インフィニット・ストラトス ~ダークサマー~ 作:kageto
2014/10/29 改定しました。
捏造度がかなり下がっています。
さて、一時間目のIS基礎理論が終わり、心の中で一息つく。いくら意欲がないとはいえ課された義務をきっちり果たしておいてよかったと思う。参考書を読み込んでおかなければ、授業についていけなかったろう。
ちなみに、IS学園は入学式から授業がある。名前こそ学園だが、その実は教育機関。政府直轄施設に近い。無駄はないということだろう。学内の案内はないらしい。放課後に散策しよう。
にしても、この空気は失敗したと思う。自己紹介の内容が内容だけにどう接していいのか攻めあぐねているらしい。
現在の風潮は女尊男卑。ISという世界を揺るがす新技術が女性にしか使えないということもあり、この数年であっという間に男の地位は落ちていった。コレだからあのアーパーは。
とにかく、女尊男卑の風潮のご時世で、先ほどのような態度をとる男などほとんど居ないのだ。高校に入ったばかりの年齢だと、それこそ初めて見たといったところだろう。
「……ちょっといいか」
突然話しかけられた。が、振り向くことはしない。記憶の中と比べて、幼さはなくなっているが、聞き覚えのある声だ。
「おいっ」
反応が無いことにしびれを切らしたのか、先ほどより、声に怒気が含まれる。
「数年ぶりに会った幼馴染が声をかけているんだ。それなりの態度があるだろう!」
その言葉に、遠巻きにこちらを伺っていた女子達から、俺を非難するような囁きが聞こえてくる。
はぁ。と、深くため息をついてから、声の主、篠ノ之箒に視線を向ける。相も変わらずのポニーテールに、鋭さの増した雰囲気。俺が座っていて、あっちが立っているという構図からか、あっちの偉そうなこと。
「俺の中では、『軟弱だ』といって無理やり自身の家の剣道場に引っ張っていって無理やり鍛錬に参加させたり、用事がある時であろうと『サボるとはどういうことだ』と言って強制的に予定キャンセルさせて鍛錬に参加させたり、自分に都合が悪くなると竹刀振りかざして暴力に走るようなやつは幼馴染とは言わないんだが。それを踏まえた上で、誰が幼馴染だと?」
「私に決まっているだろう!」
言い切りやがったよ。こいつ。
「幼少から剣道やってるようなやつの竹刀の一撃を防具なしで受けると、当然骨に罅が入ってたわけだが」
「それこそ鍛錬が足りないからだろう」
そこまで言うと、先ほどまで俺に非難の視線を向けていた女子達の視線があっちに移る。
「それにだ、俺はお前ら一家のことを知り合いと認めるのも不愉快なくらいに嫌いなんだ。幼馴染と認めてやるものか」
大体だ。
「娘が無理やりに連れてきているのを知っているのに、こちらの言い分を聞くことなく鍛錬を小学生に強要する父親に、明らかに打撲レベルの怪我をしているのに、子供同士のじゃれ合いで済ます母親。自分が、今の世界がつまらないからといって、好き勝手やっていいと思って実行するアーパー姉。こちらの都合も何もかも無視してくる暴力妹。どれだけ俺が被害をこうむったと思ってやがる」
「っ……なっ。うっ、うるさい!私はそんなこと知らん!!」
遠巻きだった女子達が、目に見えて篠ノ之から距離をとる。
「つまり何が言いたいかというとだ。他の女子達はともかく、お前は俺に関わるな篠ノ之箒」
俺の宣言とも言える言葉に、周りの女子達が一斉に頷いた。
この後、固まっている篠ノ之を他所に、俺はクラスの女子達と新学期ならではの交流を楽しんだ。
いくら学園に強制的に入れられたことが不満だからって、楽しんだらいけないわけじゃないだろう?
だって女子だらけだぜ?
俺だって男の子だもん