インフィニット・ストラトス ~ダークサマー~   作:kageto

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なぜ、私は寝ずに書いていたのだろう。
ラウラ回終わり。
次投稿したらホントに寝る。


第25話

「はぁ?」

 

 あの教室の惨劇から3日後。俺は絶賛入院中。ただし保健室。外の病院は護衛の問題から入院できないと言われたそうな。

 

 いや、それよりも今問題なのは。

 

「なんで子仁王が入院することになってんだよ」

 

「その前に子仁王って何よ」

 

 呆れたように溜息をつきながら鈴が聞き返してきた。現在保健室内には、ベッドの主の俺、鈴、シャル、簪の四人。のほほんさんは臨時生徒会の仕事に追われているらしい。新生徒会が発足したら自由だからがんばる。と自身を慰めながら生徒会室に向かったそうだ。

 

「いや、転入初日の登場がさ、織斑先生と二人並んで仁王立ちだったから、親仁王と子仁王」

 

「ちょっ。なにそれ。アタシも見たかった」

 

「あぁ、あの立ち方がニオウダチっていうんだ。うん。確かにそっくりだった」

 

「それよりも、子仁王の入院だよ。なんでだ?」

 

 俺が運び出されてからどんな展開を経たら、アイツが入院って終わり方に行き着くんだよ。

 

「ボクもナギから聞いた形なんだけどね」

 

 ナギ?あぁ、鏡さんか。俺の真後ろの席だから、あの後の展開は特等席だよな。

 

「ボク達が一夏を運び出して、保健の先生が山田先生の状態を確認し始めたタイミングで、織斑先生がラウラさんに声を掛けたんだって。まぁ状況が状況だから叱るつもりだったらしくて、結構声に怒気があったらしいんだけど。織斑先生が『ラウラッ!』って言った途端に、彼女蹲ってガタガタ震えながらひたすら『申し訳ありません教官』って繰り返し続けて、最後は白目向いて倒れたんだってさ」

 

 え、なにそれ怖い。

 

「なにそれ怖い」

「なにそれ怖い」

 

 どこの怪談話だよ。怖いにも程があんだろ。

 

「彼女、ボクのルームメイトになる予定だったからさ、保健の先生に容態を聞きに行ったんだ」

 

 シャル、ラウラ(アレ)のルームメイトか。大丈夫か?ホラー的な意味で。白目むいて倒れるとか。ホラーじゃん。

 

「あの日の夜には目を覚ましたんだって。倒れた経緯もあるから保健の先生立会いの下で事情聴取したらしいんだけど」

 

 あー。その区切り方は聞いて後悔する系だ。鈴と簪も察しがついたみたいだ。微妙そうな顔してるし。シャルも俺らの顔見て苦笑するなし。

 

「ちょっとヘビーだよ。彼女試験管ベビーなんだって。それも選りすぐれた兵士を作るために遺伝子操作をされた」

 

 じーざす。

 

「で、小さい頃から軍事訓練に明け暮れて、最高成績を叩き出してたらしいんだけど」

 

「ISが登場しちゃったわけね」

 

「そう。で、ドイツ軍はIS適正を上げるために『眼』を移植したんだって」

 

 それって眼帯してた左目のことか?

 

「……眼って?」

 

「さすがに詳しくは聞けないよ。ドイツ軍の機密みたいだし。でも彼女、移植に失敗して成績トップから一転最下層」

 

 天国から地獄、ねぇ。

 

「で、最強の兵士のために生まれたはずなのにって落ち込んでたところで登場したのが織斑先生なんだって」

 

 ということはここからが話の本題なわけだ。

 

「彼女の話だとね。織斑先生の訓練方法は極めて実践的な反復練習なんだって。まぁ軍隊だとそういうもんなんだろうね。けど、落ちこぼれになってた彼女にはかなりの苦痛だったみたい。常に怒られ怒鳴られ、出来るようになるまでひたすらに反復。その日の目標を達成するまでは食事も睡眠も無しだったそうだよ。部隊全員」

 

 れ、連帯責任マジ怖えぇ。自分が出来るまでみんなが休めない。それって恐怖だろ。いじめの領域超えてるって。

 

「食事と休息がかかってるから、部隊のみんなが必死に教えてくれたそうだよ。彼女も必死に覚えたんだって。それでも最初の頃は散々で、何度も織斑先生に懇願したんだって『申し訳ありません、教官。部隊の皆は悪くないんです。彼らには食事と休息を』って。まぁその続きは察しの通りだと思うよ」

 

 懇願は聞き入れられず、全員食事と休息なし。ねぇ。

 

「うまくいかない反復の中で何度も繰り返したんだって『申し訳ありません教官』って。怒られるたび、怒鳴られるたびに。次第にその地獄が実を結んで、彼女は代表候補生に上り詰めるんだけど、心は傷だらけだったみたい」

 

「ならなんで、その子は織斑先生を慕ってるの?どう考えてもトラウマの対象じゃない」

 

 簪よく聞いた。トラウマ少女が忠犬にジョブチェンジした理由が知りたいわー。

 

「えっとね。彼女が代表候補生になる直前くらいに織斑先生はドイツを去ったらしいんだけど。うーんうまく説明できない。ちょっと流れだけ簡単に言うよ」

 

 よしこい。三人がかりで噛み砕いて理解してやろう。

 

「えっと。何で私がこんなに傷つかないといけない。私が落ちこぼれだからだ。今は落ちこぼれじゃないじゃないか。だれのおかげだ。織斑教官だ。織斑教官のおかげで私はトップになれた。織斑教官の指導は間違ってなかった。じゃあ何で私は傷ついてる。織斑教官の愛のムチというやつだろう。織斑教官は私達を愛してくれてたんだ。なのになぜ織斑教官は今ドイツにいない。家族の元に帰ったからだ。家族、弟、それのせいで織斑教官が私達の元を去った。弟許すまじ。って流れらしいんだけど。ボク、理解できないんだよね」

 

 いや、俺らも理解出来てないから。

 

「あー。なんかわかんないけど、アレでしょ?鬱状態で色々考えてたら思考がスライドしまくったってことでしょ。変な方向に」

 

 鈴、ナイスまとめ。理解は出来ないけど納得はした。

 

「それ、代表候補生やっていけないんじゃ」

 

「簪、ビンゴ。昨日怒鳴られた瞬間に色々フラッシュバックして、一人で整理したらトラウマ再発しちゃったみたいで、ISも起動できない状態みたい。当然代表候補生も続けられないらしい。このまま精神病院に入院する線を主軸に話を進めるんだって」

 

 結論。子仁王は織斑先生(アレ)のせいで精神に異常をきたしてた。今はそれを自覚して入院中。いずれは精神科の病院に転院。……俺、謝りに行ったほうがいいんじゃないか?一応、アレの弟だったわけだし。当時は。いや、トラウマ再発中って事は些細なことでうつ状態になるんだろうから、この間のことや、織斑先生(アレ)を連想させる可能性のある俺が言ったらまずいか?

 

「一夏、お見舞いは行かないほうがいいよ。今の彼女、臆病度が増したウサギみたいだったから、一夏が行ったら多分ダメだと思う」

 

「会ったのか?」

 

「うん。昨日の夜に10分だけ面会時間をもらえたんだ。一夏に伝言を預かってる」

 

 伝言……か。

 

「『ごめんなさい。謝って許されることじゃないと分かってるけど、ごめんなさい』だって」

 

「そっか…………。ごめんなさい、か」

 

 そっか。

 

 

 

 

 いつか、傷が癒えた頃に、会ってみたいな。で、「気にすんなよ。あれくらい」って言ってやらないと、な。

 




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