ばいにんっ 咲-Saki-   作:磯 

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16.ばいにんテール(五)

16.ばいにんテール(五)

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 07:58

 

 

 倒された咲の和了形を、京太郎は何気なく見下ろす。その眉目はかすかに歪んでいる。憤りや悔いではなく、不可解さによるものである。

 

 {一一赤五六七4[5]678889} 

 

 ツモ:{8}

 

({一8}の受け――実質地獄タンキかよ)

 

 愚形の見本のような受けだった。赤二枚の役なしで立直を打たなかった理由もよくわかる。しかし仮聴というには、咲の切り出しに違和感がある。京太郎は咲の河に目を向けつつ、記憶を逆さに回した。

 

 咲

 河:{北發⑧中21}

   {九4九西}

 

({西}はツモ切り。最後の手出しは{4九}の順だった。あの形から{4}を落としってのは、さすがに筋が悪すぎる。ふつうは{9}だ。それなら、打{4}の時点じゃ索子のブロックはまだ決まってなかったってことか? その手前の捌きはどんなだ? 最後に埋まった索子はなんだ? {44赤568889}――もしくは{44678889}、じゃなけりゃ{44赤578889}? どっちにしても、そこまで{9}を残しておく手順がわかんねえ。最後に入れた牌がどれかはおぼえてねえし――テキトウか? それにしたって、仕掛けた照さんが競り負けたってのは――)

 

「あ、あの」

「ん」

 

 顔を曇らせる京太郎へ、遠慮がちに問いかけたのは咲である。先に渡した点棒とチップをのたくたと手元の収納に収めながら、彼女の瞳は泳いでいた。

 

「どうか……した、かな?」

 

 河を洗って次局へ移ればいいものを、京太郎の視線を気にして動けない様子だった。

 

「ああいや、なんでもない」

 

 と、京太郎は答えた。軽く手を振って、卓上の牌をラシャの下に追い落とす。

 

「次いくか」

「う、うん」

 

 京太郎はおずおずとボタンを押す咲の指を眺めた。

 

(四枚遣い――そういや、今日はよく暗槓が出てる。東二で一回、東三で一回、いまは照さん、それに槓子じゃないけど、(こいつ)も)

 

 常識的に考えれば、安易な槓はただリスクを増やすだけの選択である。京太郎自身は月子から、『聴牌で待ちが広ければしても良いけど、基本的にはしないこと。受けを減らして槓子抱えるのもおすすめしない』とだけ教えられている。とくだん反論は思い浮かばない言葉だった。そもそも普通は、暗槓自体あまり出るものでもない。

 

()()()()

 

 と、京太郎は口の中で繰り返した。また咲を見た。

 思考に、違和感が兆した。

 

(馬鹿馬鹿しいって、思うこと自体馬鹿馬鹿しいんだけどな。まあ、あるならあるんだろ)

 

 確証はない。かれの閃きが事実だったとしても、それを証明する手立てはない。結果がどれだけ堆く積み重ねられても、かれが息する世界の常識は、照や月子の――そして、もしかしたら咲の――住まう領域に触れることはない。

 京太郎はほんの少しだけ彼女らを眩く思う。

 あの雪の日、これと心を思い定めたときから、かれは少しだけ変わった。名前も知らずに出会い別れた少女の言葉か、それとも月子の入れた檄か、あるいは他の何か――変化をもたらした直接の要因は京太郎も知らない。

 

(片思いってのは、つらいな)

 

 洗牌の音に耳を澄ませて、かれは珈琲を一口啜った。

 

(楽しいけどな)

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 07:58

 

 

 東四局二本場 ドラ:{九}(ドラ表示牌:{八})

 【南家】花田 煌  :20200

     チップ:-3

 【西家】宮永 照  :34600

     チップ:-1

 【北家】須賀 京太郎:41500

     チップ:-1

 【東家】宮永 咲  : 3700<割れ目>

     チップ:+5

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 07:58

 

 

 咲が振った賽の出目は、自らの山を割れ目に選んだ。捲れた牌が示す懸賞(ドラ)は{九}である。各々が山を切り崩しつつ、点棒の状況を確認する。

 着順は東一局から変わらず京太郎がトップを維持しているものの、追う照はすでにかれの背を叩ける位置にいた。積み棒も考慮すれば3200以上の直撃か5200以上の自摸和了で逆転は成る。やや離れて花田が後ろに付け、一人沈みの咲はしかし、親の割れ目である。満貫の自摸和了が達成されれば一気に二着に届く。仮に跳満が出れば京太郎からの出和了か自摸でトップに躍り出ることもありえる。

 

 今局、京太郎が意識したのは咲の親を蹴ることだった。照への警戒を解くわけではないけれども、ラス目の親が割れ目という状況は、現時点でトップのかれにしてみればリスクしかない。割れ目かつドボンなしのルールは逆転を容易く招く。裏を返せばリードの維持は難しい。まさかトップ目で折り返しを迎えるとは思っていなかった京太郎は、自分が提唱したルールによって首が締まっていた。

 

 東四局二本場 ドラ:{九}(ドラ表示牌:{八})

 配牌

 京太郎:{二二三九⑥⑦⑧⑨245白白}

 

(白を叩けりゃ、軽く蹴るには理想の手だが)

 

 かれは、上家の照と、対面の花田を観察する。照はまだしも、三着の花田の思惑は京太郎と同様のはずである。とはいえ各人がトップを狙う以上は、どちらかといえば京太郎の差込を期待するはずである。

 

(面前の打点なんかさっぱりわかんねーし、そう都合よくもいかねーか)

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 07:58

 

 

 東四局二本場 ドラ:{九}(ドラ表示牌:{八})

 配牌

 咲:{一①①①①③⑤赤⑤⑥⑦3東中中}

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 07:58

 

 

 東四局二本場 ドラ:{九}(ドラ表示牌:{八})

 配牌

 花田:{六八九②赤⑤⑨1149西西北}

 

(これはひどい)

 

 表面上は澄ました顔を保ちつつ、花田は胸中ひっそり嘆じた。

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 07:58

 

 

 東四局二本場 ドラ:{九}(ドラ表示牌:{八})

 配牌

 照:{一一二三五七②③668白中}

 

「…………」

 

 宮永照は、己の手牌を目にした瞬間、曰く言い難い感覚に囚われた。三向聴は決して悪い配牌ではない。聴牌までの手順も彼女の眼には見えている。回る必要はなく、一見急所に見える{五七}と{668}の塔子も5巡目までに埋まる。しかしどうしても、照にはこの手の和了目が見えない。論理的な根拠は何らない。経験則を声高に主張できるほど多くの場を、照は見ていない。ただ彼女の感覚だけが、この牌姿に未来のないことをしきりに訴えてくる。

 

(この{②③}――もう死んでる)

 

 そしてこういう場合、彼女の感覚は大抵外れることがない。

 

 照は漠然と場を俯瞰する。

 

(――対面()

 

 脅威の元を、彼女は検知する。

 

(手心は、ないから)

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 07:59

 

 

 東四局二本場 ドラ:{九}(ドラ表示牌:{八})

 1巡目

 咲:{一①①①①③⑤赤⑤⑥⑦3東中中}

 

 打:{一}

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 07:59

 

 

 東四局二本場 ドラ:{九}(ドラ表示牌:{八})

 1巡目

 花田:{六八九②赤⑤⑨1149西西北} ツモ:{北}

 

(ふむ?)

 

 打:{9}

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 07:59

 

 

 東四局二本場 ドラ:{九}(ドラ表示牌:{八})

 1巡目

 照:{一一二三五七②③668白中} ツモ:{二}

 

「――」

 

 照:{一一二二三五七②③668白} ({中})

 

 

「――」

 

 

 照:{一一二二三五} ({七}){②③668白中}

 

 打:{七}

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 07:59

 

 

(――迷った?)

 

 目ざとく上家()の切り出しに注目しつつ、京太郎は内心で首を捻った。宮永照というひとの摸打に逡巡が入る様など、今日まで想像もしていなかった。先の東三局の振聴を回顧しつつ、京太郎は少しだけ祈らずにはいられない。

 

(何かしら、足をのろくさせるような効果があったんなら、御の字だけど)

 

 東四局二本場 ドラ:{九}(ドラ表示牌:{八})

 1巡目

 京太郎:{二二三九⑥⑦⑧⑨245白白} ツモ:{⑥}

 

 打:{2}

 

(そううまくはいかねーかな……)

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 07:59

 

 

 東四局二本場 ドラ:{九}(ドラ表示牌:{八})

 2巡目

 咲:{①①①①③⑤赤⑤⑥⑦3東中中} ツモ:{④}

 

 打:{3}

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室・キッチン/ 07:59

 

 

「今日は割れ目の人に染め手がよく入るわ」

 

 あっさりと嵌{④}(最大の急所)を埋めて面前混一色の1向聴を取った咲の牌勢を見て、月子が感嘆した。

 

「あれ和了ったら――」池田がぽつりと呟いた。「たぶん、アイツの総マクりだな」

「なぜ」月子が首をかしげた。「さすがにあれなら鳴いて進めるでしょうし、満貫か、よくて跳満でしょうに。一気に場は平たくなるでしょうけど」

「まず筒子をあとひとつ引くか――中が暗刻になるか東が対子になる。そして{①}暗槓するだろ」池田が当然のようにいった。「それでおわりだよ。引いたのが役牌なら嶺上・自摸・面前混一色・役・赤。東を重ねるか、槓ドラが一つでも乗れば親倍に割れ目がついて16000オールだ」

「……たしかに残ってる筒子はぜんぶ有効牌だけれども」

 

 月子は、自分の面貌に出来る限りの呆れの色を浮かばせた。目を眇め、口を半開きにして、とても胡散臭いものを見る顔つきになった。

 

「なんだよ、面白い顔して」こんどは池田が首をかしげた。

「いや、――どうして嶺上前提?」

「きょう、ここまでに三回槓があったじゃん?」池田がなんでもないように答えた。「ひとつは大きいほう()が晒してたけど、嶺上牌が、ぜんぶ小さいほう()の有効牌だった。というか、そうなるように手を進めてたみたいだけど」

 

 月子が、顔を曇らせた。

 

「あなたは、それは偶然じゃないと思ってるってこと?」

「うん」池田は即答する。「まァ、()()()()()の、気配ってやつ? そんなのあたしわかんないけど、卓のうえで指運以外のなにかをよりどころにしてるやつは、わかる。つっきーも、あのふたりも、それ以外にも。直接打ったらもっとハッキリすると思うけど、たぶん当たってるよ。(あいつ)の手作りは縦に寄ることを前提にしてるし、自摸もそれに沿ってるし。抱えた四枚目の牌を前に一度も迷った素振りがない。いちばん大きいのは東四局流れ一本場(さっき)の自摸和了りだ。あれは四枚目の{8}を引く根拠があったんだ。そしてじっさい引いてきた」

「なるほど」月子は小さく頷いた。「そういわれると、なるほどと言いたくなるわ。そんなのありえないなんて、わたしが人に言える立場じゃないしね」

「当たってるかどうかは、お手並み拝見って感じかな」池田は楽しげにいった。「いや、世の中色んなヤツがいるよほんと。

 ――麻雀を莫迦にしてるようなのが」

 

 そう嘯く池田の目つきに剣呑なものを感じて、月子は息を呑んだ。

 

「……池田さん?」

「つっきーがそうだって言ってるわけじゃないよ」池田は肩をすくめた。「あたしは、つっきーの麻雀、好きだもん。べつに、そういう連中がみんな駄目ってわけじゃないんだ。あの二人も、どうなのかな。よくわかんないけど、そうじゃないといいなって思う。ただ、まァ――」

 

 声の温度をふいに上げて、池田が囁いた。

 

「そういうやつと打つと、燃えるんだ、あたし」

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 08:00

 

 

 東四局二本場 ドラ:{九}(ドラ表示牌:{八})

 2巡目

 花田:{六八九②赤⑤⑨114西西北北} ツモ:{九}

 

(おっ? わくわくしてきましたよっ。すばらですっ)

 

 打:{②}

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 08:00

 

 

 東四局二本場 ドラ:{九}(ドラ表示牌:{八})

 2巡目

 照:{一一二二三五②③668白中} ツモ:{5}

 

「……」

 

 照は、対面を見据えつつ、

 

 打:{中}

 

 と、いった。

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 08:00

 

 

(ん――)

 

 咲:{①①①①③④⑤赤⑤⑥⑦東中中}

 

(だめ。ここで鳴いちゃうと……間に合わないよ)

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室・キッチン/ 08:00

 

 

「聴牌取らず? 打{①}で東タンキの受けは厭ってこと? どうとでも好形に変化できる23200をスルーは……ちょっとヌルすぎないかしら」

 

 と、月子はうめく。

 

「これでいくつかのことがわかったし」池田が立てた指を順繰りに折る。「とりあえず、中はヘッド。スルーしたのは聴牌速度よりも確実な和了速度を優先したからだね。ここまでの打ち回しから見るに、打点に目が眩むタイプでもない。むしろ神経質なくらい他家をケアしてる。槓のリスキーさを考慮してないわけじゃなくて、そこで終わるから考える必要がないんだ」

「それにしたって、槓したいから聴牌取らないって、異次元過ぎるわ……」月子が頭を抱えた。

「まァ、あれがこだわりなら、けっこうあたしは好きなんだけどね」池田は苦笑した。「てか、やっぱり対面()のほうがちょっと上手っぽい」

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 08:00

 

 

 東四局二本場 ドラ:{九}(ドラ表示牌:{八})

 2巡目

 京太郎:{二二三九⑥⑥⑦⑧⑨45白白} ツモ:{1}

 

(愚形の二度受け。どのみち見切ってた)

 

 打:{1}

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 08:01

 

 

「あ、それぽん」

 

 と、花田が鳴いた。

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 08:01

 

 

 東四局二本場 ドラ:{九}(ドラ表示牌:{八})

 3巡目

 花田:{六八九九赤⑤⑨4西西北北} ポン:{1横11}

 

(対子4つなら――七対子よりも対々和! それになんとすばらなことでしょう! うっすら! 混老頭(ホンロー)も見えてますし!)

 

 打:{4}

 

(ちょーっと、やけくそですけどね!)

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 08:01

 

 

「……{4}、チー」

 

 と、照も鳴いた。

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 08:01

 

 

 東四局二本場 ドラ:{九}(ドラ表示牌:{八})

 3巡目

 照:{一一二二三五②③68白} チー:{横456}

 

「……」

 

 打:{白}

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室・キッチン/ 08:01

 

 

「なぜそこからチー!?」

 

 月子が思わずといった体で身を乗り出した。

 

「もしかして、対子で{一}落としてタンヤオの{④}片和了りとか狙ってるのかしら」

「この巡目でそんなんしたらただのあほだし」と、池田がいった。「あれは、たぶん、須賀に――」

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 08:01

 

 

「ポン」

 

 と、京太郎も鳴いた。

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 08:01

 

 

(さすがに、さっきとは状況が違う――)

 

 東四局二本場 ドラ:{九}(ドラ表示牌:{八})

 3巡目

 京太郎:{二二三九⑥⑥⑦⑧⑨45} ポン:{横白白白}

 

(二軒に仕掛けが入って、ここを見送る余裕はない)

 

 打:{九}

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 08:01

 

 

「それが出るならさらにポン!」

 

 当然、花田が再度叩いた。

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 08:01

 

 

 東四局二本場 ドラ:{九}(ドラ表示牌:{八})

 4巡目

 花田:{六八赤⑤⑨西西北北} ポン:{九横九九} ポン:{1横11}

 

 

 打:{六}

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 08:01

 

 

(ま、また飛ばされちゃったよ……)

 

 自分を置き去りにして繰り広げられる空中戦を、咲は呆然と見送った。

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 08:01

 

 

 東四局二本場 ドラ:{九}(ドラ表示牌:{八})

 4巡目

 照:{一一二二三五②③68} チー:{横456} ツモ:{東}

 

「――」

 

 打:{一}

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 08:01

 

 

({白}から{一}ね……)

 

 やや露骨なフォローに眉を寄せつつ、京太郎は照の誘いに乗ることにした。

 少なくとも、いまこの局面では利害が一致している。

 彼女の真意は掴めずとも、思惑に乗ることは京太郎にとっても損ではない。

 

「――チー」

 

 東四局二本場 ドラ:{九}(ドラ表示牌:{八})

 4巡目

 京太郎:{二⑥⑥⑦⑧⑨45} チー:{横一二三} ポン:{横白白白}

 

 打:{二}

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 08:01

 

 

「ポン」

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 08:01

 

 

 東四局二本場 ドラ:{九}(ドラ表示牌:{八})

 5巡目

 照:{一三五②③68東} ポン:{二二横二} チー:{横456}

 

(――)

 

 打:{6}

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 08:01

 

 

「え」

 

 と、呟いたのは、京太郎だった。

 信じられないものを目にしたように、表情を固めて、照が河に置いた{6}を凝視している。

 

「……須賀くん? ツモ番ですよ?」

 

 と、気遣わしげな声を発したのは花田である。

 

「あ、いや」

 

 京太郎は頭を振って、

 

「ロン――だ」

 

 と、宣言した。

 動きが鈍る指をようよう繰って、かれは牌を倒そうとする。ぱらぱらと崩れる牌が全て現れる前に、照の指が河に点棒を置いた。

 

「……」

 

 京太郎は、口元を引きつらせて、照を見返した。

 

「……まだ、点数申告してないぜ、照さん」

「1000は1600」と、照が静かな声音でいった。「違った?」

「合ってるよ」

 

 声色を硬くして、京太郎は牌を晒した。

 

 

 京太郎:{⑥⑥⑦⑧⑨45} チー:{横一二三} ポン:{横白白白}

 

 ロン:{6}

 

 

 ▽ 12月30日(月曜日) 長野県・駒ヶ根市・トーワマンション701号室/ 08:01

 

 

 東四局二本場

 【南家】花田 煌  :20200

     チップ:-3

 【西家】宮永 照  :34600→33000(-1600)

     チップ:-1

 【北家】須賀 京太郎:41500→43100(+1600)

     チップ:-1

 【東家】宮永 咲  : 3700<割れ目>

     チップ:+5

 

 

 

【東場終了】

 


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