インフィニット・ストラトス ~ダークサマー~   作:kageto

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に、日刊ランキング2位。
ランキングを最近になってみるようになったので見てみたら、2位。
驚きのあまりにパソコンを再起動してまで確認した。(実話)

勢いではじめたこの作品をこれほどの方に呼んで頂けて、評価していただける。とてもうれしく思います。

その感謝をこめてこの作品をつらっと書いてみました。
時系列は本編とはまったく関係のないタイミングですが、作中での5月頭らへんだと思っていただけると幸いです。




番外編01

 うっし。やるか。

 

「一夏」

 

「のほほんの~」

 

「パティシエ万歳」

「パティシエ万歳」

 

 セリフに合わせてのほほんさんとハイタッチする。タイミングばっちりだ。

 

 観客から拍手が来るが、鈴は呆れたように適当な拍手で簪は状況が理解できないのか呆然と手を叩いてる。唯一シャルだけが目を輝かせて手を叩いてくれている。うん。シャルはいい子だな。それだけで頑張れるさ。

 

「おりむ~。今日は何を作るの?」

 

「よく聞いてくれた。今日は五月に食べる伝統の和菓子。柏餅だ」

 

 意外と癖になるうまさをしてておいしいんだよ。

 

「え?柏餅って自分で作れるの?」

 

 よしまて。

 

「よーしまて。中華料理屋の娘。お前自分の実家に喧嘩を売ったぞ」

 

「そうじゃなくて、和菓子って職人さんが作ってるものじゃない。和菓子は芸術品みたいにすごいじゃないの。中華料理でもすごい腕のいい料理人しか作れない芸術的な盛り付けのものがあるでしょ?そう言った領域のものだと思ってたのよ」

 

 ふむ。言わんとすることはわからなくもないが。

 

「ふむ。なら今日はちゃんと見ておけ。意外と何とかなるものだぞ」

 

 では気を取り直して。

 

「まず、柏餅が何かを知らないであろうシャルに完成予定図というか、一般的な柏餅の画像を見せてやろう。のほほんさん」

 

「はいさ~」

 

 ネットで拾ってきた画像をプリントアウトしたものをシャルに渡してもらう。

 

「わぁ、コレが柏餅なんだ。ボク和菓子って食べたことないから楽しみだなぁ」

 

 うむ。目の輝きがヒーローショウ開始直前の子供のようだ。

 

「それでは材料から。上新粉250g、水350cc、柏の葉10枚。それから、あずき300g、砂糖240g、塩小さじに半分、しょうゆ大さじ2」

 

「今回はあんこからつくるのだ~」

 

「だからあずきは昨日から水につけてある。先にあんこから手をつけるので、コレを火にかけて、沸騰するのを待つ」

 

「それまではどうするの~」

 

 うん。水から沸騰させると時間掛かるんだよね。

 

「その間に細かいことをやっておく。まずは柏の葉を軽く洗ってから水気をしっかり取っておく。最後に餅を巻くのに汚れとかちょっと気になるだろ?」

 

「水気を取るのは何で~」

 

「水気が残ってると餅に巻いたときにべちゃってなるんだよ。なんだかんだ言っても餅だからな。んで、10枚しっかり水気を取るまでやってるとちょうど沸騰したな。このあずきを引き上げてゆで汁を捨ててから、もう一度あずきと水を入れて沸騰させる」

 

 手間だけどやっておいて損はない工程なんだ。

 

「おりむ~。何で2回もコレやるの~」

 

「これは茹でこぼしっていう方法で、コレをすることであずきのアクを抜いてるんだ。そうするとエグミが抑えられるんだ」

 

「へ~」

 

「初めて柏餅を食べるシャルもいるからな。今日はあんこをこしあんにするつもりなんだ。だからエグミを減らしてまろやかにしたいんだよ」

 

「こしあん?あんこにも種類があるの?」

 

 いい質問だシャル。

 

「おう。あずきを使った餡は基本的に2種類。あずきの粒の形の残ったつぶ餡と、粒を完全につぶして形がまったくわからなくするこしあんだ。日本ではつぶあんこしあん論争が起こるほど好みが分かれる。けど今日はシャルも初めてのあんこだからな。まろやかに仕上げやすいこしあんにしたんだ。それにつぶあんは粒が歯の間に詰まることがある。はじめてのあんこの思い出がそれというのは忍びない」

 

 お?沸いたな。

 

「茹でこぼしの済んだあずきを圧力鍋に入れて水を入れ、火にかける。そしてこのまま20~30分放置」

 

「出来上がるのを待ってるよ~。あずきくん」

 

 で、その間にやるのが。

 

「この時間を使って餅の方を進めるぞ」

 

「おもち~」

 

「まずは上新粉と水350ccを耐熱ボウルに入れてよく混ぜる。このときに上新粉がダマにならないように気を付ける」

 

「なんで耐熱ボウルなの~」

 

「それはだなっと。うん。こんなもんだな。しっかり混ざったコイツにラップをかぶせて、レンジで5分半加熱するからだ。このレンジは600wのやつだから、500wのヤツだともう少し時間を増やさないといけない」

 

「レンジって……」

 

 いや鈴。日本人のレンジ利用式調理術すげぇぞ。存外にばかにできねぇ。

 

「で、この間にあずきの茹でこぼしに使った鍋とかを洗ってしまう。こうやってスペースをどんどん広げていく」

 

 洗い終わって物をきれいに拭いて片付けたところでレンジが鳴った。

 

「温め終わったところでレンジの扉を開けておく。いくら耐熱とはいえちょっと熱いからな。で、さっき作ったスペースに大きめにラップを切って広げる。そのうえにレンジから取り出した耐熱ボウルの中身を出す。餅生地は熱いから注意な」

 

 油断するとマジで火傷しかねないんだぜ。

 

「これから生地をこねていくわけだ。広げたラップの角を一ヶ所持って、対角線の角に向け折りたたむようにしてからラップ越しに押さえ込むようにしてこねる。コレを20回ちょっと繰り返す。たぶんこの作業が一番の山場かな」

 

 とりあえず黙々とこねる。こねる。こねる。

 

「うっし。こねた生地を大きめのビニール袋に入れる。口は縛ったらダメだ。この袋を冷水を入れたボウルに、中に水が入んないように入れておく。こうやって生地に残ってる熱を取るんだ。これをまた20分くらい放置」

 

 ボウルを慎重に脇によけておく。

 

「んで、程よくなってきたあずきの作業に戻る。鍋から出したあずきを今度はミキサーに入れる」

 

「ミキサー!?」

 

「うん。ミキサー」

 

「みきさ~」

 

「つぶす手間が一気に短縮できる優れもの。コレこそ家庭クオリティ」

 

 クッキングマシン系ってホントに便利なんだって。鈴が頭を抱えてるがとりあえずスルー。あ、気が付いたらシャルと簪が調理台にかぶりつきで見てるし。マジでヒーローショウ見てる子供じゃねぇか。まぁいいけど。

 

「そこで見るのは良いけど気を付けろよー」

 

 よし、続き続き。

 

「ミキサーかけ終わったのをそのまま使ってもいいんだが、ここで一回だけ漉し器を使って漉しておく。この作業をすることで残った細かい皮を取り除く。だからこしあんって言うんだぜ。シャル」

 

「おぉー」

 

 あ、シャルが完全に子供になってる。

 

「この漉したやつを鍋に入れて火にかける。焦がさないようにゆっくり混ぜながら、ふつふつしてきたら砂糖を入れる。この時もダマにならないように注意な」

 

 丁寧に丁寧に混ぜていくと。

 

「あんが柔らかくなってきたろ?実はこのままでもいいんだけど、ここで塩としょうゆを入れる。さっきの分量でもいいんだけど、好みの味になるように微調整するといい。この状態だとおしるこです」

 

「おしるこってこうやって作ってたんだ」

 

「そうだぜ簪。意外と簡単だろ?けど今日はあんこを作るからこのまま火を弱めて中火から弱火くらいで煮詰めていく。焦げないように注意が肝心。この段階が一番焦がしやすい」

 

 するとあっという間ってわけじゃないが。

 

「ほい出来上がり。ちょっとゆるいけど冷えてくるとしっかりあんこの硬さだ。コイツをバットに広げて冷ましておく」

 

 生地はもうちょっとだから先に鍋を洗ってしまう。もう鍋は使わないしな。

 

「あんこは余る分が出るけど、それは小分けにして冷凍しとくと、水と一緒にレンジであっためて白玉入れたらぜんざいになる」

 

 うむ。生地もいい感じだな。

 

「生地が冷えたら5回くらいまとめるように捏ねて。10等分に分ける。つまり今日は一人2個だな」

 

 まぁ今回は細かく10等分する必要もないからざっくり手で分けたがな。

 

「この生地を手のひらより一回り小さいくらいの楕円形に伸ばす。麺棒を使うと簡単だ」

 

 簡単だけど10個分って意外と手間がかかる。

 

「伸ばし終わった生地にあんこをのせていくわけだが、スプーンでバットからすくってのせていく。ある程度まとまるようにのせたら、あんこを包むように生地を折りたたんで縁を閉じる」

 

 コイツがまたもくもくとやる系の作業なんだよな。

 

「最後の仕上げに柏の葉でくるんだら出来あがり」

 

「できあがり~」

 

 皿に乗せて、シャルと簪の目の前に置いてやる。二人の頭の上から覗き込むように鈴も完成品を見に来た。どうやら苦悩は終わったらしい。

 

 三人が完成品に見とれている間に残りの器具も洗ってしまう。食後の洗い物は食器だけってのが俺の主義だ。

 

「よし、外も晴れてるし中庭で食うか」

 

 影でこっそりと緑茶の準備をお願いしてた。のほほんさんの準備完了を待ってから中庭に出る。

 

 

 

 

 

「これがジャポンのオモチかぁ。この食感癖になるね。あんこもまろやかで舌の上でとろけるよ」

 

「一夏。あんたお菓子作れるのは知ってたけど、こういうのもいけるのね。料理に関してはスペック高すぎでしょ」

 

「実家でよく食べたのもおいしいけど、私はこっちの方が好き……かな」

 

「うまうま~」

 

 四者四様、高評価だな。作った甲斐がある。

 うむ。和菓子と緑茶がうまい。

 

 




誤字脱字などがありましたら報告いただけると幸いです。

このレシピでホントに柏餅は作れます。クック○ットってすごいです。

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