仮面ライダーになった   作:ユウタロス

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第三話 告白

「……ショウイチを襲ったのは、天界の悪魔祓い(エクソシスト)でしょうね。本当に忌々しい連中だわ……」

「天界……?」

「ええ、そうよ。天使の住まう天の国、それが『天界』よ」

 

 蜂型のロードを倒した直後に襲撃してきた二人組の少女達の事をプリムに話した所、プリムはあからさまに不愉快そうな表情を見せ、吐き捨てる様に呟いた。

 

 プリムがここまで露骨に嫌悪感を態度で示すなんて珍しいな……

 

 しかし、“天界”に“エクソシスト”か……確かに主がどうたらと叫んでいたな……つまり、相手は狂信者の集団か。なるほど、プリムが嫌悪感を顕にするのも頷ける話だ。

 

「“魔人”って言うのは?」

「“魔人”はアギトの蔑称よ。天界の連中は、私の加護を得てアギトに覚醒した人間をそう呼ぶの。悪魔の加護を得た人間、縮めて“魔人”ってね」

「……ごめん、ちょっと、信じられない単語聞いたんだが?」

 

 今この幼女“私の加護”って言った後に“悪魔の加護”って言ったよね? 俺の聞き間違いじゃ無いよね? それはつまりプリム=悪魔と言う事になるんだけど……?

 

「ええ、あってるわよ。私は悪魔なの。もちろん、比喩的な意味では無くて種族的な意味でよ?」

「……マジか」

 

 何かしら訳ありなのは分かっていたけど、まさか人間じゃなくて悪魔だったとは……なるほど、それなら『アギト』や『ギルス』が目の敵にされてるのも理解は出来る。無論、納得は出来ないが。

 

「と言う事は、あの“ロード”達も……?」

「そう。今は亡き聖書の神が、私を殺す為に創った生体兵器。それが“ロード”達よ」

 

 うわ、じゃあ俺天界とやらに滅茶苦茶嫌われてるじゃん。いや、もちろんプリムを助ける為にギルスになった事は後悔してないけど……と言うか、聖書の神って死んでるのか? あの狂信者達はその事を知っているのだろうか?

 

 俺が一人で考えている中で、プリムは眉間にシワを寄せながら喋りだす。

 

「厄介な事に、アレ等には『女の悪魔の力を封じる』機能が付いているの。貴方と逢った時に“無力な小娘”と言ったのはそのせいよ」

 

 それであの時はやられそうになっていたのか……

 

「じゃあ、“アギト”って何なんだ?」

「私がロードに狙われた時に守ってくれるように、私の加護を得た人間が発現する超常の力よ」

「……つまり、プリムの護衛?」

「……そうなるわね。偶に私の加護無しで発現するのも居るけれど、そう言うのは大抵『ギルス』になるわ。主にアギトの血族が覚醒した場合ね」

 

 なるほど、だからプリムは俺がギルスになった時に困惑していたのか。今のプリムの話が本当なら、俺はアギトになっていた筈だったのだから。

 

 ……しかし、それならどうして俺はギルスになったのだろうか?

 

「……さてと」

 

 三角巾とエプロンを外したプリムが立ち上がり部屋を出て行こうとする。あれ、ちょ、まだ話終わって無いんだけど……

 

「? おい、どこに行くんだ?」

「決まっているじゃない、この家を出て行くのよ」

「……は? え、何で?」

「? 何故って、私の事を追い出すのでしょう?」

 

 え、いや、全然言ってる事の意味が分からないんだが……なんでそんな結論に至った?

 

「ショウイチは私がか弱い小娘だと思ったから、助けたのでしょう? なら、実はか弱いどころか人間ですら無かった私をこの家において……」

「おい、それ以上言ったらキレるぞ」

 

 余りにも抑揚が無い声にプリムが目を丸くしているが、俺だって驚いている。まさか自分がこんな声を出せるとは思わなかった……まあ、それは一旦置いておこう。まさかそんな風に思われているとは思わなかった。

 

「……良いか、プリム。お前が真っ当な奴じゃない事ぐらい最初っから分かってんだよ。そりゃあ、ホモ・サピエンス(人間)じゃ無い事には驚いたけど、今さら種族がどうたらでお前を追い出す訳無いだろうが」

「……貴方が良くっても、コウイチロウやアズサ、ホンネ達は……」

 

 なるほど、みんなは家に悪魔が居る事は許容出来ないだろう、と。

 

 ……馬鹿が。

 

「俺の家族を見縊るな、みんな知ってるんだよ。お前が普通じゃない事も、ロードに狙われてる事も、俺がギルスになった事も、全部だ」

「……え?」

 

 何を驚いているんだコイツは。事情説明も無しに見ず知らずの外人の幼女を居候させる家庭がどこにいると言うんだ。俺の知っている事は全部話したに決まってるだろうが。

 

 しかし、悪魔か……親父の伝を頼りにプリムの身元を洗ってもらっていたのだが、道理で何も出てこないはずだ。

 

「じゃ、じゃあ……知っていたなら、尚更、どうして私を受け入れたの? 私は貴方を、たった一人の愛息子を、自分の私兵に変えたのよ…?」

 

 プリムが珍しく狼狽している。なんだ、そんなに意外か?

 

「あの時それを望んだのは俺で、俺はもう18だ。自分の選択の結果を他人のせいにする訳が無いだろう」

 

 そんな恥知らずな真似をしたら、それこそ親父にぶっ飛ばされる。外神家の家訓は『自己責任』コレ一つだけだ。

 

 それに、ウチの家族は厚顔無恥なゲス野郎に優しくしてやる程のお人好しじゃあ無い。プリムが良い娘だと判断したからこそ、みんなプリムの事を大事にしているんだ。

 

「……そう……ごめんなさい。少しだけ、10分だけ一人にして頂戴……そうしたら、みんなに話すわ。私の口から」

「ん、了解」

 

 それっきり俯いて黙り込んでしまったプリムの頭を一撫でしてから自室を出て、足早に扉から離れて。

 

「……まあ、そう言う訳だから」

「……うむ」

「あらあら〜」

 

 廊下の曲がり角から聞き耳を立てていた親父とお袋に声を掛けた。全く、盗み聞きとは趣味が悪い。こんな所で油売ってないで店番やってろよ。

 

「……プリムちゃんも、大事なウチの家族だからな」

「お父さんったら、プリムちゃんが出て行こうとした時は凄くアタフタしてたのよ〜?」

「……おっと、そろそろアンパンが焼けるな」

 

 お袋の言葉に露骨に話題を変えた親父が、逃げる様に工房へと向かった。

 

「……で、どこから聞いてたのさ?」

「そうね〜、プリムちゃんが悪魔って言う所からよ〜」

「なるほど……なあ、お袋…」

「大丈夫、あんな可愛い娘を追い出したりなんてしないわ」

 

 口を開く前に、お袋の人差し指が俺の口に添えられる。なるほど、言わなくても分かる、と言う訳か。やっぱりお袋には敵わん。

 

 

          Α−Ω

 

「――そう言う訳よ。私は悪魔で、ショウイチをアギト、いえ、ギルスに変えた張本人なの……黙っていて、ごめんなさい」

 

 夕食後、一家全員が揃っている場で背中から悪魔の翼を出したプリムが自分の正体を明かした。俯きながら謝罪し、不安そうに俺の手をギュッと握りしめている。まあ、本人としてはとんでもない覚悟がいるんだろうけど……と言うか手が痛い。プリムさん力入れ過ぎです、このままでは俺の太陽の手がオシャカになってしまいます。

 

「そうか」

「うふふ、よく教えてくれたわね〜」

 

 それっきり特に何も言わない両親に、上手く聞こえなかったのかと思い、もう一度真剣な表情で自分の正体を明かすが、親父もお袋もやっぱり同じ事を言って微笑んでいる。

 

「……あの、もっとこう……“よくも私達の息子を化物にしたな、この化物め!”……とか……ないの、かしら?」

「息子が自分で選んだ道だ、私達に出来る事は応援だけだ」

「そもそも、こんな可愛い娘を見殺しになんてしてたら、それこそ絶縁ものよ〜?」

「…ホ、ホンネは……」

「ねえねえ、プーちゃんプーちゃん! その羽触っていい!?」

「え、や、ちょっ、んぅ! ホ、ホンネ、そこは……!」

 

 親父とお袋の言葉に唖然としたプリムが姉さんの方に向き直るが、我が姉上はプリムの翼に興味津々で、本人の了承も得ずにベッタベタ翼を触っている。さすが姉上、外神家一のマイペースっぷりは伊達ではない。

 

「お〜! ツヤっとしつつもフワッとしてる〜! 面白い〜!」

「ひぅ!? ホンネ、止め…! ほんとに、そこ、ダメ…ッ!」

「ここか〜ここがええむぎゅうっ」

 

 いい加減プリムが困っていたので姉さんのフードを引っ張って引き剥がす。なんか涙目で唸ってるが、いきなりセクハラする方が悪い。チラッとプリムの方を見やれば、この一家は一体どういう神経をしてるんだと盛大に目で語っていた。

 

「な? 言った通りだっただろう?」

「……そ、そうね……」

 

 親父もお袋も姉さんも、生まれがどうたらこうたらで相手を非難する事は決してしない、俺の自慢の家族だ。この家にはプリムを追い出そうとする輩は一人とて存在しない。

 

 ……まあ、そんな訳だからさ。

 

「俺が責任持ってお前の事を守り抜くから、お前はずっとこの家にいろ」

 

 呼吸を整えていたプリムにそう告げた途端、リビングは水を打った様に静まり返り、皆の視線が一斉に俺へと注がれた。

 

 え、何? 何が起きたの?

 

「……ぅ」

「うむ、うむ」

「あらあら〜」

「お〜」

 

 プリムは一瞬呆けた顔をした後に良く熟れた林檎の如く真っ赤になり。

 腕組みをしていた親父は珍しく目を見開いて何度も頷き。

 お袋は“お赤飯あったかしら〜♪”等と鼻歌混じりに台所へ消え。

 姉さんは“しょーいちも隅におけませんな〜”と言いながら肘で俺の脇腹をグリグリと押してくる。

 

 ……何かいらん事言ってしまったのだろうか?

 




>外神翔一
主人公。実は半分人間辞めていた。
本人的には下心無しでウチに居ろと言ったのだが、どう見てもプロポーズです本当にありがとうございました。
実はまだ秘密があるっぽい。

>プリム・レディ
ヒロイン。実は悪魔だった。
かなり勇気を振り絞って自分の正体を明かしたが、外神一家全員に軽くスルーされてびっくりした。
その上、いきなり翔一君にプロポーズされて2倍びっくりした。
翼の付け根が敏感。
実はまだ秘密があるっぽい。

>外神一家の頭の中
父:披露宴はどの会場が良いだろうか……
母:孫の顔が楽しみ。
姉:姪っ子が良いなぁ。
主:プリムには指一本触れさせん! 来るなら来い、ロードめ!!
嫁:あわわわわわわわわわ……
車:ご主人様、整備まだかなぁ……

>アギト
今作においてはプリムの『加護』を与えられた人間にのみ発現する“プリムを護る為の超常の力”。
覚醒すると『加護』=『悪魔の因子』を取り込んだ、人と悪魔の間の存在である半人半魔になる。
簡単に言っちゃえばメガテンの人修羅である。
この人から悪魔に変化する性質が『悪魔の駒』のモデルになっている。
アギトに覚醒する前後は超能力が使用出来る。

>ロード怪人
今作においては聖書の神が創り出した“プリム抹殺用超越生命体”。
聖書の神の死と共に煉獄内にて封印・破棄されていたのだが、何らかの原因によって生き残りが再起動した。
特殊能力として全ロード怪人が『女悪魔の異能を封じる能力』を持っている為、ロード怪人と相対する際のプリムは見た目相応程度の力しか使えない。
プリム及び『プリムの加護』を持つ者を抹殺するように設定されている。
天界内での立場は公安のようなモノで、ロード達の行動には燐天使も干渉出来ない。



はい、と言う訳で第三話でした。
今回のサブタイトルはダブルミーニングになってます(笑)

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