよ。私の夢を潰してまで」
その人は、いつも星を見上げてた。『いつか宇宙に行くんだ』と語っていたじゃないか。そのとき確か、約束もしたはずだ。
「まだ年若いあの女が、いっくんを守るために望んだのは、最強であること。だからISを女にしか使えない様にした。だからISを武力を持って公開した。だからISが戦いの道具であることを許容し続けた。そう、すべては、織斑千冬が織斑一夏を守りたいがために」
あぁ、クソッ!なんて、なんて滑稽な。ISがいらないと思ってたのに、ISに関わりたくないと思ってたのに、今のISのあり方の中心が、俺だったなんて。俺を守るため?ふざけんな。なんだよそれ。なんなんだよ。
「でもね、もうおわった。おわったんだよ。いっくん」
膝から崩れ落ちた俺の頭を、ゆっくりとなでている。
「いっくんとあの女は決別した。そのときに私と織斑千冬の、契約と言う名前の、友情の最後の糸が切れて、今のISの時代の終わりが始まったの」
そうか、だから、『ちーちゃん』じゃなくて『あの女』なんだ。今はもう、夢の邪魔をした、敵なんだろう。
「全てのISにはタイマーがセットされててね。それが動き始めた。もうそんなに時間を置かずにゼロになる」
世界で一番の天才が作ったものだ。そういうものが隠されてても不思議じゃない。
「そしてISは宇宙開発及び外宇宙進出用にしか使えなくなる。そして、性別の区別もなくなる。全ての人が乗れるようになる」
今の社会が、終わる。のか。
「いっくんの考えてる通りで間違いないよ。兵器としてのISの登場によって一度壊れた社会は、ISが兵器として使えなくなることで終わるよ。私が終わらせる」
「でも」と言葉が続いた。
「それでいいんだよ。私が新しい社会を作るから。世界中のみんなで宇宙を目指す。そんな社会を作るから。だからいっくんは、自分の人生を楽しんで」
束さんが、離れていくのを感じた。
それを伝えるために、俺に自由を届けてくれるために、今日、ここに来たのか。
「束……さん。俺、自分勝手に生きようと思います。今まで通りに。織斑先生を論破して、鈴と悪乗りして、のほほんさんとお菓子作ったり食べたりして、シャルとボケーっと時間潰してみたりして、照れる簪を愛でて、山田先生に癒されて。そんないつもを過ごしていきます」
「うん。たまにはメールして。アドレス残してるの知ってるんだから」
「はい」
「担任の先生の胸見すぎたらダメだよ。女の人は気付いてるんだから」
「はい」
「箒ちゃんをよろしく」
「いやです」
「だめ?」
「だめです」
「うん。やっぱりか」
「ええ」
「簪ちゃん。大事にしなよ。好きなんでしょ」
「うん」
「よし。またね」
「また、いつか」
そして束さんはいなくなった。
『じゃあ私がいつか、いっくんを宇宙に連れて行ってあげる』
『うん。楽しみに待ってるね。束さん』
この話をもって、メインストーリーが終わりになります。いってしまえばある種の最終話です。
けれど、まだまだこの作品は終わりません。
誤字脱字などあるようでしたら、報告いただけると幸いです。
感想、評価などいただけると狂喜乱舞します。