仮面ライダーになった   作:ユウタロス

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第十一話 仮面ライダーの評判

「あ、そうだ。部長、朱乃さん」

「? 何かしら、イッセー?」

「どうかしましたか?」

「あの~、外神先輩って、どんな人なんですか? 確か部長達のクラスメイトなんですよね?」

 

 三勢力会談から数日、何時もの如くオカルト研究会の部室にてグレモリー眷族達が各々自由に過ごしていた所で、不意に兵藤一誠がリアス・グレモリーに問いかけた。その問いを聞いた眷族達は、それまでやっていた作業を中断して二人の方を向き直る。

 

「翔一様は、魔人でありながら聖人でもあらせられるのですよね? その上『四大天使』様方全員の……」

「それは確かに気になるね……特に、私は一度迷惑をかけてしまっているしね」

 

 全員が興味を示すが、その中でも特に興味深々なのがアーシア・アルジェントとゼノヴィアの二人。何せ翔一は歴史上初めての『原初の悪魔(リリス)』と『四大天使(アークエンジェル)』の加護を得た人間、元とは言え、聖職者ならば興味があって当然だろう。その上、ゼノヴィアに至っては一度だけとは言え、翔一に対して襲い掛かっているのである。一応謝罪は受け入れられているが、これで気にならない方がおかしい。

 

「外神君はどんな人か、ねぇ……」

「そうですわねぇ……」

 

 リアスと、同じく翔一のクラスメイトである朱乃はこめかみに指を当ててクラスでの翔一の姿を思い描いてみる。

 

「う~ん、成績は上の下位ね。真面目で礼儀正しいし。取り敢えず、平均よりは優秀よね?」

「ええ。それと、担任の山田先生とは親しい付き合いのようですわよ?」

「え!? “駒王学園巨乳番付”第2位の、山田摩耶先生とですか!?」

 

 目を見開いた一誠の姿に、やはり食い付くのはソコかとオカルト研究会一同が揃って苦笑する。

 

「……外神先輩と言えば、やはり『アウターゴッド』は外せません」

 

 黙々と菓子パンを頬張っていた塔城小猫が、菓子パンの入っていた紙袋を皆に見えるように掲げて口を開く。

 

「ああ、その店なら僕も知っているよ。運動部のクラスメイトが毎朝買いに行く事で有名だからね。そうか、あの店か……確かに、言われてみれば『アウターゴッド(外の神)』だもんね」

「……ああ! そう言えば元浜の奴も毎日食ってるな」

 

 ウンウンと頷きながらの木場祐斗の話を聞いた一誠が、ロリコン眼鏡の友人が常に美味そうに口にしていたパンの袋にも『アウターゴッド』と書いてあった事を思い出して声をあげる。

 

「むぅ、元とは言え教会の悪魔祓いとしては複雑な店名だが……例えば、人間関係等はどうなんだ?」

 

 キリスト教徒(一神教徒)としては不敬極まり無い店名に眉根をひそめるゼノヴィアと苦笑を浮かべるアーシア。

 

「あまり目立たない人ね。“知る人ぞ知る!”とでも言えば良いのかしら……何と言うか、秘匿されてる様な感じがするわね」

「そう言われればそうですわねぇ……彼の周囲の、特に女子はそれが顕著ですわ。今にして思えば、彼に話し掛ける時は常に特定の女子生徒達が近くに居ましたわね」

「……あ、言われてみれば、確かに同じ様な顔ぶれが常に近くに居たわね!」

 

 思い返してみれば、リアスや朱乃以外の女子生徒が翔一に話し掛ける際も、常に特定の三人が翔一を中心とした正三角形を描くように配置していたのである。

 

「……それって、外神先輩を監視しているって事ですか?」

 

 眉をひそめながらの一誠の問いかけに、二人は小考してから首を横に振る。

 

「……アレは、どちらかと言うと私達を見ていた気がするわね……」

「ですわね。風の噂によれば、外神君にはファンクラブがあるそうですし、彼女達もその会員なのかしら?」

「ま、マジっすか……ファンクラブ……」

 

 まさかのファンクラブ持ちと言う情報に、変態三人衆の一人扱いされている自分との差を知って項垂れる一誠。そんな一誠の肩を、同じくファンクラブ持ちの祐斗が「まあまあ」と言いながら苦笑と共に叩く。

 無論、まったくもってフォローになっていない為に一誠はその手を払い除けたが。

 

「ふぇぇぇ……外神先輩って、スゴい人なんですね……聞いた話によれば、僕の『停止世界の邪眼』の中でも動けていたらしいですし」

「ああ、うん。使っていたのが『破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)』だったとは言え、ギルスの時でさえ私とイリナの二人がかりをあしらわれたしね……まあ、コカビエルを倒した時点で私達よりも強い訳だし、当然と言えば当然なんだがね。アレでまだ不完全体だと言うのだから、恐ろしい話だよ……うん? どうした皆?」

 

 目をぱちくりさせながら感嘆の声をあげるギャスパーに、畏怖するかの様な表情で同意するゼノヴィア。だが、ゼノヴィアの放った“不完全体”と言う言葉に、彼女を除いた全員が首を傾げる。

 

「あの、ゼノヴィアさん。翔一様が“不完全体”とは、どういう意味なのですか?」

「なんだ、皆知らなかったのか? 翔一様は四大天使様達の『加護』を得てはいるが、今現在使用出来るのはミカエル様の『火』の力だけなんだぞ? ガヴリエル様の『加護』は相性が悪いらしく再生能力としてしか発現されていない様だが、ウリエル様やラファエル様の『加護』は恐らく発現出来るそうだ。三つの内の一つの力しか扱えていないのだから、“不完全体”と言う他無いだろう?」

「ちょちょ、ちょっと、ゼノヴィア!? あなた、どこでそんな情報を……」

 

 何の気無しにポロリととんでもない情報を漏らすゼノヴィアに、リアスが慌てて問い詰める。すると、ゼノヴィアは平然とした表情でこう答えた。

 

「うん? 普通にアザゼルに聞いたら教えてくれたぞ? リアス部長は聞いていないのか?」

外神翔一(人間)としてならともかく、アギト(リリスの剣)としての力を本人の了承を得ずに聞き出すなんて、そんな畏れ多い事が出来る訳無いでしょう!? アギトって下手な上級悪魔よりも冥界では権威があるのよ!?」

 

 ゼノヴィアは至極不思議そうに何故アザゼルから何も聞いていないのかとリアスに問うが、リアスとしては何故そんな畏れ多い真似を平然と出来るのかが理解出来ない。しかし転生悪魔、それも悪魔祓いの中でも特に突飛な思考回路の持ち主であるゼノヴィアと、ソロモン七十二柱序列五十六位グレモリー家の直系である、生粋の純血上級悪魔であるリアスとの間では、アギトに対しての認識に天と地程の差がある為に仕方がない事なのである。

 

 ……もっとも、翔一は“聖人”でもある為、ゼノヴィアの態度は教会側においても不遜極まり無い事に変わりは無いのだが。

 

「そう言えば一誠君、どうして急に外神先輩について質問したんだい?」

 

 ガミガミとゼノヴィアにお説教と悪魔の常識を叩き込むリアスを尻目に、祐斗がこの話題を振った一誠に何気無く問うてみる。

 

「ん? ああ、実は桐生、俺のクラスメイトに外神先輩について聞かれてさ。ほら、駒王協定の日にショッピングモールで外神先輩に会った話をしただろ? それを元浜達と話してたら、ソイツが矢鱈と食い付いてきてさ。んで、他に何か知らないかと聞かれたんだけど、他に話せる事が無くてさ。俺って助けてもらったのに外神先輩の事何にも知らないなーと思ったんだよ……そう言えば、何でアイツはあんなに外神先輩の事を聞いてたんだろ…」

「そりゃお前、自分を助けてくれた白馬の王子様が気にならない女なんて居ないだろ。アイツの場合はアフターケアまでやってるしな」

「白馬の王子様……? って、アザゼル先生!」

「よっ! 何か面白い会話してるじゃねーか、俺も混ぜろよ」

 

 極々自然に二人の会話に混ざっていたアザゼルに驚愕する一誠と祐斗。そんな二人の驚愕を他所に、何処からともなく取り出したチョココロネ片手にアザゼルはソファーに腰かける。勿論、チョココロネはアウターゴッドの品だ。

 

「アザゼル先生、白馬の王子様とはどういう事なんですか?」

「お前さんのクラスの女子、桐生で合ってたよな? アイツ、前にロードに襲われてんだよ」

「な…襲われた!? 桐生がですか!?」

「おう、そこに颯爽と現れて助けたのがショウイチでな。まあ、一目惚れだな、アイツ地味にイケメンだし。は日常茶飯事過ぎて気付いて無いらしいがな」

 

 ケラケラと笑いながらアザゼルは言うが、オカルト研究会の部員にしてみれば他人事では無い。何せ自分達の知らない所で自分達の友人が危うく命を落とそうとしていたのだ。この町の領主を任命されているリアス、元聖職者であり、桐生愛華の友人でもあるアーシアとゼノヴィアにとっては特に堪える話である事は想像に難くない。

 

「まあ、そう落ち込むな。今の所この町でロードの被害者は出てないんだし」

「そう言う問題では無いわ。私はこの駒王町の領主なのよ? 領主の使命は何よりも領民の安全を守る事なのに、一誠の時と言い、私は彼等が襲われている事にも気付けなかった……」

「……ロードによる被害は、教会でも問題になっているよ。彼等は『リリスの加護』を持つと言うだけで、善悪覚醒未覚醒関係無しに人を殺す。聖職者の間でも、悔い改める処か無垢な赤子でさえ手にかけるロードの存在については否定的だ……もっとも、ロードの活動は主の勅命である為に誰も干渉出来ないんだがね」

「あー……そもそも、アギトってのはリリスの奴がロードを殺す為に生み出した存在だぞ? アイツ等はロードを察知する能力が飛び抜けて優秀だし、その中でもショウイチの奴は特に探知能力が優れてんだ。むしろアイツよりも早くロードの察知出来たらドン引きモノだぞ?」

 

 表情を暗くした二人に、アザゼルは頭をポリポリ掻きながらフォローするが、重くなった空気はその程度では払拭されない。

 

「……はあ。しょうがねぇ、ここは一つショウイチのとっておきの情報を教えてやろう!」

「とっておきの情報?」

 

 首を傾げる一誠に、よくぞ聞いてくれたとでも言いたげにニヤリと笑うアザゼル。

 

「ここだけの話なんだがな、ショウイチの奴は――ロリコンなんだ」

「「「「「「「ダウト」」」」」」」

 

 アザゼルの言葉を一斉に切り捨てるオカ研一同。アザゼルの発言は事実以外の何物でも無いのだが、ここに来て如実に信頼度の差が響いてくる。翔一も伊達に人助けをやっている訳では無いのだ。

 

「いやいやいや、マジなんだって!」

「あり得ないわね、あの外神君よ?」

「ええ、品行方正を絵に描いたような彼に限って、それは無いでしょう」

「……アウターゴッドのお会計の時に良く会いますが、あの人からはいやらしい視線は一切感じません」

「僕も外神先輩の事を良く知っている訳じゃ無いけど、ちょっと想像出来ませんね」

「……いや、あながち嘘でも無いのかも……」

「え、イッセーさん?」

「イッセー、どういう意味だい?」

「ちょっとイッセー、それ本当?」

「イッセー君が嘘を吐くとは思えませんし……」

「うーん、ちょっと興味があるね」

「おいお前ら、何で俺の発言だと信じない?」

 

 アザゼルが幾ら言っても取り合おうとしなかったと言うのに、一誠が思わせ振りな発言をした途端に掌を返した様に食い付くオカ研一同。やはり信頼度の差は大きい。

 

「いや、実は……」

「イッセー先輩、どうしたんですか?」

「あ、いや、何でもないぞギャスパー。それで、外神先輩のロリコン疑惑なんだけど…元浜の奴が、外神先輩は自分と同じ気配がするって言ってたんだ。それに、山田先生って童顔で背が低めだろ? だから、そんな事もあるんじゃないかなって……」

 

 ショッピングモールでの事を話そうと思った一誠だが、サーゼクスからプリムの事は秘密にする様に言われていた事を思い出して慌てて誤魔化した。

 

「う~ん、確かに山田先生とは親密そうだけど、アレはどちらかと言えば親愛の情だと思うわよ?」

「ですわね。ちょっと外神君がロリコンだと決め付けるには早計な気がしますわ」

「いや、早計じゃないんだって! 事実なんだって!」

 

 その後もアザゼルは必死に“外神翔一ロリコン説”を唱え続けるが、結局プリムの事を知っている一誠以外は誰一人として信じる事は無かったのであった。

 

 




>外神翔一
主人公。史上初の『リリスの加護』と『四大天使の加護』をその身に宿した“聖魔人”と呼ぶべきイレギュラーなアギト。
危うく学校でも“外神翔一ロリコン説”が広まりそうになったが、日頃の行いのお陰で命拾いしたロリコン。
最近とうとうヒロインその1と一緒にお風呂に入った模様。爆ぜろロリコン。

イメージは髪型をネープレスにした『斬魔大聖デモンベイン』の『大十字九郎』。なお、九郎は翔一のモデルの一人。個人的に『宇宙一カッコいいロリコン』だと思ってる。


>プリム・レディ
ヒロインその1。正体は原初の悪魔リリス。
当初はSっ気溢れるミステリアス系ヒロインだったのに、最早ただの色ボケロリババァと化してきた金髪幼女。
最近とうとう『お風呂にする? ご飯にする? それとも……わ・た・し?』で念願の『お風呂でお前』を選ばれた。翔一に頭を洗って貰ったその晩、興奮のあまり知恵熱で寝込んだ。
なお、真実は二人の仲を更に発展させようと目論んだ外神ファミリーの策略によって、本音がわざと盛大にひっくり返した小麦粉を翔一と共に頭から引っ被り、あずさによって翔一諸共にお風呂に搬入された模様。

イメージは目付きを若干キツくした『パズドラ』の『リリス』。プリム(リリス)をヒロインにしようと思ったのは、作者が初めてレアガチャで出したのがリリスだったから。ヴァルキリーだったらロスヴァイセさんがヒロインその1のポジションに居た可能性もある。



はい、と言う訳で第十一話でした。

今回はリクエストのあった駒王学園(オカ研)での翔一君の評判回でした。実質的に番外編見たいな感じですね。

活動報告の方に『仮面ライダーになった』の目安箱を作りますので「こんな場面が見たいな~」とかあったら気軽に書いてみて下さい。ネタが無いとkゲフンゲフン……折を見て執筆してみようかと思いますので。

次回も一週間以内に更新したいと思います。御評価・御感想、絶賛募集中です!


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