日曜日、俺とプリムは二人でショッピングモールに遊びに来ていた。
普段は休日返上で息子をこき使う親父も珍しく丸一日オフにしてくれたので、プリムの要望通りにショッピングに来たのだ。勿論、先に深見家に行って完成した零戦のプラモをほっぽちゃんに渡しておいた。
さて、そんなこんなで二人してウィンドウショッピングに勤しんでいた俺とプリムだが、現在は非常に険悪な雰囲気になりながらフードコートの一角に陣取っている。
あ、一応断っておくが、険悪になっているのは俺とプリム間の空気ではない。
「……」
ぎりぎりぎしぎし。額に青筋を立てたプリムの歯軋りがフードコート一帯に響き渡っている。休日の昼時と言う事も相まって、今俺達が居る駒王町で最も大きいショッピングセンターは大変な賑わいを見せているのだが、不思議と俺達の周囲の席には誰一人として座ろうとしない。フシギダナー、ナンデダロウナー……
「リリ…いえ、プリム様。本日はお目通り頂けた事、深く感謝して…」
「陳腐な定型文で私の
苛つきを微塵も隠す事無く、キツい口調で紅髪の男性――我がクラスメイト、リアス・グレモリーの兄であり、悪魔の暮らす冥界を統べる四大魔王が一人、サーゼクス・ルシファーの社交辞令をバッサリと斬り捨てる。
「はっ! 申し訳ございません!」
ただのショッピングで何故にこんな険悪な雰囲気になっているのか理解していただけと思うので、次はここまでの経緯を説明しよう。と言っても、大した理由ではない。精々が一行で済む簡単な話だ。
――買い物に来たら、魔王と遭遇したでござる。
“いや、それはおかしい”と思うだろう。誰だってそー思う、俺だってそー思う。だが事実だ。俺とプリムはショッピングモールのゲームセンターで一緒にプリクラを撮っていたのだが、筐体の目の前に設置してある両替機の所でガマ口を持ったサーゼクス・ルシファーとバッタリと遭遇したのだ。そのまま見なかった振りをしてやり過ごそうと思ったのにサーゼクスが“お待ちください!”とか大声で叫んだからまあ大変。ざわざわと物見遊山な連中が集まって来ちゃったので、慌ててフードコートに駆け込んで今に至る訳である。
どうでも良いが、魔王がゲームセンターに居る事よりもガマ口財布使ってるのに驚いた。
プリムの放つ割りと洒落になら無いレベルのプレッシャーに充てられ、サーゼクス・ルシファーの付き人をやっていたであろう兵藤一誠は可哀想に顔面を蒼白にさせてガタガタと震えている。まあ、先日のコカビエル相手に苦戦していた兵藤には少々キツいか……仕方ない。
「……兵藤。金は後で払ってやるから、何か食い物買って来い。食い物来るまで戻ってくるなよ、いいな?」
「ッ! は、はい!」
これ幸いとばかりに兵藤が店舗目掛けて駆け出したのを確認した所で、プリムは再び口を開く。しかし、何故に兵藤はチラチラと俺の方を見ていたのだろうか? ロリコンとか思われてたら嫌だなぁ……
「私の記憶違いじゃなければ、
「滅相もございません! プリム様と出会った事は全くの偶然でございます」
走り去る兵藤の背中を片目でチラリと一瞥すると、サーゼクスを睨み付けながらプリムは毒付く。それを聞いたサーゼクスは大慌てで否定するが、プリムはどうでも良さげにフンッと鼻を鳴らしてこちらにしなだれかかって来る。どうでも良いが、いい加減周囲の視線が鬱陶しい。せめて何処か別の場所に移動してから話し合いをしてもらえないだろうか? 認識阻害だなんだと言っても、雰囲気まで誤魔化せる訳じゃないんだから……
「……まあいいわ、サッサと要件を言いなさい。偶然遭遇したとはいえ、私の要求を無視してまで話し掛けてきたのだから、当然理由があるのでしょう? 繰り返すけれど、私は一分一秒たりと無駄にしたくないの」
「承知しました。では、単刀直入に……」
何故か俺の方を振り向くサーゼクス、表情には遊びが一切見受けられない。厄介事は勘弁して欲しいんだが……
「外神翔一君――どうか私に、変身した姿を見せてもらえないだろうか?」
「……まあ、別に構わないが……」
「本当かい!?」
構わないと言った所、少年の様にはしゃぐサーゼクス。そのまま周囲に先程よりも遥かに強力な認識阻害の結界を展開したので変身して見せたところ、ハッピー○ットのスポ○ジ・ボブ人形を手に入れた子供のように騒ぎまくる。いい年齢こいた大人が何をやっているんだと若干引いた。
サーゼクスはアギト状態の俺と握手をしている写真を撮り終わると、満足したのか結界を解除して料理を持って右往左往している兵藤を連れて帰っていった。
……彼奴は何がしたかったのだろうか?
Α‐Ω
深夜、アザゼルとミカエルに頼まれていた顔見せの為に和平会談の会場である駒王学園までやって来たのだが。
「何か凄い事になってるな……」
上空を見れば天使天使天使悪魔悪魔悪魔。地面には堕天使堕天使堕天使、そして仮面ライダーの様な風体の青い機械的な鎧。尋常じゃない警備員の数だ。
まあ、三勢力のトップ達がこの場に揃っているのだから当然と言えば当然なんだが、凄まじい物々しさだ。訳を知らない人が目にすれば、確実にハルマゲドンだと勘違いしそうな気がする。まあいい、今日の俺はあくまで“ゲスト”だ、顔合わせして終わりなのだからやる事やって帰ろう。
校門前に陣取っていた堕天使と青いパワードスーツの人に生徒手帳で身分証明を済ませて校舎に入る。校舎に入るまでの間、上空の天使と悪魔にガッツリ見られていたのには気付かなかったフリで済ませる。
とことこ歩いて集合予定の会議室前に到着。
『和平……くなる。そう……種の存続……るかもしれ……』
おや、何か話し声が聞こえるな。もう和平交渉が始まってるのか? 一応、指定された時間の五分前には来たはずなんだが…まあいい、サッサと顔見せを済まして帰ろう。明日も四時起きなんだ、早く寝たい。いくら半分悪魔とは言え、眠いものは眠いのだから。
「失礼す……」
「――が一番です! 部長とエッチがしたいです!」
「……は?」
俺は殺し合い真っ只中の三竦みの勢力の和平交渉の場を訪れた筈だったが、扉を開けたら全力で己の欲望をぶちまけている
「外神君!? どうして貴方がここに?」
「あの警備をすり抜けて来れる訳が……」
リアス・グレモリーと生徒会長が困惑気味な表情を浮かべている。あれ、俺の事は知らされていないのか……なるほど、道理で昼間に兵藤が戸惑っていた訳だ。自分の所のボスがただの一般人(と言う事になってる)俺の連れに頭を下げてたのだから。まあ、それは置いておいて。
「おい
「お前今なんて書いてアザゼルって……ああ、あってるよ。今は世界に影響を与えかねない若造達の意見を聞いてんだ、“世界をどうしたい?”ってな」
……それでどうしてああ言う発言になるのか甚だ疑問なんだが……
「あ、あの、サーゼクス様。何故ここに彼が?」
「む、そう言えば君達には知らせていなかったね。彼が君達とコカビエルの戦いに乱入してきたギルスだよ」
「はぁぁぁぁぁぁぁ!? と、外神先輩が、あの時の!?」
グレモリーへのサーゼクスの言葉に絶叫する兵藤。大変喧しい。
おいグレモリー、自分の部下の教育ぐらい済ませてから会議に出ろよ、喧しくてかなわないぞ……まあいい、とりあえず自己紹介だな。
「外神翔一、三年生だ。そこのリアス・グレモリーのクラスメイトをやっている。ついでに元ギルスで今はアギトだ」
俺の自己紹介を聞いた連中は三勢力のボスを除いて全員が絶句している。おい、報連相はどうなってるんだ。俺が隠せって言ったのは
「……あの、外神く、いえ、外神様。“元ギルス”とはどういう意味なのでしょう?」
謙った言葉遣いで聞いてきたのは生徒会長。まあ、悪魔的には
「生徒会長、無理に謙るのは無しで頼む。俺はアギトの前に皆と同じ高校生のつもりなんでな」
「ですが……いえ、分かりました。それで、外神君。“元”とはどういう事ですか?」
よし、生徒会長は謙るのを止めてくれたな、敬語は元々だし。さて、まず何から説明したものか……
「――それは俺も気になるな。ギルスとはアギトの不完全体だ。再生能力こそ持ち合わせているが、スペック的にはアギトの下位互換。超越種ならばアギトに勝るが、それでも多少上回る程度。無論、これは普通のアギトとギルスにおける話だ、『リリスの加護』に加えて『熾天使』の内『四大天使』全員の『加護』を持つ君には当てはまるべくも無い。そんな君がアギトになった……つまり、君は“あの時よりも更に強くなった”と、こう判断して良いんだな?」
背後からの声に振り向いてみれば、そこに居たのはいつぞやの銀髪少年。長々とした解説、ご苦労様です。
「『熾天使の加護』だと!? バカな、アギトが、魔人が主の寵愛者になれるわけが無い!! 私やアーシアの時とはレベルが違うんだぞ!? ましてや『四大天使』全員の『加護』など……」
青髪少女が叫ぶ。まあ、元聖職者的には信じられないんだろう、現に金髪のシスター少女やミカエルの付き添いの天使も絶句してるし。
「落ち着きなさい、ゼノヴィア。彼の話は全て事実です。現に翔一君は私の『加護』を解放した事によって、聖と魔の力を併せ持つ、全く新しいアギトの力に目覚めました。そちらの木場祐斗君の聖魔剣と同じ、さしずめ“聖魔人”とでも呼ぶべき力に」
ミカエルの肯定に言葉も出ないようで、青髪少女ゼノヴィアは口を金魚の様にパクパクとしている……まあ、それは良いのだが……
「ほう! ほう!! 素晴らしいよ外神翔一!! いやはや、今代の赤龍帝がこのザマで失望していたんだが、まさかこんな逸材に出会えるとは思わなかったぞ! どうだろう、今すぐ俺と戦わないか!?」
戦いません。何が悲しくって意味も無く明らかにヤバい部類の奴と戦わなくてはならんのか。そう断ったのだがヴァーリ少年、目がキラキラと無邪気に輝いていて今にも飛び掛かって来そうです。
……何なのこの子?
「……アザゼル、お前子供にどういう教育をしてんだ?」
「止めろヴァーリ! ったく、この戦闘狂は……ああ、ちょうどいい。おいショウイチ、お前は世界をどうしたい? お前はその力を何に使う? 金か名誉か、戦いか。はたまたそこの赤龍帝の様に女の為か?」
「おい話を逸らすな駄目オヤジ」
人の苦情を耳を塞ぎながら“聞こえんなー”等と宣うアザゼル、グーで殴り飛ばしたい。親だったら子供の間違いはぶっ飛ばしてでも矯正しろと……まあいい、後でプリムに教えてもらった天界時代のネタで弄ってやる。
さて、“世界をどうしたいか”ねぇ……まず“世界”ってどういう意味合いなんだ? 俺個人にとっての世界なのか、それとも文字通りザ・ワールドなのか。それによって全然違うんだが……
「……ん?」
なんと答えた物かと考えていた所で、俺とアザゼルとミカエル、サーゼクスと黒髪ツインテールの少女、ヴァーリとグレモリー、二年の……名前が分からないがオカルト研究会の金髪少年と、何故かいつぞやの大剣を空中から取り出したゼノヴィアを除いた全員の動きがピタリと止まり、微動だにしなくなった。
……え、何事?
>G3システム
本作においてはグリゴリの開発した『第三世代型対人外戦闘用複合人工神器』、通称『Generation-3』。本体である鎧型人工神器と武装型人工神器を組み合わせて運用される。
原作『仮面ライダーアギト』での正式名称は『第三世代型対未確認生命体戦闘用強化外筋及び外骨格』。
原作では電気エネルギーで稼働していたが、本作では光力をエネルギー源としているため堕天使が装着する場合は装着者の光力が保つ限り無制限に稼働できる。
戦闘能力は中級堕天使相当で主に人間の構成員が使用するが、身体にそれなりの負担が掛かるため、鍛練を積んだ者でないとマトモに戦えない。なお、『G3-X』と言う上級堕天使相当の戦闘能力を持つ指揮官機が存在しているが、G3よりも更に負担が激しい為、中級堕天使以上の実力者にのみ運用が許可されている。
基本武装は自動小銃型人工神器『GM-01 スコーピオン』と高周波振動剣型人工神器『GS-03 デストロイヤー』。『GM-01 スコーピオン』は実弾と光力弾の切り替えが可能。
なお、『GS-03 デストロイヤー』は『閃光と暗黒の龍絶剣』の簡易量産型と言う設定だったりする。
余談だが、『GS-03 デストロイヤー』は原作において初登場から最終話までの間、
はい、と言うわけで第九話でした。
喜べみんな、G3だぞ! なお、襲撃時は『停止世界の邪眼』でまとめて無力化されている模様(オイ
さて、そろそろアニメ第三期の放送が間近に迫ってきましたね。ぬるぬる動くロスヴァイセさんやオーフィスたんや小猫ちゃんが見られるかと思うと胸熱です。
7月には『COMICリュウ』にて大人気連載中のモン娘達のいちゃラブを描いた『オカヤド』先生の大人気作品『モンスター娘のいる日常』もアニメ化しますし、今年は当たり年ですね!!(露骨過ぎるステマ
次回も一週間以内に更新します。御読了ありがとうございました!!